★草むらの中の湖★
「え?私たち!?」
みみが大声をあげた。
その場の全員が固まっていた。
魔法なんて一切使えない三人が、【心の魔法】のためにルナに協力するなんて。
「絵を描くには心が必要でしょ?心があるから森の音を聞いて楽しめるでしょ?コンピューターは心のない人には必要ないでしょ?」
さえはみみ、なな、ささに質問をしながらにっこり微笑む。
それを聞いてゆかは首を縦に振りうなずく。
「やっぱりさえは頭の回転がはやいねー。ルナ、そういうことみたいだよ?」
「うん。確かに…。みみは絵を描くのにその景色にとけこんだりするし、ななの想像力は森の心を聞いているみたい。ささは人と触れ合える心があるようなロボットを作りたいんだよね。」
三人は同時にうなずいた。
「じゃ、じゃあ、三人とも、私に心の魔法の勉強、させてくれるかな」
ルナは3人のほうへ向いて、にっこりと言う。
「いいよ。私と絵をかこう。心を込めるととってもきれいな絵がかけるよー。」
「じゃあ森をかこう。心の目でみて、聞いて、自然の美しさを感じるの!」
「これどうかな?リラックス度をはかるコンピューター。心とコンピューターは繋がれると思うの。」
3人ははルナの手を引っ張っていく。
そのあとを、ゆかとさえ、みどり、ゆうとが追いかける。
ルナたちは、湖に行く。
芝生に座ってみみはスケッチブックと絵の具を渡す。
ささはルナの頭にヘッドフォンのようでへッドフォンでないなにかをつける。
「これはね、リラックス度をはかるものなの。やっぱり、リラックスすると、楽しめるんじゃないかな・・?」
「うん。ありがとう。ささ。」
その機械は、頭につける部分と、数値を表すための数字が表示されている四角いスマホのような部分があった。
【リラックス度:2】
「これは十段階まであるの。全然リラックスしてないみたい・・。」
ルナは見慣れない機会に戸惑いつつも、筆を手に持った。
ルナが描こうとすると、ななが声をかける。
「ねえ、ルナ。この湖。わずかだけど小さな音がしない?まるで湖の赤ちゃんが泣いているみたいに。」
おそらく、湖が風邪などで揺れる音だろう。たしかに、耳をすませば、わずかにその音が聞こえる。目をつむる。
目をつむって静かに自然に耳と心をかたむけると、いつのまにかその環境に入り込むような感覚がある。
入り込む・・・。
ふと、ルナは人にとりつき入り込むデビルのことを思い出して静かに目を開けた。
デビルはずっと自分に取りついてきた悪魔。ルナはそんなデビルを、なぜ許してしまうような気持ちが芽生えてしまうのだろう。
もし、デビルが心を入れ替えてくれるのなら、一緒に悪魔王を倒したい。
ルナはなぜか、そう考えてしまう。
デビルの声はたぶんだが若々しくきれいだ。普通に聞けば、デビルの声は暗く汚れている。でも、ルナにはデビルのその声の本当の声が少しだが聞こえる。デビルの普段の声の裏に、高く美しい声がいつの間にかルナにはまじって聞こえるようになった。悪魔があんなにもきれいな声をするであろうか。
ルナは、いつの間にか、まわりの音が聞こえなくなっていた。
「…ナ!ルナー!」
ルナはみみの声ではっと我に返る。
「どうしたの?」
「あ、ううん。みみ、絵をかこう。」
ルナは、絵をかくのなんて何年振りだろう…と思いながら描いた。自身はなかったけど、リラックスして水の音、風の音を聞いて、ルナは筆をスケッチブックに何度もつける。
ゆかたちは、ルナの隣に座って、みみから筆をもらって、絵をかき始める。
いつの間にか、8人全員が色々な視点から絵を描いていた。
「できた…。」
ルナは1時間かけて、湖の絵をかいた。
出来上がったものは、みみほどとは言えないものの、とても美しいものだった。
草むらの真ん中に湖がある。草むらは実際よりも長く暗く、湖が隠れるほど描いてある。真ん中の湖は、草むらの暗い色を照らしているような不思議な水色をしていた。
ルナは自分でも不思議に思っていた。
実際とは全くではないが、異なる絵を描いたのだから。
さえとゆかはルナの絵を覗く。
「なんだか、パッと見暗い絵だけれど、その中に明るさがある感じの絵ね。」
「ルナ絵上手いー!私が描いたら、なんというか、あはは・・。」
みみは、ルナの絵をみてびっくりしたように目を見開く。
「こんな描き方、どこで知ったの?絵が上手い下手じゃなくて、・・・」
「ルナの想像力が私とは違う方向に向いてる・・?」
「絵を描いているときのルナのリラックス度は10MAX・・・。」
ルナはなぜ筆になれていないこの手で、そんな絵が描けたのであろうか?
暗い草むらの中に、光る湖。
その光は儚いもので、少しでもごみを投げ捨てたら消えてしまいそうな光。
ルナは、絵を描いている時間。何も考えていなかった。ただただ、絵をかくことに集中した。リラックスした。
この絵は、消して自然の音を聞いたものではない。目で見てそれをそのまま描いたものでもない。
だとしたら…。
これがルナの思っている心なのだ。
―デビルの中には、光がある―
ルナは夕日を見つめ、絵を見つめ、わずかに出始めた月を見つめた。




