★心の魔法で★
「みんな、私たちがバリア魔法をかけるから、明日は大丈夫なはずよ。ゆか、バリア魔法をかけましょう。」
「オッケー!」
さえは十日目に向けて、バリア魔法をかけてデビルからの悪魔法を避けようと提案していた。今ここにいるのはルナ、ゆか、さえ、みみ、なな、ささ、みどり、優人である。さえとゆかは空中に魔法陣を描き、バリア魔法の呪文を唱えた。
「うっ・・もうだめ・・。」
するとゆかが魔法をかけている途中で座り込んでしまった。
「なんだか魔力が足りないみたいで・・。身代わり魔法の時の魔力の消耗が大きかったのかもしれないなあ。」
「大丈夫よ。私がかけておくから。ゆかは早く休むといいわ。」
さえは全員に、もちろん自分にもバリア魔法をかけた。深夜一時を過ぎるころ、いつの間にかそこにいた全員が眠っていた。
十日目は平和に始まった。
「デビルも無駄な魔力を使わないよう、魔力をためているようね。」
さえは一番先に起きてぽつりとつぶやいた。続けてみどり、ささ、みみ、ななと、次々と目覚めのいい朝が迎えられた。最後に起きたのはルナだった。ルナは昨晩、ずっと考えていた。デビルのことについて、
(デビルは、なぜ十日目の夜に戦うといったのだろう。)
このままルナが、何の力もつけずに戦いへと向かったら、デビルが戦う意味がないだろう。
「ねえ、何とかして公園の外にいけないかな?」
ゆかの一言にみどりは大声をあげた。
「だ、だめー!公園の外は危ない。私はこの目で見てきたもの。」
とはいっても、どのように恐ろしいのか・・。ルナたちは黒い霧に包まれた広い広い誰もいない公園の中で、九日間も過ごしてきた。食べ物はさえの家にあったものを食べている。
「どうするの?このまま何もしないでデビルと戦うの?」
みみが身を乗り出して言った。
「やっぱり、私がレインボー魔法を使えるようにならなければならないのかな・・。そんな魔力なんて私にあるの?」
ルナは自分の手の甲に光る催眠術学校の校章を見つめた。
「本当はね、催眠術学校は催眠術学校っていう名前じゃなかったんだ。魔術を中心に教える魔術学校だった。でも、魔法学校と争っていた時期があって、魔法学校生徒が魔術学校を滅ぼそうとしたんだ。魔術なんてつまんない。とか言って。魔術学校の生徒は魔法学校の生徒より魔力が弱く、足りなかった。それでも戦った。でも、争い嫌いの生徒の一人が、魔術の一つ、催眠術を使ってマイクで叫んだんだ。争いをして何があるの!?仲良くなやればいいだけじゃない!って。その言葉を言ったのが、私の先祖だったらしいの。争っていた生徒は争いをすぐにやめ、二校は仲直りしたんだ。昔お母さんから聞いた話で。詳しいことはお母さんもわかんないみたいだけど、小学二年生の時、私は夢中で聞いてた。催眠術学校になった由来は、それがきっかけらしいの。でも、私は今思えば、その子は催眠術なんて使ってないんじゃないか・・って思えてきたんだ。」
「そうよね。催眠術で人の心に術をかけても、その人の奥底まで術はかからないはずだもの。催眠術で争いが終わるわけないわ。本当の心って見えづらいけど・・・。」
「きっとあるんだよね!だれにでもね。」
ルナはさえとゆかの言葉を聞いて、ふとデビルのことを思い浮かべた。
(デビルにも・・あるのかな?奥底の本当の心。)
デビルは本当に悪い悪魔なのか・・?ルナは不思議と疑問に思っていた。
「さあ、ルナ、魔法の練習をしましょう!ルナならできるはずよ。」
「でも私、体が弱いっていうか、力がよわいっていうか・・・。だから大きな魔力を使うことなんて、できるのかな・・。」
「自分で言ってたじゃない?催眠術なんて使ってないんじゃないかって。ご先祖様みたいに、魔力がなくても魔力以上のものをルナは手に入れられるんじゃない?心の魔法がねっ。」
(そうか・・!無理に魔力を使う必要ないんだ。)
さえの言葉に、ルナは決心した。魔力以上のもので、デビルを倒してやる!と。
『心の魔法?・・フフ。頭おかしいんじゃない?私はそんなもので倒せないわよ?私の悪魔力は、高まっているわ。今夜が楽しみね。心の魔法で私を倒せるものなら倒すがいいわ。できないのだから。早く伝説の魔法を手に入れなさい。でなければ、あなたは私に負ける・・・いえ、たとえ手に入れても、私があなたの体を再び乗っ取ってみせるわ。レインボー魔法の力を手に入れるためにね。』
「デビル!どうしてあなたは、そこまでレインボー魔法を手に入れたいの?」
『レインボー魔法の力は、絶大な魔力がなければ使うことができないのよ。それがどんな魔力かは私にもわからないわ。ルナの魔力は私よりずっと下。それ以前に、ゆかさんやさえさん、みどりさんの魔力より弱い。ルナにとりついていたとき思ったわ。なのにどうしてあなたがレインボー魔法を手に入れるの?私にはそこがわからないわ。』
ルナはふと思った。なぜ、デビルはルナがレインボー魔法の力を手に入れると言っているのだろうか・・・。まだ一度もレインボー魔法なんてルナには縁もない。なのに、なぜ?しかしルナは何も聞かなかった。聞いてもどうせ、さあ。としか言わなそうだから。それは戦いの後に確認しよう。ルナはそう決めた。
『では、今夜を楽しみにしているわ。ルナ。』
デビルのその言葉が消えたとき、すっと闇の霧が消える。それがデビルが去っていく合図だった。ただ、ルナには闇と同時に、小さな小さな光も去っていくように感じた。
「それで、魔法の練習って・・?」
ルナは一度心を落ち着かせ、気を取り直してさえのほうに向き直った。
「だから、心の魔法の練習よ?みみ、なな、ささ、あなたたちの出番よっ!」不思議そうにしているルナたちにはおかまいなしに、さえはウィンクしてみみたちを指さした。




