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『ヒト』それぞれにPSYはある  作者: ガラマサ
2『This fire is――』
12/39

惰性とポーズの復讐鬼

「……やはりな。ここだけ地面の干魃が甘い」


 その言を、肯定するように。

 突然爆砕された地盤の下、乾いて固まりきった地中の空間に彼は着地する。

 流石に黒い滲みは地下にはなく、赤焼けた光景。


 そこにあって、猫背に書制服の長身の男。袴の汚れをはらいつつも佇む八雲は、一度辺りを見渡して。


「それによく、ここは手が行き届いていたと見える」


「――!」


 死角。突進し迫っていた体が弾かれる――結果的に、そうなっていた。


「元々、この地帯には銀山があったと聞く。だが『対象』が通り、従業員共々つぶされ、残ったここも投棄された。どうやら今は他鉱業のアテを見つけたようだが――それだけに」


 周囲の、床や壁、天井として整えられた土と岩は、再度崩れ、爆砕し。そのデブリが降って、駆け抜けるための地面は爆ぜ散って、ソイツに撤退を強制する。

 ――状況の完成。すでに、場は彼に掌握され。


「ここの『意義』を崩すのはやはり、簡単だ」


「――クリティカルシンキングってかぁ? 相変わらず根暗だなぁ、えぇオイ!」


 負けじと吼える元人間。文字通り落ち武者然とした、不精な髪と髭の骨面はしかし。

 確かな戦闘態勢で、錯乱と睥睨を飛ばしていた。




 八雲カフクの畏能を、『亜種双極』という。

 それは指定秒数間に数年分、物体限定で経年消費をより早く行い、その存在意義を完全昇華させる、究極的な使い捨て利用法――リスクもまた存在する。


「しかし、すっげぇ。ゼンゼン変わってねーなぁオマエ。あんときのまま……いや。ちょっと縮んだか? かっはははハハ……」


「――馴れ馴れしく言うな。和多志の知る同胞に、そんな腕のヤツはいねぇ」


 仁王立つ彼の力を受けた周囲、地面や壁、対象になったものは、全て必ずしも爆発するわけでもない。

 今、このトンネルが完全に崩れないのは、爆発だけでなく逆効果、補強の起こった部分もある――破壊(ころす)再生(いかす)か。


 どちらがどこで適応されるのかは、当人も相手も、発動するまでわからない。


「あァ。そーか、そうか。その服、その目……相変わらず。まだ諦めていないとはな!」


 単純な瞬間火力の通常攻撃。その時点で接近不能の事態。故に。対処法は自然限られた。

 手数勝負。長期戦だ。


「――『亜種酎恪』、酔挙手錐投足」


 不知火に似た体制。

 大股で構え、長い指を揃えた両手と爪が手刀を象る。


 彼に対する、元人間。かつて、『下醉尾』と呼ばれていた者の畏能。

 それは、あらゆる状態異常(バットステータス)機能欠損(ダメージ)が筋骨の強化に転化する、条件付きの身体強化。加えて――。


「しぃ――ッ!」


「……」


 舞い踊るようにふたつの(けん)が岩盤の炸裂を砕き、不規則を極めた足並みで肉薄する、収められた武術と。

 問題の『食料』による、作り替えられた長い腕や身体の更なる強化――それは間違いなく。

 生涯最悪にして、最高のポテンシャルに至っていた。


「オマエまだ敵うって思うのかよ、あれに!」


「……家族の仇だからな。今もまた、こうして被害者は生まれ続けている」


 大量の瓦礫を逆に足場とし、壁から壁を蹴り。

 閉所の有利を活かして測られる接近。


 それは爆発に弾かれ、尚も繰り返し、何度でも。視線と火花が、嘲笑と無表情とが交錯し逢い。


「そりゃあ、『隔人(ヘキト)第三号被害者の会』もかァ? まだ朝に出迎えきてんのかよ――来るだろうなぁ。お上がサクラ出してでもやってんだからなァ!」


「……」


「誰もオマエが本気で勝てるとか期待しちゃいねぇだろ、むしろ。下手な成果を出すなと思うだろうぜ」


 それが。軽く百は繰り出された、一分経たずという頃合い。


 突然、その足は止まる。

 悠然と。既に、行動は完了したとばかりに。

 ――実際。そうなのだ。既にこの空間は、この元人間のものでもあった。


 だからか、酩酊するそれは、ただ乾いた笑いを。心底おかしいと貧相な腹をたたく。


「ありゃあ、もう災害だろうが。規格が違う、善でも悪でもない……足跡の深さで予測された体重だけでも、低く見積もって五万トンはくだらないんだぜ?」


「もう、怪人以前に生物じゃねェだろ――自然に復讐するってんのかよ、本気で?」


「……」


 下醉尾の畏能は『本体発動』だけに留まらず。無論自分以外へのアウトプットも可能である。


 そもそも、人体は黄金律で成立するもの。

 身体強化は最もそれを崩しかねない畏能であり、最も怪人化のリスクが高い畏能だ。邪道とさえ言える。


 故に、下醉尾は王道たる体外発動(アウトプット)を、安定装置として組み込んでいる。


「――なぁ。呑んでる時くれぇは、本音を言えよ」


 『咲氣磊々』――畏能を体外の全方位に押し出す、矯源乖域。その限定発動。


 本来ならば、矯源乖域は攻撃手段である。


 人が人体にあらざる機能、畏能を行使するとき、物理的に()()()()()()()()。ゲームで言うところの、MPだけでなくHPも減ってしまうイメージに近い。

 それらの負債に見合うだけの、一発の決定力を高める為に畏能出力を高く固定させるなら無論、攻撃でなければならない。


 しかし、これは自分の負債の押し付けだ。

 バットステータスを外に追い出し、自分だけは支障をきたしてはならない身体の重要器官、思考力を状態異常から保護する――怪人化(ちめいてきへんか)を避ける為に。


 更に、アウトプットと、本体発動。

 総出力を二等分する仕様上それぞれが半端になるため、かつてはイエロー相当だった下醉尾だが。


「オマエもこっち来いよ。ここらでもう、気楽に死のうぜ?」


 今現在その体外、大気には、レッド相当の漏出を伴った負荷が充満している――つまりはその、違法肉骨粉の持つ畏能漏出までも加算された形で。


「……」


「――酔狂極まりやがるか。まったく羨ましい」


 呼吸に、乱れなどひとつもない。


 八雲カフクは未だ一撃も、攻撃を喰らっていない。

 変化は多少、砂埃をかぶっていた程度。佇んだ地点で位置は変わらず。

 ――とはいえ。


 涼しい顔とは、到底言い難く。


「いい加減に黙れ。和多志は、お前のようにはならん」


 声色は、低く。

 無表情、無感動の鉄面皮の下、鋭すぎる睥睨が。激情に濡れた眼が、確かに覗いて見えた。

 それは怒りというより、疲れ切った故の。意欲が疲労を勝ったかのような。衰弱のなか、据わった目。


「無駄のまま終わる気はない。ここまでずっと追ってきた。止まれば全部が無駄だ――それでは、見合わない」


「――見合わない? いまッだに、無為に、人材を消費するお前が言えたことか!」


 再び、それは駆け出した。

 判断能力を損なわせる身体強化より畏能排出にスペックを偏らせ、瘴気と爆発の只中で唯一軽やかに。全方位を駆け抜け、壁を蹴り、踊り出ては口撃を重ねる。


 確実に、冷徹に徹しきれなくなり始めた声音を、より追い込み。より競り立て、追い立て、


「あの連れの女も、その前にも何人居て居なくなったんだ、えぇ!? オレはお前で辞めたってのによぉ!」


「……ッ、だま――!」


 挑発とわかってか、わからずか、声量があがり、より空気を吸いこんだタイミング。


 そこで。眼前の地盤に起きたのは『倒壊』でなく『補強』。

 今度こそ翻る手刀の射線上、障害物はない。

 即座、間髪入れず前進の勢いそのままに滑り込ませ漸く――


「……。黙れ」


 ――漸く。豊山ミノルの声が、畏能が届いた。




 豊山ミノルの畏能、『亜種鏡谺』。

 その効果、身体で受けた畏能を、受けただけ疑似発動する模倣能力。


 彼女が受けたのは初撃。

 直前まで似非怪人の雑魚狩りをやらされていたコトで、中古品の鞘から辛うじて抜いた刃の両腕は、『酔挙手錐投足』の膂力を得た事で、辛うじて受けきっての生存。


 同時、微弱ながら至近距離故にあてられていた瘴気、『咲氣磊々』の模倣によって最低限の思考力と致命傷を回避、状態異常を軽減。


 だが、そのカウンターの際、前者の攻撃力には使い切られかった『余り』があり。


 それが今。このタイミングで、直撃した。


「な――ッ」


「黙れ――お前が。先輩を語るな」


「……ここで来るのか」


 元人間からすれば、脊髄反射での振り返りさえ遅すぎた。


 煮詰まりきった激情が、面立ちに似合わぬ人相が、子供みたいに加減無しの怒りと眼が合うばかり。

 辛うじて視野の端、切り落とされる右腕が見て取れた。

 今の威力。その身は誰よりもその正体を知っている。

 それ故、事態の理解には致命的な遅れが生じ、目が理解を放棄し。


「……そうかァ。先輩。センパイ、かぁ!」


 否。錯乱している故か。

 理解など中継せずにその首に迫る手刀。

 畏能の反動により、ミノルは反応できていない。


「――っ!」


 それよりも早く、八雲は袖口に忍ばせていたソイツを手にとって打席に立たす。


 拡がるそれは、真っ白な鉄扇だ。鉄だったものだ。

 今や白色のエイドス鉱石と化した『鉱石器』だ。無色のものだけは加工も研磨できない。熱量変換もできない。


 同じ棺に入れられながら主人と共に旅立てなかった、無価値極まれりな一品。カフクはこれを副業として受け取っている――なにせ。

 物理的に破壊不能であれ、何者であれ、存在意義の干渉からは免れない。


「お前がもう、先輩か」


 知らない。肩と肘を支点に手が回る。

 その扇の羽が一枚一枚、手前からヤツの左肩へ、次いで首元へとシャッターを下ろす。

 一瞬に重なった轟音は花火の如く。


「――」


 ……。

 蝋燭の最後の様に、それは燃え尽きて、掻き消えた。


 残るは。首をなくした死体と、ガス欠になった後輩と。

 手持ち無沙汰で、血迷ってか――短い黙祷を捧げる、彼のみであった。




 ――彼の畏能は、対象の状態に依存する。

 『意義干渉』で引き出されるプラスな効果と、マイナスの効果。

 基本的に、本分を全うしていない破損機能には再生が起こり、全うしているなら完全昇華による破滅の二択だ。


 極めて、これは扱いづらい。

 破損部位がごく僅かなピンポイントで、それだけを直したいという場合、詳しくその仕組みを理解できていなければ健在の部位までもが巻き込まれ破壊されてしまう。


 それを戦闘中、初見のものに対して、敵が眼前にある状況で行使するのは容易ではなく。

 そもそも、破損しているか否かの観察期間さえマトモにないのだから。

 加えて。対象となる物体はやはり無機物が主であり、戦闘対象本体や有機物へ発動となれば最大出力の発揮、『矯源乖域』の使用を余儀なくされるのだ。


 そのため、とにかく『かの対象を討ちたかった頃の彼』は、最も合理的な対策をとっていた。


 ――効果を、物体には破壊マイナスのみを集中させ、己の人体には修復プラスだけを起こすべく。

 身の回り全部。暮らしも、仕事の内容も環境も、人でなくなる瀬戸際に追い込んだ形で過ごせばよいと。


 あの日の壊されたままの家で、黒塗られた間取りを日常とし。テープで関われた、過去の人間のシルエットの横を毎朝通って、家族写真の玄関口を抜ける。

 そういう。墓の中にいるような暮らし。


「……この土汚れた風貌も。一時期と比べれば、遥かにマシと思えるな」


 わざわざ土を被りに来た、殊勝な後輩の汚れをぬぐい取ったのち。

 地下道の封鎖された扉を破壊して、漸く地上に出た八雲は、陽光の下の景色に嘆息を漏らす。

 埃っぽさの軽減に肺が、ここぞとばかりに大気に食ってかかる。


 調査先は、必ず盆地だ。

 なにせ、足跡が刻まれている。

 気温はぬるく、無駄に湿度を伴った風には慣れたが、およそ気持ちのいいものではない。


 先日まで病院送りになっていた原因たる傷も疼く――そう。これも、またマイナスだ。


 八雲カフクの畏能は、扱いづらさに加え、強すぎる。

 畏取において、彼の漏出値と、そこから推測される総合火力の数値を上回るものは居ない。


 実際、当人もコントロールし切れない程であり、希に暴発が起こりうる。そういう、マイナスだ。


 ツケみたいなものだろう、と考える。

 前まで大人のくせに、向こう見ずに背を伸ばして突っ走り続けた故の、そういう負債。


「……いや。余分に付いた、って意味なら、贅肉ってトコか」


 客観的に見るならば。

 人間にとって、享受してきた生活レベルを自ら下げるなんてのは最も耐え難い事なのだろう。

 特にわざわざ、壁内という環境を享受せず外に出る者なんてそういない。


 だが、彼にそう苦労はなかった。


 悪い例えだが。

 なにかしら被災し、家を失った直後の者達のなかで、大人より子供達の方がショックは小さいと聞く。

 きっとそういうものなのだ。


 この、巨大な足跡の上と同様に。ポリスごと家族を潰されて。15歳まで過ごした家庭を失って。

 その時点から、とっくに立ち戻れないほど、心根は貧しく下がり切っていたに違いない。


「にしても、こいつめ。ムダにゴテついた鞘えらびやがって」


 それはそれとして。

 両肩の負担は、背負った刀のせい。断じて他のせいではないとしつつ。

 見えない足で危なげなく、乾いた土、黒い水跡の刻まれた地を踏み歩く。


 門を抜け、眼前の赤焼けた空の下には、調査対象たる鉱山がある。

 両手は反動でぶっ倒れた後輩に占領済だ。

 米俵みたく抱えるのが普通だが、世間体的に女性にそれは憚れる、という人目のない場にあるまじき理由でこの持ち方とあいなった。


 自分共々、土まみれの後輩。それは見るに穏やかというべきか。苦しげとは無縁げすぎて、力が抜けそうになる。


「……」


 あれから。畏能を得てから、もう十年以上。

 皮肉なのは。物体の意義に、殺す相手の意義に訴えかける考えを、思案を重ねていった結果、忘れられていたハズの常識というものを蓄積したという己自身だ。


 ここ三年ほど、だろうか。時期もキッカケも忘れたが。

 ある日に。ひどく疲れた日に、己を客観視してしまった事がある。


 内心に築かれた善人像というものが、「お前はなんで無様で無用なのだ」と。復讐鬼をやれていた、やりたがっていたハズの自分自身に優り、シーソーは傾いた。

 それからというもの。前の視点には戻れていない。

 自分自身の吐いた至極真っ当な正論の余り、アレとは別方面で、頭はやられちまって――。


「……せ、せんぱい?」


「――、――起きてたのか」


「あっあの、私大丈夫なんで! おろしてくれていいんで!!!」


「いや。反動あったんだぞ、お前サマ……頭痛い本人の声量と元気かよ。それ」


 ――。珍しく、ぼうっとしていたのか。

 見ていたハズが変化に気づけなかった。


 目覚めた双眸は、渦巻を見出せそうな程の慌てぶり。

 実際図体が図体なだけに、致し方なく下すとやはり、頭は揺れていて直立も危うげな始末。


 だったが。そうでした、と彼女は八雲から自分の刀を引っぺがし、その中古品を高々と誇らしく見せつけて言った。


「先輩っ、私ついにカウンターの小分けやれました! 初手にくらった一発を、その時の迎撃と、その後の不意打ちで!!」


「畏能複合居合、『脅霓』の完成っ――これで、『隔人第三号』――怪獣討伐に、またひとつ近づけましたね!」


「――そうか。よくやった。大きな前進だ」


 先輩として、彼はそう言った。

 そうとしか、言いようがない。


 それでも、無論「止しておけ」と宥めたものの、それこそ彼女は跳ねて喜びを表現しようとしてくれた。

 復讐鬼として。彼は、彼女に接せた事が少ない。最近は特に――なんというか。こう。ダレたのだ。


 ――ヤツの言った事に、間違いはない。

 現状。やってる感を。やってる感だけを、今の八雲カフクは求められている。


 『対象』、怪獣と通称される、怪人を超える存在の討伐。そのための調査。


 それが。出撃による即時対応でなく、事後調査しか認められなくなった事からも。全ての調査隊が引き上げた後の、なにもかも持ち去られた後の場所で実施されている時点で明らかだ。


 みざくろグループも、他のポリスも、その災厄には手出しできず。許すわけにもいかず。

 

 だから、当時拾われるにあたって結ばれた雇用条件。

 宣伝された『復讐鬼・八雲カフク』の存在が、今も動いているのだと。

 そのニュースが続くだけで。ポーズをとるだけでいいと、今はそう、彼は社会に望まれている。


 ――実際に。それがなければ折り合いがつかないと、収まらない者達が。

 復讐という動機なしには生きられない、囚われた者達を、彼はよく知っている――彼もまた、よく知っていた。


「行くぞ。お前サマは寝こけてる間に瘴気までくらった。可能な限り情報を持ち帰れなきゃ、とてもその反動の割に合わん」


「えっ、は、はい……そういや先輩。あの状態異常大丈夫だったんです?」


「ああ。ハナから効いちゃいなかったからな」


「……ふぇ?」


 いっとき。そういうヤツに連れてかれた酒場で、自分が下戸だと判明した事があって。

 それ以降、酒を飲んだ事はなかった。

 当人は、忘れちゃいたが――忘れたフリかも知れないが。

 もう畏取には、自分より先輩のヤツもいるはずもないが。


 残念ながら。本当に物覚えのいい頭である。


「アウトプットじゃなく本体発動。自分自身に畏能を使って凌いだ。なぜだか今回は、有利効果を引き当てられたらしい」


「えっ、じゃあ、私でしゃばった意味な――ぅあ!」


「成長したんだから良しとしろ」


「ちょ、だから、おろしてくださいって!」


 わちゃわちゃと手の中で抵抗する少女。

 それに応対する彼は、やはり無表情でしかない。

 本当なら注意し怒るべきなのだろうが。しかるというのさえ、今は酷く難しい。


 ――だが。犠牲を無駄にさせるわけにはいかない。


 忘却される彼等を、未来に連れていく誰かが居なければならない。

 傷を負った者達が、それがもう過去なのだと、もう誰かの手に渡った問題なのだと。


 折り合いをつけて、別の道を歩ますキッカケとなる者が居なければならない。


 だから。彼は、もう酔えもしないのに。

 強いて、後輩に応えるのが先輩の意義であると。

 その歩を、ひどく機械的に進ませ続けていた。

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