81 どれだけ可愛いか
まだ濡れたままの髪に、首にタオルを引っ掛けただけのたまきに、
「まぁ!ドタドタしないの。髪の毛もちゃんと乾かさないで……」
と、祖母が近づいて、タオルを被せてたまきの頭を優しく拭う。
「いいよ、自分でやるから!」
気恥ずかしそうにその手を振り解いて、たまきは口を尖らせながら髪を拭いた。
「はいはい、わかりました。……ちゃんと温まってきた?」
祖母はそう言いながら時計を確認した。
いつもなら四、五十分ほど入っているのに、三十分も経っていない。
「お風呂には浸かったけど……。梧さんに変なこと言わなかったよね?」
「体ちゃんと拭いてから着たの?濡れてると湯冷めしますよ」
「ふ、拭いたってば。んもー、子供扱いしないでよ……」
梧の前で幼い子に言うみたいに確認されて、たまきは被ったタオルで顔を隠した。
「たまきが子供みたいなことしてるからでしょう?」
「どこが!?」
タオルをぱっと開いて顔を覗かせると、ふはっ!と梧が笑った。たまきは恥ずかしさから顔を真っ赤にして、またタオルを閉じ、
「なんで笑うんですか!」
と、顔を見せないまま責めた。
「いや……君が」
梧は何かを言いかけたが、ふふッと笑いを漏らして中断してしまった。
たまきが気になって、タオルの中から目だけ出すと、その姿を見て梧が顔を逸らした。
肩が揺れている様子に、笑いが止まらなくなったとわかったたまきは「もぉ!」と、その肩を叩く。
「……悪い。すまん」
謝る梧が、喉を鳴らして笑いをこらえようと努力している。
祖父母がそれを微笑ましく見つめつつ、
「……たまき、とりあえず座りなさい」
控えめに微笑んだ祖父が言った。
たまきは梧の隣に座ると、目をすがめて三人の顔を順々に眺める。
「……何話してたの?私が居ない隙に」
「別にたまきに内緒の話をしたくて、お風呂に行きなさいって言ったわけじゃないのよ」
「じゃあなに?内緒じゃないなら言えるでしょ?」
三人は顔を見合わせ、たまきはそれを訝しむ。
ふと梧が口元を緩ませると、指先で頬に触れた。
「……君がどれだけ可愛いかって話だよ」
その柔らかい口調で梧が言った瞬間、祖母と祖父は顔を見合わせた。自分の若い頃ですらそんな甘いことを言ったことがなかったので軽くお茶を飲んだ瞬間にむせ込み、あらあら、と笑いそうになるのをこらえながら、祖母は祖父の背中をさすった。
「えっ!?」
だが、そんなことは気づいた様子もなくたまきが声を上げたのを聞いて、二人はその顔を見た。
ゆでダコさながら、真っ赤に顔を染め上げて、わなわなと震えている。
「またそういうこと言う!」
照れ隠しに梧の腕をバシバシと叩いたのだった。
これが初めてじゃないらしいが、たまきは慣れていないのでいつもこんな調子なのだろう。
「痛い痛い。やめろ、たまき」
言葉は拒否をしているが、梧は楽しそうな表情で、その腕を掴んで止めた。
「……馬に蹴られちゃいますねぇ、おじいさん」
ふと、祖母が漏らした一言に祖父が喉を鳴らし、梧とたまきが祖父母の前だったということを思い出してパッと離れた。
「あ……、俺はそろそろ、帰ります」
時計を確認し、気まずそうな顔で腰を浮かせた梧に、
「あらぁ、泊まって行ったら?」
冗談のような口調で言ったが、祖母の目は本気だった。
「いえ、明日も仕事ですので……」
そう言うと立ち上がり、着替えなどの荷物をまとめて手に取った。
「今日も日曜なのに仕事で……、大変ですねぇ」
「いつもというわけではないです。ただ、今年はちょっと忙しいですね。知り合いのブランドの25周年があって、その手伝いもしているものですから」
玄関まで祖父母とたまきが全員で見送りに行く。
「そんな忙しい時にすまなかったね、引き留めて」
祖父が言うと、梧は首を横に振って、照れくさそうに笑った。
「……いえ。少しの間でしたが、なんと言うか……、癒されました。のんびり過ごせたので」
独りでいることに、寂しさを感じていたわけではない。それが当たり前だったから。
だけど、今日は、前世の宿で過ごしたような家族の温かさに触れた気がした。梧も、その一員として扱ってくれた、そんな祖父母の態度が嬉しかった。
祖母はそれを聞いて、ほっと微笑む。
「なら、また近いうちに必ず、いらしてくださいね」
前回、祖母が言った言葉は、社交辞令だと思っていたから、梧もそれ相応に応えたつもりだった。
「はい、必ず」
だが、本当に来てほしいと思ってくれているとわかった今、言葉に込める想いが違う。
それがわかったように祖母は微笑み、祖父は咳払いをした後に、
「梧くん……と、呼んでもいいかな」
と、少し照れた様子で訊いた。
梧は面食らったが、笑顔で頷き、
「どうぞ。ぜひ」
と、嬉しそうな顔で答えると、互いに目を合わせて頷きあった。
たまきは親しそうな二人の様子に、口を尖らせる。
「なんか、私よりおじいちゃんの方が仲良くなってない?やっぱりなんか話し合った?」
「まぁ。嫉妬?熱いわねぇ」
祖母がすぐに茶化すと、「なっ!」と、祖母の顔を睨みつけて、
「おばあちゃんもなんか今日、はしゃいでるし!」
と言うと、祖母は口元を押さえて小首をかしげて見せた。
ふふっと、梧の方から笑い声が聞こえる。
「……ほらな?みんな君のことが可愛いんだよ」
と、振り向いたたまきの髪をサラッと撫でた。
一瞬固まったたまきだったが、
「もう……、ご、ごまかしてるでしょ……」
言いながらも梧の視線からそらせずに、しばらく見つめあった。
そうした後、たまきの頬を軽く摘むと「じゃあそろそろ」と、祖父母に向き直る。
「あぁ、ごめんなさいね」
「……あ、ここで失礼します。たまきも冷えるといけないから出なくていい」
「でも……」
眉尻を下げるたまきの頭を優しくぽんぽんと撫でて、梧は祖父母に一礼すると背を向けた。
だが「あ」と何か思い出したように声を上げ、振り向く。
「明日は休講だろう?夕方、空けておいてくれないか」
「明日?……片付けが終われば大丈夫だと思いますけど……」
いつものように外で話せない二人に、祖父母は気を遣ってか、先に家の中へと戻っていく。
「霞さんが会いたいと言っているんだ。一度顔を出そうと思って」
「……霞さんが?」
「あぁ。嫌か?」
「いいえ!……私も会いたいです」
梧と霞が二人きりで会うのは今でもなんとなく嫌だなとは感じる。
だけど、たまきが霞と会いたくないわけじゃなかった。
以前は発作を起こしたときで、恋愛の相談も聞いてもらった。そのお礼もちゃんと言えていない。
ただ、勝手に疑ってしまって気まずくはあった。
梧はほっとした顔をしてから、「じゃあ、明日また迎えに来る」と言うと、家の奥を確認した。
祖父母が見ていないことを確認すると、梧はたまきの頬にキスする。
唐突なことにたまきの頭が追いつかないうちに、梧は「また、な」と言って、玄関を出て行った。
「たまきー、梧くんが帰ったなら、早く歯磨きしちゃいなさーい」
気づいているのかいないのか、祖母が奥から声をかけてきた。
「……わ、わかってるー!」
たまきは声を上げて、祖父母のいるリビングにまっすぐ戻らず、洗面所に歯ブラシを取りに行った。
鏡で赤い顔を確認しながら、歯磨きをしつつ、梧の唇が触れた頬に触れる。
梧は、額にも、頬にも躊躇なくさらりとキスしてくる。一向に慣れないたまきは、心の中で悲鳴を上げたのだった。
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翌日、たまきはFri Vindの特別応接室というところに通され、緊張した面持ちでそのソファーに腰掛けていた。
ショッピングモールやアウトレットにある店舗を通り過ぎる時に「素敵だなぁ」とは思ったことはあるが、入ったことはない。
元々アクセサリーをつける習慣はなかったし、なんだか、華やかすぎて自分とはかけ離れた世界のような気がしていた。
ましてブランド街なんてもってのほかで、その店舗の奥にある天井が高くて高級感あふれる部屋の雰囲気にも圧倒されてしまう。
「たまき」
隣に座っていた梧が、つん、とその頬を突いて、その緊張をほぐそうとした。
それでも口を引き結んでいるたまきに、今度は膝の上で握りしめている手の甲を指先でノックするように突く。
「……はい?」
困ったような顔をしつつも、まるでノックに応えるように返事をしたたまきに、梧は破顔しつつ、その手を包み込む。
「何をそんなに緊張してる?」
たまきは口元に手をかざして、梧の耳の方へ顔を近づけてきたので、梧は身をかがめた。
「こんな高級なところに入ったことないから……」
と、小声で耳打ちしてきたので、梧はそんなたまきが可愛くて、さらに表情を柔らかく緩ませ、握る手に力を込めた。
「ごめんなさい!遅くなったわ!」
と、そこに、霞が部屋に入ってきた。
たまきと梧は慌てて離れ、居住まいを正す。
「…………あら、邪魔したかしら」
二人の様子を察して、霞は片眉を跳ね上げる。
「いえ……」
梧が言って視線を逸らしつつも立ち上がり、たまきもまた、同じように立って霞を出迎える。
「いいのよ、立たなくて」
と、霞は座るように促すが、たまきはそのまま霞を見つめ、
「冴島たまきです。……その……、以前はありがとうございました」
と、頭を下げた。
「やだ!お礼を言うのは私のほうよ!あの時、あなたから助けてもらったのに、名前も名乗らずにごめんなさい。……私は霜槻霞です。時雨の実の姉で、紫露の伯母よ」
そう言って霞も頭を下げ、顔を上げると微笑んだ。
その笑みがとても綺麗で、たまきは目を奪われる。
「……二人は、知り合いでしたか?」
梧が訝しんで声をかける。
霞はふふふと自慢げに笑って「あらぁ、知らなかったのねぇ」と言ってから、二人をソファーに座るように促して、自分も向かい側に座る。
「……どういう知り合いです?」
不機嫌そうな顔で霞を見る梧に、肩をすくめて見せ、
「街で発作を起こした時に助けてくれた人よ。その後お茶もしたのよね?」
「……あっ!それは……」
たまきが慌てて、その先を話さないように手のひらを向けて懇願するような表情で霞を見た。
「……もちろんよ」
と、ウインクして見せ、霞は人差し指を口元に近づけた。
たまきはその時、梧が自分のことを親戚の子供のようにしか見てくれないと悩んで、偶然知り合った霞に相談したのだ。
今更それを梧に知られるのは恥ずかしかった。
「……なんだ?」
目をすがめる梧に「なんでもないです」とたまきは首を横に振る。
「本当か?」
疑ってたまきの方に顔を近づける梧に、たまきはさらに首を横に振って「なんでもないですってば」と、距離をとった。
距離を詰めようとする梧に、霞は手をパン!と一回叩いて、
「そこまでよ、アオ。誰の前で女性に詰め寄ってるの?」
冷たい視線を向けた。
梧は顔色を変え、身を引く。
たまきは、優しくて美人でありながら、きちんと締めるところは締める凛とした姿がかっこよくて、やっぱり完璧な女性に見えた。
一転、霞はたまきに対しては優しい笑みを向ける。
視線を一瞬だけ首元に落として、
「……素敵なネックレスですわ、お客様。とてもよくお似合いです」
と、店員の口調で言った。
Fri Vindで梧がオーダーメイドしたネックレスが、たまきのデコルテで輝く。
「……ありがとうございます」
照れながらたまきがお礼を言う。
その後、ネックレスに触れるたまきの嬉しそうな顔を見て、梧も微笑んだ。
「……さて、本題ね。どこまで話してあるの?」
仲の良さそうな二人を見て、ほっと胸を撫で下ろしたような表情をしていた霞が、仕事モードに切り替えたかと思うと、梧に訊いた。
たまきは何も知らない顔で首を傾げ、梧が顔を逸らす。
どうも様子がおかしいことに気づき、
「……アオ?どういうこと?」
霞の表情に凄みが増すと、梧の顔が引きつる。
「……なんですか?」
たまきは梧と霞の顔を交互に見る。
霞の方を見ない梧を睨みつけて、「何も伝えてないってことね?」と、確認すると「……すみません」と返事が返ってきた。
深いため息をついた後、霞は少し俯いてからたまきの方へと向き直り、
「ごめんなさいね、たまきさん。今日はあなたに会いたかったこともあるんだけど、お願い事もあって来ていただいたの」
申し訳なさそうな表情をした。
「お願い……ですか?」
「ええ。私はこのFri Vindというブランドのオーナーをしているんだけど、今年ブランド創設25周年になるのは、さすがに聞いているかしら?」
「あ、はい。それは梧さんから……」
「この冬にイベントをやることも?」
「はい。梧さんたちがお手伝いされてるって……」
「うん、そうね。そこは言ったのね」
梧の方は向かずに、呆れたような声で呟いた。
たまきがチラッと梧の方を確認すると、気まずそうな顔でそっぽを向いたままだった。
「……25周年イベントで、新作や記念のアイテムを紹介するモデルを一般の方にも協力していただいているの。それを、たまきさんにもお願いできないかと思って」
「えっ!?モデル!?……わ、私がですか?」
思いがけない提案に、たまきは大きな声を上げてしまい、口を押さえた。
「そう、あなたに。本当はもっと早く会わせてもらえると思っていたし、話してくれていると思っていたんだけど」
梧に対する嫌味のつもりでそう言うが、梧は気配を消そうと、身を縮めている。
たまきは顔の前で手を振った。
「あ……いや、私なんて、背は小さいし、スタイルだって良くないから……」
「ちょっと!前にもおんなじことを言っていたわね?その時も言ったけど、あなたはとても素敵な人なのよ。私の言ったこと、忘れちゃった?」
霞は身を乗り出して、たまきの顔を覗き込む。
「だけど……霞さんなら、素敵だからわかりますけど……」
たまきが困った顔で言うと、霞は面食らった顔をした。
さっきまで顔を逸らしていた梧が、たまきの方を見てから、霞に視線を送る。
その視線の意味は”たまきが自信を持てるように何か言って欲しい”といったところだろう。
それに応えてやるつもりはなかったが、霞は眉尻を下げつつ微笑んだ。
「……あなたは見た目も愛らしいし、肌も綺麗。それに、あの時よりもっとずっと綺麗になってる。お化粧も勉強したのね」
しかし、たまきを宥めるようにそう言った後、真剣な顔つきになった。その顔がどことなく怒ったようにも見えて、たまきは緊張で、ごくりと唾を飲み込む。
「霞さ……」
梧がその表情に気づいて止めようとしたが、
「……でもね、それ以上に腹が立っているわ。たまきさん」
霞は止まらなかった。
「あなたの美しさはあなたが歩んできた人生の結果よ。あなたが努力して今まで生きてきたその積み重ねなの」
たまきに対する怒りというより、もっと大きなものへの憤りのような感情が、霞の表情に浮かぶ。
「それは、美容にかけた時間のことを言っているんじゃないのよ?もちろん、それも努力の一つだけど、それだけじゃない」
たまきは、霞の話す言葉の一つ一つの重みに緊張した。
「……あなたには見知らぬ困った人を助けられる清らかさと、度重なる不運を乗り越えてきた力強さがある」
霞の芯の強い瞳が、たまきをまっすぐ捉える。
それを聞いて、たまきはますます困った顔になった。
たまきはそんなに強いわけじゃない。
「……それは……私も誰かに助けられてきたからで……」
たまきは独りでいたらどちらかと言えば弱くて後ろ向きな考え方しかできない。それを周りのみんなが励ましたり寄り添ってくれたから何とかなってきただけだ。
たまきが顔を上げると打って変わって、霞の表情が柔らかくなっていた。
「私が思う人の美しさって、それに気づけることなの。だからあなたがうちのブランドのモデルに相応しいと思ったのよ」
「……え?」
驚くたまきに、霞は頷いてみせた後、
「私にも欠点があることはあなたも知っているでしょ?」
眉根を寄せて、そう訊いた。
霞は男性恐怖症で街中でも発作を起こしてしまう。
だけど、それが霞の欠点だとしても、それは霞のせいじゃないし、それでも立ち上がってブランドオーナーとして世界中を回って仕事をしている。
初め、霞の怒りはたまきのことを慰めるための優しさかと思った。
「……モデルを断っても構わないわ。強制するつもりはないから。でも、それが美しくないなんて理由なら私は認めない。この世に生きている人たちは様々な体型をしていて、様々な想いを抱えているわ。そこに”私みたいな人には似合わない”から、うちの商品を買えないなんて言わせるつもりはないのよ」
だけど、そうではなくそれ自身がこのブランドのアイデンティティで、霞自身のプライドでもあるのだと気付いた。
きっぱりと言い切る霞は、やっぱり強くてかっこいい。
その鮮烈でまっすぐな意志が、眩しかった。
「……ごめんなさい」
もはや癖になってしまったたまきの遠慮や謙遜が、霞が積み上げてきたものを否定してしまったのかもしれない。
だが、霞は腕を組んで不服そうな顔をした。
「それは私の欲しい答えじゃないわね」
少し突き放すような口調の霞の言葉に、たまきが顔を上げる。
「霞さん……!」
梧が真剣な顔で霞とたまきの間に入ろうとするが、霞はその視線ひとつで梧を黙らせた。
霞は顔を上げたたまきと視線が合うと、ふと、微笑んだ。
「……そのネックレス、つけてみてどうだった?」
言われて、たまきは首元のネックレスに触れて、隣にいる梧に視線を向けた。
梧は視線を向けられたことに驚きつつ、たまきが何を言うのか気になっているようだった。
そのまま梧のことを見つめながら、
「……最初は緊張してましたけど……今は……、してないと落ち着かない……です」
梧が、みるみる嬉しそうに目を細めた。
たまきの頬へ手を伸ばそうとする梧を横目に、霞は「……それをしていると、安心できたりする?」と、訊いた。
二人の世界に入りそうになった梧を見事に現実に引き戻し、たまきの意識を自分の方へ向けさせた。
「……はい。触っていると……安心します」
と、たまきがネックレスを指先で揺らしながら穏やかな表情をしたのを見て、梧が驚いた顔をして固まった。
驚いてはいるが、顔が僅かに赤らんでいるので、照れているのだろう。
たまきの回答とその梧の表情も含めて、霞はふふっと満足げに笑った。
「……つけているだけ、持っているだけでも、安心できる。私が目指すこのブランドの理念そのものよ。やっぱり、あなたにはモデルをしてもらいたいわ」
たまきは霞のまなざしを受けて、思わず背筋を伸ばした。
一瞬視線を迷わせたが、たまきは逸らさない霞の視線をまっすぐ見つめ返して、
「……うまくできるかは、わからないですけど……お受けします」
と、答えた。




