78 あー見えてお兄ちゃん
「ったく、たまきの純粋さにつけこみやがって」
「そーゆーつもりはないよぅ、たまが困ってたからさぁ」
さっちょんの首根っこを掴んで、心悠が屋台まで戻ってきた。
「はぁーん?口答えぇ?」
「わーかったよぅ!しないってばもう!」
まだ反論してきたさっちょんを睨む心悠に、さっちょんは両手をあげてみせる。
「おー、おかえりー」
屋台の近くで待っていたよっちんが、暇つぶしに見ていたスマホをカバンの中に入れて、二人に近づいてきた。
「……あれ?たまきは?」
心悠が辺りを見回すと、
「王子に会いにいったよ。今頃ラブラブしてんじゃない?」
よっちんがふと、優しい表情になる。
たまきと何か話したのかな、と、心悠は直感的に思ったが、一方のさっちょんは、
「えー?ラブラブまだ見たかったなぁー」
と、唇を突き出して、不服そうな顔をする。
「腰抜かしてたくせに」
揶揄うようによっちんは片眉をあげた。
「だぁって、予想を上回る甘々じゃなかった?王子、普段は冷静そうなのにさー」
さっちょんは言い訳をしつつも、楽しそうだ。
「さっちょんが屋台頑張って、昼くらいまでゆっくりさせてあげたら?たまきたち、会うの久々なんでしょ?」
心悠がそう言いながら屋台を見ると、タオルを頭に巻いて、張り切って働いている琉輝に目をとめた。
「……どした、あれ」
「なんかスイッチ入っちゃったみたい。……それより、たまたちってそんなに会ってないの?」
心悠の質問によっちんは適当に返して、話を戻した。
「そだね。付き合ってから……3回目?4回目?」
さっちょんが言いながら左右に首を傾げると、
「はぁ?そんなに会えてないの?社会人と学生って合わないのかー。……そりゃあ王子もタガが外れるわ」
よっちんは一瞬驚いた後、苦笑する。
「よっちんの彼氏は、ギリ学生同士だっけ?」
「うん。3歳上だからね」
わずかによっちんが目を伏せる。
「へぇ。彼氏、就職すんの?就活忙しいんじゃない?」
心悠が聞くと、
「……まぁ、なんか……決めたみたいだけどね」
と、よっちんはまた曖昧な表現をした。
「ねぇー、やっぱよっちん、彼氏となんかあった?」
目ざとくさっちょんがそれに気づいて眉根を寄せる。
「…………んー。たまにも言ったんだけどさ、二人とも明日の夜、空けてくんない?四人でご飯食べに行こうよ」
「……いーけど」
なんだかスッキリしない笑顔になり、半ばさっちょんを無視する形で提案してきたので、心悠もその様子を訝しんだ。
「…………話したいこともあるし」
付け足したよっちんに、心悠とさっちょんが顔を見合わせる。
「えー?今、言えないこと?」
ますます眉間の皺を深くして、さっちょんはよっちんの視界に入るように屈んで、顔を覗き込んだ。
「うん」
さっちょんと目が合うと、よっちんは口元に微笑みを浮かべたが、やっぱり、元気がないように見えた。
「気になるじゃんかぁー」
悩んでいるなら聞き出したいと、さっちょんは食い下がってみたが、
「文化祭に集中してるうちに時間になるって」
よっちんにかわされてしまう。
「……むー」
さっちょんが思いっきり頬を膨らませて抗議を示しても、
「ほら、さっちょん。りゅーきくん頑張ってるし、たまが来るまで手伝いな。私は心悠と近くを見てくるし、たまと交代したら一緒にまわろ」
宥めるだけで、応えてはくれなかった。
「……わかった」
納得はしていないようだったが、さっちょんは渋々同意する。
「……私はたまきにゆっくりしていいよって送っとくね」
「ほーい……」
心悠の言葉に、肩を落としつつ返事をした後、さっちょんは屋台の方に戻っていった。
そこで、テキパキと動く琉輝から何やら指示をされて、不機嫌になったさっちょんが、八つ当たりで文句を言っているようだったが、
「じゃー……、うちらは行こっか」
と、よっちんは歩き出した。
「……よっちん」
スマホでたまきにメッセージを送った後、心悠がよっちんに声をかけた。
その声のトーンに、よっちんは並ぶ屋台を眺めるふりをして顔を逸らしたまま「んー?」と返事をした。
「今日じゃだめなんだ?さっきの話」
心悠も、よっちんの珍しく歯切れが悪い様子を見て、内容が気になっていた。
「……うん、まぁ」
相変わらず、返事は曖昧なままだった。
「……そっか」
そこから、少しの間、二人は黙ったまま歩いていた。
いくつかの屋台を回って、食べ物と飲み物を調達すると、中庭で空いているベンチを探した。
ほとんどは埋まっていたものの、ようやくギリギリ座れる程度の小さい椅子を見つけて、身を寄せ合って座る。
なんだか、高校の頃に教室の椅子に二人で分け合って座った時のようで懐かしくもあったが、さっきのこともあって、会話は少なく、どことなく気まずさが残っていた。
中庭の喧騒を見渡しながら食べ進めていると、
「……明日になったら、私の気持ちも決まってるだろうから、そしたらみんなに話したいんだよ。真っ先にさ」
ぽつりと、よっちんが言った。
つまり今はまだ、よっちんはその何かを決めかねているのだ。もしかしたら今日の夜、彼氏と話し合うのかもしれないと漠然と想像し、心悠は、
「……わかったよ」
と、頷いた。
これ以上はもう聞かないよ、という意味を込めて。
その意味をわかったように、よっちんは「ありがと」と微苦笑を浮かべた。
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「ありがと、さっちょん。交代入るね。りゅーくんもありがとう」
ほんのりと頬を紅潮させて、たまきは屋台に戻ってきた。
「おう、たまき。とりあえず、さっちょんの方。裏方入って」
琉輝はどことなく清々しい顔で、てきぱきと手を動かしつつ、たまきに指示した。
「うん、わかった」
たまきはエプロンを受け取り、それをつけながらさっちょんの隣に行った。
「……顔、紅いよ、たま」
「へっ!?……あ、ごめん」
たまきの顔を一瞥して、いつもの揶揄う感じのトーンじゃなく、拗ねたような声色でさっちょんが言ったので、たまきは反射的に謝る。
顔が緩んでいたかな、と、ほっぺたに触れつつ、追いかけられたさっちょんを思い出して心悠にこってり絞られて不機嫌なのかな。とも思った。
「……心悠に怒られた?ごめんね、私がしゃべっちゃったから……」
「……別に……こははいつものことだし、たまのせいじゃないよ」
変わらず淡々とした言い方に、たまきは梧のことで、浮かれすぎているのかなと罪悪感を覚えた。
琉輝のことをさっちょんがみんなに話していたことも知らなかったし、今、さっちょんが何に怒っているのかもわからなかった。
知らない間にいろんなことを見落としてしまっているんだろうか。
「おっ、たま戻ってきたんだね」
そこへ、よっちんと心悠が屋台の裏側からやってきた。
よっちんがニコッと笑って、たまきの頭を撫でると、
「よっちん……心悠……」
と、困った顔でたまきが二人を見上げる。
「ん?……梧さんは?」
梧と何かあったのかと思ったらしい心悠が、心配そうな表情で聞いて、あたりを見渡した。
「あ、仕事に戻るって。みんなによろしくって言ってた」
ほんのり微笑んだけれど、たまきの顔は曇ったままだ。
「……そうなんだ。王子に伝えられなかった?」
その様子を見て、よっちんが軽く頭を傾けて訊いた。
だが、たまきは首を横に振った。
「ううん。梧さんとはちゃんと話せたよ。……けど……」
たまきは一瞬、さっちょんの方へ視線を投げた。
それで、よっちんと心悠は理解したように目を合わせて、肩をすくめた。
「……たまのせいじゃないよ。明日、私が話をするって言ったから拗ねてるだけ」
よっちんがたまきに小声でささやく。
たまきは、あぁ。と、腑に落ちた。さっちょんは何も聞かされていなくて、もしかしたら、怒っているんじゃなくて、寂しいのかもしれない。
たまきも心悠が何か黙っていたとしたら、どうして話してくれないんだろうって寂しく感じる気がした。
「ほぉら、機嫌直して行こう、さっちょん」
見かねた心悠が声をかけると、エプロンを脱いで休憩の準備を始めたものの、さっちょんは浮かない顔のままだ。
そこへ、誰かのスマホの通知音が鳴った。
「……あぁ、私だ」
と、言ったのは、よっちんだった。
よっちんはスマホを取り出して、内容を見るなり、顔色が変わった。
「……ごめん、私帰るわ」
それを聞いたさっちょんが顔を上げて、傷ついたような表情を見せた。
「は?一緒に回るんじゃ……」
「ごめんって、さっちょん。……全部明日話す」
口元だけに微笑を浮かべたよっちんがさっちょんの言葉を遮った。ひどく慌てた様子だ。
「明日、明日って……」
言いかけたさっちょんに手を合わせて謝るジェスチャーをして、よっちんは「ごめん、こは、たま。あと頼んだ」と、踵を返す。
「え?あ、うん……」
戸惑う心悠とたまきのことも置き去りにして、そのまま人波の中を走り去っていく。
「……」
しばらく三人はそうしてよっちんの走り去った方向を見つめていたが、心悠が短く息を吐いて、
「……じゃあ……行こっか、さっちょん。……たまきもまたあとでね」
と誘うが、さっちょんは一点を見つめたまま、なかなか動かない。
「……さっちょん?」
たまきが、顔を覗き込むが、さっちょんと目は合わない。
「佐伯く~ん!佐伯君も休憩入っちゃって」
その時、サークルの先輩の声が聞こえた。
「あ、はい。じゃ、休憩行ってきます」
琉輝が返事をして、「ちょっとごめん」と、たまきたちの後ろをすり抜けようとしたとき、さっちょんがその腕を掴んだ。
「えっ?」
琉輝が驚いてさっちょんの方を見ると、さっちょんも顔を上げ、
「りゅーきくん、一緒に行こ!」
と、その手に力を込めた。呆気に取られている琉輝をしり目に、無理やりにその腕を引いて心悠を押しのけ、道の方へと抜けていく。
「は?なんだよ!おい……!俺も友達と約束してんだけど!?」
琉輝の抵抗も虚しく、人混みの中に消えて行った。
「……行っちゃった……」
たまきが呟くと、心悠が深いため息をついてしゃがみこんだ。
「大丈夫?心悠」
「……私はね。さっちょんはどうだろ」
心悠が首を傾げた。ひとまず心悠が大丈夫ならとホッとすると、屋台の作業に入った。
飲食ブースなので、昼時の今は混みあってバタバタしている。
手を動かしつつ、
「……大丈夫じゃない?りゅーくん、ああ見えて、面倒見いいから」
と、信頼が垣間見えるような柔らかな表情をした。
「ふーん。りゅーきくんってそういう感じなんだ」
「うん。まぁ、妹がいるお兄ちゃんだから何とかしてくれると思うよ」
「あぁ、なるほどね」
納得したような顔をすると、心悠はその場に腰を下ろして、できるだけ邪魔にならないように座り込んだ。
「……よっちんの話って、何だろうね?彼氏かな?」
手元から目を離さず、たまきが訊く。
「たぶん……。まだ決めかねてるみたいな感じだった。明日には気持ちが決まるだろうから、うちらに真っ先に話したいって」
「……そっか」
予想ができそうでできない、その話の内容については、二人は憶測でも口にしなかった。
お姉さん肌で考えがしっかりしているけど、ふざけるときはノリノリではっちゃけてくれるよっちんが、珍しく深刻に悩んでいるのは、二人も心配なのだ。
あれやこれやと勝手に推測して、不安になりたくもなかった。
幼馴染であるさっちょんはなおのこと、気が気じゃないだろうな、と、心悠はもう一度、さっちょんの去った方向を見つめた。
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「なぁ、おい!さっちょん!?」
腕を引っ張られたまま、琉輝はさっちょんに向かって叫ぶが、返答はない。
さっちょんは人を避けながら進んでいるが、琉輝は引っ張られているから、押し寄せる人に当たりそうになって、その度に首をすくめて謝らなければならなかった。
「どーしたんだよ!」
「なんでもない!うっさいなぁ!」
振り返らずにそう答えて、さっちょんはただ先に進んでいく。
「はぁ!?なんだよ、それ!」
むっとして声を張り上げる琉輝に、さっちょんが今度は急に立ち止まった。
「うおっ!急に止まんなよ……」
驚いてさっちょんにぶつかりそうになるのを何とかこらえ、急に止まって訝しい顔をした通行人に頭を下げた。
俯いて黙ったさっちょんが琉輝の腕を掴んでいる手を緩める。逃げようと思えば逃げられたが、琉輝は頭をガシガシと掻いて、逆にさっちょんの手を取ると、その手を引いて、往来から外れたところにひとまず避難した。
「……なんか食うか?腹減ってんだろ。腹減るとイライラするしな」
本気で言っているのか、それともなだめるためにとりあえず当たり障りなく言ってくれているのかはわからないが、琉輝はさっちょんの顔を覗き込む。
「そんなんじゃない」
視線を合わせないまま、いつものような言い方じゃなく、静かにさっちょんが答えると、琉輝はため息をついてから、さっちょんの頭をポンッと撫で、
「ちょっと待ってろ」
と、すぐ近くのジビエ串焼きと書かれた屋台の方へ向かって行った。
行列ではあったが、ちょうど焼いてあるストックがあったようで、割とすぐに買えて、さっちょんの元へ戻ってくる。
「ほれ、これ食え」
と、押し付けるように一本を渡すと、琉輝はどこか座れるところがないか、あたりを見渡した。
「……他のないの?」
口を尖らせるさっちょんに、「文句言うな」と、ぶっきらぼうに言って、「あの階段空いてる」と続けると、さっさとそっちに歩き出した。
裏口の狭い階段に琉輝が腰かけると、すぐに串焼きにかぶりついた。
後ろから黙ってついてきたさっちょんが、その一段前にずれて座る。
静かに食べ始めるさっちょんを見て、
「……話、聞こうか?」
と、琉輝が口に何か入っているようなこもった声で言った。
「りゅーきくんにはわかんないよ」
すかさず、突き放すような口調で返ってきて
「あー、そーですかぁー」
琉輝としても、さっちょんが素直に話すとは思えなかったから、気にせず串焼きを食べ進めた。
二人の間に、しばらく沈黙が流れる。
心悠と二人っきりで、気を遣われるのが嫌でとりあえず琉輝を連れ出したが、別に一緒に文化祭を回りたいわけでも、話したいわけでもなかったから、これからどうしようか、さっちょんは迷った。
文化祭を楽しむ気分でもないし、かといって心悠たちのところに今更戻るのも気まずい。
ふと、琉輝が立ち上がる気配がした。
琉輝は何も言わずに階段を降りると、食べ終えた串を捨てに行くようで、あたりを見渡しながら道に戻って行った。
……友達と約束があると言っていたから、このまま戻ってこないかもしれない。
なんだか、悔しいけれど、見捨てられた気分になって、泣きたくなった。
なんなの。どうして?
胸に浮かんだそれが、誰に向けた言葉なのか、さっちょんはわからなくなっていた。
泣くのを必死に我慢しながら、串焼きを食べていると、琉輝が視界に戻ってきた。
両手に飲み物を持って、さっちょんの目の前に立つとその一つを差し出す。
さっちょんが驚いてその顔を見上げていると、琉輝は眉間にしわを寄せた。
「なんだ?……これも好みじゃないって言うのかよ」
「思ってないよ!…………あ、ありがと」
寂しかったせいか、さっちょんはそのまま素直に受け取った。
「おう」
別に嬉しそうな顔をするわけでもなく、当たり前のように琉輝はそう返事をすると、また階段を昇って元の場所に座る。
「……友達と回るんじゃないの?」
受け取った飲み物を見つめて、琉輝相手に素直な態度をとってしまったことを思い出すと決まりが悪くなり、敢えてつっけんどんな言い方をした。
「今、昼でバタバタして休憩入れそうにもないってさ。一緒に回るのは明日になった」
本当か嘘かわからないが、琉輝はそう言って飲み物に口をつけた。
あたりは人出が増えて賑やかになっていたが、反対に二人に会話はなく、静かだった。
人波をぼんやり見つめながら、
「……よっちんとは、一番の親友だと思ってたのに」
さっちょんが話し出した。
琉輝に聞いてもらおうとしているというよりは、独り言のように聞こえた。
「こはやたまならともかく、なんで私にも話してくれないんだろ」
琉輝はただ黙って聞いている。
あまり飲み物をすするような音をさせたら悪いかなと、飲むのも控え、ぼんやりあたりを見ていた。
「……ねぇ!聞いてる!?」
だが、突然さっちょんが振り返ったので琉輝は面食らった。
「聞いてるよ!」
反射的に答えた後、
「けど……なんて答えていいかわかんねーだろ、そんなの」
と、こめかみのあたりを指先で掻いて、正直に答えた。
「んもー!りゅーきくん役に立たない!」
「はぁ!?勝手につれて来といて……」
さっちょんの言い草に呆れるが、調子が戻ってきたようで、琉輝はまあいいかとも思った。
やっぱり腹が減ってたんだな。なんて考えつつも。
後ろから見てもむくれている頬が見えるさっちょんを見つめてから、琉輝はまた、往来を行く人々に視線を戻した。
「……まだ、気持ちが決まってないとか……、言うのに覚悟がいるとか?」
遠慮がちにアドバイスをひねり出した。
「はぁ!?親友なのに!?迷ってることだって相談してよ!」
「俺に言うなよ!俺はよっちんじゃねぇ!……だけどさ、仲がいいほど言えねーこともあるだろ?」
「ないよ、そんなの!」
「あるんだよ!……言いづらいことがさ」
琉輝の返す言葉に、さっちょんは勢いに任せて文句を連ねていたが、最後の琉輝の言葉は実感がこもっていて、ふと、口を噤んだ。
琉輝にだって高校の途中で引っ越してきたのには、何かしら事情はあることくらい想像はつく。
でも、それを察するというのも癪だった。
「……フン。りゅーきくんのくせに生意気」
「生意気!?……お前なぁ!」
顔を正面に戻して、鼻で笑うさっちょんに、琉輝がいつものように反応してきた。
さっちょんは立ち上がると、
「……まだ足んない。りゅーきくん奢って!」
と、振り向いた。
信じられない、というような顔で、目を丸くする琉輝。
「何で俺が!?相談乗ってやったんだから、さっちょんが奢れよ!」
琉輝も立ち上がって階段を降りると、さっちょんはさっさと順路の方へ歩いていく。
追いかけてきた琉輝が隣に並ぶと、
「相談なんかしてないもん。りゅーきくんが勝手にごにょごにょ言ってただけでしょ?」
「ごにょっ……!?てめぇ、人の厚意をなんだと思って……」
「いーから奢って!ねぇ、あれ!あれ食べたい!」
「買うわけねーだろーが!……って、おい、引っ張んな!」
琉輝の服の裾を引っ張るさっちょんに、琉輝は抗議の声を上げたのだった。




