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風の行く先  作者: 遥ゆとり
3章 大学編

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「はぁ!?挨拶ぅ?そんでもって、結婚!?」

「しーーー!!心悠、声が大きいってば!」

 いつもの喫茶店にやってきて、たまきは告白された夜のことを心悠に一通り話した。

 案の定と言うべきか、心悠は驚いて大きな声を上げたので、たまきは心悠の口元を自分の手で覆った。

「あ、ごめん……。あんまりにもびっくりして……」

 その手を掴んで、外しながら心悠は首をすくめた。

 たまきがあたりを見渡すと、他のお客さんは別に気にしてる様子はなかったが、レジのところで訝しげな顔をしている夏海と目が合った。

 ひとまず、何でもないよと首を振ってサインを送る。

 それでも眉間にしわを寄せたまま首をかしげていたが、お客さんが来て夏海はその応対を始めた。

 ほっとして心悠の方に向き直ると、二人は顔を寄せ合って、小声で話を再開する。

「……まずさ、付き合うのに許可取りに行ったんだ?梧さん」

「うん……。おじいちゃんたちびっくりしちゃうから、せめて後日にしたらって言ったんだけど、早い方がいいって言って……」

「あー……、まぁ、誠実と言えば誠実か……。内緒で付き合っちゃおうっていうんじゃないもんね?……まあ、ちょっと真面目すぎるけど、梧さんらしいっちゃらしいし、そこまでは良いとして。その後よ」

「うん……」

「たまきのおじいちゃんが、付き合ってもいい許可どころか、たまきと早く結婚してくれって言ったって?」

「うん、まぁ、そう……。私と今すぐにでも結婚してもいいって思ってるか、みたいなこと聞いて……」

「それで?梧さんはなんて?」

「……わ、私以外と結婚するなんて考えられないから……今すぐでも、結婚したいとは思います……、って言ってたと思う」

「わぁお……」

 たまきがその時のことを思い出して真っ赤な顔で俯くと、心悠もつられて顔を赤くした。

 正直あの時、たまきは結婚の一言にびっくりして、あんまり会話を冷静に聞けていない。だけど、そのようなことは言っていたと思う。

「え、待って。じゃあなに?……在学中に結婚しちゃう感じ?」

 嬉しい半面、心悠は一抹の寂しさを感じる。結婚してしまえば、こんな風にたまきとは気軽に会えなくなるかもしれない。

「ないない!……いや、ない……のかな?……その後で、梧さんが、現実としては私がまだ学生で、これから学ぶこともあるから、卒業して就職もして、……仕事に慣れるくらいまでは待ちたいと思ってる。みたいなこと言ってくれて……」

「……おぅ、めっちゃ妥当だね。それで、おじいちゃんはなんて?」

「……おじいちゃんが直接言ったわけじゃないけど、私が卒業する頃には、おじいちゃんは80歳になっちゃうから……、そんなに先になって、花嫁姿が見られなくなるのは嫌みたいで……」

 たまきが肩を落とし、複雑な表情をした。

「……えっ?たまきのおじいちゃんってもうそんな年齢だっけ?見た目若いからわかんなかった」

 心悠の言葉にたまきは頷く。

 たまきも同じ気持ちだった。

 祖父の年齢はわかっているつもりだったけど、同年代の人たちよりは元気で、若い見た目だから祖父が年齢や体力を気にしているなんて、思ってなかった。

「……そっかー……でもさ、それはそうかもね。たまきに相手が居ないならまだしも、これ以上ないってくらいの相手が現れちゃったしさ」

 たまきは火照った頬の名残を手のひらで確認しつつ、ため息をついた。

 それを見つめて、心悠は飲み物を一口飲んだ後、

「……で、たまきはどう思ってんの?今すぐ結婚したい?……それとも、まだがいい?」

 と、訊いた。

 たまきはその質問に、目を見開いた後、視線を伏せた。

「……わ……かんない……。……だって、梧さんが私のことを好きで、付き合えるってことだけでも夢みたいなのに、結婚なんて……。まだ頭が追いつかないよ……」

「そりゃ……まあ……、確かに」

 心悠はたまきに同意しつつ、どうしたものかとため息をついた。

 たまきは嬉しい気持ちが半分、いろんなことが押し寄せて、戸惑う気持ちが半分なんだろうと、心悠は思った。

 さすがの心悠でも、まさか結婚まで話が出ているとは思わなかったのだから。

「……でも、結婚するなら、梧さんがいいでしょ?」

 梧がたまき以外考えられないと思うのと同じように、たまきもまた同じだろうと思った。

「そりゃあ……!梧さんじゃなきゃ……嫌……。もちろん、梧さんが……私なんかでいいなら……だけど」

 顔を上げたたまきは、また両頬を押さえ、恥ずかしそうに目を閉じた。

「…………“私なんかで”っつーか……、ずっと、たまきのことしか眼中にないだろうけど、梧さんの場合」

「ず、ずっと!?うそ!そんなことないでしょ?」

 たまきが驚いて声を上げる。

 心悠はそんなに驚くこと?と逆に驚いて目を見開いたが、

「……あるでしょ。そうとしか見えなかったもん、今までだって」

 と、冷静に答えた。

「そ……そう、なの?」

「時々、梧さん私らのこと忘れてるなーって思う時あったよ。たまきしか見えてない感じ」

「……そう、なんだ……」

 たまきが照れて、また顔が赤くなる。

 傍から見ていれば二人とも相手のことが大好きだとしか見えないのに、本人たちにはそれが見えていないのは不思議だなぁと思う。

 まぁ……、梧のイケメンぶりを考えれば、自分を想ってくれているなんて信じがたいというのもわかる気はする。

 手で熱くなる顔を扇ぎ、飲み物を飲んでクールダウンしようとしているたまきを見つめながら、心悠は微笑んだ。

「……恋人がいるってのは、やっぱり誤解だったんだね」

 心悠がそう言うと、たまきは顔を上げた。

「……う、うん。……時雨さんのお姉さんだった」

 たまきは梧に恋人がいるんだと言って心悠の前で大泣きしたことを思い出して、気まずそうな顔で頷いた。

「へぇ……。時雨さんってお姉さん居るんだ」

 一瞬、心悠の声のトーンが落ちたように聞こえて、ほんの少し胸に引っ掛かったが、たまきは敢えてそこには触れなかった。もしかしたらたまきの気のせいかもしれないから。

「そうみたい。あの、Flickaっていうブランドあるでしょ?紫露と梧さんが買ってくれたパスケースのブランド。あのオーナーさんなんだって」

「えっ!?ブランドオーナー!?」

 心悠が驚いて声を上げ、慌てて自分の口を押さえる。

 他のお客さんや夏海を含む店員が、一瞬たまきたちの方に視線を向けたが、すぐにまた視線を戻した。

 心悠とたまきは首をすくめ、また声をひそめる。

「そう。私も驚いたんだけど……」

「……ん?じゃあそれも?今日たまきが付けてるネックレス」

「えっ?……あ、うん……。kvinnaっていう、もう少し大人っぽいラインの……」

 心悠がさりげなく言った言葉に、たまきは目を丸くする。

 待ち合わせで会ってから今まで、心悠にネックレスのことを指摘されなかったから、気にしていないのかと思っていた。

「え?気づいてたよ。普段、たまきアクセサリーしないし、たぶん梧さんからだろうと思ったけど、話の内容が内容だったから、聞くタイミングを逃しただけで……」

 たまきの反応を見て、察した心悠が言うと「あ。そーだよね……」と、照れる。

「……それいいね、風を切る翼みたい。デザインも派手じゃないし、エメラルドかな?その色もたまきに似合ってる。さすが、梧さんセンスいいわ」

「……う、うん。ありがと……。なんかね……オーダーメイドらしいの……」

「……マジ?一点ものってこと?そ、それって……告白用に準備してたとか?……もはや、プロポーズじゃん……」

「えっ?……そ、そういうわけじゃない……と、思う……。でも、絶対高いよね……。私、何にも返せるものないんだけど……」

 そう言ってたまきは両手で自分の顔を覆った。

 確かに、高価な贈り物のお返しとなれば困るとは思うが……と考えつつ、心悠は飲み物を一口飲んだ。

「……たまきがチューのひとつでもしてあげたらチャラにしてくれそうじゃない?」

 もちろん、たまきの気持ちがそれひとつで済むとは思っていないが、冗談のつもりで心悠が言うと、たまきは目を見開いて口元を両手で隠し、未だかつてないほど顔を真っ赤にした。

 心悠がそのたまきの反応に驚いて、動きを止める。

「チュ……!!」

 一度大きな声を上げかけて、心悠は慌てて口を押さえた。

「……チューしたんだ!?」

 真っ赤な顔のたまきに顔を寄せ、今度は小声で訊く。

 たまきは頷くと言うよりは、俯くように顔を下げた。

 心悠は体を起こし、驚いた顔のまま、椅子の背にもたれた。

「……わぁお……」

 心悠は半ば呆然としつつ、恋愛的な階段を急速に上がっているたまきに感心するしかなかった。

 あんなにもだもだしてた二人なのに。

 というか、ふと、私に相談する意味ある?という疑問が頭をよぎる。

 心悠は恋愛経験があるわけでもないし、結婚しているわけでもない。どうしたらいいと言われても、それに応えられるような経験値はない。今となってはたまきの方が経験が上だろう。

 まぁ、結論を出したいと言うより、誰かに聞いてもらいたかったんだろうけど。

「……結婚、かぁ」

 心悠が呟くと、たまきがまだ赤みの残る顔を上げた。

 その視線に気づいて、心悠は苦笑した。

「いやー、たまきみたいな急展開じゃなくてもさ、そのうち結婚するって友達も出て来るのかなぁって思って。専門行った子なら二年後には卒業するし、まあ、人によっては在学中っていうのもありえなくはないじゃん?……まだ先だと思ってたけど、そーゆーこと、考える歳になったのかと思って」

「……あぁ……、そっか」

 たまきも妙に納得した。

 さすがに19歳の今だと早すぎる感じはするけれど、そういう年齢になりつつあるのかと思った。

「……たまきのママだって、大学卒業してすぐに結婚したんだよね?」

 そうだ。たまきの母、ちとせは在学中に出逢ったたまきの父、(けい)の実家に農業の手伝いに行った際、直感でお嫁に来たいと思ったと言っていた。その後、父に猛アタックをして、その望み通り、卒業と同時に結婚したのだ。

 たまきは組んだ腕をテーブルの上に乗せ、そこへ頭を預けた。

 ふと窓辺に視線を向けながら、ため息をつく。

「……どうしてそんな風に決断できたのか、聞きたかったなぁ……、ママに」

 これまで何度も、そんな風に思った。

 梧とのことで不安に思うとき、好きになってもいいのか迷うとき、ママならどう思うのか、どんなアドバイスをくれるのか知りたくなった。

 パパにも、ママにどんなふうに言われて受け入れたのかとか、聞きたいことはいっぱいある。

「……こうならなかったら、たまきとは出逢えてなかったんだろうけど……」

 心悠が、ぽつりと言った。

 たまきが軽く頭を上げて、心悠の顔を見上げる。

「……私も会いたかったな、たまきのママとパパに」

 少し切なそうな表情で微笑む心悠に、たまきの目の奥が、じんと熱くなった。

「うん……」

 そう返事をすることだけで、精一杯だった。

 たまきはまた姿勢を戻して窓の外を眺め、心悠も窓の外に視線を移す。

 しんみりした空気が、二人の間に流れた。


 テーブルの上に置いていたたまきのスマホから通知音が聞こえた。

 たまきが顔を上げ、スマホを手に取ると、梧からのメッセージ通知だった。

「……梧さんだ」

「おっ、彼氏さんからですか~」

 心悠が茶化すと、「もぉ、心悠!」と、たまきが僅かに頬を赤らめて口を尖らせた。

 ふふっと心悠が笑ってペロッと舌を出すと、たまきもすぐに仕方ないなという顔をしてから微笑んだ。

「……確認してもいい?」

「もちろん。どーぞ」

 スマホ画面を眺めるたまきの表情が穏やかで嬉しそうに見えて、心悠も嬉しくなる。

 もうたまきは、梧と離れなきゃいけないなんて心配して、我慢しなくてもいいんだ。

「ん?」

 たまきは眉根を寄せ、小首をかしげる。

「……どうかした?」

「……梧さんが、話したいことがあるって……」

 たまきはう~ん、と唸るような声を出して、また首をかしげている。

「え?……結婚の話?」

「ううん。そうじゃないと思う。……紫露のことって書いてあるから」

「……紫露?」

 今度は明らかに声のトーンが落ち、心悠の顔がひきつった。

 その表情から笑顔が消えて、飲み物のグラスに手をかけたが、すでに空になっている。

 心悠は「なんか飲み物頼もうかな」と、話を逸らすようにメニューを手に取った。

 メッセージの内容も気になったが、心悠の様子がおかしいのも気にかかる。

 確か、さっき声のトーンが変わった気がしたのは、時雨のお姉さんの話をしたときだ。

 ……時雨のことで何かあるとは考えにくいし、紫露のときの方が変化が明らかだったことを考えるに、紫露と何かあったのかもしれない。

 心悠が「たまきも何か頼む?」と、メニューを差し出してきたので、「私は大丈夫」と首を横に振った。

 心悠は「そう」とだけ言ってメニューを元の場所に戻すと、手を上げて店員を呼んだ。飲み物を頼んだ後、その様子を見つめていたたまきと目が合う。

 一瞬、気まずそうに表情を顰めて、心悠は視線を逸らした。

「……たぶんだけど、杠葉さんのことかも」

 心悠はたまきの視線の意図には気づいていたが、あえてそこからは話を逸らすようにそう言った。

「……杠葉さん?」

「うん。詳しいことはわかんないけど、……去年の秋かな?杠葉さんが家にいなかったんだよね。今もいないのかはわかんないけど……」

「えっ?そうなの!?……全然知らなかった。なんでだろ……」

 たまきの表情が、心配そうに歪められる。

 

 そう言えば、去年の夏ごろ、梧が少し変なことを言っていたのをたまきは思い出した。

 確か、心悠が優勝したインターハイのパブリックビューイングの日だ。

 

 —————……紫露に、何か困ってないか聞いたんだが、大丈夫と言われた—————

 

 まるで紫露が困っているのを知っているみたいな言い方で、だけど、たまきはあの時、紫露に会場から先に帰った理由は聞いたけれど、何か困っているのかは確認しなかった。

 たまきは自分のことで余裕がなかったし、その後もいろいろあって、そのことは忘れてしまっていた。

 もしかしたら、ちゃんと確認すべきだったのかもしれない。

 

「……何にもわかんないんだけどさ、私には」

 そう言って、視線を伏せた心悠の表情の中には、なんだか複雑な感情が混ざり合っている気がした。

 苛立ちや歯がゆさ、寂しさや悲しさ……それらがせめぎ合っているような。

「……去年の秋以降だと、私、紫露と連絡とってないかも。夏が最後だったかな。……心悠は?」

 ちょっとずるいかなとは思ったけど、探るつもりでたまきは訊いた。

 一瞬、心悠は視線を上げたが、たまきと目が合うとすぐに逸らして、

「私も連絡とってない」

 と、短く答えた。

 店員が飲み物を持ってきたのを受け取り、心悠はすぐにそれに口を付けた。

 心悠の様子に、たまきの予想は確信に変わる。

「……心悠。紫露となんかあった?」

 たまきの言葉に、心悠は動きを止める。

 心悠は黙った。ただ、何もないよとも否定しない。

 たまきは軽く肩を上げて見せて、

「……言いたくないなら、いいけどね」

 と、微笑んだ。

 たまきもメニューに手を伸ばし、「やっぱり私も何か頼もうかな」と、手に取ってメニューを開いた。

 ドリンクメニューを一通り眺めて、たまきが店員を呼ぶと、夏海がすぐに来てくれた。

 夏海に注文を伝えた後、たまきはスマホを手に取った。

 梧からのメッセージに、“今は出かけているので、帰ったら電話しても良いですか?”と返信する。

 するとすぐに既読がついて、“ああ。帰ったら連絡をくれ”と、返ってきた。

 “はい。またあとで”“うん、あとでな”と、やり取りをした後にスマホをカバンの中にしまうと、心悠のため息が聞こえた。

 心悠は眉間にしわを寄せて、

「……たまきが、梧さんに恋人がいるかもって言った後にさ、紫露に確認しようと思って会いに行ったんだよ。メッセージ送っても無視するから、あいつ」

 と、少しぶっきらぼうな言い方で、話し出した。

「……うん。紫露、勉強で忙しがってたもんね」

 たまきは静かに相槌を打った。

「……そう。で、自宅に行ったら……誰もいなくてさ。杠葉さん専業主婦だし、居ないのおかしいなと思ってたら、そこに紫露が帰ってきて。杠葉さんになんかあったのかって聞いたら……」

 心悠はその時のことを思い出しているのか、眉間のしわを深くして、額に手を当てた。

 深いため息をついた心悠に、

「……紫露、なんて?」

 話の邪魔をしないようにと気をつけながら、たまきはできるだけ落ち着いた声を出した。

「……心悠先輩に関係ないだろ……って」

 その言葉を聞いて、たまきはこめかみのあたりがカッと熱くなって、ぎゅっと眉根を寄せた。

 飲み物を運んできた夏海がぎょっとするくらい、たまきは珍しく怒っている表情だった。

 夏海は静かに飲み物を置くと、「ごゆっくりどうぞ~……」と小声で言って、すぐに立ち去る。

「なにそれ?」

 たまきの低い声が聞こえて、心悠は驚いて視線を上げた。

 あまり聞いたことのないトーンの声だった。たまきの表情は明らかに怒っている。こんな表情を見たのは、初めてかもしれない。

「心配してくれた人に対して言う言葉じゃないよ。何でそんなこと言ったんだろ、紫露。叱ってやんなきゃ」

 たまきは本気で怒っているのだろうけれど、“叱ってやんなきゃ”の言い方がまるで母親みたいで、心悠の溜飲が下がっていく。

 ふふっと、思わず心悠が笑い声を漏らした。

 たまきは片眉を跳ね上げて、

「何で笑ってるの?……私、ホントに怒ってるんだけど」

 と、頬を膨らませる。

「……わかってる。だから嬉しくて。私もむかついて、売り言葉に買い言葉みたいな感じで紫露にもういいって言って帰ってきちゃったから、ちょっと言い過ぎたかなって罪悪感あったんだけど、たまきも怒ってくれたから、良かったって思って」

 心悠の緩んだ表情に、たまきも内心ほっとしつつ、表情は緩めずに、

「うん、心悠は怒って当然だよ」

 と、同調した。

 紫露にどんな事情があるかは聞かなければならないけど、そういう言い方は良くないとは伝えないと、と、たまきは思った。

「……ありがと」

 笑顔が戻ってきた心悠に、たまきもようやく眉間を緩めて、微笑んだのだった。

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