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風の行く先  作者: 遥ゆとり
3章 大学編

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58

 梧の消息調査をしながら、通常の仕事もこなし、バタバタとしている最中に、時雨は時計で時間を確認して青ざめた。

「孤崎さん!私、姉を迎えに一度、出てきます!」

 霞を迎えに行くのをすっかり忘れていた。

 慌てて立ち上がると、梧のことで通常作業ができない社員の代わりにデータ入力をしていた翠に声をかけた。

「わかりました。こっちに何か連絡が入ったら、すぐに連絡しますから」

 翠は頷き、時雨の仕事も一部を引き継いだ。

「お願いします。送ってきたらすぐ戻りますから」

「焦らず行ってきてください。落ち着いて、とにかく、気を付けて。今、霜槻さんにも何かあったら困るんですから」

 慌てて出かける準備をしている時雨に、翠も立ち上がって両手を上下させながら、ゆっくりとした口調で念を押した。

「とりあえず、深呼吸してください」

 さらにそう言うと、時雨はその言葉通り、深呼吸をしてから翠と視線を合わせ、頷きあってから部屋を出て行った。



「遅かったわね」

 迎えに来た時雨に向かって、霞が腕組みをして出迎える。

「ええ……、はい。すみませんでした」

 車の後部座席のドアを開けつつも、どこか上の空の時雨の返事に、霞は眉根を寄せて、僅かに首を傾げた。

「……何かあったの?」

 車に乗り込み、時雨が運転席に座ると、霞が聞いた。

 時雨はすぐに車を発進させず、言うのをためらって、何度かハンドルを握り直している。

「何よ?どうしたの?」

 霞の言葉に、時雨は小さくため息をついた。

「…………実は、梧が……」

 時雨は、事の顛末を話した。

 今もまだ、消息についての連絡は来ていないとも告げると、

「なんですって!?」

 霞は驚いた顔で声を上げた。

 一つ息を吐いたあと、時雨はようやく車を出した。

「……桐子さんたちには?連絡したの?」

「はい。桐子先生は研究が忙しいようで連絡がつかなかったんですが、傳先生には話しました」

「そう……」

 霞はふと、ヴィヴェカが感じた”風”のことを思い出した。

 ”風”が止まったように感じた不吉な予感がこれなのかと思うと、なんだか落ち着けない。

 

 バックミラーに視線を向けると、時雨が眉間にしわを寄せ、不安と焦燥を隠しきれていなかった。

 ……おそらく、時雨のことだから、海外について行かなかったことを後悔していることだろう。

 ついて行かなかった理由は、紫露を一人にできないからだ。

 そうなった原因は、杠葉とのことを未だに解決できないでいる時雨のせいでもあるのだが、そのことでも、自分を責めているに違いない。

「……大丈夫よ。梧なら無事に過ごしているはずだわ。あの子はあなたが思っているより強くてしっかりしているもの」

 霞が見かねてそう言うと、時雨は一瞬、バックミラー越しに霞と視線を合わせた。

 何の根拠もないし、霞の心にも不安はあるが、微塵も見せないように表情を作った。

「……だと、良いんですけど……」

 しかし、時雨の表情は、未だ硬いままだ。

 まぁ、梧のことで素直に霞の言葉を受け入れるとは思わなかったから、霞は軽く息を吐いただけで、それ以降は黙ることにした。

 状況がはっきりとわからない限り、これ以上の励ましは無意味だろう。

 

 流れる窓の外の景色に視線を移し、大切に想う少女のために、ネックレスを選んでいた幸せそうな梧の顔を思い出した。

 そう言えば、彼女にネックレスは渡せたのだろうか。

 思えばあれから会っていなくて、彼女とどうなったのかも聞けていない。

 

 霞にとって、梧も弟のような存在で、時雨と同様、心配してきた大切な存在だ。

 不愛想だったその彼が、相好を崩して彼女のことを話していたことも思い出すと、なんとしても、無事に戻って梧には幸せになってもらいたいと思う。


 —————そんなに心配しないで、ハニー。きっと、もうすぐ全部がうまくいくわよ。


 ヴィヴェカの言葉を思い出し、霞は、本当にそうであってほしいと願いながら、胸元に手を置いて、祈るように軽く目を閉じたのだった。



 ――――――――――――



 たまきは授業に参加しながらも、頭の中は梧のことでいっぱいだった。

 こっそりとスマホを取り出し、傳の言っていた海外の情報を検索する。

 まだデモから内乱に変わったばかりらしく、速報でニュースは流れているものの、現地にいる邦人についての詳しい情報はなかった。

 通信妨害も起きているせいか、映像も使い回しの同じものがどこの情報社でも使われている。


 —————じゃあな……、……さよなら。


 ふと、この前、夢で聞いた梧の言葉が思い出されて、たまきの心臓が、ひどく冷たく脈打った。

 あれが、梧の現況を予見したものだったとしたら?

 途端にたまきは手の震えが止まらなくなった。抑えようと手を握りしめても、あまり効果はない。


 全く勉強に集中できないまま授業は終わってしまったが、たまきはすぐにはそこから動けなかった。

 合同授業へ行くためにたまきを探しにきたさっちょんと琉輝が、教室で固まっている姿を見つけて、慌てて駆け寄ってきた。

「どした!?たま!……また具合悪い?」

 言われてたまきは首を横に振る。

「嘘つけ!顔が真っ青で、震えてるだろ。保健センター行くぞ」

「ちが……、違うの。私は大丈夫なの……」

 慌てて声をあげ、たまきの腕を掴んだ琉輝に、たまきはまた首を横に振りながら、弱々しく答えた。

 たまきの言葉に、さっちょんと琉輝は顔を見合わせる。

「……何があったの?……話せる?」

 さっちょんが聞くと、たまきは少しの間ためらった後、首を横に振った。

「……ごめん。すぐには……無理かも……」

 梧のことを口に出すのが怖かった。

 どうやって話せばいいかもわからなかったし、さっちょんたちはそんなこと言わないとわかってても、危険なのかもとか、無事ではないかもと言われたら……、いや、そう思われている雰囲気があっても、心がもたない気がした。

「……わかった。次の授業はどうする?行けるか?」

 返事をしたのは琉輝だった。

 たまきが驚いた顔で見上げると、琉輝は片眉を跳ね上げて、「なんだよ?」と言った。

 琉輝は、このやりとりに既視感を覚えて嫌な予感がよぎる。

「……りゅうくんも、そういう気遣いできるんだね……」

 案の定、予想していた通りの言葉が返ってきて、がっくりと頭を下げる。

 しかしすぐ顔をあげ、「お前もかよ!」と、ツッコんだあと、盛大にため息をついた。

「……ご、ごめん」

 たまきは謝りつつ、さっちょんに視線を送ると、さっちょんは舌をぺろっと出して肩をすくめてみせた。

「……で?行けんの?行けねぇの?」

 その仕草をしたさっちょんを睨みつけながら、琉輝が投げやりに言うと、たまきは少しだけほっと頬を緩ませて、

「行く……」

 と、頷いた。

 たまきはふぅ、と息を吐いて、しっかりしなきゃ。と、胸中で呟くと、ようやく立ち上がった。

 いざという時支えるために、さっちょんはたまきに腕を絡ませて歩き出すと、琉輝はその2人に歩調を合わせて、隣に並んだ。


 

 

 行くとは言ったものの、たまきの様子は明らかにおかしかった。

 授業中も気が散っている様子だったし、授業を終えるとすぐにスマホで何かを検索しては、暗い顔をしている。

 そわそわと落ち着かず、荷物は落とすし、何もないところで躓いて転びかけた。

「おい!大丈夫かよ……」

 琉輝は転びそうになったたまきのことを慌てて受け止める。

「……ごめん」

 そう言って二人に向かって力なく笑った後、たまきはふと廊下の窓から外を見た。

 つられて二人も外を見たが、誰かが居るわけでも、何かがあるわけでもないように思われた。

 ただ木の枝が、風に煽られ揺られているだけだ。

 たまきに視線を戻すと、窓辺に寄って、その木々の揺れを眺めていた。

 しばらくそうして眺めた後、切なげな顔をして、祈るように目を閉じている。


 たまきに何があったのか、琉輝にはわからなかった。

 さっちょんにも視線を送るが、さっちょんも小さく首を横に振ったので、事情は何も聞いていないようだ。

 しかも、何となく気軽には聞きづらい雰囲気だった。


「……たま、サークル休む?行くとしても、あたし、今日は歯医者があるから帰っちゃうけど……」

 さっちょんが声をかけると、たまきはゆっくりと目を開け、外を眺めながら黙って考えたあと、

「うん……。今日は私も帰る」

 たまきが振り向いて二人に笑顔を向けると、その、少し悲しげな微笑みに、琉輝は顔を顰めた。

「……じゃあ、送るよ」

 琉輝がそう言うと、たまきは驚いた顔をした。

「えっ、大丈夫だよ」

「いや。今日のお前、危なっかしいし。送る」

 譲らない言い方に、たまきは困った顔でさっちょんの顔を見るが、さっちょんは肩をすくめて、

「私もその方がいいと思う。送ってもらいなよ」

 と、琉輝の意見に賛同した。

 困ったようなたまきの顔に、琉輝は不満そうに口を尖らせ、

「俺じゃ頼りになんねぇって意味?」

 と、腕組みをして見せると、たまきは慌てて首を横に振った。

「ち、違うよ。そんなことない……」

「なら決まりな」

 言うが早いか、琉輝はたまきが肩にかけていたバッグの持ち手に手を伸ばし、たまきがぼんやりしている間に自分の肩にかけた。

「わぁお。りゅーきくん、デキるね」

 そのスマートな仕草に、さっちょんが茶化すと、

「うっせぇな」

 と、ほんのり照れた顔で答える。

「大丈夫だよ!荷物は持てるってば」

「さっき落としといて、大丈夫なわけ無いだろ」

 軽くにらむような視線で言ってデコピンの構えを取ると、たまきはさっとおでこを両手で隠して首をすくめた。

 それを見てニッと笑った琉輝を、さっちょんは肘で小突く。

「いて」

 ちょっと大げさに言った琉輝を、さっちょんは無視し、

「ま、今日は甘えとけばいーじゃん」

 と、笑ってたまきに向かって言った。

 そう言ってもまだ、迷っている様子のたまきに、琉輝はもう一度、手をデコピンの形に構える。

「わ、わかった!お願いします」

 またとっさにおでこに手を当て、たまきは降参した。


 先に帰ったさっちょんを見送って、琉輝たちも帰路につこうとした。

 しかし、たまきは廊下の途中で立ち止まる。

「どうした?」

「…………傳先生の研究室に、行ってきていい?」

 研究棟との分かれ道で、たまきはそちらを指差した。

 琉輝は、すぐに頷いて、

「わかった。俺も行く」

 と、答えたが、たまきは首を横に振った。

「いいよ、遠回りになるから。どこかで待ってて」

 琉輝は顔を顰めた。

「遠慮すんなよ。…………聞かれたくねぇ話なら、研究室の外で待ってるから」

 言って、たまきの方へ手を伸ばした。

 たまきは叩かれるのかと首をすくめたが、その手はポンっと頭を撫でて、琉輝は研究棟の方へと歩き出した。

 たまきが慌てて琉輝を追い、「ありがと……」と言うと、琉輝は「おう」と答えただけで、あとは黙って、2人は傳の研究室へと向かった。



「傳先生なら、急用で帰りましたよ」

 研究室にいた先輩の学生にそう言われ、たまきは「そう……ですか……」と言ったっきり、立ち尽くした。

 何かわかったら教えるからと言われたので、あれから些細でも、何かわかっていればと思ったけれど、思えば息子の一大事に帰らないわけがない。

 あの時、連絡先を交換しておけばよかった。

「……明日でよければ、伝言しますけど?」

 そっけない口ぶりではあったが、先輩はそう言ってたまきの返事を待ってくれた。

「あ……いえ。それなら大丈夫です。お邪魔しました」

 たまきは丁寧に頭を下げると、待っていた琉輝に視線を送った。

 少し離れたところで壁にもたれ、スマホを構っていた琉輝は、気づいてスマホをポケットに入れると、たまきの方へと近づいてくる。

「もういいのか?」

「……先生、もう帰っちゃってた」

 たまきが言うと「そっか」とだけ答え、また2人は黙って歩き出したのだった。



 大学の外へ出て、しばらく歩いたところで、琉輝は気まずそうに「あの……さ」と、足を止めて切り出した。

 たまきが視線を向けると、琉輝は鼻頭を指先で撫でながら、しばらく話出さなかったが、ようやく意を決したのか、たまきの方を向いて、

「……今日、お前がおかしいのって……、さっちょんの言ってた“王子”って人のこと?」

 と、聞いてきた。

 その琉輝の顔は、妙に緊張している。

 たまきは躊躇ったが、少し間を置いて、静かに頷いた。

「……そっか……」

 緊張で詰めていた息を吐きだすのと同時に、琉輝はそう言うと、ゆっくりとまた歩き出した。

「……その人って、海風先生の……子供とか?」

「うん……。そうみたい」

 遠慮がちに聞く琉輝に、たまきは視線を落としながら答えた。

「……話したくないなら、いいけど……、何があったんだ?」

 たまきは一度口を開きかけて、躊躇って、一度言葉を飲み込んだ。

 不安でたまらないけれど、胸の中に留めておくには重くて苦しい。

 たまきは迷いながら、今日、傳から聞いたことを、そのまま琉輝に話した。

 

「……まじかよ……」

 琉輝はそう言ったっきり、口元を撫でながらしばらく黙った。

 なんて返していいか迷っていると、たまきが俯いて、その手が震えているのが目に留まる。

「……びっくりするよな。知り合いがそんなのに巻き込まれるなんてさ……」

 話すのを躊躇っていたたまきに、話させたのは琉輝なのに、ろくに慰めの言葉も出てこない自分が情けなかった。

 たまきは唇を引き結び、ゆっくりと頷く。

 その表情を見て、琉輝の胸に確信めいた考えが浮かんだ。

 —————たまきにとっては、ただの“知り合い”じゃないのか。

「……たまきは……、好きなんだな?…………その人のことが」

 その言葉に、たまきは顔を上げた。

 たまきは目を見開いて、琉輝のまっすぐな瞳を見つめ返す。

 たまきの胸の奥が、じわっと熱くなった。

 今、とても梧に会いたい。

 たまきは胸元を掻き寄せて、目を閉じ、

「…………うん」

 と、答えた。

 一筋、涙が頬を流れていく。

 無事でいて欲しい。

 例え、梧にとってたまきが恋愛対象じゃなかったとしても、この気持ちを伝えたかった。

 どうしてずっと、伝えずにきてしまったんだろう。

 

 あのままで、満足だったから?

 それとも、梧の視線の中に感じた熱を、勘違いだと知るのが怖かったから?

 

 …………でも、もし、もう二度と会えないんだとしたら、好きだと、伝えればよかった。

 たとえ、君のことはそんなふうに見れないと言われたとしても、梧の目を見て、こんなにも焦がれている想いを伝えたい。



 琉輝は、たまきのその姿を見て、それがどれだけの想いか、痛いほどわかった。

 敵いっこない。

 琉輝は、想いを伝えないまま、失恋を確信した。

「……帰ってくるよ。絶対。無事にさ」

 何の確信もないけれど、それが、琉輝に言える、精一杯だった。

 たまきは俯き、琉輝と視線を合わせないまま、「……うん」と、願いを込めて頷いたのだった。


 ――――――――――――


「(撃たれたのか!?)」

 現地のタクシー運転手が、後部座席の様子をバックミラーで確認して声を上げた。

「(……大丈夫、です)」

 梧が現地の言葉で答えるが、弱々しく、大丈夫なようには聞こえない。

「(クソ!)」

 タクシー運転手は悪態をつきながら、まだタクシーを走らせた。

 同行者たちの顔は青ざめて引き攣っていた。

 タクシーは、梧たちの泊まっているホテルから離れ、人通りの少ない路地に入ると、一度停車した。

 タクシー運転手は降りると、後部座席のドアを開けて梧の体を外に向けさせる。

「な、何をするつもりですか!」

 慌てる若い同行者は声をあげるが、

「(黙っていろ!)」

 タクシー運転手は低い声で言った。

 何を言われたのかはわからないようだったが、その気迫に同行者は口をつぐむ。

 運転手は手際良く、梧が身につけていたボディーバッグを外し、シャツを捲りあげる。

「…………っ!!」

 梧の脇腹、肋骨の辺りが内出血で変色し、腫れ上がっている。運転手が軽く触れただけでも、梧は体をビクッと跳ね上げて、声にならない声を上げた。

 運転手は先ほど外したボディーバッグを拾い上げ、中身を確かめる。

「あ、ちょっ……」

 さっきの気迫にまだ圧されているものの、何か盗られるのではと、同行者が声を上げたが、運転手が中から取り出したのは、画面にヒビが走り、形が歪んだスマホだった。ヒビの中心には、銃弾がめり込んでいる。

「ひぇっ」

 それを見た若い同行者が悲鳴を上げる。

「(これのおかげで命拾いしたな)」

 スマホをバッグに戻して、同行者に渡しつつ、ため息混じりに運転手が言う。

 梧は顔を顰めて、浅い息を繰り返している。

「(肋骨は何本かいってるかもしれないな。……けど、あんたら外国人が行けるようなでかい病院は、今どうなっているかわからん。通信も妨害されてるみたいで連絡もつかないしな)」

 運転手の言葉を、同行者の1人が、ようやく落ち着いてきたのか、通訳する。

「肋骨が何本か折れているかもしれない。いま、通信妨害があって、大きい病院の状況が、わからない」

 状況を理解した他の同行者たちの顔が、再び青ざめた。

「(この近くに元軍医の知り合いがいる。ひとまずそこで応急処置をしてもらってから考えよう)」

 運転手が先ほどより穏やかな声で言った。

「(……お願いします)」

 梧が答えると、運転手は頷いて、梧の体勢を直す。

 また運転席に戻ってエンジンをかけると、車は走り出した。


 肋骨が折れたくらいで死にはしないとわかっていても、痛みは、死を覚悟させた。

 痛みで朦朧とする意識の中、梧は、たまきを想った。

 

 もう一度会いたい。

 例え、君がこの先、他の誰かと歩んでいくとしても……、君の人生に、俺が必要なかったとしても。


 君の、切実に祈り、感情のままに泣き、笑う、その表情が、……その声が、すべてが、愛おしい。

 君が恋しい。

 会いたい。

 触れたい。


 もう一度会えるなら、例え叶わなくとも、伝えたい。

 君が……、好きだと。

 

 大人だと言い訳をして、誤魔化せるわけがなかったんだ。

 俺は、たまきが好きで、何よりも大切なんだと。


 そう思いながら、梧の意識は、静かに、暗闇に落ちていった。

24話と28話でそれぞれ心悠と緝に梧が好きなのかを問われているたまきですが、今回はちょっと違う雰囲気に書けていたらいいな。

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