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魔王様はダラダラしたい!  作者: おもちさん
第二部
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3ー66 龍の使者、絡まる

ヤポーネの観光しさつを終えたオレたちは、森の家へと帰ってきた。

出迎えたのは年代物の家具。

耳慣れた床のきしみ。

それらから熱烈な歓迎を受けると、しみじみと思うのだ。


ーーやっぱり我が家が1番だなぁ。


親の膝より乗り慣れた椅子に腰を降ろし、のんびり心を落ち着かせる……。



「ライル。てぇへんだてぇへんだ!」


「ライル。ちょっと良いかしら?」


「ライル。一大事。すぐに手を貸して」



ダメだ、途端に騒がしくなりやがった。

3人の温度差はそれぞれだが、全員がオレとの対話を必要としているようだ。

帰宅してすぐ動きたくはないが、状況が許してくれそうにない。



「全く……。一体何があった?」


「大変ですよ、洗濯物の封印がほったらかしてたら、鳥よけの化け物が世の変態に違いない!」


「ハァ?」


「だから! 畑に泥棒がほったらかしてたら、私の下着の罠にかかって来てくれる?」



3人が一斉に話し出すので、もう何が何かやら意味不明だ。

お前ら協調性ゼロかよ。



「1人ずつ話せって。聞き取れる分けねぇだろが」


「じゃあまずはヤバイ件のアシュリーちゃんから! 大変ですよ、例の封印が解かれちゃいました! 超危険な化け物が世に放たれてしまいましたよ!」


「あ、言い忘れてた。それ解いたのオレだ」


「ええっ!?」


「なんやかんやあって、あの邪神は改心させた。今は花の神の所で恋人と仲睦まじく暮らしてるぞ」


「ええーーッ!?」



アシュリーが雷に打たれたようにして固まってしまった。

言われてみれば、森のみんなは冥界以降のやり取りを知らないから、慌てるのも無理はない。

うっかりしてたぜ。



「はい。じゃあ次はリタな」


「ええと、森の畑に行ってきたんだけど、鳥よけの罠にかかってる人が居てね。ちょっと一緒に来てくれる?」


「別に良いけどさ。普通にレジスタリアの衛兵に突き出せば良いんじゃないか?」


「うーん。ちょっと難しいかしら。面倒そうな相手なの」



リタが微妙に言葉を濁した。

一体どれほどのモンを捕獲してしまったのか。

後程、この目で答え合わせをするとしよう。



「さて、最後はエリシアだが?」


「洗濯物をほったらかしてたら、私の下着が盗まれた。変態の仕業であることは確実」


「強風とか、鳥に盗まれた可能性は?」


「他の洗濯物は無事。下着だけが無い。変態属性の攻撃に違いない」


「放置して旅行に出掛けたお前にも、落ち度はあるじゃねぇか」


「乙女の肌着は値千金。変態は滅ぶべし」


「わかったわかった。軽く付近を探しに行こう。ついでに下着も探してやる」


「私も着いてく。ライルが懐にしまうところをこの目で見たい」


「好きにしろ。百万年張り付いてもお目にかかれんがな」



結局、3人を連れて辺りの捜索が開始した。

まずは封印跡地だ。

今も崩れた石壁が、何とも言えない廃墟感を醸し出している。



「随分と雑に解いたんですねぇ。てっきり敵の謀略かと思いましたよ……」


「力づくでやったからな。こんな感じになっちまったよ」


「ライルは何でも雑に開けるものね。プレゼントの包装紙とか、グシャグシャってやるのよ」


「あー、それわかりますね。せっかくお店で可愛く包んで貰ったのに、ビリビリに破いたりするんですもん」


「いや、なんつうか、悪かったって。次からはもうちょっと気を遣うよ……」



その時、違和感を感じた。

誰も居ないハズの跡地に人影が見えたのだ。

飛ぶようにして、オレが作った綻びから中を覗き込んだ。

すると、そこに居たのは……。



「おい、お前は何やってんだ?」


「クックック。とうとう見つかったか。オレ様は美少女のおパンツを盗むこと62年! 生涯現役の怪盗さまだ!」



脂ぎった顔から粘着質な視線が飛んできた。

つい不快になって眉を潜めるが、アシュリーは首だけ前に突きだし、そして叫んだ。



「ああっ! それはだいぶ昔に無くなった下着じゃないですか!」


「ふぇっふぇっふぇ! 時すでに遅しじゃて」


「ひぃぃ!? コイツ殺して! やっちゃって下さいぃぃ!」


「私に任せて」



エリシアの鋭い剣撃が走る。

その白刃は瞬時に朱に染まる……かと思いきや、その手遅れの変態は人間離れした動きで回避した。

背骨という概念を無視した避け方には、剣の達人と言えど読みきれなかったようだ。



「ウケーッケッケッケ!」


奇声をあげつつ変態が駆け去る。


「逃がさない!」



その後を、殺気だった変な子が追いかけていく。

果たして軍配はどちらに上がるのか。

エリシアの報告で明るみになる事だろう。

つうか下着盗み続けて50年以上って、バカなのか?

バカなんだろうな。



「あらぁ。何だか不穏ねぇ」


「アレの処理はエリシアに任せよう。残るはリタの件だけだな」



何となく脱力感を伴いつつ、森の農園へとやって来た。

相変わらず膨大な魔力を背景に、作物は季節も常識も度外視で、育ちに育っていた。

事情を知らなければ腰を抜かさんばかりの光景だろう。



「ええと、鳥よけの罠って……これか」



ヒグマのごとく育ちすぎたカボチャ畑にて。

その中空には網の目状の罠を、魔法によって設置していた。

そこに引っ掛かっていたのは亜人の女だった。


そいつの見た目はアシュリーによく似ている。

違いと言えば髪が短いことと、多少小柄である事くらいか。

まるで姉妹のようにそっくりだが、仲は相当悪かったと記憶している。



「うわっ! 暴食のフランじゃないですか!」


「げぇえ! 色情魔のアシュリー!?」


「何でテメェが罠に引っ掛かってんですか? 食い物あればホイホイ釣られんですか、このゴミカス女!」


「お黙り! 龍王様の代理人となった、尊き私に対して何たる無礼……先程の暴言を即刻取り消しなさい!」


「へぇーんだ。自ら恥を晒してる時点で尊いもクソもねぇです。そのまま餓えて干からびてクタバレですよ!」



顔を合わせるなり、阿吽の呼吸で喧嘩が始まった。

険悪な間柄だと聞くが、相性は良い気がする。



「話がまとまらねぇ。お前らその辺にしておけよ」


「おや。地を這うウジ虫ごときが生意気な。この『少食のフラン』に楯突こうとでも?」


「うん。お前はうちの農園に不法侵入して、あまつさえ単純な罠にかかって絶体絶命になっている事を、もう少し重く捉えた方が良い」


「フフ……これだから下賤なる者は。あなたの考えはわかります。世界一の美貌を持つ私に淫らな行いをしようとたくらんでいますね?」


「リタ。コイツの首をポロンさせちゃっても良いかな?」


「ううーん。一応は顔馴染みなのよね。シルヴィアのお友だちのようだし……」


「助平なウジ虫さん。私を窮地から救った暁には、龍王城へと案内してあげしょう。今は恨みを忘れ、その栄誉に預かりなさい」


「……シルヴィアの名前さえ出なきゃ、マジでブッ飛ばしてたのに。クソが」



罠の両端を焼き切ると、亜人の女はボトリとカボチャの上に落下した。

受け身が取れずに腹を打ち、言葉にならない声で悶絶した。



「クゥ……女性の扱いを心得ぬ野蛮人め……」


「大甘な処罰だこの野郎。これに懲りたら、2度と盗みを働くな……」


「慰謝料がわりにここのカボチャは全て徴収しますね」


「おいふざけんな!」


「それから、皆さんは龍王城へと案内致します」


「おい、誰も行くとは言ってない!」


「安心してください。あなた方のような賤しい生物でも、龍王城は拒むことはありません」


「聞けよおい!」



そのままオレたちは連れ去られてしまった。

マイペースにも程がある。

亜人という種族は、思考回路に致命的な問題がある気がして、ついアシュリーの顔に目をやってしまった。


それを勘違いしたアシュリーが、ウィンクを返してくる。

そうじゃねぇよ。


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