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魔王様はダラダラしたい!  作者: おもちさん
第二部
274/313

3ー43  パンツマン Lタイプ

アランを先導にオレとエリシアは、プリニシアの領土を進んでいった。

こいつの脳内には精細な地図でもあるのか、数々の哨戒線も砦の索敵エリアも、見事にかわし続けている。

その代わり、侵入ルートは深い森や断崖絶壁の渓谷が選ばれたが、敵兵に見つかるよりはずっとマシだった。



「ダンナ、お疲れさん。間もなくプリニシア王都だ。こんな無茶なルート進めたのも、ダンナの力あってこそだな」


「あいよお疲れ。すげぇよお前、ここまで見つからなかったぜ」


「確かに優秀。私を変な目で見なければ文句ナシ」


「いええ、エリシアさん。オレはそんな……言いがかりは勘弁してくれよ!」


「崖の登りでお尻を、降りで胸元を見られた。ちなみにお尻7回、胸が5回」


「そうなのかアラン。こういうのが良いのか?」


「勘弁してくだせぇよ。ダンナの女に手を出すほど命知らずじゃねぇっての」


「良い。今のフレーズもう一回言ったら許してあげる」


「ええ? ダンナの女……ですかい?」


「ふぅ……ありがとう。あなたの罪は今許された」



何か赦免されたぞ。

この流れは要るか?


それはともかく潜入だ。

プリニシアの城壁は高く、そして厚い。

いつだったか魔獣の大軍を前にしてもビクともしなかった護りだ。

兵の配置も無駄がなく、入り口はもちろん壁の上も隙間無く配置されている。

大国の王のお膝元は兵士は、士気や練度も十分のようだ。



「こっからだよなぁ。夜陰に紛れるしかないか?」


「ダンナ。そんな事しなくても妙策があるよ。あそこの林までいいかい?」



アランはオレたちを連れて、街道から外れた林へと向かった。

そこには木々に隠された立派な馬車があり、御者らしい人物が一人だけ待ち受けていた。

フードを目深に被った怪しげな男。

彼はアランと短く会話をし、麻の小袋を受けとると音もなく消えた。



「アラン。今の男は?」


「まぁ、気にしないで。胡散臭ぇが、信用できる連中なんで」


「信用ねぇ……ほんとかよ」


「少なくとも、金をキッチリ払えば間違いないってね。じゃあお二方は荷台の方に潜ってもらえるかい? 布を目張りにして」


「ライル。この密閉空間は素晴らしい。ここで私の初めてを貫いてしまおう」


「お前状況わかってんのか? 下手すりゃ槍先で全身を貫かれんだぞ、比喩抜きで」


「おふたりとも、そういうのは後で頼むよ? このまま門を突破するんでね」



アランは鞭をくれた。

逞しく、値の張りそうな馬が走り出す。

荷台の中は陶器の壺やらでひしめいていて、段差の度にガタガタ鳴った。

耳障りだが、オレらの気配をうまく消してくれそうでもある。


しばらく進むと速度が相当に落ちた。

ざわめきの大きさから、門の入り口に辿り着いたようだ。



「止まれ! その馬車は何用か!」



衛兵の鋭い声が響く。

荷台を調べられでもしたら一発でバレそうだが、アランに考えはあるのか。



「あいご苦労さん。オレはクウギョ閣下の使いだよ。後ろの荷は今日の催しの為のもんだ。早いところ通してくれないか?」


「く、クウギョ卿の? 話は聞いてないが……」


「へぇ。グランの上級貴族たるクウギョ閣下の御命が、アンタら門番の責務より劣るってのかい」


「そう言われてもこちらとて治安を維持する役目があるのだ。手間はかけさせんから、何か証拠をだな……」


「はぁ、仕方ねぇな。ほらよ、これ見りゃ納得いくだろ?」


「その封蝋は、確かに間違いない。クウギョ卿のもの。手紙の中をあらためさせてもらっても?」


「バカ言うな。勝手に封切ってみろ。オレはもちろん、お前ら全員血祭りだぞ?」


「むぅ……。わかった、通ってよし」



それきり馬車は止められる事は無かった。

市場や雑踏のざわめきが激しくなり、街に侵入できたことを示している。

オレはとりあえず状況の確認を問いただした。



「アラン。もう大丈夫か?」


「危険は脱したがね。そのままジッとしてくれた方が安全ってヤツだなぁ」


「お前はさっきナンタラ卿の話をしてたが、ハッタリか?」


「いやいや。今日は胸っクソ悪い公開処刑があるんですわ。おかげで潜り込む口実に使えたがね」


「処刑って、中央広場のか?」


「たぶん、ね。わざわざ刑場まで作らせやがって……。そうまでして人を見せしめにしたいかねぇ」 



布の隙間から見えたのは、疎らな群衆。

木製の平たい舞台。

そこに繋がれた複数人の人物。

まだ幼い子供も混じっている。

そのうちの一人を見て、オレはアランに停車を命じた。



「アラン、止まれ」


「ええ? ダンナ、勘弁してくれよ。寄り道してるゆとりは無いんだぜ?」


「良いから。顔見知りが居る」


「……あの処刑者の中にですかい?」



あの男は間違いない。

いつか衝突した敵の将軍だ。

アシュリーが狂ったとき、投石で正気に戻してくれた、あの指揮官だ。



「おい、この胸くそ悪いイベントとやらについて教えろ」


「数々の重要な戦いで負け続きの将を、見せしめのために殺すんだとさ。本人だけじゃなく、家族もな」


「子供まで手にかける事はねぇだろ。あれはたぶん4歳くらいだぞ!?」


「オレに当たらないでくれよ。これがヤツらのやり方、何も珍しくはねぇって」



オレが驚愕の思いで眺めていると、会場の様子が大きく変わった。

毛布でくるまれた赤子が掲げられ、台のところへ置かれる。

群衆は悲嘆に暮れたような声をあげるばかりになった。

まさか、赤子まで殺すつもりなのか。


血の気が引き、怒気が全身を駆け巡っていくのを感じた。



「ちょっとダンナ、どこへ行くんだい? まさか処刑場じゃないでしょうね?」

 

「ちょっと寄り道くらい良いだろ」


「あのね。その寄り道の先が袋小路ってことなんかザラだぞ? 気持ちは分かるけど、どうにか堪えてくれよ」


「ライル。私も反対。そのままじゃ目立つ」


「なんだよエリシア。お前まで見捨てろって言いたいのか?!」


「ううん。助けるかどうかはさて置いて、魔王がここに居るって知られちゃマズイよね? 前々回の戦争で顔見られてるよね?」


「そりゃそうだけどよ。黙ってみてろっていうのか?」


「安心して。私に妙案がある」



その瞬間エリシアは器用にも、オレの服を脱がし、パンツ一丁としてしまった。

そして麻袋が頭から被せられた。

……これはもしかして。



「さあ行け。哀しき戦士、パンツマン・レジェンドよ。存分に破壊するが良い」


「するが良いじゃねぇよ。つうかよ、頭がモサモサしてねぇか?」


「そりゃあ、レジェンドタイプだから。Lタイプだから」


「だ、ダンナぁ。そりゃ何の真似ですかい? なんつうか、手遅れの人にしか見えない……」


「無礼者ッ!」


「グハァッ!」



パシィンという音と共にアランが吹っ飛んだ。

頭がもげそうな程のビンタだったが、首は繋がったままだった。



「何すんだよ、エリシアさん! 死ぬかと思ったぞ!」


「だまらっしゃい。この美しさ、儚さ、哀愁を理解できない低脳は死んでしまえば良い!」


「つうことはオレも死ねと? 一度だって理解したつもりはねぇ……」


「さぁ行くのだパンツマンよ。世界の哀しみを胸に抱きつつ!」


「無視すんなよオイ」



ともかくジャレあってる場合じゃない。

今は眼前の下らん処刑を止めるのが最優先だ。

エリシアの病については、あとでゆっくり治療するとしよう。


ちなみにだが、パンツマンスマートや、パンツマンマジョリティってのがあるらしい。

クソどうでもいいっつの!

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