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怪異認定  作者: asnt2026


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第22話 神崎美琴さん

廊下へ出ると、


森岡も部屋から顔を出した。


「聞こえました?」


美琴は頷く。


ジリリリリ。


音は続いている。


「警察の人は?」


「下にいます」


二人で階段を下りる。


一階。


警察官の松永がすでに地下へ向かっていた。


「神崎さんたちはここにいてください」


「零号室ですか?」


「確認します」


その後ろから久世が来る。


「私も行きます」


松永は少し迷った。


久世はこれまでの怪異について警察へ説明している。


最終的に、


「規制線の外までです」


と許可した。


美琴と森岡も離れてついていった。


地下。


ジリリリリ。


間違いない。


零号室。


規制線の向こう。


机の上の電話が鳴っている。


松永の顔が変わった。


「これ、線切れてるんですよね?」


久世。


「確認済みです」


「でも鳴ってる」


「はい」


松永はもう一人の警察官へ無線で連絡する。


美琴は規制線の前から電話を見ていた。


ジリリリリ。


昨日までと違う。


今は警察がいる。


現場保存もされている。


誰かがこっそり入って、


何かを仕掛けるなんて。


そう思った。


松永が手袋をつける。


「取ります」


久世が言った。


「できればスピーカーへ」


「分かりました」


受話器。


ベルが止まる。


松永。


「もしもし」


ザ――。


雑音。


「こちら警察です。誰ですか?」


ザザ――。


誰も答えない。


森岡が美琴の隣で息を止めている。


やがて。


女の声。


『……か……』


久世の顔が僅かに変わった。


『……ざき……』


美琴は、


自分の心臓が一度だけ強く鳴るのを感じた。


まさか。


『神崎……』


やめて。


頭の中でそう思った。


しかし声は続いた。


『神崎……美琴さん』


世界から、


音が消えた。


松永が振り返る。


森岡も。


久世も。


全員、


美琴を見ていた。


「……私?」


声がうまく出ない。


電話から、


雑音。


『……神崎……美琴さん』


二度目。


今度ははっきり聞こえた。


美琴の名前。


フルネーム。


佐伯でも。


三枝でもない。


二十四年前に白鐘研究所にいた人間ではない。


自分。


森岡が小さく言った。


「何で……」


美琴にも分からない。


戸倉。


片桐。


次は、


自分。


その並びに意味があるのなら。


「先生」


美琴は久世を見る。


「これ、どういうことですか」


久世は答えない。


「私、二十四年前と何の関係もありませんよね」


「ありません」


即答だった。


「じゃあ何で」


久世が電話を見る。


今までにないほど、


険しい表情だった。


「分かりません」


美琴の喉が乾く。


「戸倉先生は、名前を呼ばれて消えた」


誰も止めない。


「片桐先生も呼ばれて……死んだ」


森岡が、


「神崎さん」


と制する。


美琴は聞かなかった。


「じゃあ次は私ですか?」


久世が美琴を見る。


「そう考える根拠はありません」


「でも」


「ありません」


強い声だった。


久世が美琴へこんな言い方をしたのは初めてだった。


「今夜は一人にならないでください」


美琴は瞬きをする。


「それ、矛盾してません?」


「念のためです」


「先生も危険だと思ってるんじゃないですか」


久世は答えなかった。


その代わり、


松永に言った。


「この電話を今すぐ取り外せますか」


「現場の物なので勝手には」


「では、この部屋への立ち入りを完全に止めてください」


「もちろん、そのつもりです」


「電話だけではありません」


久世は零号室を見た。


「この区画そのものです」


美琴には、


その表情が奇妙に見えた。


恐怖している。


そう見えなくもない。


けれど、


何か別の理由で焦っているようにも見えた。


電話が切れる。


ツー。


ツー。


ツー。


美琴はもう一度、


壁の時計を見る。


午前二時十八分。


一分が、


終わっていた。

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