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怪異認定  作者: asnt2026


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第17話 鏡の女

四日目の夜。


雨は弱まっていた。


道路復旧の連絡はまだない。


外に出られない。


戸倉も見つからない。


そして、


名前を呼ばれた片桐の周囲で、


怪異が続いている。


誰も口にはしなかったが、


全員が同じことを考えていた。


戸倉の次は、


片桐なのではないか。



午後十時三十八分。


悲鳴が聞こえた。


男の声。


美琴は部屋を飛び出した。


廊下の奥。


洗面室。


片桐が床に座り込んでいる。


「片桐先生!」


鏡を指さしている。


「そこに」


「何が?」


「いた」


鏡。


古い大きな鏡。


美琴と片桐が映っている。


他には誰もいない。


「誰がいたんです?」


片桐の唇が震える。


「明日香」


美琴の身体が硬くなる。


遅れて久世たちが来る。


「どうしました」


片桐は久世を見る。


「お前……」


「はい」


「お前、何をした」


久世の眉がわずかに動く。


「何の話ですか」


「ふざけるな」


片桐が立ち上がる。


「明日香を使って、俺を脅してるのか」


美琴が息を呑む。


久世は冷静だった。


「何を見たんです?」


「白衣だ」


「顔は?」


「見た」


「姉だったと?」


「そうだ!」


片桐の怒鳴り声。


「二十四年前のままだった」


沈黙。


美琴は鏡を見る。


自分たちしかいない。


「片桐先生」


久世が一歩近づく。


「私が姉を使ったと言いましたね」


「そうだ」


「具体的にどうやって?」


「知らん」


「映像ですか?」


「知らん!」


「投影?」


「黙れ!」


片桐は洗面室を出ていく。


久世は追わない。


鏡の前に立つ。


角度を見る。


壁。


天井。


裏側。


「何か仕掛けられそうですか?」


美琴が聞く。


「可能性だけならいくつもあります」


「例えば」


「ハーフミラー。投影。反射。照明」


森岡が少し安心したように言う。


「じゃあ誰かのいたずら?」


「可能性はあります」


「また調べれば」


「ええ」


久世が鏡を見た。


「調べます」



午前一時。


美琴は管理室で洗面室の監視映像を確認していた。


カメラは洗面台の入口を斜めから映している。


片桐が入る。


手を洗う。


鏡を見る。


停止。


数秒。


片桐が後ろへ下がる。


悲鳴。


床へ転ぶ。


「鏡そのものは映ってないですね」


森岡が言う。


「角度的に」


「片桐先生の反応だけ」


美琴は映像を戻す。


そのとき。


「あれ?」


「何です?」


片桐が鏡を見た直後。


壁。


鏡の反対側。


白いものが一瞬映っている。


「止めて」


拡大。


白い袖。


人の腕のようにも見える。


だが、


次のフレームではない。


「誰かいた?」


「カメラの死角から?」


「でも片桐先生以外、誰も入ってない」


久世を呼ぶ。


映像を見る。


何度も。


いつものように。


「どうです?」


美琴が聞く。


「判断できません」


「また」


「ええ」


久世は立ち上がる。


「洗面室をもう一度確認します」


三人で向かう。


真夜中。


誰もいない洗面室。


久世が鏡の前。


美琴と森岡が入口。


照明を消す。


点ける。


角度を変える。


何もない。


「先生」


森岡が言う。


「もういいんじゃないですか。明日に」


返事がない。


久世は鏡を見つめている。


「先生?」


美琴が声をかける。


その瞬間。


鏡の奥。


久世の後ろ。


白い女が立っていた。


美琴の喉から声が出なかった。


白衣。


黒い髪。


顔は見えない。


久世は気づいていない。


美琴がようやく叫ぶ。


「先生、後ろ!」


久世が振り返る。


誰もいない。


もう一度鏡を見る。


女もいない。


森岡が壁に背中をぶつけた。


「見ました?」


美琴。


「見た」


「俺も……」


久世だけが黙っている。


「先生」


美琴が聞く。


「今の……」


久世は鏡の前に立ったまま、


静かに言った。


「部屋を閉鎖しましょう」


「え?」


「今夜は誰も入らないでください」


それだけ言って出ていく。


美琴はその背中を見た。


初めてだった。


久世が、


調べる前に場所を離れたのは。

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