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どうしようもなくオタクな私が愛される方法  作者: 成葉弐なる


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4 創作系派閥

 訪れた生活魔法派閥では派閥長である緑髪のラミラ先輩に喜んで受け入れて貰え、とりあえず最低限と考えていた分の派閥入閥手続きを終えた。そして私はヴァールブルク先生に教えてもらった通りに、最も東にある棟へと向かった。お目当ては文芸派閥である。

 3分ほど歩き、該当の棟にたどり着いたはいいが、無数の部屋があり、どれが文芸派閥なのかは分からずにいた。すると、後ろから声をかけられた。


「やぁエーデル」


 声ですぐに分かった。クラウロード様!

 私は振り返ると、伏せがちな目線をクラウロード様へと送る。


「もしかして君も創作系派閥に?」


 目線が交錯するなり、クラウロード様に問われ、私は「……はい」とだけ答えた。

 え? もしかしてクラウロード様も創作にご興味が!? という想いでいっぱいになるも、それは言い出せずにいた。

 そうだ。先程、ジョルノ先輩が心配していたこともお話しないと……!


「あ、あの」

「うん?」

「先程、貴族派閥を訪れた際に、派閥長のサザンライト公爵家のジョルノ様が、クラウロード様が来ないとご心配されていました」

「あぁ……そのことか。心配しないでくれ、別に貴族派閥に属さないというつもりではない。ただ私としては優先順位が些か低いというだけの話さ。ところで、君が探しているのは創作系の何の派閥だい?」


 クラウロード様が貴族派閥に属する意思はあるようでほっとする。


「はい……文芸派閥と、できれば被服派閥を探しております」

「ふむ、そうか被服派閥は分からないが、君も文芸派閥に興味があるのかい? これは奇遇だな。僕もちょうどさっき入ってきたところさ。案内しよう。文芸派閥の先輩に聞けば、きっと被服派閥の所在も分かるはずだよ。さぁこっちだ、来たまえ」

「はい……! 恐れ入ります」


 クラウロード様の案内で文芸派閥の部屋へと上がる。


「これはこれはクラウロード様、まだなにか御用が?」


 小さな部屋に入ると、茶髪で三つ編みの眼鏡系女子が私たちを迎えた。


「ヴァージニア派閥長。こちらのエーデル・フラワークロイツがどうやら私たち文芸派閥に興味があるらしくてね」

「まぁ! それは歓迎致します! 私の名前はヴァージニアです。よろしくお願いしますエーデル・フラワークロイツ様」


 眼鏡系女子のヴァージニア先輩は大層私を歓迎してくれたが、しかし私は文芸派閥に直接加入するつもりは余りないのだ。

 これは交渉だ。コンテンツ供給源になって欲しいという。

 しかしクラウロード様も文芸派閥に入閥なさっているってことは、もしかして交渉成功したら私、クラウロード様の書いた物語が読めちゃったりするのかな!?

 期待で胸が踊りながらも、交渉を冷静に行わなければならない。


「いえ、その。実は文芸派閥に直接入閥するつもりはないんです」

「え? つまりどういう……」

「あの、私、物語が好きで! だからもし文芸派閥の皆さんの物語が読ませて頂けたら嬉しいなって!」


 新たな推し作家に出会えるかもしれないしね!


「それは……別に構いませんが……」


 ヴァージニアさんがすぐに肯定の表現をしたかと思うと、クラウロード様が割って入る。


「いや、駄目だ」

「え!?」

「だから駄目だと言っている。基本的に文芸派閥員の書いた物語は文芸派閥員のみが読む決まりだったはずだ。そうですね? ヴァージニア先輩」

「いえ、そんな決まりは……」


 ヴァージニア先輩が困惑した表情でクラウロード様を見やる。


「そうだね?」


 しかしクラウロード様の笑顔の圧力に屈したのか、ヴァージニア先輩はこくりと頷き「はい……」と項垂れる。


「そういうわけだエーデル。文芸派閥の物語が読みたいならば、君も文芸派閥に入閥したまえ」


 クラウロード様はそう言って私に入閥を迫った。

 どうしよう……物語の供給はして貰いたいけど、自分で物語を書くつもりは今のところ余りないのに……! なんでクラウロード様はこんな意地悪をするんだろうか?


「その……私いまのところ、自分で物語を書くつもりは……」

「なに、年一回の派閥誌に作品を一つ載せるだけで良いんだ。なんなら君は文芸派閥員の物語への批評でも書いてみたら良い。ヴァージニア先輩もそれで構いませんね?」

「私は……クラウロード様がそれで良いのでしたら」

「では、決まりだ。エーデル、君も物語が読める、私たちは自作の批評が得られる。これは対等な関係だよ?」


 クラウロード様はそう言って、私に入閥を再度迫った。

 まぁ、批評を書けばいいだけなら……。


「分かりました。入閥させて頂きます」


 諦めてそう決めると、クラウロード様が「文芸派閥にようこそ、歓迎するよ」と柔和な笑顔を作った。


「あぁ、それからヴァージニア先輩、彼女は他に被服派閥を探しているようでね?」


 と私が話すまでもなく、話を進めてくれる。


「それでしたら、ご案内します」


 ヴァージニア先輩がそう言ってくれて、私は被服派閥へと足を向けた。

 何故かクラウロード様まで付いてくる。


「こちらです」

「あれ? ヴァージニア。どうしたの? うちの派閥になんか用事?」


 ヴァージニア先輩に案内された入った部屋で、金髪ポニーテール女子の先輩が私たちを迎える。どうやらヴァージニア先輩の知り合いらしい。部屋には大勢の女生徒たちが溢れかえっていて、大派閥であることを匂わせていた。


「えぇノエル。こちら騎士爵家のエーデル様と公爵家のクラウロード様よ」

「え!? 貴族!? 珍しい人連れてきたね」


 ノエル先輩は目をぱちぱちとさせて、私とクラウロード様を交互に見る。


「どうも、私はノエル・サーチリザルト。男爵家の三女よ。それでウチの派閥に入りたいのかしら?」

「こんにちは、ノエル先輩。私、お人形に着せるお洋服を作りたいのですが、被服派閥では人間用以外の衣装制作目当てであっても受け入れて貰えますか?」


 私が事情を詳らかにしつつ聞くと、ノエル先輩は「うん! お人形用の服でも全然いいよ。歓迎致します!」とすぐに快諾してくれた。

 そこにクラウロード様が質問を投げる。


「被服派閥では魔法付与した衣装の製作も行っていますか?」

「え? 魔法ですか? はい。錬金派閥との共同作業になると思いますが、一応年に1回くらいの目安で行ってはいますね」


 とノエル先輩が答えると、クラウロード様は目を輝かせて「被服派閥の予算は?」と聞く。


「えっと、魔法付与した服は文化祭での展示用途でもあるから結構貰えてます。うちは派閥員も結構いるから予算には困らないと思いますけど……大体、魔法付与の服を合わせて年間に大金貨1枚分くらいの予算はありますね? それも全然使いきれてないくらいですけど」


 先輩が被服派閥の財政状況を述べると、「大金貨1枚……それならばまぁ……」とクラウロード様は納得した様子だった。

 大金貨1枚は金貨100枚分だ。銀貨100枚で金貨1枚。銅貨100枚で銀貨1枚になる。大体1回の食事に銅貨3枚がかかると考えると、初等学校の被服派閥に与えられた予算としては莫大に思える。


「もしかして、クラウロード様も被服派閥に入るのですか?」


 と私が聞くと、彼は「あぁ、そうしよう。では私とエーデル・フラワークロイツの二人です。よろしくお願いしますノエル先輩」とクラウロード様があっさりと答え、「二人とも歓迎致します!」とノエル先輩が無邪気に微笑む。


ヴァージニア先輩が「エーデル様はこれで3つの派閥掛け持ちですね! これくらいでしょうか?」と私に確認を取る。え? もしかして派閥って3つ以上入ったらいけなかったりする? でも私、もしかしたら人形派閥も立ち上げるかもなんだけど……! 私は言葉の意味を考えながらも、ヴァージニア先輩にそのことについて聞こうとしたのだが……。


「いや、私とエーデルはまだ他に錬金派閥にも属する予定です」


 クラウロード様が勝手にそんな事を言いだした。


「クラウロード様!?」

「エーデル、君は黙って私に付いてきなさい。君を悪いようにはしないつもりだ」


 そう言うクラウロード様に連れられて、私は錬金派閥の元へも向かうことになった。

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