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どうしようもなくオタクな私が愛される方法  作者: 成葉弐なる


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12 人形派閥室とミーレス先輩の人形

 放課後になり、与えられた鍵もあることだし、早速人形派閥室に向かうことにした。

 鍵番号によれば、最も東側にある創作系派閥棟の更に最も東にある一室らしい。

 長い廊下を抜けた先に、その部屋はあった。


「あった! ここが我が派閥室か!」


 私は鍵穴にゆっくりと鍵を差し込むと回した。


「失礼しまーす」


 そう言いながら、ドアを開けていく。

 するともわっと埃の臭いと共に派閥室が姿を現した。

 木製の円形テーブルに椅子が2つ置いてある。

 その他本棚のようなものもあった。何の本が置かれているのかあとでチェックしよう。

 そして東側にはなんと窓がある! これはいい。自然光を採光できるなんて最高じゃないか。いや別にギャグではない。

 私は窓を開けると空気を入れ替え、クリーンの魔法を無詠唱で使って軽く派閥室の備品から表面の埃を軽く落としていく。

 そうして創作系派閥の廊下にある掃除用具箱から掃除用具を借りてくると、取り敢えず床を簡単に掃いた。床を雑巾掛けをしても良かったが、貴族の子女がすることではないと怒られるかもしれなかったので、テーブルと椅子を濡らした雑巾で拭くに留めた。

 そうこうしていると、ミーレス先輩がやってきた。


「ミーレス先輩! よくここが分かりましたね!」

「さきほど廊下で貴方を見かけたから場所が分かったのだけれど、もう掃除が済んでいるのね。有難いわ」


 その手には普段持っている鞄の他に、割と大きめな革張りのケースのような鞄が抱えられている。もしかして、ミーレス先輩のお人形だろうか!?

 うわー他の人のぬいやお人形見るの、この世界では初めてだ! めっちゃ気になる!


「ミーレス先輩、それもしかして……」

「めざといわね。さすがは人形派閥を立ち上げるだけはあるわ。えぇ、私のお人形よ」


 そう言って先輩が円形テーブルの上にケースを置いて開け始める。

 どうやら見せてくれるらしい。


「おはよう、ジョリー」


 そう言いながら取り出されたのは、深緑色のゴスロリっぽい服を着せられた赤髪の賢そうな男の子の顔に見えるお人形だった。だいぶ年代物のようだ。


「ほら、ジョリー。エーデルにご挨拶なさいな」


 無論口を開くわけではない。だが私は「御機嫌ようジョリー」と笑顔で返した。

 でも、ジョリー!? 名前ジョリーで合ってるよね? まさかだけど、もしかして、これジョルノ先輩を(かたど)った人形じゃないよね!?

 え? もしかしてそういう……。

 先輩はジョリーを円形テーブルの上に座らせる。


「あら、その顔……エーデル貴方、もしかして気付いたかしら?」

「えっと、その……」

「えぇ、ご察しの通りよ。この人形はジョルノ様を模って作られた人形よ」


 やっぱりそうだったー!

 一体どういう事情でそんなことに!?

 私は困惑しながら急ぐようにウサミントを袋から取り出すと、「ほら! ウサミント。ミーレス先輩とジョリーにご挨拶して!」とウサミントを盾にすることにした。


「あら、その質感。完成度。見ただけで分かるわ、本当にヴァルプルギスエンデのぬいぐるみじゃない。本当に持っていたのね。高かったでしょう?」

「はい。父からは大事にしなさいと重々言われました。先輩のジョリーは?」


 私は恐る恐る聞く。


「私のジョリーもウェスタンライトとイースタンライトの合作よ。一点物というわけではないのだけれど、ブランド名はグレートドール……もしかして知ってるかしら?」


 知ってる! グレートドールとは偉人達の――実際に存在した人たちを模って作られているドールを主力にしているドールブランドだ。核には魔法鉱石が埋め込まれていて、魔道具として側面も併せ持つという。


「私がこのドールを与えられたのはまだ1歳のときだったわ。かのサザンライト公爵家に新たに生まれた男の子を記念して作られていたこの限定品のドールをお祖父様に買ってもらったのよ。お祖父様は別にその後私たちが許婚関係になることを願ってそうしたわけではなかった。単純に貴族子女にそのとき人気のあるこのジョリーを私に買い与えてくれたのよ」


 先輩は流し目でジョリーを見ながら、その髪を撫でる。

 よほど大切にしているらしいのがその仕草から見て取れた。


「へぇ……お祖父様からのプレゼントだったんですね!」

「えぇ。お祖父様は私が6歳の時に亡くなってしまった。私、お祖父様にべったりでね。だからお祖父様からのプレゼントであるジョリーを本当に大切にしていたわ。その後、私がこのジョリーを大切にすればするほどに、ある噂が立ったのよ。ルメール子爵家のミーレス様はどうやらサザンライト公爵家のジョルノ様にご執心らしいってね。あれは私が8歳の時だった」

「それは……」

「えぇ、もちろん根も葉もないとまでは言わないけれど、私の真意とは全く違うただの噂よ。でもその噂がきっかけとなって、サザンライト公爵様からのジョルノ様と私を許婚とする提案が舞い込んできた。両親は私の思いなんて知らずに、喜んでその話を受けたというわけ」

「じゃ、じゃあミーレス先輩は……別に……」


 別にジョルノ様が好きじゃないんですね。そう言いかけた。


「しっ……それ以上は貴族が口にしてはならない言葉よ。今は愚者となってしまったノーザンライト公爵家のクラウロード様のことを筆頭に、公爵家を侮辱する人も多いけれど、本来私たち貴族が公爵家を侮辱するなんてあってはならないことだわ。聡い貴方なら分かるでしょうエーデル」

「はい。分かります」


 それに実際にはクラウロード様は賢者だしね! とは言わないが、先輩の言わんとするところは感じ取れた。私たち下級貴族は上流貴族よりは危うい立場にある。そんなことをすれば、怒りに触れた時にどんなことになるかもわからないのだ。それになにより、美しくない。そう思った。

 そんな事を考えながらウサミントをジョリーの隣に座らせると、「あーウサミントとジョリー尊い! 二人が一緒の時を写真に収められたらなぁ」と感想を漏らした。


「シャシン? シャシンとはなにかしら?」


 不味い。前世の知識を口走ってしまった。この世界に写真機があるかもわからないのに……! ミーレス先輩の反応を思うに、どうやらないらしい。


「えっと、今私たちが見ている映像を絵として記録したもののことです! 昔どこかの国で写真機が作られたって書かれた書物を見た気がして~」


 私は有耶無耶にしようとすると、ミーレス先輩が「そんなものがあるのね。私たち人形派閥の活動に必須じゃないかしら? よく調べてみましょう」と言ってきた。

 やば……どこにもないなんて分かったら大変なことになるかもしれない。

 話をずらそう。


「そ、それよりもジョリーのお洋服はどこのなんですかー?」

「本当に目ざといわね。これは特注品よ。最近流行りのビロード生地で作らせているの」

「えー! 特注品! さすがは商家のルメール家! お金あるんですね!」

「この程度ならそれほどかからないわよ、イースタンライトお抱えの工房に生地と案を持ち込めば割とお安く出来上がるわ」

「そうなんですね。いいなぁ。私も被服派閥でウサミントのお洋服をたくさん作って上げないと!」


 そう言うと、「あら貴方が被服派閥に入ったのはやっぱりぬいぐるみの為のお洋服を作る為だったのね。ふふ、貴方、本当にぬいぐるみが好きなのね」とミーレス先輩が笑った。

 先輩の本当の笑顔は初めて見る気がする。とても綺麗で可愛らしい。

 そうして私が如何にぬい活に人生を賭けているかを熱く語り始めると、ミーレス先輩が終始笑顔で、私の話を聞いてくれた。

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