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どうしようもなくオタクな私が愛される方法  作者: 成葉弐なる


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13/13

13 アルカ様の人形と写真

 ミーレス先輩と人形やぬい活の話をしていると、ゆっくりと音もなく人形派閥室のドアが開いていく。


「誰ですか?」


 恐る恐る声を掛けると、現れたのはアルカ・イースタンライト様だった。

 アルカ様! 誰かから人形派閥室がここだと聞いたのだろうか?

 でも誰から? ミーレス先輩みたいに掃除用具を調達するために廊下に出た私を見たわけではあるまい。


「……」


 当のアルカ様は黙ってこちらを見ている。

 そして木製の旅行鞄のようなケースを2つも持っていた。

 もしかして、アルカ様もお人形を持ってきてくれたのだろうか?


「アルカ様、取り敢えずお入りになってくださいませ」


 ミーレス先輩がアルカ様を招き入れ、自身が座っていた椅子を譲った。

 そうだ。いまのところ人形派閥員は全部で3人だから最低でも3脚は椅子が必要だよね。

 ミーレス先輩から派閥活動費として購入費用を出してもらおうか、それとも創作系派閥棟のどこかに椅子の余りが保管されていたりするのだろうか?


「……あの、僕のお人形見せるけど、驚いたりしないでくださいね」


 アルカ様がそう言ってケースの一つテーブルの上に置いて開いた。

 収まっていたのは、なんと皇帝陛下のお人形のようだ。

 帝城でも見たその余りに威厳たっぷりな姿に困惑すると同時に、正直驚いてしまったが驚かないでと言われていたのでぐっとこらえた。


「わぁ、皇帝陛下のお人形じゃないですか。これがアルカ様のお人形ですか?」


 私が感嘆と共に聞くと、アルカ様はゆっくりと答える。


「……うん。僕、もっと小さい頃に母上にこれを送ってもらったんだ。陛下のような男になりなさいって」


 お母様から貰ったんだ? まぁ男の子に有名な偉人男性の人形を買い与えるのって、前世の世界で言うところのヒーロー人形を買い与えるようなものだよね? そこまでおかしくないのかな? まぁアルカ様のお母様の目論見が成功しているかといえば、そうではなさそうだけれども。

 私がそう思っていると、ミーレス先輩がケースに書かれているNo.4の刻印を見た。


「これは……陛下のご即位20周年記念品ね。確か4体しか製造されていないはずよ。そのほとんどはまずは四公の元へ送られて、それから欲しがる者の元へ渡ったと聞くわ。アルカ様のはそのうちの4体目のようね」

「へぇ、貴重な品なんですね」


 私がその貴重さに静かに唸ると、アルカ様が地面に置かれたもう一つの鞄を開け始めた。


「……それからこっちは、みんなとの人形派閥活動の記念にしなさいって父上が」


 そうして現れたのは、レンズの付いた魔道具だった。

 私は即座に直感する。


「これはもしや……! 写真機! 写真機ですよね! アルカ様!」


 私が興奮気味にアルカ様に聞くと、アルカ様は「……うん。よく知ってるね。魔導写真機だよ。最近うちの工房で開発されたばかりの最新型の魔道具」と言ってくれた。

 写真機! 写真機があればぬい活は更に一層豊かになることは間違いない。私は嬉しさで飛び上がるような気持ちだった。有難うございます! アルカ様のお父上! イースタンライト公爵様! この巡り合わせを齎してくれた唯一神イアーナ様にも感謝を!


「早速、みんなでお人形やぬいを抱いて一枚いいですか!?」

「……うん。そのために重いけど頑張って持ってきたからね」


 アルカ様がゆっくりと頷き、用意をしてくれた。


「……低級だけど1枚に付き魔石を1個使うんだ。だからそう何度も撮れるものじゃないらしいよ」


 そう言いながらアルカ様が部屋の入口付近に写真機を設置していく。

 どうやらタイマー機能付きらしく、3人で撮れるようだ。

 最後にアルカ様が初級光魔法ライトを詠唱して、私たちの元へとやってくる。私はウサミントを抱えて左側でポーズを取る。右腕でウサミントを抱え、左手を突き出したポーズだ。アルカ様が両腕で陛下のお人形を抱え中央に収まり、大切そうにジョリーを抱えたミーレス先輩が右側で大人しくしている。写真を撮られるのなんてミーレス先輩は少なくとも初めてだろうから緊張しているのだろう。大丈夫です! 魂を吸われたりはしないので! しない……よね?

 私も異世界の写真機に若干困惑しながらも、きっと大丈夫だろうと自分に言い聞かせた。

 しばらくしてパシャっという音と共に光魔法が魔導写真機から放たれた。

 さっき詠唱してたし、やっぱりただの光じゃなくて、光魔法を遅延発動させて記録するのか! と思いながらも、だから魔石を1個使うのかと納得する私だった。


 そうして写真機の下からは1枚の正方形の写真が排出された。

 しかし何も写っていない。真っ白だ。失敗だろうか?

 するとアルカ様が人形を置いてやってきて、写真を持つとひらひらと振り始めた。

 アルカ様! たぶんそれインスタント写真だったとしたら振るの意味ないどころか、むしろ薬液が動いて品質が劣化しますけど……! と言えるわけもなく、どんな写真が出来上がるのかを待っていた。


「……うん。出来てきたみたい」


 アルカ様がそう言うので写真を見ると、それはそれは見事な写真で、かなりの高解像度で記録されていた。薬液が動いて品質が劣化している様子もない。どういう仕組なんだろうか?


「凄いわね……写真ってまるで鏡のようにその瞬間を写し取るのね」


 ミーレス先輩がちょっぴり感動している。

 いやいやミーレス先輩、こんなインスタント写真機みたいな魔道具で、ここまで超解像度の写真が手に入るだなんて、超技術ってレベルじゃないんですよ本当は。と言いたい気持ちを堪えながら、「本当に凄いですわね」とだけ言った。


「アルカ様、こちら低級の魔石一つで一枚とのことでしたが、低級の魔石って一つおいくらくらいなんでしょうか?」

「……どうだろうな……僕には分からないよ」


 そうなのか、あまりにも高いならばこうやって本当に記念の時にしか撮れないが、お安いならば派閥活動で積極的に使っていきたい。


「低級の魔石ならば、主に魔獣を狩って手に入る物だから冒険者ギルドで扱っているはずよ」


 ミーレス先輩が教えてくれて、私はアルカ様に「アルカ様。この写真機、暫くの間うちの派閥で借り受けることは可能ですか?」と聞くと、「……2日くらいは持ってて良いって言われてるけど、それ以上は分からないよ」とのことだった。

 ならば写真機を調達するところから始めないと駄目か。

 アルカ様の父上であるイースタンライト公爵様に会わねばならないかもしれない。


「私、アルカ様のお父上にお会いして写真機を一つ譲って頂けないか直談判したいのですが!」


 そう私が言い始めると、ミーレス先輩が「本気かしら?」と訝しむような目線を送ってくる。


「私たちの派閥活動にはこうやって写真を取るのが必須のように思えませんか? 記録に残るというのは偉大なことなのです!」


 私が力説すると、アルカ様は「……分かった、父上に伝えておくね」とだけ返してくれた。

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