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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑩~真白の森に命の雫を~  作者: norito&mikoto
終 章

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エピローグ・限界超えて駆け込んで~旅立ちの朝は白く濁って~

終 章



    エピローグ・限界超えて駆け込んで~旅立ちの朝は白く濁って~



 絶望の野営訓練から僅か六日後。



 どうにかこうにか三日前に退院したインスは、この三日の間に怒涛の最終調整に忙殺され、昨夜もあまり寝られないまま、極秘討伐隊として出発する朝を迎えてしまった。



 流石に、この討伐隊の旅路が過酷なものになることを最上層部もしっかりと理解しているらしく、参加させられることになった全員分の、新しい装備品が支給されていて、全員がその装備に身を包んでいる。



 極寒の季節。


 更に、山脈と山脈の間に広がる魔の森を二か所も通過しなければいけないことを見越して、金属鎧などではなく、魔物素材の革鎧や、防刃効果のあるローブなどと、何よりも寒さ対策の装備は常軌を逸したシロモノ。



 それでも、完璧な装備とは言えないし、急ごしらえであったため、予備が充実しているわけでもない。



 いまだ、体力の戻り切っていないインスはもちろん、貧血が回復しきっていないアインも青白い顔をしていて、緊張で表情が強張っている。



 けれど、そっと懐から取り出した適温袋を、野営訓練の時には間に合わなかった手袋をつけた手でニギニギと軽く揉んで、ほんのりとあたたかくなったそれにそっと微笑を浮かべた。



「……神殿からの支給品ですか……?」



 静かに問いかけたインスに、アインはそれを背中側に入れて見上げる。


 インスの腕に抱かれたアインがもたれかかったことで、適温袋の熱がインスにもじんわりと届いた。



「……いえ……最近、よくして下さる、先輩からお預かりしました……」


「同室の世話係の方ではなく?」


「はい……あの……」



 返答に、首を傾げたインスは、続けられた言葉に軽く目を見張る。



「……皇宮の、呪師長じゅしちょう様の、ご家族です……」


「……そうですか……」



 ふわりと微笑みながら、少しだけ警戒する。



 皇宮呪師長こうぐうじゅしちょうであったキプラは、復帰の勧告を辞退して神官になる道を選んだと聞いている。


 その、キプラの血縁の者が神殿に、それも、神官呪師しんかんじゅし学校にいるとは知らなかった。



(……ペンティス家は、皇宮呪師の名門だったはず……神官呪師の適性が高い者が出た、というお話を聞いたことはありませんから、わざわざ神官呪師を目指した者がいた……と言うことでしょうね……)



 そんな相手が、アインに()()しているというのが、引っかかる。


 彼らからすれば、アインは自分たちの血縁者……それも惣領を攻撃した者として、憎悪や嫌悪の対象になっていても不思議はない。



 一応は、キプラは呪いにかけられていて、その呪いに操られて凶行に及び、その呪いをアインが解いた、とされてはいるが、それを信じる者ばかりではないだろう。



 特に、皇宮呪師長への復帰の勧告を辞退し、よりにもよって、呪師ではない、一神官として余生を過ごす、と決めたのだからなおさらだ。



 そもそも、皇宮呪師長であったキプラが、一体いつから、どんな呪いにかけられていたというのか……しかもその呪いを、一介の見習いが解いた、などと説明されて納得しきれる者などいないのだから。



「……その方からは、他にも何か、頂いたのですか……?」


「えっと……お守りを、預かってます」



 そんな、疑念を綺麗に隠して問いかけたインスに、ふわりと笑顔を見せて、アインは首から下げた複十字(ディエルじゅうじ)のペンダントを服の下から引き出す。



「…………なるほど……その先輩は、本当にアイン君を心配してくれているのですね……」



 そっと、手に取って確認したインスが微笑めば、アインもはい、と嬉しそうに笑う。



(……どうやら、杞憂だったようですね……かなり強い、守護の魔法を込めてあるようですし……)



 およそ、見習い呪師が用意できるような代物ではないが、おそらく複数人に頼み込んで複雑な術式の儀式魔法で守護の魔法をかけたと思われるペンダントには、確かにアインを案じ、無事を願う意思を感じ取れた。



「う~。さっむ……。お、早いな、インス……と、アイン(おまえ)も……」



 そこに、両腕を手でさすりながらやってきたリオンが、先に馬車の中にいた二人を目にして軽く手を上げる。


 若干、アインに対して険があるのは相変わらずだが、以前ほどの刺々しさはない。



「おはようございます。リオンさん」


「えっと……おはようございます」



 だから、インスもアインも、とりあえずは普通に挨拶を交わし、馬車に乗り込んだリオンが隣に座るのを無言で受け入れる。



 ちなみに、リオンが座ったのはインスの隣で、アインはそのインスの膝に座っていて、しっかりと抱きしめられていた。



「……できれば、私も、アイン君も、ステールさんも、辞退したかったのですけれどね……」


「無理だろう……ま、できる限り早めに諦めさせるしかないだろうな……」



 溜め息を吐いたインスに、肩を竦めたリオンの言う通り、辞退できる道など最初から閉ざされていたからこそ、過酷なまでの調整を強いられたのは理解している。



 けれど……



(死にかけた相手と死にかけた幼児を引きずって行かないといけないって……?)



 そう、インスが若干遠い目をしてしまうのもまた、致し方ないこと。



 そうこうしているうちに、皇城内で皇帝陛下や弟皇子と出発前の挨拶を交わし終えたらしいジャンヌが、白い息を吐きながら馬車に乗り込んできた。



 既に、御者台にはステールが準備を整えていて、ジャンヌと一緒にやってきたファンが騎馬にまたがり、クロードと共に馬車の左右に付く。



「……絶対に、取り戻すからね……」



 先に馬車に乗り込んでいた三人に、特に、左目の瞳の宝石を、魔族に奪われ、弟皇子と同じように視力を失ってしまっているアインに向かって。



 ふわりと微笑んだジャンヌは力強く宣言する。



 その、眼差しに宿る決意の光を目にして……



(((……無理……)))



 一瞬にして、ジャンヌを途中で諦めさせる難しさを察してしまい、リオンもインスも、アインさえもが心の中でそう呟く。



(……おいおい。インスとアイン、何て言う、病人と幼児を連れて魔族退治? 無理じゃないか?)


(……あれだけ、申し上げたのに、全くご理解して下さっていない……!)


(……インス様たちは、お姫さまに、途中で諦めて頂きたいって、仰っていたけれど……お姫さまは、皇子さまを、お救いしたいんだ……)



 三者三様。


 心の中で呆れたり、絶望したり、その本気度に慄いたりしていることに……



 幸か不幸か、決意に燃える皇孫皇女は全く気づいていなかった。






 そして、歴史書のみならず、多くの創作物さえもが作られることになる旅路が、始まろうとしていた。











「姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~」番外編・聖皇国列伝秘聞・第10弾


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑩~真白の森に命の雫を~(完)


これにて、『皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞』第10弾「真白の森に命の雫を」、完結です!


過酷な野営訓練からわずか数日後、極秘討伐隊がいよいよバルバ島へ向けて出発する朝のお話です。


シプラから託されたあたたかな贈り物に少し安堵しつつも、相変わらずの強行軍に青息吐息のインスとアイン。


そんな馬車に乗り込んできたジャンヌの決意の言葉と、同乗者三人の凄まじい温度差……。


実は、この出発のシーンは「本編第2部終章」と完全にリンクしています!


もしよければ該当シーンと読み比べてみて下さい(笑)。


そして、この後、夜の公開時間にはちょっと特殊な番外編をお届けします!


その名も「群像短話を読み漁れ!」です。


「皇宮呪師は護りたい!」と同じく、「聖皇国列伝秘聞」シリーズとして、短めのお話や1話完結のお話などをごちゃっと掲載していく予定です!


まず第1回は「ファンの過去話」!


銀髪の近衛騎士団長・ファン卿ディアス(19)がまだ8歳の時のとある人物との出会いのお話となります(笑)。


いつもの昼夜公開時間で駆け抜けていきますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです!!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「ちょっ!? ファンの過去!!」「とある人物って誰!?」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回作もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


※本編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


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