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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑩~真白の森に命の雫を~  作者: norito&mikoto
第6章 油断が齎す最悪の

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第2話・心を縛るは鋭き呪詛の~互いの善意がすれ違い~

第6章 油断が齎す最悪の



      第2話・心を縛るは鋭き呪詛の~互いの善意がすれ違い~



 インスの苦悶の声と、痙攣する身体の、氷のような冷たさを腕に感じながら、顔色を悪くしたステールがアインを呼ぶ。



「……っ。……ぼ、ぼくが……っ!」



 一瞬唇を噛みしめたアインは、ボロボロと泣きながら、声を絞り出す。



 土気色の顔と、紫に染まった唇から、苦し気な呼吸を繰り返すインスが、うっすらと瞼を持ち上げ、視線を彷徨わせた。



(……ああ……アイン君は、無事ですね……)



 霞んだ視界に、動く小さな姿をとらえて、うっすらと笑みを浮かべる。



 身体中に響くような、躍る鼓動の痛みも、寒いというよりは冷たいのに、焼き尽くされそうな熱さも、喉も舌も、完全に麻痺してしまっているせいか、うまく呼吸もできなくて、話すこともできないけれど。



 毛布を持って駆けつけたクロードから、受け取った毛布でインスの体を包むように指示をして、天幕テントの中へと運び込ませる。



「っ。体温の低下と、心臓の動き……手足をマッサージして、血流を止めないように、気を付けて下さい」


「……わかった……」



 何やら声が飛び交っている様子であるのは分かるけれど、意味が上手く掴めない。



 意識自体ははっきりしているのに、何が起きているのか理解できないというのも、少しもどかしい。



 いや。自分の身体に起きていることは、はっきりと理解できている。


 ただ、周囲で繰り広げられるやり取りが、分からないだけ。



(…………っ………さ、むい……っ)



 限界を超えて全力疾走しているかのように心臓が激しい鼓動を繰り返す。


 それが、次の瞬間にはいきなり止まりそうな恐怖が背筋を這い上がり、同時にあまりの寒さに震えが止まらない。



(……あ……つ、い……っ)



 なのに、沸騰しそうなほどの熱さにも襲われていて、自分の身体が分からなくなりそうだ。



「……カジャに、そっくりな、毒の木の実が、あるんです……おしりのところが黒くて、低い木に鈴なりになるから、間違えて採取してしまうことが、あります……」


「……な……」


「……それを、ぼくが、ちゃんと……いわなかった、から……っ」



 呼び掛けられて、泣きながら答えるアインの言葉を聞いて、ステールは青ざめる。



 昨夜、アインはどうやって、あの辛くなる木の実を手に入れた?



 クロードに取って貰っていた。


 クロードでさえ、手を伸ばして摘むほどの高所に実っていたから。



 さっき、アインはインスに嘔吐剤として飲ませた小粒の赤い実をどうやって手に入れた?



 這うようにして茂みに潜って、毟るようにして摘んできた。


 低い木に生っていたから、アインでも摘めたから。



 ………今夜のスープに入れた赤い木の実を、俺はどうやって手に入れた?



 膝ほどの高さしかない木に、鈴なりになっていたその一枝を、摘んできた。



 大きさも、色合いも、表皮の硬さも、同じに見えたから……



「……お前のせいじゃない……」



 泣きながらも手を止めないアインに、ステールは震える声を絞り出して告げる。



「……俺が、よく知りもしないくせに、お前らを真似て、素人判断で入れたせいだ……」


「……………っ!」



 大きく頭を振って、違うと訴えかけるアインを、見据えた。



「……()()入れたのは、何だったんだ……?」


「……っ……!?」



 問い詰める口調で言えば、アインは息を飲み、唇を戦慄かせる。



「……トギの実……」


「……トギ……?」



 止まらない涙を、袖で乱暴に拭いながら、アインは次々と指示を出しつつ、質問にも答えた。



「……お薬にも使われます……でも、すごく強い、毒性を持つ木の実です……」


「「……っ……!?」」



 使い方ひとつで、毒にも薬にもなる。



 それが「トギの実」で……



「……だから、ちゃんと、言っておかないと、いけなかったんです……」



 誰もが知っている知識ではないのだから、インスが「カジャ」を知っていたから、トギのことも知っているのだろうと思い込んでしまった。



 事実、インスはカジャとトギの違いもちゃんと知っている。


 けれどそれが、誰もが知っている知識()()()()とアインは知らなかった。



 注意点含めて、この野営訓練に参加する前に神殿の図書殿で読んだ本で知っただけのアインは、自分が見れる本に載っていた、という一点で誰でも知ることができると思い込んでいた。



 そんなはずはない、というのは、今になって嫌になるほど理解したけれど……



(……知れることと、知ることは、違うんだ……)



 誰もが知ることができるとしても、それを知ろうとしなければ、知らないままだ。



〈今度は誰かに毒でも盛る気か?〉



 図書殿で本を読んでいた時に、皇宮呪師長こうぐうじゅしちょうの曾孫だという青年に言われた言葉。



(……そんな、こと……)



 するつもりなんてない。


 そう言いたかったけれど、言われた通りの結果になってしまっている。



(……ぼ、くが……)



 インス様に、毒を、盛った……?



「……ン? おい、アイン! 次は!?」


「ぁ……」



 不意に動きを止めたアインを訝って、ステールが声を上げた。


第6章第2話をお読みいただきありがとうございます。


ステールの誤用により、絶体絶命の危機に陥ったインス。


意識はありながらも激しい苦痛と寒気、熱さに苛まれるインスと、そんな彼を救うために泣きながらも的確に処置を続けるアイン。


自分がきちんと危険性を伝えておかなかったからだと泣くアインと、それを否定するステール。


しかし、アインの心には過去に投げつけられた言葉が重くのしかかり……。


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。


ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第10弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

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