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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑩~真白の森に命の雫を~  作者: norito&mikoto
第1章 死出の旅路に生存の術を

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第1話・検証実験のその前に~分かっていること、いないこと~

第1章 死出の旅路に生存の術を



     第1話・検証実験のその前に~分かっていること、いないこと~



 主神殿医務殿実技棟。



 本来であれば、医呪いじゅ神官たちが実技を学び、磨くために使われるその棟の一室で、今から外に出せない検証が行われようとしていた。



 医務殿総括である医呪神官長のシリウム=ゾナールを中心に、主神殿を総括する大神官であり、医呪神官でもあるチェスパス=インゼラ。



 そして、検証対象である二人。



 皇宮呪師こうぐうじゅしのインス=ラントと、神官呪師しんかんじゅし見習いのアイン。



 彼らに付くことが予定されている護衛官として、神殿護衛官のクロード=トレーニアと、皇宮護衛官のステール=ベルン。



 総勢六人が集まり、前提条件やこれまでに分かっていることの共有が終わったところ。



 昨年末、一時期行方が分からなくなっていたインスを、皇宮呪師長の執務室でアインが発見し、救出。



 呪師長であるキプラには、五年も前から魔族が憑りつき、その体を乗っ取っていたと判明した。



 その際、去り際に魔族によって呪いを刻まれてしまったインスとアインは、魔法を使おうと、魔力を動かすと相互に苦痛に襲われる、という何とも厄介な状況。



 しかも、苦痛に襲われた方がその痛みに耐えきれなくなり、意識の喪失などに至ると苦痛はもう一方、魔法を使おうと魔力を動かした側に跳ね返ることも確認されている。



「体内で魔力が動いた時と、体外に魔力を放出し、魔法を使う時とでどう変わるか……これから行うのはその検証だ」



 何度か体内で魔力が動いた場合、というのはすでに起こっているので、今から行われるのは、実際に魔法を使ってみる時の検証。



 シリウムの確認に、全員がこくりと頷き返す。



「先に、アインに使わせる」


「……ぇ……」



 それを確認して、シリウムが視線を向けた先は、インスの身体に手を回してしっかりと抱き着いているアイン。



 記憶がない状態で、違法で人身売買をしていた者たちの下から逃げてきて、クロードに保護された少年は、体格的にはせいぜい三歳ほど。



 だが、その理解力などは大人顔負けで、更に魔力を()()()()()で使えてしまう『見者けんじゃ』の才を持っていた。



 そのため、就学年齢に達していないのを承知の上で、特例として魔力の使い方……魔法の使い方を学ぶことになった……公式には五歳ほど、とされている子供。



 なぜ、体格から考えられる年齢と、公式での年齢が違うのかと言えば、先ほども述べたように、その理解力が大人顔負けの優秀さであったため。



 三歳と考えると賢すぎる上に落ち着きすぎている。


 けれど、五歳以上とみなすには体格が幼すぎる。


 それゆえの、都合、五歳ほど。



 ただ、どちらにしても幼児に違いはない。



 呪師学校に入学許可が下りる年齢は十三歳。


 本来であれば、それよりも幼い者は、どれほど優秀と言われていても許可されない。



 しかし、アインは見者である上に、保有する魔力量が莫大過ぎた。



 感情のままに放出された魔力が、保護された先であった神殿孤児院の一室を破壊しつくしてしまったほどに。



 感情の制御が効かない、魔力の使い方を知らない子供など、危険極まりないのは当然のこと。



 そうはいってもその保有魔力量や見者の才は惜しい。



 その結果が、アインに対しての特例での入学許可で、大人たちの想定以上の優秀さを見せたアインに対する詰め込み教育の始まり。



 本来、神官呪師は神殿で、皇宮呪師は皇宮で、それぞれの専門分野となる魔法のみを学ぶことになるのだが、アインに対してはすべてを網羅するように教育が施された。



 しかも、そのすべてにアインがついてこれてしまったのも詰め込みを加速させ、結果、ほんの二十日ほどで、本来は数年がかりの教育課程を修了させていた。



「……ぼ、僕……から、ですか……?」



 そんなアインの、皇宮呪師側の実技指導を担当する教官であったインスとの間に、どういう訳か恐ろしいほどの共依存関係が発生していることが判明したのは、昨年秋に起こった魔族による皇孫皇女・ジャンヌに対する殺害未遂事件の後。



 皇孫皇女であるジニア・プローフ・ジャネット皇女……愛称をジャンヌと呼ばれる皇女殿下は、生まれて間もなくこの大陸の守護神である女神から祝福を受けた巫女姫。



 その存在が目障りなのか、五年前にも一度魔族による襲撃があり、ジャンヌの両親である皇太子夫妻を始めとして多くの犠牲が出た。


 その際に、魔族によってジャンヌの弟皇子であるジョン……カルロス・グラジオス・ジョーン皇子は呪いをかけられ、長く時が止まったような眠りの中にあった。



 その弟皇子を救うため、ジャンヌが神殿奥の小堂に封印されていた女神の至宝、神剣の封印を解いて使い手となったのが晩夏。


 そこから秋にかけての大事件と、暮れのアインによる魔族の潜伏先の看破。



 キプラは解放されたが、いまだ呪いの影響残る皇子殿下は両目の視力を失っており、その視力を戻す方法を、わざわざ魔族はジャンヌに伝えて去った。



 しかもその際に、アインもまた皇子と同じように左目の視力の元となる力……見者の力の源でもある目の魔力……を奪われてしまう。



 いや、むしろ、その説明のためにわざわざ魔族が抜き取った、と言った方が正しいのか……



 見た目には何ともなっていないため、皇子が視力を失っていることにも意識を取り戻すまで誰も分からず、アインもまた一見すると何の異常もないように見える。



 けれど、急に片目が見えなくなってしまったアインは、日常生活にすら支障が出る状況。


 また、片方だけが見えないのが気になるのか、頻繁に失明した左目を擦るような仕草が増えている。



 両目の視力を失ってしまっている皇子は言うまでもないのだが、持ち前の聡明さからか知らない者には失明している事実を気取らせない。



「お前からに決まっているだろう? お前より、インスの方が体力もあって痛みに耐えられる可能性が高いんだからな」


「……っ!」



 青ざめたアインに対して、当たり前の口調でシリウムは言うが、自分が魔法を使おうと、魔力を動かせばインスに苦痛を与えると分かっているアインは、怯えたようにインスに抱き着く腕に力を込める。



 そんなアインの頭を軽く撫でて、インスはふわりと微笑んだ。



「大丈夫ですよ……それに、その後は、アイン君に頑張ってもらわなければいけませんし……」


「アイン。早くしろ、後が支えている」



 後半、眉を下げ、心配そうに見つめるインスを見上げて、黒に見える深い紫色の瞳を少し潤ませたアインは、再度シリウムに促されてしぶしぶインスから手を離した。


第1章第1話をお読みいただきありがとうございます。


ついに、インスとアインが抱える「呪い」に本格的に向き合う時が来ました。


魔力を動かすだけで相手を苦しめてしまうという厄介な呪い。これからアインが魔法を使うことで、インスがどのような苦痛を受けるのかを確認する過酷な検証の始まりです。


怯えるアインと、彼を気遣うインス。


大人たちが見守る密室での検証実験が、2人に何をもたらすのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。


ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第10弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


※本編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


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