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救命活動with転生Girls!〈外伝〉  作者: 涼雲ルミ
復讐子息とジンリョク
6/13

口を開き、

兄さんが向かってから2日間。

お継母様も普通に心配しているけれど、まあ2日間くらいならたまにあったし…と思いながら僕はいつも通り家を出た。

レアンさんかフランさんかのお家にお泊りしているのかもしれない。兄さんは勇気を出してフランさんに言えたのだろうか。

そして僕は、流石に今日こそはティーアに話しかけねば…と決心する。

今日を逃したら本当に弱い自分のままで終わってしまう気がして。だから、僕は自分の皮を破る為にも…憧れの兄さんやレオンハルト様達に追いつく為にも、ティーアに話しかけよう、…そう思った。


そして、お昼休み。

僕は小学部の方へ向かった。2年前は小学部にいたんだよな…と思えば懐かしいような気もするけれど、同時についこの間までここにいたかのような感覚がある。


「あ…」

そして、幾つか教室を回った後ティーアの姿を見つけることに成功した。案外すぐ見つかって良かった…と思いながら、僕は後ろから教室に入らせてもらうことに。

僕が入ると、教室内が騒がしくなる。

ごめん!上級生が急に入ってきたら怖いよな!けど変な事をしに来たわけじゃなくて、ティーアと話がしたいだけだから!と心の中で思いながら足を進めた。

窓側の後ろにいたティーアは、僕の方を振り向いた途端顔色を変える。

…歓迎されてはいなさそうで、眉を上げた後物凄く目を吊り上げてこちらを見てくるのだ。

変な声が出そうになるのをグッと抑え、表向きには“普通”の仮面をかぶってみる。兄さんがヤベッてなった後の顔みたいな感じで、普通を取り繕う、というわけである。


「久しぶりティーア、今日はちょっとはな…」

「ッッッちょっと黙ってください!」

立ち上がってこちらを見上げながらそう言うティーア。

僕の頬を両手でパチンっとしてくるので、それだけで普通の仮面が外れてしまう。

そこまで痛くはなかったけれども、こんな小さな少女に怒られたことが僕の心をどんより沈ませる。

…うぅ…心を入れ替えて兄さんみたいになろうと思ったのに、ティーアの瞬時の行動によって立てていた計画が全て台無しだ。自分が情けなく思えてくる。

「どうしてここに…!?」

ティーアは顔を近づけながらそう言ってくる。

焦ったような表情になり、周りをキョロキョロしながらそう言い放つ。

僕は「話したかったから…」と、ティーアよりも更に小さな声で呟いてしまう。うぅ…やっぱダメだったのかな、僕にはやらない方が良かったのかな。これじゃティーアは話してくれるどころか話を聞いてくれない可能性も出てきたし、なんなら嫌われるかもしれない…。

そうだよね、僕達は生誕祭でしか会わない関係なわけだし、生誕祭抜いたら僕達の関係なんて無に等しいわけで……

等と、段々と負の想いが募ってしまう。そんな中、ティーアは一度ため息をついた後、そのまま僕の手を引き、教室の入り口に向かって歩き始める。

え?と声を上げれば、ティーアは振り返り、一言述べた。


「話があるのでしょう? ここでは無理だけれど、外なら聞きますよ」

当然のようにそう言ってくれるので、思わずまた涙が出そうになる。

けれど、ティーアに僕を泣かせた…という嫌な烙印を押すわけには行かない。そんな思いで、僕はティーアと共に中庭へと向かった。





中庭に着いた僕達は少し歩き、その後近くのベンチに腰を下ろした。「それで…」と一言呟き、僕の方を見てくる。

「何かありました?」

素直にそう聞かれ、思わず口を噤む。

…どうしようか、クリスティーナ様のこと…を聞くつもりできたけれど、流石にこんな脈絡もなく話されたらたまったもんじゃないだろう。

ならば…最近行けてない〜と嘆いていた兄さんの事を話してみようか。


「2日前、兄さんがフルール村に行ったんだ! 最近行けてなかったみたいだから…」


だから…なんだろう。続く言葉が見つからない。

…言われてみれば、いつもはセラフィーナ様やティーアの方から話しかけてくれてたから、僕から話すことなんて無かった。

しかも、フルール村に行った時も兄さんとフランさんの聞き手に周り、そうでない時はレアンさんが話しかけてくれる。

…どうするべきか考えていると、ティーアが「?そうなの??」と口を開いてくれた。

「そ。だから、兄さん2日前くらいから行ってるよ」

やっぱり、そういう所は凄くありがたい。

昔、クリスティーナ様は王女様だから、王女様として色々あったのかな…


「………そう。」

ティーアはそう言うと、何かを考えるような仕草になって黙り込む。

何か変なことを言ってしまったのだろうか。

ティーア相手だと思い込めば何でも言える気がするけど、クリスティーナ様相手だと思うと変に緊張してしまう。それこそこの前の王子様相手のように。…強ち間違ってはいないのか。

あぁでも、あの時はほんとに混乱したと言うか…、そもそもティーアと会った時だって、まだまだ子供だったと言うか…。あの時の自分が恥ずかしい。


黙り込んでいるティーア。

沈黙に耐えられず思わず口を開けば、ティーアは何故中等部2年生である僕がここにいるのかと問うてくる。


「いや…ティーアも兄さんのこと、気になるかなって…、……嫌だった?」

「…別にそういうわけでは無いですけど……」

やっぱり嫌だったのかな。だとしたら凄く申し訳ない。

…だけど、僕自身が声を掛けなければ、何も変わらないんじゃないか、って思って。兄さんに堂々と「本音を伝えて!」って言う前に、僕自身が変わらないと、って。…そう思ったから。


それから今度は、「あの、」と言って、ティーアの方から話しかけてくれた。

「アスタさんはフルール村に行く際、護衛は連れてるの?」

顔に出したいくらい嬉しかったが、ここは冷静にならないと。

でも、そこは分からないんだよな…。家の衛兵は少なくなってなかったし、外で騎士が待ってるとは思えなかった。ただ一つ確信を持って言えるのは…


「けど、ロータスさんと一緒に行ってたよ」

「ロータスさんと?」

ロータスさんと一緒に行っていた、ということだけ。

それを聞いたティーアは少し安心したような顔を見せてくれる。…フルール村で育った、と聞いている。

ロータスさんも育ててくれた一人なのだろう、どこで兄さんが関わっているのかは知らないが、兄さんも信頼しているロータスさんのことだからきっと安全だ。

そんなことを思っていると、ティーアが座っていたベンチから立ち上がり、「お昼休みももうすぐ終わるわね」と言われてしまう。


「教室まで送るよ」

僕はそう言って、ティーアに手を差し伸べる。少し躊躇うかのようにプルプルしているティーアだったが、はぁ、と一息ついた後、手を取ってくれる。

…ホント、僕の周りには尊敬する人がいっぱいだね。


そんなことを思いながら、ティーアを教室まで送り、そのまま自分も教室へと戻ったのだった。





そして、授業終わり。

恐らく家の衛兵が迎えに来てくれるであろうから、僕は昇降口の外で待つことにした。

今日は自分から話しかけることが出来て少しだけ嬉しさを噛み締めながら、近くのベンチに腰掛ける。

すると、どこからともなく聞いたことのある声が聞こえてきた。

大きくなってくるザワザワ音。

「なんかぬいぐるみが動いてる!?」「竜!?ちっっっさ!?」「あっち行ったぞ!!!」と言うその音に、思わず顔が引きつりそうになる。


「アボイ♪」


後ろの木陰から出てきたのは、予想通りアボイドだった。

背中に飛び込んでくるアボイドを身体から引き剥がし、急いで鞄で隠す。なんで着いてきちゃったんだろう、いつもならお継母様と大人しく家で待っててくれるのに…。

「アボイ!ボイ!」「分かったから静かに!」

とりあえずアボイドを静かにさせておく。

すると、後ろからは…生物研究同好会らしき人達が追っかけてきていたみたいだ。


「あっ…えと…り、りり…りす…?」

「…うん、僕はリスクルビダ・カモミート、よろしくお願いします」

「え、あ、はい!…あの、お、お!わたっ…私のなまっえはぐ、ぐる…、、」

「今、ここに竜が来ませんでしたかっ!?」

テンパってる男性と元気に話しかける女性。

「コリンズ嬢!?」

僕も一応次男とは言え伯爵子息だし、レオンハルト様やセラフィーナ様程じゃないにしろ、ある程度の認識はあるのだろうか。


「うーん、どうだろう?僕は見てないなぁ」

見たのは竜じゃなくてクンペルだし、と自分に言い訳をしておく。


「うぅ…ああ、ありがとうございます!…また見かけたら、」

「私達生物研究同好会に教えてくださいね!!!!!!!!!!」

僕が見かけていないと知ったら、嵐のように去っていく2人。

…生物研究同好会には変わった人達が多いって聞くけど、ホントに勢いが凄かった。この同好会から国の研究部に属する人も多くなると聞く。もしかしたらクンペルのことも僕より詳しく知ってるかもしれないけど、…でもまだ知らない人には話したくないしなぁ。

アボイドが解剖なんかされたら…と思うと、更に口を閉ざしてしまう。

そういえば、ティーアもそんなこと言ってたっけ。今度会ったら生物研究同好会には気をつけてねって言っておいた方が良いかな。


「…アボイ!」「あっ…ごめんごめん、」

勢い余って鞄で潰していたみたいだ。

アボイドを解放すれば、アボイドが膝の上に乗ってブルブルっと体を揺らした。

アボイドって本物の竜のように硬かったりふさふさってわけではなく、なんというか…ぬいぐるみみたいなんだよね。これがクンペルの特徴なのかな。まあ、僕自身本物の竜には遭ったことないんだけど…。

最近では想像上の架空の獣だ〜なんて言われてたりするし。分類的にも幻獣。だから、生物研究同好会の人達が追いかけてくるのも無理はないのかもしれない。出来れば辞めて欲しい。切実に。


「アボイ!ボイボイ!!!」

それから、恐らく家の馬車で一緒に来てしまったのだろうと思い、馬車を止める所まで移動しようと脚を踏み出す。

しかし、アボイドは反対側…校舎側に行こうとする。

僕の肩ごと持っていこうとする物だから、思わず立ち止まってしまった。どうかしたのか、と聞けば、アボイドは何かを必死で訴えてくる。


「…行きたいの?学園」「アボイド!アボイ!」

ちょっと違うっぽいけど、大体合ってそう。

長年一緒にいたからかそれくらいのことはなんとなく察せるようになってきたかもしれない。

でも家の人を待たせるわけには行かないしなぁと思っていると、アボイドが僕を強制的に浮かせてくる。…微妙に1㍉程度浮いているような気がして若干不安定な状態のまま校舎に入ってしまう。

いや、アボイド力強すぎるよ。

抵抗できずにズルズルと連れられていくけれど、流石に周りの目が気になるので、諦めてアボイドを抱っこすることに。アボイドは僕の腕の中から、向こう!とか、そこ!とかって指示を出してくる。


どこに行きたいんだ…と思った先。

待っていたのは…騎士学座学の部屋。1年生の頃は座学が中心だったからよく使っていたが、2年生になってから使う頻度は減ったんだよな…と思いつつ、部屋の扉が閉まっていることを確認する。


「ほら、閉まってるでしょ? 早く帰ろ、お継母様もきっと心配してるよ」

「アボ!アボイド!!!」

アボイドは僕の腕から飛び抜けて、そのまま隣の扉の前に飛んでいく。

隣は…確か準備室だ。座学で必要な物とか、武器の複製品が置いてあると聞いている。


「…残念だけどアボイド、」

僕はアボイドに近づいて部屋の前まで歩く。

アボイドを後ろから手に持ち、そのまま彼を覗き込んだ。隠れていた視界が広がり、アボイドの全身がよく見える。


「この部屋も多分閉まっ…」

「リスク???」


この部屋も多分閉まっている、そう言おうと思って声を上げたけれど、その前に前から聞こえてきた馴染みある声に阻まれる。

変な声が出てしまったことを自覚しつつ上を見上げれば、そこにいたのはレオンハルト様だった。

騎士学座学準備室の中から出てきたという事は何かあったのだろうか、それか生徒会の用事か。どちらにせよ、僕は真っ先にアボイドを後ろに隠す。

……レオンハルト様に変な人だって思われたくないし、セラフィーナ様やティーアにだって引かれたくないから。


「こんな所でどうしたんだ?」

「えと、あの…」

首を傾げながらそう聞いてくださるレオンハルト様に負い目を感じながら、「特に何も…」と呟いてしまう。


アボイドのことを話すか話さないか迷っている中、レオンハルト様は「そうか…」と言った後、更に口を開いた。

「それなら、少し手伝ってくれないか?恐らく君にも関係あることなんだ」

真剣なその瞳に、僕は直ぐ様頷く。

何があったのかは分からないが、今まで以上に真剣な表情だった。


思わずゴクリと飲み込んでいる所で、部屋に入るようにと促された為、そのまま部屋に入る。

中はなんとなく想像通りだったけれど、数人人が集まっていた。どの顔も一ヶ月前に一度は見たことある人達ばかりで。

それでも、全員が真剣な表情をしていたのだった。



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