5-A 異世界にきたセンの朝
皆様、お早うございます。
ヒーロータイム後のお楽しみ、変身女子高生の投稿が始まります。
五放送目は四話です。
では、始まり始まり。
旋は薄暗い部屋で目を覚ました。
左隣のベッドではテーイが、一つ開けて右隣のベッドではクリスが寝ている。
昨日の暗黒教団の襲撃事件が片付いた後、素材の売却に付き合ってくれたクリスの部屋に旋も泊めてもらっていた。
四人部屋だというそこは広さもベッドの柔らかさも申し分ない。
異世界で旋が泊まった部屋ランキング2位だ。なぜか1位が牢屋だが。
寝てる二人を起こさないよう旋は日課の基礎トレーニングを始める。
まずはストレッチ。
どこまでも伸びていく体をイメージしながら、ゆっくりと筋肉を伸ばす。
腕立て伏せ。
ベッドに両足を乗せて腕に負荷をかけ両手、腰に片手を乗せて右腕、左腕片方ずつ。
背筋。
ベッドの下に足を引っかけて、思いっきり体を反らす。そのままのポーズをしばらくキープ。力を抜いて床に伏せて休んだらまた体を反らす。
床がじゃりっとするじゃんと、部屋の中で靴を脱がない習慣に日本人の旋は文句をつける。
腹筋。
ベッドの下に足を引っかけて、体を曲げる。一番つらい所で姿勢をキープ。床に寝転んで休んだら体を捻って右、左、真ん中と繰り返す。
スクワット。
頭の後ろで手を重ねて腰を落とす。一番つらい体勢で十数えて立ち上がる。それをひたすら繰り返す。
フッフッフッっと薄暗い部屋に旋の呼吸音だけがしている。
基礎トレーニングが終わる頃、部屋の板だけで塞がれている窓の外側が明るくなって、ざわざわと活気に満ちてくる。
走っても大丈夫そうじゃんと、寝ている二人を起こさないように旋は部屋を出た。
玄関の掃除をしていた宿の主人に挨拶し旋は街をランニングする。
近くの村からきたのか野菜を積んだ荷車が、街の広場に向かって走っていく。
荷車と一緒に広場に入って、外周をぐるぐる走る。
広場には四種類の人がいるようだ。
まずは物を売ろうとしている人。
ここまで旋と一緒にきた荷物を運び込んでる人だ。引いてきた荷車から棒と布を取りだし即席のお店を組み立てている。
広場を仕切っている人。
人相とガラの悪い人が荷物を運び込んでいる人からお金を取って、店を出す場所を指示している。
合法なのか後で確認しようと旋は頭の中のメモ帳に書き込んだ。
買い物客。
まだ朝早いのに、大きな籠を持って店ができるのを待っている。
店が組上がったそばから近づいて行って商品を慎重に選んでいく。
買っていく量が多いので食べ物屋の仕入れっぽいじゃんと旋は感じた。
落ちた物狙いの子供。
継ぎはぎだらけの服を着た子供がガラの悪い人に追い払われながら、荷車から食べ物が落ちないか探している。
旋が見ていると落ちた食べ物はすぐ持ち主が拾わない限り、所有権がなくなるようだ。
荷車に轢かれそうになりながら、潰れたトマトのような野菜や折れた赤い大根を拾っている。
フードを深くかぶった子供が大根を拾って旋の前に走ってきた。弟か妹かわからない小さな子供と分けあって土だらけの大根にかじりつく。
なんとかするじゃんと、旋は心の中の火を少し大きくして宿に帰った。
宿に着いた旋は体を洗う事にした。
共同の浴室に向かうと宿の主人の子供が扉の前の椅子に座っている。
なんて名前だったじゃんと旋が子供の名前を思い出そうとしていると、女の子が手を出してきた。
名前を思い出すのを諦めて無口な少女の手に銅貨を乗せる。
指差された個室に入って服を脱ぐ。
個室の中は1×2メートルぐらいの部屋になっている。
2メートルの半分のところに扉があり、タイル張りの水浴び場と脱衣所を別けている。
水浴び場には金属の桶と、木の桶が一つずつ置いてある。
鎖で壁に繋がれている金属の桶には澄んだ水が入っており、旋は頭からかぶった。
ランニングで火照った体に冷たい水が気持ちいい。
空になった金属の桶には底からじわじわと見てわかるスピードで水がたまっていく。
旋は日本で見たことのない現象を興味深く見ながら手で体を洗っていく。
噂を信じているわけじゃないじゃんと言い訳しながら、胸に施す秘密の日課も忘れない。
旋は最後豪快に二杯水をかぶる事にした。
金属の桶から木の桶に水を移してじわじわと水がたまっていくのを待ってバシャッ、バシャッと水を浴びた。
さっぱりした旋は金属の桶からでる水で次使う人の為にタイルをながす。
浴室を綺麗にしたところで旋はまずいことに気づいた。
濡れた体を拭くものがない。
いい牢屋にはあったので忘れていた。
手で水滴を拭った旋は早く乾けと不思議な踊りを踊り始めた。
旋が不思議な踊りでなぜか有名なゲームと違って、自分の精神力を減らした上に所々濡れた服で部屋に戻るとテーイが起きていた。
開けた窓から射す日の光の中で膝まずいて両手の指をくみ、目を閉じて一心不乱に祈っている。
変な風に日焼けしそうじゃんとテーイに失礼な事を考えながら旋はお祈りが終わるのを待った。
旋の服が乾く頃ようやく祈りを終えたテーイが立ち上がる。
「おはようございます」
旋に、にこやかに朝の挨拶をする。
「体洗ってます?ちょっと臭いますよ?」
旋に、にこやかに酷いことを言う。
「今、洗ってきたところです・・・」
旋はズーンと書き文字が見えそうなぐらい項垂れた。
旋も気づいていた。
上着とズボン。それぞれ一枚しかない服をずっときている。
戦ったり逃げたり、運動量も多い。
洗ったのは運河に飛び込んだ時だけだ。まあ、普通の人は服のまま運河に飛び込んで泳ぐのを服を洗うと言わないが。
「これを使って下さい。ダンジョンでも使える優れ物です」
テーイが自分の荷物から陶器の小さな瓶を取り出す。
旋が蓋を開ける前から良い香りがする。
あまり、お風呂に入る習慣の無い人は香水を使っていたじゃんと思い出しながら、旋はテーイのお言葉に甘えた。
「センさんは今日はどうされますの?」
起きないクリスを放置して朝食を食べた後、テーイが聞いてきた。
「服とか、色々買いに行きます」
借金とかスキルとか色々やることはあるのだが、日常生活に必要な物が足りなすぎる。
「買い物の仕方はわかります?」
テーイが小さい子供に聞くような感じで言ってくる。
「買い物の仕方?」
品物とお金を交換する以外の方法があるのだろうか?ローン、カード決済、リボ払いなど聞いただけの言葉を思い出しながら旋は首をひねる。
「わかってませんね」
テーイがこの街の買い物の仕方を教えてくれる。
基本食べ物以外の屋体は値切られる前提の値段設定らしい。
値切らないと倍以上払う事になる。
あんまり値切りすぎると広場を仕切っている怖い人が出てくるそうだ。
反対に建物で商売しているお店は値切る必要が無い。
屋体と違って動けないお店はちゃんと信用第一を心がけているらしい。
その分お高くなってます。とテーイは話を締め括った。
「では私は戻ります。何かわからない事があったら気軽に神殿に来てください」
テーイが荷物を持って立ち上がる。
「神殿?」
旋が呟いた一言がいけなかった。
テーイの目がカッと開いて信じられない者をみつけてしまったと旋に伝えてくる。
「センさん。まさかあなたこの街に来て神殿巡りをしていないなんて事、無いでしょうね?」
テーイが目を座らせて低い声で旋に聞いてくる。
「いや、えーと。はい、してません」
上手い言い訳が思い付かず渋々旋は頷いた。
「なんて事!なんて事でしょう!」
テーイの視線は旋を通り越しては完全に何処かに行ってしまっている。
「センさん、いやセン。そこに座ってよく聞きなさい」
テーイが座っている旋にさらに座れと言って神殿巡りの説明をしてくる。
光と太陽の神。司るは戦い。
炎の神。 司るは知恵。
土と大地の神。司るは規律。
風と大空の神。司るは自由。
水と大海の神。司るは本能。
この五柱が世界を作ったと言われており、大きな街には必ず神殿があるそうだ。
街に初めてきたら五神殿に挨拶にいくのが常識らしい。
「行きましょう!さあ行きましょう!まずは私の神の神殿です!」
テンションの高いテーイに光と太陽の神殿に向かって手を引かれながら、旋は迂闊な一言を後悔していた。
この作品は特撮と異世界が天秤の両側に乗っております。
天秤が異世界に傾くとどうしてもお話が長くなりますね。




