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3-D 白銀の女狼

 3放送目はこのお話で終わりです。


 一時間以下の予約投稿はできないんですよね。

 もしできたら一分間隔で投稿するんですが、残念です。

「ヤバイ、まぢヤバイ!」

 旋は掴みかかってきた覆面改め、ソイルゴーレムの頭を蹴り飛ばす。

 普通の人間なら気絶するぐらいの蹴りだが、ソイルゴーレムの頭は取れてしまって、面白いぐらいに飛んでいく。

 頭のなくなったソイルゴーレムは動かなくなるが、仲間のゴーレムが頭を拾って土の表面が露出した断面に乗せると、復活して襲ってくる。

 襲ってこないなら、かわいいじゃんと旋は周囲のソイルゴーレムを砕いていく。

「無駄だ。そいつらは核を破壊しなければ倒せん。お前の体力が無くなるだけだ」

 ソイルゴーレムに戦わせて後ろで見ていたアレニエが、何故かソイルゴーレムの倒し方を教えてくれる。

「機嫌、良さそう、じゃん。何か、いいこと、あった」

 もっとなんか情報を漏らさないかと、旋は上がってきた息でアレニエに話しかける。

「ああ、最高の日だ。お前のお陰で位階をもらった。ゴーレムも。これで俺も組織の幹部だ」

 アレニエが機嫌よく答える。浮かれて口が軽くなっているようだ。

「なん、の、組織、じゃん」

「世界を支配する事になる組織だ。俺はその幹部になったんだ」

 旋が弱っていく。アレニエの気分は良いままだ。


 ついにソイルゴーレムの一体が旋の肩をまともに殴った。

「うぐっ」

 短い悲鳴をもらし、こらえきれず旋は水路に落ちる。

 水路は深く、足がつかない。


 水路に落ちて旋の頭が冷えた。今は一人だ。守らなければいけない人はいない。

「あ~、悔しいじゃん」

 旋は戦略的撤退を選択した。

 アレニエの狙いは旋だ。他人を巻き込まないよう隠れてやり過ごす。

 肩の痛みをこらえ、泳いでアレニエ達の対岸に上がる。


 アレニエ達は何故か追ってこない。

 旋は倉庫の間の細い路地を抜けようと走った。




「戻れ」

 アレニエの命令でソイルゴーレムが土の山に戻る。

「水に弱いのは不便だな」

 人間の形を留めた手で土の中の核を拾っていく。

「さて、ウサギ狩りだ」

 アレニエは水路の底を歩いて渡り、旋を追い始めた。




「あ~、もう土地勘ないじゃん」

 旋は倉庫の間をでたらめに走っていた。


 一度倉庫街を抜けたが、そこには有り合わせの材料で作った家が並んでいて、粗末な服を着た家族が、ずぶ濡れの旋を不思議そうに見てきた。

 この人達を巻き込めない。

 慌てて旋は引き返して倉庫街に戻っていた。

 

「ウサギちゃんどこですか~?」

 アレニエの聞き取りづらい声が倉庫の反対から聞こえてくる。

 相当浮かれているようだ、変身の影響でもあるのかと旋は疑問に思った。でも居場所を教えてくれるのは助かるじゃんと考えて、旋は声から遠ざかるように走る。


 走る旋の前でいきなり倉庫の石壁が内側から崩れる。

「ウサギいたぁ」

 アレニエの牙の生えた口の両端が上につり上がる。倉庫の壁を力まかせ壊して抜けて、ショートカットしてきたようだ。


「もう諦めて、神器を渡せ。今日は最高の日だ。逃がしてやるぞ?」

 アレニエが旋に言ってくる。

「嘘つけ。逃がす気なんてないじゃん」

 息を整えながら旋はアレニエを睨みつける。

「よくわかったな」

 アレニエが旋に襲いかかる。

 爪はヤバイ。右腕より左腕。

 旋は転がって向かって右側の下二本の蜘蛛の爪から逃れる。

 アレニエの人間の形の左手が、すり抜けようとした旋の背負っていた鞄を掴む。

「つぅかまえた」

 聞き取りづらい声で喜びながら、旋ごと振り回して鞄を奪う。

 振り回された勢いで旋は壁の穴から倉庫に放り込まれ、何か粉の入った袋に背中から叩きつけられた。

「ガッ、ハ、ヒュ」

息が詰まった。呼吸ができない。


「あれぇ、入って無いな?服の中か?」

 アレニエが律儀に鞄の蓋を開け、丁寧に一つ一つ入っていた物をだして、空になった鞄を覗き込んだあと放り出した。

 旋はやっと息が出来るようになったばかりだ。背中も痺れている。動けない。


「じゃあ、服を脱がすか」

 動けない旋にアレニエが近づいていく。

「くるな、変態!」

 旋は近くの袋を振り回してアレニエに中の粉を浴びせた。

 焦げたような香ばしいかおりが辺りに広がる。

「無駄、無駄」

 アレニエは濡れた体に粉を浴びながら、ソイルゴーレムに殴られた旋の肩を掴む。

「痛い、離せ」

 旋が腕を伸ばすが目や喉に届かない。変身したアレニエの方が腕が長い。

 蜘蛛の爪が旋の上着を裂いていく。

 後少しで胸が見える所でアレニエが旋を離してよろけ始めた。

「なんだ?気持ち悪い。目がまろる」

 アレニエはよろけ始めた。呂律もあやしくなっていく。


 旋が浴びせた袋の中身はコーヒーに似た飲み物の材料だった。

 地球の蜘蛛と一緒でアレニエもカフェインには弱かったようだ。

 酔ったようにふらついている。


 逃げないと。旋は走ろうとするが、足元がおぼつかない。立ち上がるだけで限界だ。


「殺す」

 浮かれた気分が落ち着いたのか、冷静に言ったアレニエが、旋を八つの目で睨んで蜘蛛の爪を構えた。ふらつきながら旋に迫る。

 最後まで諦めない。せめてヤツにキズをつける。

 アレニエを睨んで旋は握った拳に力を込めた。

 旋とアレニエの視線が火花を散らす。


「そこまでよ!たとえ太陽が見逃しても、私の鼻は悪を逃さない!」

 ヒーローのようなセリフがいきなり倉庫に響き渡った。


「誰だ!ウサギの仲間か?」

 アレニエは八つの目のいくつかで声のした方向を見た。元の二つの目は旋から離れない。

「へ?」

 いや、知らない人じゃんと思いながら、旋もアレニエから目を離さず、音だけで声の主を探す。


 壁の穴から飛び込んできた狼男がアレニエを蹴り飛ばす。

 いや、胸がある。狼女のようだ。


 何々、何が起きている?異世界にもヒーローがいた?旋が混乱していると、白い毛並みを輝かせ、狼女がアレニエと戦い始めた。

 スピードのある走りと、高さのあるジャンプからの攻撃が得意なようで、壁や積んである荷物を足場に跳び回る。

「わちょ、回りもよく見て!」

 旋の叫びは遅かった。狼女が跳ぶのに蹴った荷物が崩れて、旋は下敷きになった。


「あ。大丈夫?ちょっと、やだ。なんで逃げないの!」

「今日の勝負は預けてやる」

 狼女の慌てた声とアレニエの捨てゼリフを、遠くに聞いて旋は気を失った。




 目を開けると見覚えのある天井が見えた。

 今日の朝見たヤツじゃんとベッドから出て一番いい牢屋の扉を押す。

 しっかり鍵がかかっていた。


 部屋の中を探すが鍵は無い。

 本ノ郷旋。二日連続、三回目の逮捕だった。

 今回は旋がヒーローに助けられました。

 セカンド変身英雄の登場です。

 

 では次回、うまく書けたら日曜十時にまた投稿致します。お楽しみに。

 

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