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君の隣が、僕の帰る場所  作者: 玲瓏さん
中学1年生編
9/52

第8話 なくなった物


    * * 勝也視点 * *


 日曜日の午後、いつもの公園の脇で、翔太が足を止めた。


「あれ、本じゃね?」


 植え込みの隙間に、雑誌が何冊か重なっていた。

 誰かが捨てていったらしい。上に載っていた葉が風で動き、表紙が見えた。


 エロ本だった。


 俺は翔太を見た。

 翔太も俺を見た。

 春樹だけは見ていないような顔をしていたけれど、歩くのは止まっていた。


「……誰か、落としたのかな」

「こんなとこに何冊も落とす?」


 春樹に言われ、確かに、と思った。

 翔太がしゃがみかけたので、俺はその肩をつかんだ。


「何するの」

「いや。どんなのかと思って」

「ここで?」


 道の向こうから、自転車が来ていた。

 俺たちは何となく同じ方へ顔を向け、通り過ぎるまで黙った。


「帰ろ」


 春樹が言った。

 その言い方があまりにも普通だったので、俺も頷いた。


「そうだね」

「別に、持って帰るわけじゃねえしな」


 翔太も立ち上がった。

 3人で歩き出し、いつもの分かれ道で翔太と別れた。


「あとで戻ったりすんなよ」

「翔太でしょ、それは」

「しねえよ」


「俺も戻らないよ」


 言ってから、誰にも聞かれていなかったことに気づいた。

 春樹がこちらを見たので、付け足す。


「一応ね」

「今ので、余計に怪しくなったよ」

「春樹は?」

「戻らない。家で本読む」

「よし。じゃあ、誰も戻らないな」


 翔太が、なぜか満足そうに頷いた。


 春樹が笑い、俺も笑った。

 翔太は手を上げ、そのまま家の方へ歩いていった。


 春樹とはマンションまで一緒に帰った。

 3階へ上がり、隣り合った部屋の前で別れる。


「じゃあ、また学校で」

「うん。また明日」


 俺は家へ入り、自分の部屋で漫画を開いた。

 2ページ読んだところで、さっきの植え込みが頭に浮かんだ。


 あの道は、あまり人が通らない。

 でも、誰も通らないわけではない。


 もう、なくなっているかもしれない。


 そこまで考え、漫画を閉じた。

 なくなっていたら、それでいい。別に困らない。

 ただ、あるかどうかが少し気になっただけだった。


     * * *


 コンビニの袋を持って戻ると、翔太がいた。


 植え込みの前で、俺たちは顔を見合わせた。

 翔太は何も持っていなかった。


「……何してんの」

「散歩」


 翔太はすぐに答えた。


「さっき帰ったばっかりなのに?」

「勝也は」

「買い物の帰り」


 袋を少し持ち上げた。

 中には、買ってきたジャンプが入っている。

 翔太は袋を見てから、俺の顔を見た。


「それ、間に挟むためだろ」

「……翔太は、何も持ってないの?」

「話変えたな」

「持って帰るつもりだったんでしょ」

「手で持てるだろ」


 あまりにも当たり前のことみたいに言うので、返事に困った。

 そのまま家まで歩いていくつもりらしい。


「俺たち、何の話してんだろうね」

「お前の袋の話」

「翔太の散歩の話じゃなかった?」

「買い物の帰りって言ったやつに言われたくねえよ」


 どちらの言い訳も、もう通じていなかった。


「知ってる人に会ったら、どうするの」

「……その時、考える」


 考えていなかったのか。

 俺が笑うと、翔太も少し笑った。


 その向こうに、人が来た。

 リュックサックを背負った春樹だった。


 俺たちを見つけた春樹は、止まった。

 それから、何も言わずに向きを変えた。


「帰るなって!」


 翔太が呼び止めた。


「まだ何も言ってないでしょ」

「今、帰ろうとしてたろ!」


 春樹は少し迷ってから、こちらへ来た。

 俺の袋を見て、翔太の手元を見て、最後に植え込みへ目を向ける。


「……2人とも、戻らないって言ってなかった?」

「春樹もね」


 俺が答えると、春樹は黙った。


「そのリュック、何入ってんの」


 翔太が聞いた。

 春樹は、別に、と言いながら肩から下ろした。

 開き口から、何冊かの本とノートが見えた。


「今日、学校だっけ?」

「違うよ」

「何でノートまであるんだよ」

「開けた時に、すぐ見えたら困るでしょ」


 俺は自分の袋を見た。

 そこまでは考えていなかった。

 翔太はまだ、何も持っていなかった。


「何で2人とも、そんな準備いいんだよ」

「翔太が何も考えてないんだと思う」


 春樹が言った。

 翔太は何か言い返そうとして、やめた。


「……で、春樹は何て言って家出たんだよ」

「ちょっと出かけてくるって」

「リュック持って?」

「何も聞かれなかったから、そこまで説明してないよ」

「勝也は?」

「俺は、買い物」

「本当に買ってきたもんな。準備良すぎだろ」

「翔太も、袋欲しかったら寄ってくればよかったのに」

「いらねえよ。持てるって言ってるだろ」


 おかしくなって、俺は笑った。

 あれだけ戻らないと言っておいて、3人とも戻ってきた。

 誰かに会わないようにと考えていたのに、会いたくなかった相手が、ちゃんと2人ともいた。


「これ、学校で言うなよ」


 翔太が言った。


「最初に言いそうなの、翔太じゃない?」

「言わねえよ。言ったら俺も困るし」

「じゃあ、俺が袋持ってきたことも言わないでね」

「それ言ったら、リュックのやつも言うだろ」

「俺の方見ながら言わなくていいよ」


 春樹がリュックサックを閉じた。


「言ったら、自分がいたことも言うんだよ」

「……そうか」


 春樹も笑った。

 結局、俺たちはそれぞれ1冊ずつ持って、今度こそ帰ることにした。


 翔太は、本当にそのまま手に持っていた。

 道へ出る直前に俺の袋を見たので、先に口を閉じた。


「自分で持てるんでしょ」

「まだ何も言ってねえだろ」


 俺と春樹が笑うと、翔太も笑った。

 帰り道では、知っている人が来ないか、3人で何度も前を見た。


    * * 優子視点 * *


 翌日の月曜日、家を出る前に、体操服の袋を開いた。


 洗ってもらった上着と、畳んだズボンが入っている。

 今日は体育館で授業を受ける日だった。

 連絡帳の体育の欄を指で確かめ、袋の紐を引いた。


「優子、忘れ物ない?」


 廊下から、お母さんの声がした。


「うん。今、確かめたから大丈夫」


 体操服の袋をリュックサックへ入れ、口を閉じた。

 今日は忘れていない。

 自分で確かめてから、玄関へ向かった。


 教室へ着いてからも、袋には触っていた。

 教科書を出す時に邪魔になったので、取り出して机の横へ掛けた。

 椅子へ座ると、紐の端が膝に当たった。

 引っかけないように、少し内側へ寄せた。


 そこまで、覚えていた。


 それなのに、体育の前の休み時間には、なくなっていた。


 机の横を見た。

 掛かっているのは、リュックサックだけだった。

 その下へかがみ、机の脚の向こうまで見た。


 落ちていなかった。


 もしかしたら、しまい直したのかもしれない。

 リュックサックを椅子へ置き、中の物を出した。

 教科書と、筆箱と、プリントを挟んだファイル。

 底へ手を入れても、指に触れるのは布だけだった。


「富田さん、どうしたの?」


 隣の列の女子が、体操服の袋を持ったまま聞いた。


「……体操服が……なくて……」

「机の中は?」

「……見たんだけど……」


 もう1度、机の中を確かめた。

 その子もかがんで、床を見てくれた。

 椅子を少し動かしても、何も出てこなかった。


「落ちてないね。朝はあった?」

「……うん。ここに……掛けたの……」


 机の横を指した。

 朝、自分の手で持ち上げた紐が、どこにもなかった。


「何、なくしたの?」


 莉奈さんが近づいてきた。

 私は顔を上げた。


「……体操服の……袋……」

「家に忘れたんじゃない?」

「……持ってきたの。朝は……ここに……」

「本当に? 家で入れたつもりになってただけじゃなくて?」


 私は首を振った。

 膝に当たった紐を、内側へ寄せた。

 それは、家ではできないことだった。


「……ここに、掛けたから……」

「じゃあ、どっか落としたんでしょ」


 莉奈さんは、私の机の下を見た。

 私も、同じところへ目を向けた。

 さっきから、何度も見ている場所だった。


「先生に言った方がいいんじゃない? もう着替えないと」


 探してくれた子が言った。

 教室には、もう男子はいなかった。みんな着替えるために移動していて、女子も準備を始めていた。


 机の上へ出した物を戻した。

 教科書をしまえば、その下から袋が出てくるような気がした。

 でも、最後の1冊を持ち上げても、机の上が空いただけだった。


「……探してくれて、ありがとう……」

「ううん。見つかるといいね」


 私は頷き、制服のまま教室を出た。


     * * *


 体育館の入口で、先生に声をかけた。


「……あの、先生……」

「富田、どうした?」

「体操服が……なくなって……」


 先生は、私の制服を見た。


「忘れたのか?」

「……持って、きたんです。朝、机の横に……あって……」


 そこまで言うと、先生は私の顔へ目を戻した。


「持ってきたけど、見つからないんだな」

「……はい……」

「教室の後ろとか、別の机に掛けていないかも見た?」


 首を振りかけて、途中で止めた。

 周りは見た。でも、教室の全部を見たわけではなかった。


「……自分の席と、近くは……見ました……」

「机の中や、鞄の底は?」

「……中の物、出して……見ました。近くの子も……探してくれて……」

「そうか。持ってきたのは袋ごとだな?」

「……はい。上下、入ってます……」

「じゃあ、授業のあとに、もう1度探してみよう。見つからなかったら、担任にも伝えておいて」

「……はい……」

「今日は制服で無理に参加しなくていいから。座って、授業でやったことを書いておこう」

「……分かりました……」

「今日は、体調が悪いわけじゃないんだな?」

「……大丈夫、です……」


 先生は頷き、壁際の見学する場所を示した。

 私はそちらへ行き、座った。


 外の授業を見学することはあった。

 でも、今日は体育館で、みんなと同じようにできるはずだった。

 そのために、昨日の夜も、今朝も、体操服を確かめていた。


 列の端へ、莉奈さんが並んだ。

 美咲さんと話しながら笑っている。

 私の方を見たような気がして、膝へ目を落とした。


 誰かが動かしたのだろうか。


 胸の辺りが冷たくなった。

 これまでにも、私がいない間に物が汚れていたことがあった。

 でも、今日、袋を動かしたところを見たわけではない。

 早く教室へ戻って、もう1度探したかった。


 笛の音がして、顔を上げた。

 みんなが動き始めた。

 私も、見学した内容を書こうとした。


 膝の上の紙には、まだ日付しか書けていなかった。


     * * *


 授業が終わると、ほかの人より先に教室へ戻った。


 机の横は、朝と同じままだった。

 床へかがみ、隣の机との間を見た。

 教室の後ろへ回って、棚の下や、窓際も確かめた。


 ない。


 誰かが拾ってくれているなら、どこへ置くだろう。

 教卓の上にも、黒板の下にも、それらしい袋はなかった。

 担任の先生に、言いに行かなければいけない。


 入口へ向き直った時、莉奈さんの声がした。


「これじゃないの?」


 振り返ると、莉奈さんが掃除用具入れのそばを指していた。

 壁との狭い隙間に、布の端が見えていた。


 近づいて、しゃがんだ。

 袋だった。

 私の体操服を入れてきた、同じ袋だった。


 紐を持って引き出すと、下の方に埃がついていた。

 口を開き、中を確かめた。

 上着も、ズボンも入っている。

 名前のところも、私の字だった。


「あったじゃん」


 美咲さんが言った。

 私は袋を持ったまま、立ち上がった。


「……ここには、置いて……ない……」

「誰かが拾って、置いたんじゃないの?」


 美咲さんは、掃除用具入れの方を見た。


「床に落ちてたら邪魔だし」

「ちゃんと探せば、あったんだね」


 莉奈さんが言った。


「最初から、そっちも見ればよかったのに」


 私の席からは、少し離れていた。

 落ちただけで、ここまで来るだろうか。

 拾ってくれた人は、どうして隙間へ入れたのだろう。


 聞こうとして、2人の顔を見た。


「……朝は、机の横に……」

「だから、もう見つかったんでしょ?」


 美咲さんが言った。

 莉奈さんも頷いた。


「なくなってなかったんだから、よかったじゃん」


 中の服が残っていたことは、本当に、よかったと思った。

 でも、どうしてここにあったのかは、分からないままだった。


「何か言うことないの?」


 莉奈さんに聞かれた。

 袋の汚れたところを、自分の方へ向けた。


「……見つけてくれて、ありがとう……」


 そう答えると、莉奈さんは満足したように離れていった。

 美咲さんも、自分の席の方へ戻った。


 私は袋を机の上へ置いた。

 埃を手で払おうとして、制服につきそうになり、やめた。

 ハンカチで少しずつ拭いたあと、体操服を詰め直した。


 今度は机の横へ掛けなかった。

 リュックサックの奥へ入れ、ファイルをその前に立てた。

 口を閉じてから、まだ開いているところがないか、指でなぞった。


 これなら、外からは見えない。

 誰かが動かそうとしても、すぐには取り出せない。


 そこまで考えて、手を止めた。

 誰が触ったのか、私は知らない。

 でも、さっきまで掛けていたところへ戻す気には、どうしてもなれなかった。


 みんなの着替えが終わり、男子も教室へ戻ってきた。

 次の授業の教科書を出していると、勝也くんが近づいてきた。


「富田、体操服、見つかった?」


 私は顔を上げた。


「うん……見つかったよ」

「よかった。さっき、探してたって聞いたから」


 勝也くんは、私の机のそばへしゃがんだ。

 座っている私と、目の高さが近くなった。


「体育、出られなかったんだよね」

「うん。でも……もう大丈夫」

「体育館の日だったのに、残念だったね」

「……うん。ちゃんと持ってきたんだけど」

「分かってるよ。富田、朝、自分で掛けたって言ってたんでしょ」


 私は頷いた。

 そのことまで、聞いてくれていた。


「どこにあったの?」


 袋を見つけた隙間を思い出した。

 勝也くんなら、朝は別のところにあったという話も、最後まで聞いてくれるだろうか。


「教室の、後ろの方。私……」


 続けようとした時、美咲さんがこちらを見た。

 何かを言われたわけではなかった。

 それでも、袋を持っていた時に聞いた声が戻ってきた。


 もう見つかったんでしょ。


「……そっちまで、ちゃんと見てなくて」


 自分が置き忘れた物を、うまく探せなかったみたいだった。

 でも、美咲さんたちの前で、その先まで話す勇気がなかった。


「そっか。見つかってよかったね」


 勝也くんが言った。

 私は頷いた。


「また探すことあったら、俺も手伝うよ」

「……ありがとう」


 嬉しかった。

 もっとちゃんと探せばよかったのに、とは言われなかった。


 だから余計に、今なら話せるのではないかと思った。

 口を開きかけたところで、次の授業の先生が入ってきた。

 勝也くんは立ち上がり、自分の席へ戻っていった。


 私は教科書を開いた。

 隣で聞いていてほしかった。

 でも、話すことを選べなかったのは、私だった。


     * * *


 その日の夜、お母さんが体操服の袋を見つけた。


「こっちにも埃ついてるね。袋も洗っておこうか」


 リュックサックから出し、洗濯物のそばへ置いたところだった。

 お母さんの指す縫い目には、灰色の埃が少し残っていた。


「うん。お願い」

「体育館の床に置いたの?」


 私は、袋を見た。

 体育館では、持ってさえいなかった。


「……教室でついちゃって」

「そっか。中も出しておいてね」

「袋も洗って大丈夫?」

「大丈夫よ。いつも洗ってるでしょ。気になるところ、ほかにもある?」


 裏返して、底の縫い目を見せた。


「ここ。拭いてみたけど、取れなかったの」

「そこも洗おうね。自分で拭いてくれたの?」

「うん」

「ありがとう。ハンカチ使ったなら、それも出しておいて」


 責めるような声ではなかった。

 汚れた物を洗ってくれる、いつものお母さんだった。


 袋の中から、上着とズボンを出した。

 朝に入れた時の折り目が、そのまま残っていた。

 今日は着なかったと言おうかと思った。

 けれど、どうしてと聞かれたら、どこまで説明すればいいのか分からなかった。


 お母さんが学校へ聞いてくれたら、先生は莉奈さんたちにも聞くだろうか。

 袋を見つけてくれたのに、疑ったと言われるかもしれない。

 明日、教室で何と言われるのかを考えると、喉が詰まった。


「明日は、体育あった?」

「明日はないよ」

「じゃあ、乾いてから入れ直そうね」


「乾いたら、自分で入れるね」

「うん。畳んで、いつものところに置いておくね」

「ありがとう」


 私は頷いた。

 お母さんが洗濯物を持っていってから、空のリュックサックを開いた。


 次は、奥へ入れておこう。

 机の横には、掛けない。

 席を離れる前には、口が閉まっているか確かめる。


 それなら、同じことにはならないはずだった。


     * * *


 2日後の昼休み、図書室の当番から戻ると、国語のノートが机に出ていた。


 机の中へしまっていったはずだった。

 手に取って開くと、表紙の裏に、太い黒い字があった。


 きもい。


 胸が詰まった。

 その下にも、来るな、と書かれていた。

 何度見ても、同じ言葉だった。閉じようとした指が、表紙の端で止まった。


 消しゴムを出して、端をこすった。

 少しでも薄くなればと思って、同じところを何度もこすった。

 黒い線は残ったままで、紙の方が毛羽立ってきた。これ以上こすったら穴が開きそうで、手を止めた。


 近くで椅子が引かれた。

 私はノートを閉じた。


 私がいない間に、誰かが開いて書いた。

 誰なのか、見ていない。近くで話している人の声が聞こえても、顔を上げて確かめるのが怖かった。


 どうして、私の物にまで。


 買ってもらってから、まだ使えるページがたくさんあった。

 前の授業で先生の説明を書いたところも、間違えた答えを直したところも、捨てたくなかった。

 それなのに、次に表紙を開ければ、またあの言葉が見える。


 端の席で、勝也くんが鳥居君と話していた。

 ノートを持っていけば、何が書かれたのかは分かってもらえる。

 けれど、勝也くんにもあの字を読まれるのだと思うと、立ち上がれなかった。

 誰かにそんなふうに思われている私を、見せたくなかった。


 ノートを机の中へ戻した。

 次に使う時は、表紙の裏を見ないで開こう。

 そう考えたら、明日の国語の授業まで怖くなった。

 何も書かれていなかった時と同じように使いたいだけなのに、それができなかった。


     * * *


 落書きを見つけた翌日には、また体育の授業があった。


 洗ってもらった袋は、リュックサックの奥に入れてきた。

 教室へ着いてからも出さなかった。

 前の時間の教科書をしまう時、袋があることを手で確かめた。


 ちゃんと、ある。


 そこでようやく、少し安心できた。

 ほかの人も同じくらい持ち物を確かめているのか、気になって周りを見た。

 友達に呼ばれた子が、開けたままの鞄を置いて席を離れた。

 私は、自分のリュックサックの口を閉じた。


 体育の前になり、男子が教室から出ていった。

 女子たちが体操服を取り出し始める。

 私も袋を机へ載せ、紐を緩めた。


「あれ?」


 莉奈さんの声がした。

 リュックサックの中を見て、机へ筆箱を置いていた。


「体操服、ないんだけど」

「忘れた?」


 美咲さんが聞いた。


「持ってきたって。朝、入れたし」


 私は自分の袋を押さえた。

 この前も、同じことを言った。

 私は持ってきたと答えても、家に忘れたのではないかと聞かれた。


 莉奈さんは、机の中へ手を入れた。

 何も出てこなかったのか、椅子を引く音がした。


「どこ行ったの。さっきまであったのに」


 その時、目が合った。


「何?」


 莉奈さんが言った。

 私は慌てて首を振った。


「……ううん……」

「何で見てんの?」

「声が……聞こえたから……」


 莉奈さんが、私の机へ近づいてきた。

 まだ誰も着替え始めていなかった。

 近くの子たちも手を止め、こちらを見た。


「この前、自分のなくなってたよね」


 何を言われているのか、すぐには分からなかった。


「……うん……」

「だから、仕返し?」


 私は顔を上げた。

 莉奈さんは笑っていなかった。


「……違う……」

「私の、どこやったの」

「知らない……私、触って……ない……」


「朝、確かに入れたんだから。リュックになかったら、誰かが出したんでしょ」

「……でも、私……」

「この前、自分のがなくなったの、私のせいだと思ってたんじゃないの?」


 急いで答えようとした。

 でも、声が小さくなって、最後の方はうまく出なかった。


 仕返しなんて、考えていなかった。

 今日は自分の物がなくならなければ、それだけでよかった。


「じゃあ、何でこっち見てたの?」

「それは……声が……」

「知ってるから、見てたんじゃないの?」


 違う。

 同じ言葉ばかり、頭に浮かんだ。

 どう言い直せば分かってもらえるのか、分からなかった。


「……私、やってない……」

「この前の、まだ気にしてるんでしょ?」


 美咲さんも近づいてきた。


「自分でなくしただけなのに、ずっと変な顔してたもんね」

「なくしたんじゃ……朝は、机に……」

「それ、私たちがやったって言いたいの?」


「……誰が、って……言って、ない……」

「じゃあ、何で今、その話するの? こっちは莉奈のがないって言ってるんだけど」


 私は首を振った。

 言っていないことまで、私の言葉になっていった。

 朝あった場所を説明したいだけなのに、その続きに、誰かを疑ったという話を置かれてしまう。


「……そうじゃ、なくて……」

「だったら返してよ」


 莉奈さんの手が、肩へ当たった。

 押され、後ろへ足を引いた。

 すぐ後ろに机があって、腰の横が角にぶつかった。


 机の脚が、床を擦った。

 その音に、体がすくんだ。


「……っ」


 痛かった。

 机の端をつかみ、倒れないように足を踏み直した。

 莉奈さんは、私が押さえたところを見なかった。


「何でそんなに隠すの?」

「隠して……ない……」


 自分の袋が、机の端に寄っていた。

 それを見た莉奈さんが、顎で示した。


「それは?」

「……私の……」

「見せて」


 開き口を広げた。

 中の上着を出すと、莉奈さんは名前を見ようとした。

 私は襟の内側を開き、自分の名前を見せた。


「……私の、だよ……」

「それしか持ってないの?」


 名前を見せれば、分かってもらえると思った。

 でも、莉奈さんは私のリュックサックへ目を向けた。


「自分のは持ってても、私のをどっかに置いたかもしれないじゃん」

「置いて……ない。触ってないの……」

「ずっとそればっかり。ちゃんと話してよ」


「……ほんとに、知らない……」


 出した上着を畳もうとした。

 その腕を、莉奈さんにつかまれた。


「まだ話してるんだけど」


 手首を引かれ、指から服が滑りかけた。

 反対の手で、慌てて受け止めた。


「逃げないでよ」

「逃げて……ない……」


 片づけようとしただけだった。

 床へ落としたくなかった。

 どちらも、言い終わる前に喉へ引っかかった。


 つかまれたところが痛かった。

 引き抜こうとしたら、もっと強く握られる気がした。

 私は腕を動かせないまま、莉奈さんの手を見ていた。


「……痛い……」


 声に出した。

 莉奈さんは、手を離さなかった。


「だから、どこにあるか言ってってば」


 知らないのに。


 場所さえ言えば、手を離してもらえるかもしれない。

 でも、本当に何も知らなかった。


「莉奈、こっちは?」


 玲奈さんの声がした。

 莉奈さんの机のそばに置かれた、別の手提げを指していた。


「そっち、見た?」


 莉奈さんの指が、ようやく離れた。

 私は腕を体の近くへ戻した。

 手首に触れたいのに、触っているところを見られたくなくて、上着を持ったままにした。


 莉奈さんが手提げを開いた。

 少し探してから、袋を引っ張り出す。


「あ、あった」


 あまりにも、普通の声だった。


「こっちに入れたんだった。忘れてた」


 私は、その袋を見た。

 ずっとそこにあった。

 私の机にも、リュックサックにも、なかった。


「ごめんね」


 莉奈さんが、こちらを見て言った。

 少し笑っていた。


「もう、何してんの」


 美咲さんが笑った。

 莉奈さんも、だって、と言いながら袋を開いた。


「早く着替えよ。遅れちゃう」


 話が終わった。


 私は、まだ体操服を抱えていた。

 つかまれた手首は、じんじんしていた。

 腰をぶつけたところも、向きを変えると痛かった。


 見つかって、よかった。

 もう返してと言われなくて済む。

 そう思って息を吐いたあと、どうして私がこんなに安心しなければいけないのかと、悲しくなった。


 最初から、何もしていなかった。

 触っていないと、何度も言った。

 その時は聞いてもらえなかったのに、莉奈さんの袋が出てきたら、それだけで終わった。


 私が怖かったことは、誰にも聞かれなかった。


「富田さん、机、戻すね」


 近くにいた子が、ずれた机の反対側を持ってくれた。

 私も端へ手をかけた。

 さっきぶつかった角を避け、少しずつ元の列へ合わせる。


「……ありがとう……」

「大丈夫? 富田さんじゃなかったのにね」


 私は頷いた。

 見ていてくれた人がいた。

 私ではなかったと、言ってくれる人がいた。


「……私、触って……ないの……」

「うん。自分の鞄にあったんだもんね」


 その子は莉奈さんの方を見て、声を少し落とした。


「見つかってよかったね」


「……うん……」

「もう少しこっちかな。隣の机と、そろってないね」

「……これくらい……?」

「うん。ありがとう。こっちは押さえてるから、もう大丈夫だよ」


 見つからなかったら、今も返してと言われていたのだろうか。

 その子にまで、そう聞くことはできなかった。


 莉奈さんが、すぐ後ろを通った。

 私は、机へ置いていた手を引っ込めた。

 考えて動かしたのではなかった。


「何。そんな避けなくてもよくない?」


 莉奈さんが言った。


「……ごめん……」

「もう謝ったじゃん」


 頷いた。

 謝ってもらったことは、分かっていた。

 でも、また手が近づいてきたら、つかまれると思ってしまった。


 莉奈さんが離れてから、体操服の袋へ手を伸ばした。

 紐の結び目をほどくのに、少し時間がかかった。

 指が震えていることに気づかれたくなくて、顔を伏せた。


     * * *


 体育館へ着く頃には、手首の赤くなったところは薄くなっていた。


 みんなと並んで、先生の話を聞いた。

 今日は体操服を着ている。

 見学する理由を説明しに行く必要もなかった。


 準備運動で腕を動かすと、腰の横に少し痛みが残っていた。

 それでも、歩けたし、動けた。

 教室で何かあったようには、見えていないのだと思った。


 先生が人数を確かめた。

 返事をした時、声が思ったより小さくなった。


「富田、いるな」

「……はい……」


 先生は次の人へ移った。

 痛いところがあると、今なら言えるかもしれなかった。

 でも、少し離れた列に莉奈さんがいて、声が聞こえると思うと言えなかった。


 授業の途中、順番を待つ場所で、誰かの腕が近づいた。

 私は半歩、横へずれた。


「ごめん、通るね」


 後ろへ行きたかっただけだった。


「……ううん……」


 相手が通ってから、足元を見た。

 この子は、何もしていない。

 さっき押されたからといって、みんなが同じことをするわけではない。


 そう分かっているのに、体の方が先に避けてしまった。

 周りの人と離れすぎないように並び直すだけで、疲れた。


 授業の終わりに、先生が使った物を片づけるように言った。

 私は、自分が使った物を先に戻した。

 どこへ置いたかを確かめてから、列の後ろへ向かった。


 今日は、何もなくしていない。

 誰の物も持っていない。


 何度も、心の中で確かめていた。


     * * *


 給食が終わってから、綾香さんが来た。


「富田さん、今日、図書室行く?」


 私は、膝に置いた本から顔を上げた。

 学校で借りている本だった。

 朝からまだ、開けていなかった。


「……今日は……ここで、読もうかな……」

「そっか。私、返す本あるから行ってくるね」

「……うん……」


 綾香さんが持っている本へ、目が向いた。

 そちらの方が、教室より静かに読める。

 ここを離れたかった。

 美咲さんたちの声を聞かずに、少し座っていたかった。


「一緒に行く?」


 私が見ていたからか、綾香さんがもう1度聞いた。


「……返すだけ……?」

「ううん。新しいのも見ようかなって。富田さん、それ、まだ途中?」

「……うん。もう少し……あるから……」

「じゃあ、続き読んでてもいいよ。私、棚見てると時間かかっちゃうし」


 綾香さんが、本を持ち直した。


 嬉しかった。

 今、頷けば、隣を歩いてもらえる。


 机の横へ目を落とした。

 リュックサックには、体操服の袋が入っている。

 ほかにも、教科書や、部活で使うファイルがあった。


 席を離れている間、誰も触らないだろうか。

 全部持って図書室へ行ったら、どうしてそんなに荷物があるのか聞かれるだろうか。

 理由を考えているうちに、綾香さんを待たせていた。


「……ここで、大丈夫……。ありがとう……」

「うん。またあとでね」


 私は頷いた。

 綾香さんが出ていくのを見送ってから、本を開いた。


 挟んでいた栞を、机へ置いた。

 前に読んだところを少し戻って、話を思い出そうとした。

 でも、教室の後ろで椅子が動くと、顔を上げてしまった。


 ここに残れば大丈夫だと、さっきは思っていた。

 けれど、朝もここにいて、自分の物をちゃんと持っていた。

 それでも、やったのは私だと言われた。


 どこにいれば、安心できるのだろう。


 本の同じ行へ、何度も目が戻った。

 続きは気になっているのに、文字を読んでいる間にも、教室の声を聞いてしまう。


 机のそばへ、別の子の袋が落ちた。

 椅子を動かした時に、引っかかったらしい。


 拾おうとして、手を止めた。


 私が持っていたら、また、どうして持っているのかと言われるかもしれない。

 床にあったと説明しても、信じてもらえるだろうか。


「……あの……」


 持ち主の子が振り返った。


「……袋、落ちてる……」

「あ、ありがとう」


 その子は拾い上げ、今度は椅子の上へ置いた。

 私は本へ目を戻した。


 拾って渡すだけだった。

 今までは、こんなことで迷わなかった。

 手を出さずに済んだことへほっとして、そんな自分が嫌になった。


     * * *


 帰りの会が終わると、私は机の中の物をまとめた。


 部活のファイルを出し、ほかの物はリュックサックへしまう。

 椅子の音が近くでしたので顔を上げると、勝也くんだった。


「富田、今から部活?」

「うん。勝也くんも?」

「うん。少し話せるかなと思って」


 勝也くんは、隣の空いた椅子へ座った。

 私の顔を見て、少し首を傾げる。


「疲れた?」


 頷きそうになった。

 授業を受けて、給食を食べて、掃除をした。

 いつもと同じだけのことをしたはずなのに、もう、家へ帰りたかった。


「……ちょっとだけ」

「そっか。今から、まだ部活あるもんね」

「うん」


「今日は、曲を合わせるの?」

「少しずつ……最初から全部は、まだ難しいから」

「そっか。俺が聞いた時も、何回か同じところ吹いてたね」

「できないところは、何回もやるの。ゆっくりだったら、できることもあるし」

「速くすると、難しくなるんだ」

「うん。でも、前よりできるようになったところもあるよ」

「じゃあ、練習した分、できること増えたんだね」


 私は頷いた。

 その話なら、嬉しかったことを言えた。


 勝也くんは、私が言い終わるのを待っていた。

 莉奈さんみたいに、返事を急がせなかった。


 今日、何もしていないのに疑われた。

 違うと言っても、聞いてもらえなかった。

 肩を押されて、手も痛かった。

 昨日、ノートに書かれた言葉も、まだそのままだった。


 勝也くんへ話したかった。

 私が何もしていないことを、信じてほしかった。


「……あのね」

「うん?」


 顔を上げた。

 廊下の入口で、美咲さんと莉奈さんが話していた。

 こちらを見ているのかは、分からなかった。


 今ここで話したら、明日、勝也くんのいないところで何と言われるだろう。

 どうして言ったのかと、また手をつかまれたら。


 勝也くんが私を庇ってくれたら、勝也くんにも嫌なことを言うのだろうか。

 そんなことになるかは分からない。

 でも、分からないからこそ、怖かった。


「富田?」


 勝也くんが呼んだ。

 私は、ファイルの角を押さえた。


「この前、探すの手伝うって言ってくれて……嬉しかった。ありがとう」


 伝えられる方の言葉を、先に出した。

 勝也くんは、少し照れたように笑った。


「結局、俺、何も探してないよ」

「でも……言ってくれたから」

「そっか。じゃあ、どういたしまして」


 私も、少し笑えた。

 話していると、まだ嬉しいと思えた。

 勝也くんにそばにいてほしい気持ちは、変わっていなかった。


 けれど、今日されたことは言えなかった。

 朝の教室で何があったのか、勝也くんは知らない。


 ファイルをリュックサックへしまい、背負って立ち上がると、勝也くんも椅子を戻した。


「じゃあ、また明日ね」

「うん。また明日」


 明日も話したかった。

 でも、明日の教室へ来たいとは、思えなかった。


     * * *


 部活では、初めに練習する譜面を確かめた。


 今日は、周りの人と同じ紙だった。

 始めるところにも印をつけてあった。

 言われた小節を指で追ってから、クラリネットを構えた。


 息を入れる。

 初めの音は、少し揺れた。

 もう1度吹くと、今度は思っていた音になった。


 指を動かし、短いところをつなげる。

 できなかったところで止まり、ゆっくり吹き直した。

 さっきより滑らかにつながると、少し嬉しかった。


 まだ、吹くことは好きだった。

 うまくいかなかったところができるようになると、次も吹いてみたくなった。


「じゃあ、そこ、もう1回合わせよう」


 先輩が言った。


「……はい……」


 顔を上げた時、玲奈さんが視界へ入った。

 今は、自分の譜面を見ている。

 それなのに、朝の教室を思い出した。


 玲奈さんが袋を見つけなかったら、いつまで手をつかまれていただろう。

 また別の物がなくなったら、私が隠したと言われるだろうか。


 先輩の合図を見て、慌てて楽器を構え直した。

 吹き始めるところには間に合った。

 でも、さっきできたところで、今度は指が止まった。


 練習が足りないのだと思って、次は指をよく見た。

 音だけに集中したかった。

 ここにいる間だけでも、朝のことを考えずにいたかった。


 少し休憩しようと言われ、私は楽器を下ろした。


 みんなが話している間、私は膝の上で指を握った。

 さっきの練習で疲れたのか、朝につかまれたところが気になるのか、自分でも分からなかった。


 時計を見た。

 部活が終わるまで、まだ時間があった。


     * * *


 家へ帰って、リュックサックから体操服の袋を出した。


 今日は、ここにある。

 朝に自分で入れて、授業で使って、また持って帰ってきた。

 ほかの教科書も、筆箱も、なくなっていなかった。

 国語のノートもあった。表紙の裏は、開かずに机へ置いた。


 今日の国語では、使うページを開いたまま、端を押さえていた。

 前の方へ戻ったら、隣の席からもあの字が見えるかもしれなかった。

 先生の説明を聞きながら、そんなことまで気にしていた。


 私は袋を机へ置き、椅子に座った。

 制服の上から、腰の横をそっと押さえた。

 ぶつけたところには、まだ少し痛みがあった。


 学校では、触らないようにしていた。

 もう謝ったと言われたら、そのあとも痛いとは言えなかった。

 今は誰も見ていないので、ようやく手を当てられた。


 悲しかった。

 何もしていないと説明する声より、私がやったと言う声の方が、簡単に通ってしまった。

 違うと分かってからも、私の言葉を信じなかったことには、誰も触れなかった。


 袋の紐を、指先で整えた。

 この前なくなった時は、しまう場所を変えればいいと思った。

 自分で確かめて、気をつけていれば、次は大丈夫だと思いたかった。


 今日は、そのとおりにした。

 袋を机の横へ掛けず、奥へ入れた。

 席を離れる時には、何度も口を閉めた。


 それでも、怖いことが起きた。


 莉奈さんが自分の体操服をどの鞄へ入れたかなんて、私には分からない。

 それを忘れた時、私の方を見るかどうかも、私には決められなかった。


 明日の時間割を開いた。

 体育はなかった。

 少しほっとしてから、体操服だけの話ではないのだと気づいた。


 なくなる物が筆箱でも、本でも、同じことになるかもしれない。

 なくならなくても、昨日のノートみたいに、開くのが嫌になることがある。

 返事がうまくできないだけでも、怒られることがある。


 明日は何に気をつければいいのだろう。


 連絡帳には、持っていく物が書いてあった。

 それをそろえることなら、できた。

 宿題も、忘れずに入れられる。


 私は教科書を順番に重ねた。

 明日の準備が終わっても、安心はできなかった。



今回の登場人物


・鵜飼勝也

 休日の公園で春樹・翔太と秘密を共有する。学校では優子の体操服を気にかけ、また何かなくなったら探すのを手伝うと伝える。


・富田優子

 体操服の紛失やノートへの落書きに続き、身に覚えのない疑いをかけられる。勝也に相談したいと思いながらも、怖くて言い出せない。


・鶴見春樹

 戻らないと言っていた公園へ、隠して持ち帰る準備までして戻ってくる。勝也・翔太と鉢合わせし、互いの目的がばれてしまう。


・鳥居翔太

 公園へ戻ったところを勝也に見つかり、散歩だと言い訳する。用意のいい2人と違い、拾った本をそのまま手に持って帰る。


・井上綾香

 優子を図書室へ誘い、読みかけの本を読んでいてもいいと声をかける。優子が教室に残ると答えると、無理には誘わず出かける。


・戸田美咲

 体操服が移動していたという優子の説明を取り合わない。莉奈の体操服が見つからない時も、莉奈とともに優子を責める。


・富永莉奈

 自分の体操服がないことを優子の仕返しだと決めつけ、肩を押して手首をつかむ。自分の手提げから見つかると、短い謝罪で済ませる。


・杉浦玲奈

 莉奈の別の手提げを指し、体操服が見つかるきっかけを作る。放課後の吹奏楽部の練習にも姿を見せる。


・優子の母(富田美和)

 優子が持ち帰った体操服の袋の埃に気づき、洗ってあげる。優子から学校での出来事は打ち明けられていない。


・体育の先生

 体操服が見つからないという優子の説明を聞き、その日は見学するよう伝える。授業後に探し、見つからなければ担任へ相談するよう促す。


・体操服を探した女子

 優子と一緒に机の周りや床を探す。見つからないまま着替えの時間になり、先生へ相談するよう勧める。


・机を戻した女子

 押されてずれた優子の机を、一緒に元の位置へ戻す。優子が疑われるようなことをしていなかったと認め、声をかける。


・吹奏楽部の先輩

 優子たちに合奏のやり直しや休憩を指示する。優子は練習に取り組むものの、教室での出来事が頭から離れない。

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