第24話 怒りの先に
担任の先生が向かいの椅子を引いた。座る前に、もう1度こちらの顔を見たので、俺も顔を上げた。
「自分が何をしたか、分かっているな」
「……はい」
膝の上の右手を見た。拳へ当てた白いYシャツの裾には、自分の血が染みていた。左手で裾を押さえ直すと、引っ掻かれた腕の傷にも袖が擦れた。長袖の夏服は、教室で汚れたままだった。
戸田の制服を掴んで押し、教室のドアを壊した。そのあと、頬を叩かれて、俺は戸田の顔を2回殴った。ここへ来ても、ガラスが割れた時の音がまだ耳の奥に残っていた。
「戸田は泣いていたぞ。顔も腫れて、血が出ていた」
「はい」
「お前は、女子を相手に殴ったんだ。何かあってからでは遅いんだぞ」
頷くと、首の後ろまで重く感じた。
戸田には、椅子へ座らせたあとで謝った。服を破ったことも、本気で2回殴ったことも、本人に謝った。それで戸田の傷が消えたわけではないし、俺に向けた、怯えた顔も変わらなかった。
痛い思いをさせたことを、悪かったと思った。謝った時の気持ちは、嘘ではなかった。それでも、あの時は戸田を殴る必要があったという考えは変わらなかった。痛いと声を出した顔が浮かぶ。その前に、優子のことを笑っていた顔も。同じ人の顔だった。
「どうして、あんなことをした」
聞かれて、顔を上げた。
「富田がされたことを、戸田に聞いてたんです」
「だから、それで殴っていいのか!」
言い終えるより先に、先生の声が返ってきた。
「どうして殴ったのかを、話してるんです!」
「今は、お前がしたことを聞いているんだ! よその話へ持っていくな!」
開けかけた口を閉じた。
どうして、と聞いたのは先生だった。それなのに、優子の名前を出しただけで、もう聞こうとしなかった。
先週、教科書のことを相談した時もそうだった。優子が何も言わないから分からないと言われた。今は、優子のことはよその話だと言われている。
何から説明しても、同じなのだと思った。
「……お前に何を言っても、無駄なんだな」
先生の動きが止まった。
俺を見る目が細くなり、机に置かれた手に力が入った。
「今、何と言った!」
声が、狭い部屋に響いた。肩が動いたけれど、俺は目を逸らさなかった。
「富田のことは、聞く気がないんですか!」
「教師に向かって、お前とは何だ!」
先生が机へ手をついた。引いてあった椅子が膝に押され、床を擦った。
「人に怪我をさせておいて、その態度は何だ! まず、自分が何をしたのか話しなさい!」
頬が熱くなった。目の前の大人を、お前と呼んだ。自分でも、そう言ったのは分かっていた。家へ電話をかけられるかもしれないし、明日、教室でまた叱られるかもしれない。それでも、その言葉を取り消す気にはなれなかった。
「戸田の制服を掴んで、押した。入口のドアにぶつかって、ドアが外れて、ガラスが割れた。そのあと、戸田に頬を叩かれて、俺は殴り返しました!」
口にするたびに、教室で見たことが戻ってきた。戸田の顔が横を向いたこと。誰も声を出さなくなり、春樹の手も机の縁を掴んだまま動かなかったこと。
「荒川が止めに入って、そこでやめました」
先生は俺を睨んだまま聞いていた。
「ドアとガラスを壊して、すみませんでした」
座ったまま頭を下げた。顔を上げても、先生の表情は変わらなかった。
「殴ったことはどうなんだ。悪いとは思わんのか!」
「戸田に怪我をさせたことは、悪かったと思ってます! でも、あの時は必要でした!」
「殴る必要などあるか! 謝りなさい!」
膝の上で、右手を押さえ直した。
「戸田には、本人に謝りました。でも、富田の話を聞きもしないお前に、殴ったのが間違いだったって謝るつもりはない!」
「口答えするな!」
「話も聞かずに謝れって、お前のそういう態度が気に入らないんだよ!」
戸田に謝ったのは、痛がって、怯えている顔を見たからだった。先生に言われたからではない。どうして殴ったのかも聞こうとしないこの人に、同じように頭を下げる気にはなれなかった。
俺の声も大きくなっていた。足元の手提げが靴に触れ、椅子の下へ寄せ直した。口は閉じたままにしておいた。この先生に、優子の教科書を見せるつもりはなかった。
「お前は、何のためにここへ呼ばれたと思っている!」
「俺がしたことを話すためだ! でも、富田が何をされたかも関係あるじゃないですか!」
「まだその話をするのか!」
聞いてくれるとは、もう思えなかった。それでも、優子のことをよその話にされたまま、黙ることはできなかった。
「富田が何をされてたか、見た人もいるんだ! お前にも話せるって言ってくれた人が!」
「勝手に聞き回って、今度は教師に無駄だとまで言う! 委員長なら、何をしてもいいと思っているのか!」
「話を聞かないお前のせいだろ! お前が聞かず! 行動しないから、俺たちで聞いたんだ!」
「その態度を改めろと言っているんだ!」
俺も椅子から立っていた。膝から浮いた右手に気づき、左手で押さえた。傷が痛んで、Yシャツの裾に広がった赤い染みが目に入った。
宣仁に止めてもらったばかりだった。机を叩くことも、目の前の人へ手を伸ばすこともしたくなかった。手は下ろしたまま、顔だけを上げた。
「お前には、先に相談しただろ! 荒川も、俺より前に相談してる!」
「だから、本人が何も言っていないと説明しただろう!」
先生が、机越しに顔を突き出した。
また、それだった。本人が言わなければ分からない。俺と宣仁が相談に行ったことまで、それで済ませるつもりなのだ。
言えないから、俺たちが話した。そのことさえ、何度言っても伝わらない。
もう、こんな学校に何かを期待すること自体が馬鹿らしかった。俺がどう思われようが、何を言われようが、どうでもよくなった。
大きなため息をついた。隠す気にもなれず、肩を落としながら長く息を吐いた。
「息くせぇんだよ、デブ」
さっきまでのように怒鳴り返す気力さえなかった。先生の顔を見たまま、口から出るに任せた。
「何だと!」
先生の顔が赤くなった。机を叩く音がしても、俺は黙っていた。
「クラス委員長が人を殴って、教師にまでそんな口を利くのか! 皆の見本になる立場だろう!」
言い返そうとすれば、まだ言いたいことはあった。でも、口を開かなかった。拳へ当てたYシャツの裾を押さえ直し、机の端へ目を落とした。
「こっちを見なさい! 話をしているんだ!」
「もう、お前に何も話すことはない!」
顔を上げると、先生は俺を睨んでいた。ドアの向こうで足音が止まったようだった。
先生の手が机の縁を掴んだ。指が白くなるほど力を込め、俺へ向けて声を張り上げた。
「お前にクラス委員長を任せたのは間違いだった!」
最後の声に重なるように、ドアが開いた。
入口には学年主任の先生が立ち、その後ろに生徒指導の先生もいた。開いたドアの端からは、宣仁の顔も見えていた。
もう言い返す気にもならずにいた俺は、開いたドアへ顔を向けた。主任の先生が、俺と担任を順に見た。
「廊下まで聞こえています」
低い声だったが、部屋の中へはっきり通った。
「2人とも、声を落としてください」
主任の先生が、俺へ向き直った。
「鵜飼。腹が立っていても、先生を『お前』と呼んだり、侮辱したりするのはやめなさい」
俺は、視線を落とした。担任への怒りは残っていた。でも、今の言葉は、相手を傷つけるために言っただけだった。主任の先生にまで、同じ調子で言い返したくはなかった。
「……すみません。言い方が悪かったです」
主任の先生に向き直り、頭を下げた。顔を上げてから、言葉を選び直した。
「富田のことは、学校で調べてください」
主任の先生は頷いた。
続いて入った生徒指導の先生が、担任と俺の間へ立った。
「富田さんへのいじめについても、荒川から話を聞いて来ました」
主任の先生は、担任へ向けて言った。
「以前から相談を受けていたことも聞いています。教室で起きたことと合わせて、私たちも確認します」
* * *
担任の手が机から離れた。主任の先生へ向き直った途端、声まで変わった。
「ああ、ちょうどよかったです。鵜飼は、全く反省の色がなくてですね。反省文や、別室登校も考えた方が――」
「その話を決める前に、何があったのかを確認します」
主任の先生は言い終わるのを待たずに遮り、俺たちの机の横まで来て止まった。
「殴打と、ドアが壊れたことも聞いています。怪我をした生徒の対応と、教室の確認は、ほかの先生にも頼んでいます」
「ですから、こちらでは私が指導を――」
「今は、話を聞いてください」
俺は、担任の顔を見た。
何か言おうとした時、生徒指導の先生がこちらを向いた。
「鵜飼。まず座ろう。君が話そうとしていたことも聞くから」
「でも、俺――」
「聞く。だから、少し息を整えて」
示された椅子へ、俺はもう1度座った。立つ前より足に力が入らなくなっているのが、腰を下ろす時に分かった。
宣仁は入口で止まり、入っていいのか迷っているように主任の先生を見ていた。
「荒川も、ここにいてくれ。自分で見たことを、あとで聞きたい」
「はい」
宣仁が入ってきてドアを閉めたあとも、担任は立ったままだった。
「今のような態度です。自分がしたことを認めても、すぐに別の話へ持っていく」
主任の先生が、担任へ顔を向けた。
「富田さんのことを、今ここで無関係にはできません」
俺は、顔を上げた。
「鵜飼も先週、教科書のことで相談に来たそうですね。生徒たちが別々に訴えている内容も、確認が必要です」
「その件は確認しています。ですが、今は殴ったことを――」
「殴ったことは、本人からも聞きます。富田さんへのいじめと、これまでの対応についても、そのままにはできません」
主任の先生は、担任の返事を待った。
すぐに俺の方へ話を進めなかった。
担任は、少しして椅子へ座った。
「鵜飼」
呼ばれて、主任の先生を見た。
「今日、教室で何があったのか、君からも聞かせてほしい」
「俺がしたことは、話します。途中で、富田のことを話すなって止めないでください」
主任の先生を見たまま、答えた。
「そこを話さないと、どうして言い合いになったのかも説明できません」
「分かった。順番に聞く」
先生が替わったからといって、信用できたわけではなかった。けれど、俺が戸田にしたことまで、話さずに済ませるつもりはなかった。
右手を動かしかけると、裾を当てている傷が痛んだ。押さえていた左手を少しずらしたところで、生徒指導の先生が眉を寄せた。
「その手、ずっと押さえているのか」
「殴った時に切れました」
「腕にも血がついてるな」
「そっちは、教室で引っ掻かれました」
「まだ手当てはしていないのか」
俺は頷いた。
「先に保健室へ行こう。話の続きは、そのあとで聞く」
「結構です」
先生の顔を見て、答えた。
「手当ては今はいいです」
「腕だけじゃなく、手も痛むんだろう」
「今、関係ありますか? 俺が不要だと言ってるんです」
先生は、すぐには言葉を返さなかった。
膝から手を動かさなかった。血が床へ滴ることはなくなっていたが、傷に当てた裾から指を離す気にはなれなかった。
痛くないわけではない。でも、自分の手より先に、聞いてもらわなければならないことがあった。話す相手が替わっただけで、学校に対する怒りまで消えたわけではなかった。
「君の怪我も、そのままにはできない。富田さんの話を終わらせようとしているわけではないんだ」
「だったら、先に話を聞いてください」
生徒指導の先生は、主任の先生へ目を向けた。
主任の先生が俺の手を見てから、顔へ視線を戻した。
「分かった。話は聞く。ただ、血がまた出たり、痛みが強くなったりしたら、すぐに言ってくれ。手当てのことも、あとでもう1度話そう」
俺は、短く頷いた。
俺が座ったまま息をつくと、宣仁も壁際の椅子を1つ引いて座った。
主任の先生が机の横へ椅子を寄せると、生徒指導の先生もその隣に座った。持ってきた紙とペンを、机の上へ置くのが見えた。
主任の先生は、ペンを持つ前に担任へ向き直った。
「鵜飼の話を聞く前に、相談への対応を確認させてください」
「鵜飼から、教科書のことで相談を受けていたんですね。そのあと、何をしましたか」
担任が、椅子の上で体を動かした。
「その時点では、誰がしたのか分からなかったんです」
「それで、富田さんには何を確認しましたか」
主任の先生が聞いた。
「本人からの訴えはありませんでした」
「こちらから尋ねたかどうかを聞いています」
担任の返事が止まった。
俺は、膝に置いていた手を少し動かした。
「……本人の様子も見ながら、確認しようとしていました」
「実際に話を聞く前に、欠席が始まったということですか」
担任は、少し間を置いて頷いた。
「荒川から相談を受けたあとも、同じですか」
「ですから、本人が――」
「その返事は、先ほども聞きました。相談を受けて、何をしたのかを聞いているんです」
生徒指導の先生がペンを置いた。担任がそちらを向いたが、先生は目を逸らさず、その顔を見ていた。
主任の先生は、手元の紙へ目を落としてから続けた。
「ここへ来る前に、荒川から聞いたことも確認します。相談を受けたあと、相手の生徒へ荒川の名前を伝えましたか」
宣仁は、膝へ置いた手を握ったまま黙っていた。
担任が、机の上で手を組み直した。
「誰から聞いた話なのかを説明しただけです」
生徒指導の先生が、担任を見た。
「相談した生徒の名前を、相手に伝えたんですか」
「注意するために必要なことです」
「そのあと、荒川が何かされていないかは確かめましたか」
返事を待つ間に、宣仁が膝に置いていた手を開いた。担任は、それでも何も言わなかった。
宣仁も、口を開かなかった。
主任の先生は、担任から返事がなかったことを書き留めた。
担任へ向き直るまで、少し間があった。
「ご家庭からは、連絡が来ていますか」
主任の先生が、担任へ続けて尋ねた。
「欠席の連絡は、来ています」
「この被害については」
担任は、机の端へ目を落とした。
「……先週、お母さんから。持ち物のことと、怪我のことを」
俺は、顔を上げた。
俺たちが知らない間に、優子のお母さんも先生へ話していた。
「いつですか」
「水曜日の、夕方です」
主任の先生の顔が、少し変わった。
「怪我をして帰った、その日のうちに連絡があったんですか」
「はい。ただ、本人がまだ何も話せないということだったので、確認を――」
「お母さんは、どこを怪我していると」
担任は手の怪我について答え、髪も一部切られていたと聞いたと言った。右手の指を曲げかけた俺は、傷が痛んで動きを止めた。
あの日、俺は優子がまだ学校にいることも知らず、家へ帰っていた。それから何があったのか、何日もかけて聞いて回った。
先生は、その日のうちに聞いていた。
「……先生は、知ってたんですか」
声が出た。
担任は俺を見なかった。
「そのあと、お父さんからも、お話はありました。ただ、誰がしたのかというところまでは、ご家庭でも分からないと」
「だから、学校で調べてほしいって言われたんじゃないんですか!」
また大きな声になり、横にいた宣仁が俺を見た。
主任の先生が、俺へ顔を向けた。
「鵜飼。今、私が確認する」
言われて、息を止めた。主任の先生は俺が口を閉じるのを待ってから、もう1度担任へ顔を向けた。
「学年には、この件で相談がありませんでした。校長先生や教頭先生には、報告しましたか」
返事は、すぐにはなかった。
「……もう少し、状況が分かってからと思っていました」
主任の先生が、机に置いていた手を握った。
「いい加減にしてください!」
俺へ向けられた声ではなかった。それでも肩が動き、椅子の背から体が少し離れた。
「生徒から相談があった。保護者からも、怪我と、髪を切られたという連絡が来ていた。相談した生徒の名前は相手に伝えて、被害の報告は学年にも上げず、今日まで置いていたんですか!」
「置いていたわけではありません。本人から詳しく聞けるようになってから――」
「話せないと言われているでしょう!」
今度は生徒指導の先生の声だった。机に置いていたペンが、動いた指に当たって転がった。
「だから保護者が連絡してきたんです。何をされたか分からないなら、ほかの生徒に聞くこともできた。あなたは、その相談まで止めている!」
担任が口を開いたが、主任の先生はその顔を見たまま続けた。
「それで、相談に来ていた生徒に、委員長を任せたのは間違いだったと怒鳴るんですか!」
「鵜飼が、あれだけのことをしたので――」
「鵜飼のしたことは、私たちも聞いています! 今は、あなたが相談を受けてから何をしていたかを聞いているんです!」
主任の先生は、声を緩めなかった。
「助けを求めてきた生徒の話を聞かずに放っておいて、今度は怒鳴って黙らせる。それが、あなたの指導ですか!」
「生徒の前で、そのような言い方は――」
「2人とも、あなたに相談していた生徒です!」
生徒指導の先生が言った。
机の下で、宣仁の足が止まった。
「この2人が何度話しても、あなたは取り合わなかった。今ここで、そのことまで曖昧にするつもりはありません!」
担任は、俺の方を見た。
「お前も、自分に都合のいいところだけ――」
「鵜飼に言うことではないでしょう!」
主任の先生の声が、重なった。
担任の顔が、そちらへ戻った。
「ここからは、私たちで話を聞きます。あなたは、この場を離れてください」
「担任として、私もここに――」
「あなたを、1年3組の担任から外す方針です」
主任の先生が言った。
担任が目を見開いた。口は開いたままなのに、次の言葉が出てこなかった。
「ここへ来る前に、荒川から聞いた内容は校長と教頭へ報告しています。その時点で、担任を交代させる方針は、既に決まっています」
俺も先生を見た。壁際の宣仁も顔を上げていた。
俺と担任が言い合っている間に、そこまで話が進んでいたのだ。自分の教室の担任が替わる。そう言われても、すぐには意味を飲み込めなかった。
担任が机の縁を掴み、背筋を伸ばして主任の先生へ向き直った。何か言おうと息を吸ったところで、生徒指導の先生が立ち上がった。
「校長と教頭が待っています。校長室へ行ってください」
強い声に、担任の口がゆっくり閉じた。生徒指導の先生はドアを開け、その脇に立ったまま担任を見ていた。
しばらくして、椅子を動かす音がした。立ち上がった担任は、俺にも宣仁にも目を向けずに机の横を通った。今度は、言い返す声もしなかった。
生徒指導の先生が、体を横へずらした。
担任は、その横を黙って出ていった。
ドアが閉まった。
主任の先生はしばらく閉まったドアを見ていた。握っていた手を開いて長く息を吐くと、戻ってきた生徒指導の先生が、机に転がったペンを拾った。
宣仁も、俺も何も言わなかった。足元の手提げは、まだ閉じたままだった。
「……鵜飼」
主任の先生が、こちらを向いた。
まだ、眉の間に皺があった。
「私たちも、さっき荒川に聞くまで把握していなかった。相談があった時に、学校で確かめるべきだった」
俺は、先生の顔を見た。
「もう、富田さんのことは関係ないと言って話を止めることはしない」
喉が動いた。
すぐには返事が出なかった。
「ただし、鵜飼。担任の対応と、君が人を殴ったことは、どちらも確認しなければならない」
俺は、右手へ目を落とした。
「そのことについても、君から話してほしい」
「はい」
右手を膝へ戻し、主任の先生を見た。
「富田に何をしたのか、戸田たちに聞いていました。教室でも、戸田は富田にしたことを笑って話してたんです。それで、言い合いになりました」
主任の先生は口を挟まなかった。俺は、続けた。
「俺が先に、戸田の制服を掴みました。そのまま押して、入口のドアにぶつけました。ドアが外れて、ガラスが割れました」
「ドアが壊れたのは、その時なんだな」
「はい。そのあと、戸田に頬を叩かれて、俺は顔を殴りました」
左手で、拳へ当てたYシャツの裾を押さえた。
「俺は、本気で殴りました。荒川が止めてくれるまで、自分ではやめられませんでした」
生徒指導の先生のペンが動く音がした。宣仁は、隣で黙って聞いていた。
「止められたあと、戸田がそのままガラスのところへ倒れそうだったので、体を支えながら、掴んでいた制服を離しました。そのあと椅子へ座らせて、殴ったことと、制服を破ったことを本人に謝りました」
戸田は俺を見て、顔を庇おうとしていた。手を貸した時にも、体が震えていた。
「戸田に怪我をさせたのは、俺です。ドアとガラスを壊したのも。すみませんでした」
頭を下げた。殴る必要があったという考えを、取り消したわけではなかった。それでも、戸田が痛がっていたことも、俺を怖がっていたことも、なかったことにはできなかった。
主任の先生は、どうして殴ったのかも最後まで聞いた。その相手に、自分がしたことを話して謝る言葉は出た。担任に向かっては、どうしても言いたくなかった言葉だった。
顔を上げるまで、どちらの先生も次の質問をしなかった。
「今話したことは、記録しておく。その場にいた生徒にも、学校から確認する」
主任の先生が言った。
俺は頷いた。
向かいの空いた椅子へ目を向けた。担任の返事がおかしければ、主任の先生も生徒指導の先生も聞き流さなかった。話を聞こうとしていることは分かった。
でも、だから信用できるとは思わなかった。
「教科書のことで相談に来てくれた時、どんな被害があったのかも確認したい」
主任の先生が言った。
「傷められた教科書やノートを、今、何か持っているだろうか。持っているなら、実物を見せてほしい」
足元の手提げへ目を落とした。包んだまま持ち帰ることもできた。けれど、これを見てもまだ、何も分からないと言うだろうか。
「あります。見るだけなら」
「ここで、状態を確認させてほしい」
「はい」
左手で手提げを開こうとすると、宣仁が椅子を寄せた。
「持っとこか」
「うん。袋の口、開けててくれる?」
広げてもらった袋から、左手で包みを取り出した。腕を曲げると傷に袖が擦れたが、右手は膝へ置いたままにした。紙を開くと、数学の教科書が見えた。
「これが、富田の教科書です」
名前のあるところを開いた。
主任の先生が、少し体を前へ寄せた。
「中も、見せてもらえるか」
「はい。ここ、引っかかるので、ゆっくりめくります」
左の指先で紙の端を示した。教科書は自分の前に置いたまま、2人の先生からも見える向きへ傾けた。
破れている端を避けて1枚めくると、印刷された問題の上まで、黒いマジックで塗り潰されていた。太い線が何度も重なり、文字も図も途中で読めなくなっている。次のページにも、優子に向けたひどい言葉が、問題文を横切って書かれていた。
先生は何も言わず、ページへ目を落としたままでいた。俺はその顔を見ていた。戸田は、ふうん、と言った。担任には、見せる気にもならなかった。今ここで見た物まで、本人が何も言わないから分からないとは言わせたくなかった。
主任の先生は、書き込まれた言葉を確かめ、生徒指導の先生へ同じところを示した。
2人が見終えるまで、俺はページを押さえていた。
宣仁に袋を支えてもらい、英語の教科書とノート、理科のノートも順番に出した。包んでいた紙を重ねて場所を空けていると、主任の先生も自分の紙を端へ寄せた。
「これらは、どうやって君の手元に来たんだ」
「それは話しません。学校で調べてください」
左手で表紙を押さえた。答える代わりに、優子の名前があるところを2人の先生へ向けた。
英語のノートを開くと、優子が書いた字の上にも黒いマジックの跡が重なっていた。主任の先生は、そこでもしばらく目を止めた。
「最初に相談した時から、教科書は読むところまで塗り潰されてたんです」
俺は、先生の顔を見た。
「だから、担任に相談しました。でも、何もしてくれませんでした。今、ここにある教科書もノートも、こんな状態です」
主任の先生が、ペンを置いた。
「俺も荒川も話しました。富田のご両親も連絡してた。それでも、今まで何も変わらなかったんですよね」
「学校として、対応できていませんでした」
「担任だけの話じゃないです。俺は、学校を信用してないんです」
主任の先生から目を逸らさず、続けた。
「先生は、さっきの担任よりは話を聞いてくれます。でも、それだけで、もう大丈夫だとは思えません」
先生は、すぐには返さなかった。机に広げた教科書とノートを見てから、俺へ向き直った。
「相談してくれていたのに、学校として対応できず、富田さんの被害を止められなかった。君たちにも、何度も訴えさせてしまった。申し訳なかった」
主任の先生が、俺と宣仁へ頭を下げた。
俺は、左手でノートの端を押さえたまま待った。先生が顔を上げてから、答えた。
「謝ってほしいんじゃありません。行動で誠意を見せてください」
さっきのように、声は大きくならなかった。先生が頷いても、俺は頭を下げ返さなかった。
「学校で何があったのか、先生たちで調べてください。富田のご両親にも、学校が何をしたのか、ちゃんと説明してください」
「分かりました。こちらで調べて、確認できたことと、これからの対応をお伝えします」
そう答えた先生の顔を見た。今ここで言ったことを、本当にしてくれるかは、まだ分からなかった。
「富田のことで、俺たちが調べた事をまとめた資料はあります」
「その資料も、見せてもらえるか」
「見せません」
リュックサックは、足元に置いたままだった。口を開けるつもりはなかった。
「富田の教科書やノートは、ここで見てください。でも、俺たちが調べた資料は出しません。先生たちが、自分で調べてください」
主任の先生は、俺の返事を書き留めた。
「学校で調べるために、話を聞ける生徒を教えてもらうことはできるか」
「誰に何を聞くかも、学校で考えてください。先生が富田のことで聞きたいことがあったら、話してもらうようには頼んであります」
椅子の下へ寄せていた足を、少し戻した。
「俺たちに聞いて済ませないで、学校側で調べてください。それくらいの誠意は、見せてください」
「分かった。私たちで、1人ずつ話を聞きます」
「話した人の名前を、戸田たちに教えないでください。荒川の時みたいなことは、もうしないでください」
隣で、宣仁が顔を上げた。
「怖がってる人もいます。それでも、話してくれたんです」
「相手の前へ呼び出して、誰が話したかを確かめるようなことはしない。話を聞く場所も、こちらで考える」
主任の先生は、宣仁へ目を向けた。
「荒川。富田さんが何をされていたか、君が見ていたことについても、改めて聞きたい」
「自分も、今ここで話すつもりはありません」
宣仁が答えた。膝の上で握っていた手を、ゆっくり開いた。
「前に相談した時、聞いてもらえませんでした。今度は、先生らで調べてください」
主任の先生は何か言いかけたが、宣仁が口を閉じると、そのまま待った。
誰も、続けて話そうとはしなかった。
生徒指導の先生がペンを置き、主任の先生へ顔を向けた。
「ほかの先生たちの確認状況を、見てきます」
主任の先生が頷くと、生徒指導の先生は立ち上がった。ドアが閉まる音を聞いてから、俺は机へ目を落とした。
これで確かめられないと言われても、資料を開くつもりはなかった。何があったのかを調べるのは、学校でやってもらいたかった。
主任の先生は、自分の紙へ短く書き留めた。俺にも宣仁にも、その続きを求めなかった。
ドアを叩く音がして、主任の先生が入口へ向かった。外にいた先生から紙を受け取り、短く話をしてから、こちらの机へ戻ってきた。
「見ていたことを話しに来ている生徒がいる」
俺は、顔を上げた。
「ほかの先生も、それぞれ話を聞いている。今届いたのは、富田さんの机が教室から出されていた時の話だ」
綾香が聞いてくれた話を思い出した。出された机も、優子が1人で戻したのだと聞いていた。
「誰が何を見たか、こちらで確かめていく。今日だけで確かめきれないことは、明日も続ける」
「……はい」
先生たちが聞きに行けば、話してくれる人はいた。それを、今まではしてくれなかった。
* * *
主任の先生は書いた紙を見直し、途中で書き足したところへペンの先を戻した。
「今日までに、学校として確認できていなかったことがある。富田さんのご家庭へは、このあと、こちらから電話で連絡する」
約束を聞いてもすぐには安心できず、俺は返事をする代わりに尋ねた。
「今から、ですか」
「校長先生と教頭先生へ、ここで新しく聞いたことも報告して、連絡を入れる。今後は、私たちで対応する」
「富田に、何回も説明させたりは」
「まず、保護者の方に今の様子を聞く。無理に話させるつもりはない。お母さんには、ご自宅で富田さんについていていただく」
俺は、頷いた。
* * *
ドアが、軽く叩かれた。
生徒指導の先生が戻ってきた。
入口の向こうに、春樹たちがいた。
「鶴見たちも、まだ学校にいました。こちらで待ってもらっています」
春樹が俺を見た。顔を向けると、教室を出る時と同じ、少し強張った表情をしていた。リュックサックを下ろし、片手で持っていた。
「教室にいた生徒にも、今日のことと、富田さんのことで知っていることを、1人ずつ聞こうと思います。まず、鶴見からでよいですか」
生徒指導の先生が言った。
主任の先生は頷いた。
春樹と交代するために、机へ広げた教科書とノートを閉じた。包んでいた紙へ左手を伸ばすと、主任の先生が声をかけた。
「その教科書とノートは、学校で預からせてもらえないか」
先生は、傷んだ教材を示した。
「校長先生たちにも、実物を見てもらいたい。何がされていたのかを確認するための、大事な物だから」
「渡しません。他の先生に見せたいのなら、今ここに呼んで現物を見るだけにしてください」
俺は、表紙へ手を置いた。
入口で待っていた春樹も、こちらを見た。
「俺たちが持っている富田の物は、全部、ご両親に渡すつもりです。教科書もノートも、ほかの私物も。資料も、全部です」
主任の先生は、口を挟まずに聞いていた。
「学校には置いていきません。見てもらったのは、こんな状態になってたって知ってもらうためです。預けるためじゃありません」
紙へ手を伸ばしかけたまま、先生の顔を見た。話を聞いてもらえたことと、優子の物をここへ残していいかどうかは、同じではなかった。
「富田の物なので、俺が勝手に学校へ渡すこともできません」
「分かった。無理に預かることはしません。ここで確認するだけにします」
主任の先生が、生徒指導の先生へ顔を向けた。
「教頭先生に、こちらへ来ていただけるか確認してもらえますか」
生徒指導の先生が頷いた。春樹たちには廊下で少し待つように伝え、部屋を出ていった。
俺は、包みかけた紙をもう1度広げた。
待っている間も、主任の先生のところへ別の先生が来た。廊下で短く話す声がして、紙が1枚増えた。俺は教科書を自分の前に置いたまま、ドアが開くたびに顔を上げた。
しばらくして、生徒指導の先生が教頭先生を連れて戻ってきた。
「待たせたね。校長先生は、今も担任から話を聞いています。私は先に、こちらの教材を確認させてもらいます」
教頭先生は、俺の前の教科書へ目を向けた。
「開いてもらってもいいだろうか」
俺は頷き、黒いマジックで塗り潰されたページを開いた。教頭先生は机の横へ立ち、俺がめくる手を止めると、体を屈めて書かれた言葉を読んだ。
ノートも、同じように見せた。教頭先生の目が、優子の字と、その上を横切る太い線との間を動いた。
「ここに書かれている名前も、確認させてほしい」
名前のあるところへ戻した。主任の先生は、教頭先生がどの教材を見たか、自分の紙へ書き足していた。足元のリュックサックには、誰も手を伸ばさなかった。
「これらは、ご両親に渡すと聞きました。校長先生にも、私が今見た状態を伝えます。学校で確認したことは、ご家庭へ報告します」
「俺たちが調べたことを聞いて済ませないで、学校で調べてください」
「学校で調べます。ほかの先生にも、引き続き確認を頼んでいます」
教頭先生は主任の先生と少し話し、校長室へ戻っていった。俺は、その後ろ姿を見送った。教科書もノートも、机の上に残っていた。
「改めて現物を確認する必要があれば、ご両親に相談する。その時も、勝手に預かることはしない」
主任の先生が言った。
「ご両親に、直接話してください」
先生が頷いたので、左手で包みの紙を寄せた。宣仁が、教科書の角へ引っかからないように端を押さえてくれた。
優子が、これを見たいと思うかは分からなかった。まずはお母さんかお父さんに渡して、どうすればいいかを話すつもりだった。
足元のリュックサックに入っている資料も、先生の前へは出さなかった。
生徒指導の先生が、紙を1枚、主任の先生へ渡した。
2人で短く話したあと、主任の先生が俺へ向き直った。
「鶴見たちにも、話を聞くつもりです。君には、学校から伝えることもあるから、もう少し待っていてくれ」
「はい」
左手を膝へ戻し、Yシャツの裾を右の拳へ当て直した。待つとは答えたが、優子のことで調べた内容を学校へ話すつもりはなかった。
主任の先生に、宣仁と隣の空き部屋で待つように言われた。紙を折るところや袋へ戻すところは宣仁に手伝ってもらい、教科書とノートを包み直した。資料の入ったリュックサックは、足元へ置いた時のまま閉じていた。
宣仁に支えてもらってリュックサックを背負い、手提げは左手で持った。先生は、荷物を持ち出すのを止めなかった。ドアを開けると、廊下で待っていた春樹が、生徒指導の先生に呼ばれてこちらへ来た。
「富田さんのノート、見てもらえた?」
春樹が小さく聞いた。
「うん。俺が戸田を殴ったことと、ドアを壊したことも話して、謝った。でも、富田のことで調べた内容は話してない。資料も見せてない。学校で調べてくださいって言った」
「そっか」
春樹は、持っているリュックサックへ目を落とした。
「資料も、見つけた物も、全部、富田のご両親に渡そうと思ってる。春樹の分も、いいかな」
「うん。俺の分も渡す。先生には、俺からも学校で調べてくださいって言う」
「頼む」
春樹が頷いたので、俺はそこを空けた。生徒指導の先生が椅子を勧め、富田の被害について知っていることを尋ねる声が聞こえた。
「今ここで、俺から話すつもりはありません。学校で調べてください」
春樹の返事が、廊下まで届いた。俺は振り返らず、宣仁と隣の部屋へ向かった。
* * *
隣の部屋は教室よりも小さく、長い机が2つ並んでいた。部屋の端には、使っていない椅子が重ねて置かれていた。
宣仁が入口に近い椅子を引いた。俺も荷物を下ろし、その隣へ座った。
「2人とも、向こうの角まで聞こえてたで」
宣仁が、小さな声で言った。
「……うん」
「先生らも、急いで来てくれた」
俺は、入口の向こうを見た。
委員長にしたのは間違いだった、という言葉も、俺が言い返したことも、あの角まで届いていた。
「のりちゃん」
「ん?」
「さっき、止めてくれてありがとう」
宣仁はすぐには返事をせず、膝へ置いていた指を少し動かした。
「あれ以上は、あかんと思ったから」
「うん」
「自分も腹立ってる。水曜のことも、今の先生の言い方も」
宣仁は俺を見た。
「でも、もう殴るな。自分が横におらん時も」
返事をするまでに少し時間がかかった。戸田の顔と、上げたままだった自分の拳が浮かんだ。
「……うん。もう、しない」
宣仁が頷いた。
「先生に腹立った時、また立ったやろ。外から見えて、ちょっと怖かったわ」
「殴ろうとは、思ってなかったよ」
「うん。手、下げてたな」
その手を見た。膝の上で、血の染みたYシャツの裾をまた左手で拳へ当てていた。
「でも、見てる方は、さっきのことがあるから」
俺は顔を上げられなかった。春樹や翔太も、きっと同じように感じていたのだろう。俺がもう大丈夫だと言ったところで、2人がさっき見たことまで消えるわけではなかった。
「……ごめん」
「うん」
宣仁はそれだけ答えた。大丈夫とも、仕方ないとも言わず、隣に座ったまま俺の返事を聞いてくれた。
少しして、春樹、翔太と真弓、綾香も通された。しばらくここで待つように言われたらしい。
誰もすぐには話さなかった。翔太は俺の腕と、血で汚れたYシャツを見てから、少しだけ顔を上げた。
「まだ、手当てしてないのか」
「うん。俺が断った。先に、話したかったから」
「……そっか」
それで、また黙った。
真弓がリュックサックを机の下へ置いた。綾香も座ったけれど、背もたれには寄りかからなかった。
そこにいる5人の顔を見た。綾香と目が合うと小さく頷いてくれたが、膝の上の手は、まだ組まれたままだった。
「ごめん」
俺が言うと、真弓が顔を上げた。
「さっき、教室で。みんなも、怖かったよな」
誰も、そんなことはないとは言わなかった。
翔太が、机の角を指で触った。
「うん。怖かった」
短い答えに、俺は頷いた。
「もう殴らない。のりちゃんと約束したから」
「……うん」
翔太は俺の手へ1度目を向け、それから自分の膝を見た。
「今、また怒ってんのかどうか、ちょっと分かんなくてさ」
言われて口を閉じた。俺が黙っている間も、翔太はそう考えていたのだ。何も言わずに座っているだけでも、怖がらせていた。
「怒ってる。戸田たちにも、先生にも」
そのまま答えた。
「でも、みんなにじゃないよ。話しかけてもらって、大丈夫」
翔太が、少し息を吐いた。
「分かった」
真弓が、俺の顔を見た。
「主任の先生は、聞いてくれたんだよね」
「うん。俺がしたことの説明は、最後まで聞いてくれた。教科書も見せた。でも、それで学校を信用できたわけじゃない。富田のことは、学校で調べてくださいって言った」
「私たちも、あとで1人ずつ聞かれるって」
真弓はリュックサックから折った紙を出した。俺の家で書いた分とは別に、今日のことも書いていた。
「忘れる前にと思って。廊下で待ってる時に、綾香と」
綾香も、自分の紙を見せた。
「でも、同じにしようとはしてないよ。私が聞こえなかったところ、真弓には聞こえてたりしたから」
「うん。そのままで、いいと思う」
俺が言うと、綾香は頷いた。
「勝也君の声も、書いてある」
少し迷ってからそう言った綾香の紙へ、俺は目を向けた。何が書かれているかまでは読めなかった。
「うん。消さなくていいよ」
「……うん」
綾香は、紙を自分の前へ戻した。
優子に何があったのかを確かめるための記録に、今日、俺がしたことも加わった。友達だからという理由で、その部分だけなくしてほしくはなかった。
「俺たちが調べた資料は、先生には見せなかった」
真弓が、紙から顔を上げた。
「前に、話してくれた人には、先生が聞きたいことがあったら話してほしいって頼んだ。でも、俺たちが代わりに説明するつもりはないって」
翔太が、腕を組んだ。
「俺も、今は話したくない。散々放っておいて、今になって聞かせろって言われても」
「私も。学校で調べてくださいって言う」
真弓が答えると、綾香も頷いた。春樹は、俺の隣にある荷物へ目を向けた。
「資料と、見つけた富田の物は、全部ご両親に渡したい。みんなの分も、いいかな。春樹には、さっき話した」
真弓は頷き、綾香は、自分の書いた紙へもう1度目を落とした。
「今日のことも、一緒でいい?」
「うん。それも、渡したい」
綾香が頷いた。翔太も、俺の方を見て、いいよ、と言った。
「自分も、それでええと思う」
宣仁の返事を聞いて、俺はもう1度、ありがとうと答えた。
俺は、椅子へ少し深く座り直した。
机の向こうに、空いた椅子が1つあった。
「富田、何も知らないんだよな」
翔太が言った。
「今日、こうなったことも」
「……うん」
俺は答えた。
「俺が、迷惑がってるなんて言ってないことも。まだ、言えてない」
真弓が、手元の紙から顔を上げた。
「それは、会えたら、ちゃんと言ってあげて」
「うん」
「学校には、学校で調べてもらおう」
頷いて、何か返そうとした。でも、ありがとう以外には出てこなかった。
宣仁が、時計を見た。
「家にも、遅なるって連絡せなあかんな」
「私、電話借りられるか聞いてくる」
真弓が立った。
翔太も、自分も借りたいと言った。
綾香は紙を畳んでから、俺の腕をもう1度見た。
「痛かったら、ちゃんと言ってね」
「……うん」
答えると、綾香は少しだけ肩の力を抜いた。
それから真弓の後ろについていった。
みんなとは、まだいつもどおりには話せなかった。それでも、同じ部屋にいてくれた。俺は椅子に座ったまま、3人が出ていった入口の方を見ていた。
* * *
電話を借りた3人が戻って、しばらくすると、生徒指導の先生が来た。
入口から部屋を見渡し、翔太の名前を呼んだ。
「鳥居。富田へのいじめについて、君が知っていることも聞きたい」
「俺は、今は話しません」
翔太は、座ったまま答えた。
「学校で調べてください」
先生の目が、ほかのみんなへ移った。
「私も、そう思っています」
真弓が言った。綾香も、先生を見て頷いた。
「私も、今はお話ししません」
先生は春樹を見た。春樹は、さっき伝えたとおりです、と答えた。
誰も、机の上へ資料を出そうとはしなかった。
「その返事も、主任の先生へ伝えます」
先生は、持っていた紙を揃えた。
怒鳴ることも、すぐ話せと繰り返すこともなかった。でも、それで気持ちが変わるわけではなかった。
「鵜飼。学校から伝えておくことがある。もう1度、こちらへ来てくれ」
リュックサックを背負おうとすると、春樹が後ろから支えてくれた。左手で手提げを持って立つと、顔を上げた春樹と目が合った。
「待ってる」
「うん」
* * *
生徒指導室では、主任の先生が、机の紙を揃えていた。
向かいの椅子は、空いたままだった。
生徒指導の先生が俺より先に部屋へ入り、ほかのみんなも聞き取りを断ったと伝えた。
「鵜飼も、富田さんの被害について調べた内容は話さない、という返事は変わらないんだな」
俺は、勧められた椅子へ座った。手提げは自分の足元へ置いた。
「学校で調べてください。俺たちの返事は、変わりません」
主任の先生は頷き、机の紙を脇へ寄せた。俺たちの資料は、その中にはなかった。
「学校で確認を進めます。今は、君への連絡を聞いてほしい」
先生は、連絡事項を書いた紙を手元へ寄せた。
「君のお母さんには、後日、学校へ来ていただきたいとお伝えした」
俺は、顔を上げた。
「何を、話したんですか」
「来校のお願いだけだ。詳しいことは、まだ話していない」
母さんは、詳しい理由も聞かされないまま、学校へ来るように言われたのだ。家に帰ったら、今日何をしたのか、自分の口で話さなければならなかった。
「今日のことは、帰ったら君からも話してほしい。こちらから説明することも、後日の場で伝える」
「……はい」
「君とは、明日も話をする。明日はいつもどおり登校してくれ。登校したら、私のところへ来てほしい」
「分かりました」
先生は、担任が持ち出した反省文や別室登校を、俺へ言いつけなかった。
今日はまだ確かめることが残っていると、そう説明した。
「教頭先生にも見てもらった教材の状態は、校長先生へ報告する。資料は見せないことと、集めた物はご両親に渡すという君の返事も、そのまま伝える」
「先生たちが調べたことは、ご両親にちゃんと説明してください」
「そうします」
手提げを足元へ置き直した。中の物は、宣仁に手伝ってもらって包み直したままだった。
生徒指導の先生が、俺の右手へ目を向けた。
「最後に、手当てを受けていかないか。富田さんの件は、君がここを出ても調べ続ける」
俺は拳へ当てていた裾をそっと離した。傷の周りには乾きかけた血が残っていたが、さっきから新しい滴は落ちていなかった。白いYシャツの血の染みは、そのままだった。
「いいえ、結構です」
「放っておいていい傷だと、君が決めるんじゃないぞ。帰ったら、お母さんにも必ず手と腕を見せなさい」
「母さんが帰ってきたら、見せます」
優子のところへ行く前に、ここに残ることもできる。そう分かっていても、早く、迷惑なんかじゃないと伝えたかった。俺は右手を膝へ戻した。
主任の先生は生徒指導の先生と目を合わせてから、紙を閉じた。
「今日は、ここまでにしよう」
その言葉を聞いても、すぐには立てなかった。
机へ目を落としたまま、聞いた。
「富田のこと、明日になったら、また分からないって話にはならないですよね」
主任の先生は、紙を置いた。
「ならない。ほかの生徒から聞いた話も、ここで見た教材の状態も、学校の記録として残している。確認できていないところがあるからといって、全部なかったことにはしない」
先生は、机に置いた紙へ手を添えた。
「相談を受けたあとに何をしなかったかも、確認する。それは君たちに調べてもらうことではない」
「……はい」
ようやく椅子から立つと、生徒指導の先生がリュックサックを支えてくれた。片方ずつ肩紐を通し、手提げは左手で持ち上げた。右手は、ぶつけないよう体の前へ寄せていた。血の染みた裾は、ズボンから出したままだった。
「失礼します」
開けてもらったドアを出ると、廊下の窓から入る光がさっきより低くなっていた。
* * *
隣の部屋へ戻ると、春樹たちも帰ってよいと言われていた。
荷物をまとめる時、それぞれが持っていた記録を集めた。春樹が、聞き取りを書いた分と今日のことを書いた分を確かめながら重ね、宣仁が俺のリュックサックへ入れてくれた。
学校の先生には、誰もその中身を見せていなかった。優子の被害について自分たちが見たことも、調べたことも、学校で改めて調べてもらうと伝えてあった。
口を閉めてもらってから、リュックサックを背負った。みんなで荷物を持ち、昇降口へ向かった。
宣仁が、俺の歩く速さに合わせた。
「これから、富田のところ行くんやな」
「うん」
学校へ言いたいことは言った。でも、優子へは、まだ何も言えていなかった。
「今日、会えるとええな」
「……うん」
土曜日、返事のなかったインターホンを思い出した。今日は返事があるだろうか。顔を見せてくれるだろうか。
靴を履き替える間、手提げを壁際へ置いた。学校へ預けた物は1つもなかった。教科書もノートも、見つけたほかの私物も、みんなで集めた資料も、優子のご両親へ渡すつもりだった。
外へ出ると、翔太が隣へ来た。
「俺たちに何かできることあったら、言って」
「うん。今日も、ありがとう」
真弓と綾香も頷いた。
春樹は、俺の持っている袋へ1度目を向けた。
「中の紙、曲がってない?」
春樹は袋の口を少し広げ、覗いて紙の端を直した。教科書の角は、紙の内側に収まっていた。
「大丈夫」
「そっか」
校門を出て、優子の家へ向くところでみんなと別れた。いつもの公園へ続く道を帰る5人に、もう1度、左手の袋を少し上げて応えた。
右手はまだ痛かった。担任へ言い返した時の声も、喉に残っていた。
それでも、優子の家で同じ声を出したくはなかった。聞きたいことより先に、伝えることがあった。
迷惑だなんて、言っていない。
俺は手提げを持ち直し、歩き出した。
* * 学年主任視点 * *
勝也たちが帰ったあとも、生徒指導室では確認が続いていた。
机の端には、別の生徒が届けた教材が置かれていた。勝也が持ち帰った物とは違い、紙の間に土が入り込んだ表紙には、富田優子の名前が残っている。その横には、持ってきた生徒の名前と、見つけた場所を記した紙が添えられていた。
学年主任は、複数の教師から届いた記録を読み直していた。
生徒指導の教師が、ドアを開けた。
「自分から話したいという生徒がいます」
その後ろには、大島奈々が立っていた。鞄を両手で持ち、入口から机までを見たが、促されるまで入ってこなかった。
「入って」
学年主任が椅子を示した。奈々が腰を下ろす前に、机に広げていた記録の束を閉じ、教材の上へ紙をかぶせた。
「話したいことを、聞かせてくれるか」
奈々は膝の上へ鞄を置いても、持ち手から指を離さなかった。
「富田さんのことです」
「うん」
「私も、やってました」
生徒指導の教師は先ほどまでの記録を開かず、白い紙を1枚、前へ出した。
「自分がしたことから、話してくれるか」
「ノートに、字を書きました。水曜日、トイレで」
「どんな字を」
奈々が答えた言葉を、生徒指導の教師はそのまま書き留めた。
「ほかの子が書いてる時も、私、笑ってて。富田さんにも、ひどいこと言いました」
どこにいたのか、誰が一緒にいたのか、何を自分で見たのか。学年主任が1つずつ尋ねると、奈々は俯いたまま答えた。
「携帯は、戸田さんがトイレに捨てました。私、その時も見てました」
どの個室だったかを尋ねられ、入口から見た位置を説明した。
生徒指導の教師は書き留めてから、奈々へ目を戻した。
「そのあと、私も、教科書とかノートを持って出ました。杉浦さんと」
「富田から預かったのか」
「違います。返してって、言ってたのに」
奈々は、鞄の持ち手を握り直した。
「杉浦さんが何冊か、校舎の横へ持っていって。残りは、2人で外へ持っていきました」
「その残りは、どうした」
「道の脇へ。私が、置いてきました。返すつもりじゃなくて、捨てたんです」
学校からどちらへ歩き、何冊ほど持っていたのか。奈々は質問されるたびに少し考え、途中にあった建物や曲がり角を挙げながら、覚えているところまで説明した。
「杉浦さんは、靴と日傘も持ってて。昇降口で、富田さんのを取ったんです。それも、曲がり角の植え込みに」
「置くところを、君も見たのか」
「はい。私も、そこにいました」
生徒指導の教師は、教材を捨てた場所と、靴と傘の場所を分けて書いた。
「外へ出たあと、そのまま帰った?」
「その時は、戻りました。杉浦さんと、トイレへ」
「外へ出ていた間、中で何があったかは?」
「分からないです。戻った時には、富田さん、壁のところに座ってて」
戻る前のことと、戻ってから見たことを、生徒指導の教師は別の行へ記した。
奈々は、その紙を見つめたまま続けた。
「そのあと、戸田さんが、はさみ持ってて。富田さんの、後ろの髪を」
「切るところを見た?」
「はい」
奈々は頷いた。
「富田さんが嫌がったら、富永さんが叩いて。蹴ったりもしてました。杉浦さんも、腕を押さえてて」
「君は、その時、どうしていた」
鞄の持ち手が、指の中で捻れた。
「見てました」
少し間を置いて、続けた。
「止めてないです。私も、その前は面白がってたから」
学年主任は次の質問を急がず、奈々が顔を上げるまで待った。
「でも、髪を切られて、泣いてるのを見てたら、気持ち悪くなって。もう、やり過ぎだって思いました」
奈々は唇を噛み、膝へ目を戻した。
「私も、ひどいことしたんだって。でも、3人に言えなくて。先に帰るって、それだけ言いました」
「その時、富田さんは?」
「まだ、そこにいました」
「君が帰ったあとのことは、見ていないんだな」
「はい」
奈々は最後に自分が見た時の様子まで話し、それよりあとのことを聞かれると、分からないと答えた。
生徒指導の教師が区切りの線を引く間、奈々はそのペン先を見ていた。
「ほかにも、あります」
「聞こう」
「鵜飼くんの名前を、使いました」
学年主任は、閉じてある記録へ手を伸ばさなかった。
「どう使ったのか、自分の言葉で説明してくれるか」
「富田さんに、鵜飼くんが迷惑だって言ってたって、話しました」
「鵜飼から、そう聞いたのか」
「違います」
奈々の声が小さくなった。
「宿題のことで、鳥居くんと話してたのを、使いました。迷惑だとは言ってなかったです。私が、付け足しました」
生徒指導の教師が、紙へ書き足した。
「富田さんが、その言葉を信じるかもしれないと思っていた?」
「……はい」
「ほかの生徒にも、その話をしたか」
莉奈へ話したことについても、奈々は答えた。いつ頃、どこで話したのか、自分で覚えているところから順番に言った。
話が途切れると、部屋の外から足音が聞こえた。
奈々は入口を見たが、立たなかった。
「今日の教室では、自分がしたことについて、何か話した?」
学年主任が尋ねると、奈々は鞄へ目を戻した。
「鵜飼くんに、嘘だったって言いました。悪いことしたって。ごめんなさいって」
「それは、いつ?」
「戸田さんと、言い合いになってた時です。まだ、掴んだりする前に」
学年主任は時点を確かめてから、続きを待った。
「自分だけ助かろうとしてるって、言われました。でも、私も一緒にやってたのは、本当だから」
「ここでも話そうと思った理由を、聞かせてくれるか」
「家に帰ってからも、富田さんが泣いてたの、思い出して。私も一緒にやったのに、そのままにしてて」
言葉が止まった。
教師2人は、口を挟まなかった。
「鵜飼くんに謝っただけで、終わりにしちゃいけないと思いました。私がしたことも、先生に言わないと」
学年主任は頷いたが、許すとも、もう大丈夫だとも言わなかった。
「今の話を、順番に読み返す。違うところや、言い足したいところがあったら、止めてほしい」
奈々は、小さく頷いた。
学年主任は、奈々が話した内容を1つずつ読み返した。ノートに書いた言葉も、自分で教材を持ち出して捨てたことも、勝也の名前で伝えた嘘も、奈々がしたこととして記録されていた。ほかの3人についての説明の中へ隠れることはなかった。
* * *
奈々が別の教師に伴われて部屋を出たあと、学年主任は、先に届いていた記録を開いた。
優子へ嘘を告げていた場面を聞いた生徒と、奈々が仲間へその嘘について話すところを聞いた生徒。それぞれの記録を、今書いた紙の隣へ置いた。
教材を運ぶ2人の女子の会話を聞いた生徒、玲奈が靴と日傘を捨てるところを見た生徒、水曜の女子トイレの入口から中を見た生徒の記録も、順番に並べた。
「こちらから内容を教える前に、本人が話したことです」
生徒指導の教師が言うと、学年主任は頷き、話の重なる箇所へ印をつけた。
全員が、その場のすべてを見ていたわけではなかった。それでも別々に聞き取った話を並べると、同じ出来事を指している箇所が確かめられた。
その紙の中には、宣仁から、勝也から、そして保護者から相談を受けた日付もあった。学年主任は、それらを1番上へ揃えた。
「これも一緒に、校長先生たちへ持っていきましょう」
生徒指導の教師が、教材を包んでいた紙を戻した。
誰が何をしたかという記録の隣に、相談を受けた学校がどう対応していたかという記録が重なった。
今回の登場人物
・鵜飼 勝也
戸田を殴る必要はあったと考え、事情を聞かず謝罪を迫る担任には、殴ったことを謝らない。戸田本人への謝罪と、主任への説明・謝罪は真摯に行うが、学校への不信は解けず、被害品だけを見せて資料や私物は持ち帰る。
・荒川 宣仁
主任たちを呼んだあと、改めての聞き取りには応じず、学校で調べるよう求める。勝也の荷物の扱いを支え、怒りを共有しながらも、もう殴らないよう約束させる。
・鶴見 春樹
勝也の返事を聞き、自分も教師の聞き取りを断る。記録を優子の両親へ渡すことに同意し、勝也の荷物を支える。
・鳥居 翔太
勝也への恐怖を隠さず伝え、学校の対応への不満から聞き取りを断る。記録を優子の両親へ渡すことに同意し、帰り際にも勝也を気遣う。
・加藤 真弓
教室で見聞きしたことを紙に残すが、教師への説明には応じず、学校での調査を求める。勝也には、優子へ嘘を訂正してあげるよう伝える。
・井上 綾香
勝也の言動も隠さず記録し、優子の両親へ渡すことに同意する。学校の聞き取りは断りつつ、まだ緊張が残る中で勝也の怪我を気遣う。
・大島 奈々
教室での謝罪に続き、教師にも自分の加害と嘘を認める。切髪を見て罪悪感を抱きながら止めず、優子を残して帰ったことまで話す。
・担任の先生
優子の話を遮り、勝也から「お前に何を言っても、無駄なんだな」と言われて激昂する。学年主任たちには過去の相談への対応を問われ、担任を交代させる方針を告げられる。
・学年主任の先生
勝也自身の行為の説明を聞き、担任の対応を問いただしたうえで、学校の対応について謝罪する。勝也たちから調査内容や資料の提供を拒まれ、ほかの生徒への確認を進める。
・生徒指導の先生
学年主任とともに聞き取りを進め、勝也に手当てを勧める。奈々の供述も記録し、ほかの生徒から得た話と照合する。
・教頭先生
勝也の求めに応じて生徒指導室を訪れ、教科書とノートの被害をその場で確認する。現物は預からず、確認した状態を校長へ伝える。




