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君の隣が、僕の帰る場所  作者: 玲瓏さん
中学1年生編
20/52

第17話 汚れた教科書


    * * 勝也視点 * *


 教室へ入って、いつもの席へ向かいかけた。

 机の横に自分の物ではないリュックサックが掛かっていて、足が止まった。


「勝也、そっちじゃないでしょ」


 後ろから春樹に言われた。


「あ、そうだった」

「もう忘れたのかよ。俺が行きたかったとこ取っといて」

「取ったんじゃないって」


 翔太へ返しながら、窓側へ向かった。

 9月10日、月曜日。金曜日の帰りに変わった席へ、今日からは朝も座る。


 優子は、もう来ていた。

 連絡帳を開き、机の中の物と見比べている。本は読んでいなかった。


「おはよう、富田」

「……おはよう、勝也くん」


 隣の椅子を引いて座った。

 俺もリュックサックを下ろし、金曜日に借りた文庫本を取り出した。


「これ、半分よりちょっと先まで読んだ」


 優子が、こちらを向いた。


「……もう、そんなに?」

「続き気になってさ。最初に話してたところ、戻って読んだんだけど」

「どこの……」

「ほら、まだ何も起きてない時の。これって、あとで関係あるのかなって」


 優子は、答えかけて口を閉じた。

 俺が開こうとした本へ目を向け、それから、小さく首を振った。


「……そこは、最後まで読んでからの方が……」

「あ、言わない方がいい?」

「うん。……今、聞いちゃうと」

「分かった。じゃあ、もうちょっと借りててもいい?」

「……うん。大丈夫」


 少し笑ってくれた。

 金曜日、続きを言いそうになって止まった時と、同じ顔だった。


「読み終わったら、そこも聞くね」

「……うん」


 優子は頷き、連絡帳へ目を戻した。

 俺も本をしまった。

 今朝は、教室へ来たらこの話をしようと思っていた。思っていたとおりに話せて、ほっとした。


 まだ、何を話しかけても大丈夫だとは思えなかった。

 本を読んでいたいのに、話しかけられるのが鬱陶しい。

 奈々から聞いた言葉を、忘れたわけではない。


 でも、今の返事は嫌そうではなかった。

 邪魔をしない時を選べば、少しずつ、前のように話せるかもしれないと思った。


     * * *


 1時間目が終わると、翔太がこちらへ来た。


「やっぱり遠いな、ここ」

「歩いて来たばっかりで言う?」

「歩いて来たから分かったんだよ」


 翔太は窓の方を見て、それから、俺の机へ目を落とした。


「次、何だっけ」

「社会」

「そうだった。教科書、出してくる」

「何しに来たの」

「別に。用なかったら来ちゃ駄目なのかよ」


 そう言われて、少し笑った。

 翔太は、じゃあな、と手を上げ、教室の反対側へ戻っていった。


 俺は数学のノートをしまい、社会の教科書を出した。

 優子も、机の中から1冊取り出していた。

 角の折れた表紙が見えた。金曜日に見た、紙の端が波打っていた教科書とは違う物だった。


 優子は開きかけて、すぐに押さえた。

 間に、白い紙が挟まっていた。

 何かを書いたプリントかと思ったが、こちらから見える方には、何も書いていなかった。


 窓から風が入った。

 優子が次のページへ指をかけたところで、白い紙の角がめくれた。


 その下に、黒い字があった。


 死ね。


 印刷された文章の上に、太い字で書かれていた。

 文字だけではなかった。何本も線が重なり、説明の途中が黒くつぶれていた。


「富田、それ……」


 優子が、白い紙を戻した。

 教科書を閉じ、胸の近くへ引いた。


 俺は、自分の教科書へ目を落とした。

 開いているところには、普通に文章が並んでいた。同じ本なのに、優子の方には、あんなことが書かれていた。


「誰かに、書かれたの?」


 声を落として聞いた。

 優子は俺を見なかった。

 閉じた表紙の上に手を重ね、唇を少し動かした。


「……あの……」


 その先が出てこなかった。

 顔が上がりかけて、教室の前の方へ向いた。


 俺も、そちらを見た。

 まだ立って話している人がいた。机を囲んで笑っている女子も、ドアのところで誰かを呼んでいる男子もいた。

 優子が誰を見たのかは、分からなかった。


「いつ、こんな……」


 聞きかけると、優子の指が表紙を握った。

 白くなるくらい、力が入っていた。


 俺は、続きを言えなくなった。

 答えたくないのか、答えられないのかも分からない。でも、普通に聞けば返ってくる話ではなさそうだった。


 社会の先生が入ってきた。

 教卓へ出席簿を置き、前の時間の続きをするように言った。


 優子の教科書は、閉じたままだった。

 開けば、さっきの字がある。

 その上に紙を置いたら、勉強するところまで隠れてしまう。


 俺は自分の教科書を取り、優子の机へ置いた。


「これ、使って」


 優子が、俺を見た。


「……でも、勝也くんの……」

「一緒に見ればいいよ。隣だし」


 チャイムが鳴った。

 立って挨拶をしてから、俺は手を上げた。


「先生、すみません。教科書、忘れました。富田に見せてもらっていいですか」


 隣で、優子が顔を向けた。

 俺は前を見ていた。


「鵜飼、今日は教科書を使うぞ」

「はい」

「次は忘れないようにな。富田、一緒に見せてやって」

「……は、はい……」


 先生は頷き、黒板へ向き直った。

 何人かがこちらを見たけれど、すぐに自分の机へ目を戻した。


 俺は机の脚を少し持ち上げた。

 窓の方へ寄せると、優子も机をわずかに動かしてくれた。

 間の隙間がなくなった。


「ここ、だった?」


 俺の教科書を開くと、優子が指を伸ばした。


「……1枚、先……」

「ああ、こっちか」


 開き直し、2人の真ん中へ置いた。

 優子は自分の教科書をノートの下へしまった。

 先生が話し始めたので、俺も鉛筆を持った。


 黒板に書かれた字を写した。

 さっき見た2文字とは、何の関係もない言葉だった。

 それなのに、白い紙がめくれたところが、何度も浮かんだ。


    * * 優子視点 * *


 勝也くんが、教科書を忘れたことになった。


 忘れてなんかいない。

 今、私の前にあるのが、勝也くんの教科書だった。

 先生に注意されている間も、勝也くんは私を見なかった。何か説明してほしいという顔もしなかった。


 本当は違うのだと、言わなければいけなかった。

 でも、言ったら、自分の教科書を出さなければならなくなる。

 どうして使えないのか、聞かれる。


 見せられなかった。

 勝也くんに見られただけでも、息がうまくできなかったのに。


 日曜日の夜、あの字を消そうとした。

 消しゴムでこすると、紙の表面だけが毛羽立った。元から印刷されていた小さな文字は薄くなったのに、上から書かれた黒い字は残った。

 隠すための紙を切って挟み、今朝は、そのまま持ってきた。


 持っていかなければ授業を受けられない。

 持っていっても、開けない。

 家を出る前から、ずっと考えていたことだった。


 今は、目の前に読めるページがあった。


 先生の声を聞こうとした。

 黒板を見て、ノートへ書いた。でも、何の説明をしているのか、途中で分からなくなった。

 急いで教科書へ目を戻すと、右側から、勝也くんの指が伸びた。

 今、先生が言った言葉のところへ置かれた。


「ここ」


 小さな声だった。

 私は頷き、印刷された文を追った。

 やっと、どこを見ればいいのか分かった。


 ありがとうと言いたかった。

 それより先に、ごめんなさいが浮かんだ。


 隣で私が困っていたから、勝也くんは、自分の教科書を貸すしかなくなったのではないだろうか。

 迷惑だと思っていても、優しいから、放っておけなかったのではないだろうか。


 奈々さんに言われたことを思い出した。

 隣の席なら、嫌でも離れられない。


 机は、くっついていた。

 金曜日には、隣になれただけで嬉しかった。その人に、今日は自分の代わりに注意されてもらっていた。


「めくっていい?」


 勝也くんが聞いた。

 私は、慌てて頷いた。


「……うん」


 次のページが開いた。

 勝也くんは、私の方へも見える位置に置き直した。

 それを当たり前のようにしてくれたのが、嬉しくて、申し訳なかった。


     * * *


 授業の途中で、資料を見て答えを考える時間になった。

 先生が黒板へ書いた問いを写し、教科書へ顔を近づけた。


「狭くない?」


 勝也くんに聞かれ、首を振った。


「……うん。ここなら、見える」

「じゃあ、筆箱、こっちに置くね」


 ノートを開く場所が広くなった。

 私は鉛筆を持ち直した。


 勝也くんは資料の下にある説明を読んでいた。

 そこに書いてあることだけでは、問いの後ろの部分に答えられないようだった。

 ページの上へ戻ると、使えそうな文があった。


 教えてもいいだろうか。

 自分でもう気づいているかもしれない。

 でも、私は教科書を見せてもらっているだけだった。分かったところくらいは、伝えたかった。


「……勝也くん」


 呼ぶと、すぐに顔を向けてくれた。


「ん?」

「こっちも……使うと思う。ここに、書いてあるから」


 文の終わりを指した。

 勝也くんはそこを読み、黒板を見た。


「本当だ。俺、下だけ見てた」

「……うん」

「ありがとう」


 鉛筆が動き始めた。

 ちゃんと、役に立てたのだと思った。


 私も、同じところを読んで答えを書いた。

 隣でため息をつかれることも、話しかけないでと言われることもなかった。

 怖がりながら呼んだ名前に、いつもの声で返してくれた。


 そのあと少しの間は、問題を考えられた。

 黒い字が隠していたところを、読めた。


     * * *


 授業の終わりに、次に使うページを言われた。

 連絡帳へ書こうとしたら、ノートの下から自分の教科書が見えた。

 また手が止まった。


 勝也くんが、自分の連絡帳へ数字を書いた。


「あとで、これ見ていいよ」


 私は頷いた。

 チャイムが鳴るまで、もうその教科書を開かずに済んだ。


 先生が出ていってから、借りていた本を閉じた。


「……ありがとう」

「うん」

「忘れたことに、してくれて……。でも、先生に……」


 勝也くんは、周りへ目を向けてから、こちらへ顔を戻した。


「注意されただけだから。次、持ってきたら大丈夫だよ」

「……持ってきて、くれてたのに」

「そうだけどさ。あのままだったら、読めなかったでしょ」


 私は、膝の上で指を握った。

 何と答えれば、申し訳なく思っていることまで伝わるのだろう。


「富田。さっきの字、誰に書かれたか、分かる?」


 喉が詰まった。

 分かっていた。黒いペンを持っていた手も、その時に言われたことも覚えていた。


 でも、名前を言ったら、勝也くんは、その人に聞きに行くかもしれない。

 私が話したことは、すぐ分かる。


 教室の前から、笑う声が聞こえた。

 何を笑っているのか分からないまま、肩が動いた。

 勝也くんも、そちらを向いた。


 見ないでほしかった。

 気づいてほしかった。

 自分でも、どちらを思っているのか分からなくなった。


「……私……」


 それだけしか出なかった。

 勝也くんは、隠した教科書を取ろうとはしなかった。

 少し待ってから、声をもっと落とした。


「ごめん。今、ここでは話しにくいなら、無理に聞かないよ」


 顔を上げられなかった。

 聞かれなくなって、ほっとした。それなのに、もう知らないと言われたらどうしようと、怖くもなった。


 勝也くんは、自分の教科書をしまった。

 そのあとで、続けた。


「次に読めないところがあったら、また俺の見ていいから」


 優しい声だった。

 いつまで、そう言ってもらえるのか考えてしまった。


「……うん」


 ようやく、返事ができた。

 聞いてほしいことは、まだ何も話せていなかった。


    * * 勝也視点 * *


 3時間目のノートには、途中で空いた行があった。

 黒板に書かれたところを写していたはずなのに、いつの間にか抜けていた。


 優子は、前を見ながら鉛筆を動かしていた。

 俺も、空いたところへ急いで書き足した。

 自分が見た教科書の字を、まだ考えていた。


 優子は、あれを出さなければならなかった。

 授業を受けるために持ってきた本だった。

 家でしまっておけば見なくて済む物ではない。


 金曜日の、濡れていた教科書も思い出した。

 読めるからと言われ、そのままにした。

 水をこぼしたのかもしれないし、別の理由かもしれない。今でも、それは分からない。

 でも、今日の字は、うっかり水がかかったのとは違った。


 誰かがペンを持って、あの2文字を書いた。

 優子が次に開いた時に見る場所へ。


 腹が立った。

 誰なのか分からないので、どこを見ればいいのかも分からなかった。

 隣で聞いても、優子は言葉を出せなくなっていた。


 先生に、話そう。


 そう思ってから、少しだけ息がしやすくなった。

 先生なら、教室ではないところで聞いてくれるかもしれない。俺に言えないことでも、大人には話せるかもしれなかった。


 今、授業中にみんなの前で言うことではなかった。

 あとで担任を呼び止めようと決め、黒板へ顔を上げた。


     * * *


 給食では、箸を持ったまま何度も手が止まった。


「勝也。それ、食わねえの?」


 翔太に聞かれて、皿を見た。


「食べるよ」

「ずっと残ってっから」

「今、食べようと思ってた」

「それ、俺もよく言うやつだ」


 翔太が笑った。

 俺も笑って、口へ運んだ。


 少しして、お椀を持ったところで綾香に声をかけられた。


「勝也、傾いてる」

「え?」


 中身が片側へ寄っていた。

 慌てて机へ置いた。


「危なかった。ありがとう」

「うん。熱いから、気をつけてね」


 春樹がこちらを見た。

 翔太も、さっきとは違う顔をした。


「お前、眠いの?」

「眠くはないよ」

「何か、今日、ぼうっとしてね?」

「……ちょっと、考え事」


 何を、と聞かれるかと思った。

 翔太は口を開きかけ、俺の顔を見てから、皿へ目を戻した。


「冷めるぞ」

「うん」


 優子は、自分の給食を少しずつ食べていた。

 ここで、教科書に何が書いてあったのかを話すことはできなかった。

 まず先生に、どうしたらいいか聞こうと思った。


    * * 優子視点 * *


 給食のあと、手洗い場で手を拭いていると、奈々さんが来た。


「富田さん。今日、鵜飼君と教科書見てたね」


 ハンカチを畳む手が止まった。


「……うん……」

「鵜飼君が忘れたんだっけ」


 何と答えたらいいのか分からなかった。

 先生には、そう言っていた。

 でも、私がそのまま頷くのは、勝也くんのせいにするみたいだった。


 奈々さんは蛇口をひねった。

 私が答える前に、水を見ながら続けた。


「優しいよね。ああいう時、何も言わないでやってくれるし」


 どこまで見ていたのだろう。

 助けてもらったのが私だと、分かっているような言い方だった。


「……私が、頼んだんじゃ……」

「うん。自分からしてくれたんでしょ」


 奈々さんは、あっさり頷いた。


「でも、それで毎回平気だって思っちゃ駄目だよ。断れない人っているから」


 喉が痛くなった。

 私も、ずっと気にしていたことだった。

 勝也くんは、自分のことより先に、困っている私をどうにかしなければならなくなったのかもしれない。


「……もう、返したから……」

「教科書は返すでしょ。そういうことじゃなくて」


 奈々さんは水を止めた。

 私はハンカチを持つ手を下ろした。


「気をつけてあげてねって話。鵜飼君、言いにくいだろうし」


 それだけ言って、奈々さんは教室へ戻った。


 お礼をもう1度言おうと思っていた。

 教科書を見せてくれたことも、先生に忘れたと言ってくれたことも、嬉しかったのだと伝えたかった。


 でも、そのために呼び止めるのも、時間を取ることなのだろうか。


 私は、水のついていない手を、もう1度ハンカチで拭いた。

 勝也くんが、給食の時にあまり笑っていなかったのを思い出した。

 私のせいだと決まったわけではないのに、朝との違いを、そこへ結びつけてしまった。


     * * *


 教室へ戻ると、勝也くんは連絡帳を開いていた。

 椅子へ座ろうとした私に、顔を向けた。


「富田。さっきの、次に使うところ。これで合ってるよね」


 数字が書いてあった。

 私が途中で書けなくなったところだった。


「……うん。そこ」

「ありがと。俺も、間違えたら困るから」


 少しこちらへ寄せてくれた。

 私も連絡帳を出し、同じ数字を書いた。

 教科書を見られた時の話は、聞かれなかった。


「……もう、大丈夫。ありがとう」

「うん」


 勝也くんが連絡帳を戻した。

 開いている間、早くしてほしいという顔はしていなかった。


 今、見せてくれた人を信じたかった。

 奈々さんがいないところでも、私に気を遣わなければならないほど、勝也くんを困らせているとは思いたくなかった。


 ありがとうと言った時の返事を、もう1度、頭の中で聞いた。

 少なくとも、怒っている声ではなかった。


    * * 勝也視点 * *


 昼休みのうちに、担任とは話せなかった。

 教室へ戻ってくるかと思って待っていたが、来なかった。職員室へ行こうと立った時には、予鈴が鳴っていた。


 帰りの会が終わったら、すぐに呼び止めよう。

 今度は、そう決めた。


 午後の授業でも、優子は板書を写していた。

 先生に指されると立ち、少し間を置いてから答えた。

 声が小さくて聞き返されたけれど、もう1度言うと、先生は頷いた。


 ほかの人と同じように授業を受けていた。

 朝のことを知らなければ、俺も、それだけを見ていたと思う。


 掃除の時間になり、俺は廊下へ出た。

 優子が自分で椅子を持ち上げ、机へ載せるのが見えた。

 手伝わなければと思いかけた時には、もう終わっていた。


 ずっと見ていたら、何だろうと思うかもしれない。

 でも、目を離したら、何かされるのではないかとも思った。

 今まで考えなかったことばかりだった。


 廊下の隅に集めた埃を、塵取りへ入れた。

 窓のところに、消しゴムのかすが落ちていた。ほうきで寄せながら、優子の教科書も、消せる字だったらまだ違ったのだろうかと考えた。


 消えればいい、ということでもなかった。

 誰かにあんな言葉を書かれることを、嫌だと思った。

 優子の教科書だったから、なおさらだった。


     * * *


 帰りの会では、今週の委員会の予定を伝えられた。

 俺は連絡帳へ書き、挨拶のあと、すぐに教卓へ向かった。


「先生。少し、相談してもいいですか」


 担任が顔を上げた。


「どうした。委員会のことか?」

「いえ。富田のことで……。ここじゃないところで、話せますか」


 声を落とした。

 後ろでは、まだ帰り支度をしている人がいた。


 先生はプリントをまとめ、教室の外へ出た。

 俺もついていった。

 階段の手前まで来ると、先生が廊下の端へ寄った。


「それで、何があった」

「今日、富田の教科書を見たんです。黒いペンで、本文の上に字とか線が書いてあって」

「落書きか」

「……死ね、って。大きく書かれてました」


 口にすると、思っていたより嫌だった。

 俺に書かれたわけでもないのに、次の言葉を続ける前に息を吸った。


「富田、紙を挟んで隠してたんです。授業で使うところも読めなくなってて」

「それを、お前に見せてきたのか?」

「いえ。開いた時に、隣から見えました」

「本人から相談されたわけではないんだな」

「はい。でも、聞いたら、何も言えなくなって」


 先生は、持っていたプリントを揃えた。


「誰が書いた?」

「それは、分かりません」

「富田も言わないのか」

「周りを気にしてたので、教室では話せないのかと思って。それで、先生に聞いてもらえないかなって」


 先生なら、そのための場所を作ってくれると思っていた。

 俺がまだ知らないやり方で、優子が困らずに話せるようにしてくれるかもしれないと。


「話せないと、本人が言ったのか?」

「いえ。それは、俺がそう思っただけです」

「だったら、そこは分からないだろう」


 俺は頷いた。

 優子の考えを、全部知っているわけではなかった。


「でも、書いてあったのは、本当に見たんです」

「先生も、それがいいとは言っていないよ。今日の授業はどうした?」

「俺の教科書を、一緒に使いました」

「なら、授業は受けられたんだな」


 先生が頷いた。

 そこで、話が済みそうになった。


「今日だけのことじゃないと思うんです。次の授業でも、あの本を出さないといけないから」

「その教科書は、今あるのか?」

「富田が持ってます。見てもらえませんか」

「まずは、本人が相談しに来ないとな」


 返事の意味が、すぐには分からなかった。

 今あるかと聞かれたから、見てくれるのだと思った。


「先生から、声をかけてもらえないですか。俺が聞いたら、黙っちゃったので」

「鵜飼。本人にも、話したくないことはあるだろう」

「はい。だから、みんながいないところで……」

「周りが先に騒いで、本人が困ることもあるんだよ」


 先生の声は大きくなかった。

 言い聞かせるような声だった。

 それなのに、何か言うたびに、優子から遠くなるような気がした。


 教科書を見てほしい。

 優子が何に困っているのか、聞いてほしい。

 そのために来たのに、どちらも、まだしてもらえなかった。


「困ってるから、隠してたんじゃないですか」

「それは、お前がそう思ったんだろう。先生は実物も見ていないし、事情も聞いていない」

「だから、見てほしいって……」


 声が少し早くなった。

 先生が、こちらを見た。


「落ち着きなさい。誰が書いたかも分からないまま、いじめだと決めつけるわけにはいかないだろう」

「誰かを、今すぐ怒ってほしいんじゃないです」

「向こうに聞けば、別の話が出てくるかもしれない。悪ふざけで、本人同士では終わっていることもある」

「でも、教科書には残ってるんですよ」


 先生は、息を吐いた。


「だからこそ、富田が自分で言う必要があるんだよ。困っているなら、話しに来るように伝えなさい」


 俺が伝えたら、優子は話しに来られるのだろうか。

 それなら、さっき俺にも言えたのではないだろうか。

 そう言おうとして、また俺の考えだと言われる気がした。


「……富田が来なかったら、何も聞かないんですか」

「先生も様子は見ておく。ただ、ほかの子のことに首を突っ込みすぎると、かえってこじれることもあるからな」

「様子って、何を見るんですか」


 聞くと、先生の顔が硬くなった。


「鵜飼。お前が心配しているのは分かった。先生に任せて、普通にしていなさい」

「普通に……」

「まだ分からないことを、友達にまで広めないように。いいな」


 俺は答えなかった。

 先生はプリントを持ち直し、階段へ向かった。


 呼び止めようと、口を開いた。

 何を言えば、今の返事と違うものが返ってくるのか、分からなかった。


 足音が、階段を下りていった。

 俺は、廊下に残った。


 優子が話せなかったから、ここへ来た。

 戻って、先生に自分で話してきてと言うのだろうか。


 それでは、優子がやらなければならないことが増えただけだった。


 目の前にいない相手へ、また謝っている優子を想像した。

 俺の聞き方が悪かったのか、うまく説明できなかったのか、考えかけて、やめた。

 あの言葉が教科書に書いてあった。

 それより分かりやすく、何を言えばよかったのだろう。


 悔しかった。

 大人に話せば何とかなると思っていた自分まで、情けなくなった。


     * * *


「鵜飼」


 振り向くと、荒川が立っていた。

 体育で使ったらしい記録の紙を持っている。


「ごめん。ちょっと、聞こえてもうた」

「……先生との話?」

「うん。これ返しに行くところやって。富田の名前、聞こえたから」


 荒川は近づき、教室の方を見た。

 俺も、少し壁の方へ寄った。


「相談しとったんやな」

「うん。でも、本人から言わないとって」


 言い直すと、また腹が立ってきた。

 荒川は、驚いた顔をしなかった。


「自分の時も、そうやった」

「……荒川の時?」

「前に、富田のことで話したんよ。あの先生に」


 俺は荒川を見た。

 聞き間違えたのかと思った。


「前って、いつ?」

「1学期。夏休みになるより前」

「その時から、何かされてたの?」

「自分が見たんは、椅子返してもらえへんかったり、話聞いてもらえへんかったりしたとこやけど」


 廊下を、生徒が通り過ぎた。

 荒川はその人が階段へ行くのを待ち、続けた。


「戸田と富永が、富田の椅子を使っとったんや。雑誌置いて。富田、戻ってきて座りたいって言うてんのに、そのままやった」

「聞こえてなかったんじゃなくて?」

「返事はしてたで。今見てるからって」


 戸田と富永の顔が浮かんだ。

 同じ教室で、俺とも話す相手だった。


「それで、どうしたの」

「戸田たちに、富田の椅子を返すように言うたんよ。雑誌なら机に置けるやろ、って。そしたら雑誌をどけたから、自分が椅子を富田の席まで戻した」

「……うん」

「椅子を戻したら、富田、謝りかけてな。何で富田が謝らなあかんねんって思った」


 朝の声を思い出した。

 ありがとうと言ってから、でも、先生に、と続けた優子。

 自分が困ることをされたのに、助けてもらった方を気にしていた。


「ほかにも?」

「課題のこと聞いても、富田には返事せえへんかった。そのあと来た子には、普通に答えとったのに」


 荒川は、言葉を選ぶように少し黙った。


「本の話もあってな」

「本?」

「富永が、どんな話か説明してって言うたんよ。富田が話し始めたら、分からんって、戸田と笑い出して」


 教室に置いたリュックサックの中には、優子に借りた本があった。

 今朝、その続きを話そうとしてくれた顔を思い出した。


「それ、富田は……」

「謝って、本しまってもうた。自分も、聞いたんやったら最後まで聞いたらええやんって言うたんやけど。向こうは、聞いてるって」


 言われたままのやり取りを、荒川は話した。

 誰かがそう言っていた、という話ではなかった。

 その場にいて、自分でも声をかけていた。


「先生にも、そのこと話したの?」

「うん。椅子は戻ったんやろ、って。それから、本人は大丈夫って言うてるなら、大きくせん方がええって」

「富田、大丈夫って言ったんだ」

「あの時はな。でも、全然そう見えへんかった。自分が言わんかったら、椅子も戻ってへんかったと思う」


 荒川は持っていた紙へ目を落とした。


「女子同士のことは難しいからって、様子見るって。いつ、誰に聞くかは、決まらんかった」


 同じ先生の声で、聞こえた気がした。

 さっきまで、俺にも言っていたことだった。


「俺は、今日初めて見たんだ。教科書に書いてあるの」

「うん。何て書かれてた?」


 見えた言葉と、本文の上を消すように引かれた線について話した。

 白い紙で隠していたこと。聞いたら何も言えなくなったこと。

 荒川は、途中で遮らなかった。


「金曜にも、別の教科書が濡れてた。でも、何で濡れたのかは聞いてない」

「それも、誰かにされたんかな」

「分からない。水こぼしただけかもしれないし」

「……せやな。そこは、まだ分かれへんか」


 荒川は頷いた。


「戸田たちが、今日の字を書いたかも分からへん。自分、その場面は見てへんから」

「うん」

「けど、前に富田が困っとったんは、ほんまや。あれは、自分で見た」


 俺も頷いた。

 今日、分からないことをいくつも聞かれた。

 誰が書いたのか。優子が本当に困っているのか。

 答えられないところがあるたび、見たものまで、何でもないように扱われた。


 荒川は、そうしなかった。


「鵜飼。自分、できることは少ないかもしれんけど、協力する」


 顔を上げた。

 荒川が、こちらを見ていた。


「……いいの?」

「自分も気になっとったからな。先生に言うたから、それで終わりにはできへん」

「うん。……ありがとう。頼みたい」


 返事をしたら、少しだけ声が出しやすくなった。

 何が大変なのか、最初から全部、説明し直さなくてもよかった。

 優子の様子を見て、変だと思ってくれた人がいた。


「まず、何しよか」


 荒川が聞いた。

 俺は教室の方を見た。


「俺、隣だから。教科書を使えない時は、一緒に見る。それは、これからもできると思う」

「うん」

「でも、書かれたあとに気づいても、元には戻せないから。その前に、何かされる前に止めたい」


 言いながら、今日の自分を思い返した。

 教科書を見るまで、俺も翔太と話していた。

 授業以外では、いつもそこにいるわけでもない。


「ずっと、1人では見てられないよな」

「せやから、2人で見よ。鵜飼が席離れる時は、自分が気にしとく」

「荒川がいない時は、俺が?」

「うん。離れる前に言えば、2人とも知らん間に出てたってことは減らせるやろ」


 俺は頷いた。

 今日、担任と話すために廊下へ出た間も、優子がどうしていたかは見ていなかった。

 用事があるたびに、その時間ができる。


「教室から出る時も、気にしとこう。廊下で何かされてても、席だけ見てたら分からないし」

「そうやな。自分、後ろの方でも友達と喋れるから。鵜飼がおらん時、そっち行くわ」

「何かされてたら、すぐ呼んで。俺も呼ぶ」

「うん。でも、その場で止められることは止めよな。2人そろうまで待たんと」


 椅子を戻した時も、荒川はそうしたのだった。

 先生に聞いてもらえるまで、優子を立たせたままにはしなかった。


「……うん。そうする」


 どこで何をされているか、まだ分からなかった。

 これだけで全部を防げるとも思えなかった。

 それでも、明日、自分が席を離れる時に頼める相手ができた。


「富田には、何か聞けそう?」


 荒川に聞かれて、少し考えた。


「今日みたいに何度も聞くのは、やめとこうと思う。答えようとすると、すごく苦しそうだったから」

「そっか。自分も一緒になって聞いたら、余計しんどいかもしれんな」

「うん。話してくれたら、聞きたいけど」


 荒川は、それでええと思う、と答えた。


「謝らんでええことまで、謝ってまうんやな」

「今日も、自分のせいで俺が注意されたって、気にしてた」

「教科書に書いたやつの方が、悪いやろ」

「……うん」


 俺も、そう思っていた。

 その返事だけでいい相手がいることに、ほっとした。


 階段の下から、部活へ向かう声が聞こえた。

 荒川が壁の時計へ目を向けた。


「あかん。これ返して、着替えな」

「引き止めて、ごめん」

「声かけたん、自分やで」


 そうだった。

 少し笑うと、荒川も笑った。


「ほな、明日。何かあったら言うてな」

「うん。ありがとう」


 荒川は片手を上げ、階段へ向かった。

 俺は教室へ戻った。


 優子の席は、もう空いていた。

 机の横に、リュックサックもなかった。

 今日は話せなかったことが、いくつも残ったままだった。


 自分の荷物を取り、肩へかけた。

 明日は、荒川にも声をかけようと思った。


    * * 優子視点 * *


 帰りの会が終わったあと、勝也くんは先生と廊下へ出ていった。

 その背中が、家へ着いてからも頭に残っていた。


 私のことで、話していたのだろうか。

 委員会の用事かもしれなかった。勝也くんは、先生に頼まれることもある。

 私には、どちらなのか分からなかった。


 借りているリュックサックを下ろし、社会のノートを出した。

 その下にある教科書は、閉じたまま机へ置いた。


 ノートを開くと、今日書いた字が並んでいた。

 最初の方には、あとから書き足したところがある。

 勝也くんが教えてくれた見出しも、自分で考えた答えも、残っていた。


 朝には、どうやって授業を受ければいいのか分からなかった。

 今は、その時間に勉強したことが、ここにある。


 迷惑をかけてしまったのかもしれない。

 でも、助けてもらえて嬉しかった。

 その気持ちまで、間違っていたことにしたくはなかった。


 ノートを閉じ、着替えてから部屋を出た。

 お母さんは、洗濯物を畳んでいた。


「着替えた? お茶、そこにあるからね」

「うん。ありがとう」


 コップを持って座った。

 お母さんが、畳んだタオルを重ねた。

 私は、お茶を飲んでから、その手元を見た。


「……お母さん。ここで宿題しててもいい?」

「いいわよ。そこ、片づけようか」

「大丈夫。これだけなら、置けるから」


 自分のコップを端へ寄せた。

 お母さんは、どうして部屋でしないのかとは聞かなかった。


 必要な物だけ取りに戻った。

 教科書の端は、まだ少し波打っている。けれど、今日の宿題に使うところは読めた。

 社会の教科書は、部屋へ置いたままにした。


 席へ戻り、鉛筆を持った。

 お母さんが近くでタオルを畳んでいた。少しして立ち上がり、台所へ向かった。

 その足音を聞きながら、問題を読んだ。


 学校のことを、話したかった。

 勝也くんが教科書を貸してくれたことなら、言えるかもしれないと思った。

 でも、どうして自分の物を使わなかったのか聞かれたら、答えられない。


「夕飯までに、終わりそう?」


 お母さんに聞かれて、問題の残りを見た。


「うん。多分、このページで終わる」

「分かった。お腹すいたら言ってね」

「……うん」


 普通の話なら、返せた。

 返事ができることを聞いてもらえると、少し楽だった。


 鉛筆を動かした。

 明日も、持っていく教科書を確かめなければならない。

 勝也くんへ何と言うかは、まだ決められなかった。


 それでも、今日見せてくれたページには、きれいに文字が並んでいた。

 その真ん中へ置かれた指と、ありがとうと言ってくれた声を、覚えていた。


    * * 勝也視点 * *


 夜、借りた文庫本を開いた。

 栞を抜いて続きを読んだが、すぐ前の会話を思い出せなかった。

 少し戻って読み直しても、別の言葉が浮かんだ。


 本人が相談しに来ないとな。


 その本人に、何を話しかければいいのか、俺も困っていたのだった。

 困っているから先生を頼ったのに、戻されてしまった。


 本を閉じた。

 机の引き出しからノートを出し、後ろの空いているページを開いた。


 9月10日。

 社会の授業が始まる前。


 そこまで書いて、手が止まった。

 見た字を自分でも書くのは、嫌だった。

 でも、ただ落書きがあったとだけ書いたら、あとで見た時に、違うものまで一緒になってしまいそうだった。


 2文字と、その周りの線のことを書いた。

 優子が白い紙で隠していたことも、短く残した。


 その下に、先生へ話した、と書いた。

 実物は見てもらえなかった。

 優子に話を聞くとも、約束してもらえなかった。

 本人が来るように伝えろと言われた。


 書くと、何も変わらなかったことが、はっきり分かった。

 先生に話したという行だけでは、済んでいなかった。


 少し空け、荒川から聞いたことを書いた。

 椅子を返してもらえなかったことと、本の説明をしている途中で笑われたこと。

 そちらは、俺が見たことではないと分かるようにした。


 戸田と富永の名前を書いたところで、ペンを止めた。

 今日の教科書に、2人が書いたかは分からない。

 だからといって、荒川が見たことまで、気にしなくていいわけではなかった。


 明日、どんな顔で2人を見ればいいのだろう。

 何も知らなかった時と、同じ気持ちではいられそうになかった。


 ノートを閉じた。

 書いたところで、分からないことが埋まるわけではない。

 でも、聞いたことや見たことを、忘れないようにはできた。


 リュックサックへ、明日の教科書を入れた。

 優子と一緒に使うかもしれないと思い、足りない物がないか、もう1度確かめた。


 朝、教室へ着いたら、荒川にも話しかけよう。

 席を離れる時には声をかける。

 俺がいない間のことを、帰ってきてから初めて気にするのは、やめたかった。


 最後に、借りた文庫本を入れた。

 この本の話をしていた時、優子は少し笑っていた。

 教科書を隠した時には、声が出なくなっていた。


 どちらも、今日、隣で見た顔だった。

 笑ってくれたから大丈夫なのだと、もう思えなかった。

 それでも、また本の話で笑ってほしかった。


 ファスナーを閉じた。


 明日も、おはようと声をかけよう。

 読めないところがあれば、自分の教科書を出そう。

 何かされていたら、荒川と一緒に止めよう。


 先生に言われたとおり、何も知らなかった時へ戻ることはできなかった。

 明日、優子の隣へ座るのは、俺だった。



今回の登場人物


・鵜飼勝也

 優子の教科書への落書きに気づき、自分が忘れたことにして一緒に使う。担任が動かない中、荒川と協力を決め、見聞きしたことを記録する。


・富田優子

 隠していた教科書の被害を勝也に見られる。助けられた嬉しさと迷惑をかける不安の間で揺れ、誰にされたのかを話せずにいる。


・鶴見春樹

 以前の席へ向かいかけた勝也に、新しい席を思い出させる。給食中には、考え事をしている勝也の様子に目を向ける。


・鳥居翔太

 離れた席から勝也のところへ来て、用事がなくても気軽に話す。給食中のぼんやりした様子を気にかけるが、無理には聞き出さない。


・井上綾香

 考え事をしている勝也のお椀が傾いていることに気づく。声をかけて、熱い中身をこぼさないよう注意を促す。


・荒川宣仁

 1学期に目撃した優子への嫌がらせと、担任に相談した経緯を勝也へ伝える。協力を申し出て、互いに声をかけながら優子を見守ると決める。


・大島奈々

 教科書を見せてもらった優子へ、勝也は断れないだけかもしれないと思わせる。助けてもらったことを喜ぶ気持ちに、不安を重ねる。


・優子の母(富田美和)

 帰宅した優子が、そばで宿題をしたいという希望を受け入れる。理由を問い詰めず、普段の会話をしながら過ごす。


・1年3組の担任

 勝也から教科書の被害を聞くが、本人からの相談が必要だとして確認に動かない。勝也には深入りせず、普通にしているよう告げる。


・社会の先生

 教科書を忘れたという勝也を注意し、優子と一緒に見ることを認める。優子の教科書が使えない事情は知らされていない。

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