第68章:前に立たずに
「第三試合。始め」
最初に動いたのは陽菜だった。
走りはしなかった。
それでは単純すぎる。
短く一歩を踏み、重心を落とし、斧を身体の横に休ませるように構えた。攻めるのか、待つのか、まだ決めていないように。
海斗は彼女と一緒に動いた。
前ではない。
後ろでもない。
隣に。
悠太はすぐに気づいた。
千穂も気づいた。
それが問題だった。
海斗は、壁のように陽菜を守っていたわけではない。
彼女を隠していなかった。
彼女に合わせていた。
だからこそ、崩すのがずっと難しかった。
「右を開けたい」と悠太が言った。
千穂は魔力の弦を張った。
「招待状を送るみたいに言わないで」
「まだ賢い版を調整中なんだ」
「早く調整して」
陽菜が二歩目を踏んだ。
海斗は、そのリズムを完全に真似るのではなく、少しずらして合わせた。彼女が斧を上げると、海斗は彼女の身体を守らなかった。彼女の横に空いた空間を守った。
千穂は射線を探した。
見つからなかった。
隙間はあった。
だが射線はなかった。
最初の試合のあとでは、その差が重要だった。
悠太は右へ動いた。
今度は千穂から大げさに離れようとはしなかった。かといって、くっつきもしなかった。自分の動きが彼女の射撃を濁らせず、役に立てるような、あの新しくて奇妙な距離を探した。
決め終わる前に、海斗がそこへ現れた。
海斗の拳は悠太の顔へまっすぐ来たわけではなかった。悠太が使おうとしていた空間へ来た。魔力で強化された短い一撃。伝えるにはそれで十分だった。
ここは通さない、と。
悠太は止まった。
陽菜が斧を回した。
刃が低く走り、彼の脚の前の空気を切った。
悠太は後ろへ跳んだ。
跳びすぎた。
千穂には半秒だけ射線ができた。
撃たなかった。
海斗がもう、その途中にいた。
陽菜の前ではない。
射線の途中に。
それは違った。
同じくらい面倒だった。
「速いな」と悠太が呟いた。
千穂は弓を下げなかった。
「綺麗だった」
「敵が俺より早く学ぶの嫌なんだけど」
「敵じゃない」
「同じ支部の仲間が俺より早く学ぶの嫌なんだけど」
側面で、バクが神崎へ身を傾けた。
「少年は今、“仲間”と“脅威”が同じ制服を着ることもあると発見したな」
神崎は視線を外さなかった。
「それも目的の一部だ」
「その顔で言えば、全部目的の一部になるな」
加藤は黙って見ていた。
隣の優奈は、海斗の動きを目で追っていた。
「前には立っていないわね」
「そうだな」と加藤は言った。「だが、前に立たないことをまだ考えすぎている」
海斗は陽菜の隣でもう一歩進んだ。
陽菜は見る前にそれを感じた。
「一歩一歩、測ってるね」
「邪魔しないようにしてる」
「それはわかる」
「なら?」
陽菜は斧の柄を指先でわずかに回した。
「邪魔しないことばかり考えると、遅くなる」
海斗は顎に力を入れた。
反論はしなかった。
それは良かった。
だが、解決もしていなかった。
そこが問題だった。
悠太はそれを見た。
全部ではない。
だが何かは見えた。
海斗は自分を修正している。
自分と同じように。
そして、修正することと上達することは同じではない。
「千穂」
「聞いてる」
悠太は陽菜を見た。
次に海斗を見た。
「射線を残してない。瞬間を残してる」
千穂は瞬きをした。
「それ、役に立ちそうな言い方ね」
「自分でも驚いた」
「台無しにしないで」
「新技にするよう努力する」
陽菜が入った。
今度は加速した。
斧が乾いた魔力の光を放って拡張する。巨大になるほどではない。だが、戦いの距離を変えるには十分だった。悠太はまた後退しなければならなかった。
だが、今度は跳ばなかった。
回った。
刃は彼の脇を通り、振り抜かれた風が制服を引いた。
千穂が撃った。
陽菜の身体へではない。
彼女の右足の前の地面へ。
矢は小さな魔力の火花になって弾けた。傷つけはしなかったが、陽菜に足場を変えさせた。
海斗がその変化を埋めるために動いた。
あまりにも上手く。
悠太は舌打ちした。
「何もくれないな」
「じゃあ、何かをくれるのを待つのをやめて」と千穂が言った。
悠太は一瞬、彼女を見た。
「今の、すごく加藤っぽかった」
「あなたが正しいのが心配」
加藤はコーヒーを飲んだ。
「いい」
悠太はそちらを見ずに声を上げた。
「承認を求めたわけじゃないです!」
「だから得られた」と加藤が答えた。
バクは胸に手を当てた。
「この支部の情緒教育は、卒業証書つきの階段落ちだな」
香奈は彼を見なかった。
「獅子堂」
「制度的に誇っています」
「そんなものは存在しないわ」
「今日は全員が俺の語彙を制限してくる」
戦いは続いた。
陽菜と海斗は、早く勝とうとはしていなかった。
その方が悪かった。
押す。
試す。
閉じる。
悠太が空間を見つけるたび、海斗が身体でそれを占めた。千穂が射撃を探すたび、陽菜が斧でリズムを変えた。荒々しい攻撃ではない。肉体で交わされる会話だった。そして悠太と千穂は、その会話にいつも少し遅れて答えていた。
颯太は最前列で見ていた。
斧を見ていたのではない。
矢でもない。
足を見ていた。
悠太の足は、何かを理解したが、まだ間違えるのを恐れている者のように動いていた。
海斗の足は、前の失敗を犯す前に理解してしまった者のように動いていて、だからこそ別の失敗を犯しかけていた。
陽菜の足は、他人の迷いを聞いているように動いていた。
千穂の足は、誰よりも動きが少なかった。
だが、その一歩一歩が射撃の可能性を変えていた。
「身体で話してる」と颯太が呟いた。
バクが彼の隣に現れた。
「発音がかなり悪いやつもいるがな」
颯太は驚かなかった。
今度は。
「でも少しは通じてます」
「ああ。それが危険なんだ。何もわかっていない時は簡単だ。少しわかると、全部わかったと思い始める」
颯太は悠太を見た。
「天音さんは、全部わかったとは思ってません」
「思ってない」とバクは言った。「だが、何かを理解したと証明したがっている。それは時々、同じくらい危険だ」
場の中で、悠太は聞こえていないのに、それを感じた。
何かをしたかった。
大きなことではない。
役に立つことを。
それもまた、罠になり得た。
「中央を開けたい」
千穂が弦を張る。
「無理に作らないで」
「わかってる」
「いいえ、わかってない。わかってるって言えば解決するみたいに言ってる」
悠太は口を閉じた。
陽菜がわずかに笑った。
「いい相棒ね」
千穂は視線を外さなかった。
「入ってこないで」
「褒めたのに」
「褒め言葉も邪魔になる」
陽菜は小さくうなずいて受け入れた。
海斗が前へ出た。
悠太は陽菜を待っていた。海斗を待っていなかった。
それが誤りだった。
海斗は強く殴らなかった。ちょうどいいタイミングで身体強化を乗せ、肩で空間を押した。悠太は半歩、譲らざるを得なかった。
半歩で十分だった。
千穂の前に出てしまった。
「ごめん」と悠太が言った。
「動いて」
怒った声ではなかった。
切迫した声だった。
悠太は身を沈めた。
千穂は彼の肩の上を通して撃った。
醜い射撃だった。
曲がっていた。
彼の頭に近すぎた。
悠太は魔力の矢の熱が髪のすぐ横を通るのを感じた。
「それ、俺の顔!」
「役に立つ射撃だった」
矢は海斗に腕を上げさせた。陽菜は射線へ斧を回したが、もう遅かった。直撃は受けなかったが、リズムを失った。
悠太は下から抜けた。
陽菜へではない。
陽菜と海斗の間の空間へ。
海斗が見た。
陽菜も見た。
二人とも反応した。
それが、最初の本当の瞬間だった。
二人が同じ空間を閉じようとした。
海斗は前に出たくなかった。
陽菜は海斗に覆われたくなかった。
その結果、わずかな迷いが生まれた。
ほとんど見えない迷い。
だが千穂には見えた。
次の矢を張る。
海斗は彼女が撃つ前に修正した。
陽菜の前ではなく、隣に立ち、隙間は消えた。
悠太は舌打ちした。
「惜しい」
千穂は弓を少し下げた。
「惜しい、を祝わないで」
「悔しがるのも禁止?」
「ええ」
「厳しいルールだな」
側面で、優奈が小さく言った。
「今のが道ね」
加藤はうなずいた。
「だが早く見せすぎた」
「陽菜が読んだ」
「陽菜は動きより先に意図を読む」
「海斗は?」
加藤は海斗を見た。
「海斗は、彼女を隠さないことを学んでいる。だが、いつ自分が前を取るべきかはまだわかっていない」
優奈は腕を組んだ。
「それは代償になるわね」
「ああ」
場の中で、陽菜は斧を回して一歩下がった。
海斗は彼女に続いた。
陽菜は横目で彼を見た。
「私の隣に存在するために、許可はいらないよ」
海斗は眉をひそめた。
「許可なんて求めてない」
「求めてる」
「君の代わりに決めないようにしてるだけだ」
陽菜は彼の視線を受け止めた。
「なら、一緒に決めて」
海斗は答えなかった。
その言葉は、どんな打撃よりも強く響いた。
正確だったからだ。
反対側で、悠太はそれを聞いた。
千穂も。
一秒間、戦いは全員にとって居心地の悪いものになった。
それは海斗だけに向けられた言葉ではなかったからだ。
悠太にもわかった。
千穂にも。
「何も言わないで」と千穂が呟いた。
「何も言うつもりなかった」
「何か考えた」
「考えるのはまだ合法だろ」
「言葉にしないなら」
陽菜がまた前へ出た。
だが今度、海斗はすぐには続かなかった。
半拍待った。
迷ったからではない。
判断したからだった。
陽菜が低い斧で先に入る。海斗がその後に入って、悠太が回避に使ったであろう側面を閉じた。
悠太は選ばなければならなかった。
下がれば、千穂の射線が消える。
進めば、陽菜に捕まる。
留まれば、海斗に中央から押し出される。
そこで彼は、攻撃に見えないことをした。
不可視の魔力を地面へ小さく脈動させた。
砂埃が上がる。
大きくはない。
偽の方向を示すには十分だった。
海斗は引っかからなかった。
陽菜も。
だが、二人とも見た。
一秒にも満たない時間。
千穂は、その一秒未満へ撃った。
矢は低く走り、砂埃と斧の端の間を抜けた。陽菜へ向かっていたのではない。悠太の出口を閉じるために海斗が足を置かなければならない場所へ向かっていた。
海斗は矢を見た。
そのまま踏んで耐えることもできた。
防ぐこともできた。
下がることもできた。
彼は耐えることを選んだ。
足元のそばで矢が地面を打った衝撃は、彼を傷つけなかった。だが、支えを崩した。海斗は身体能力で耐え、倒れるのを防いだ。
しかし、力を使わされた。
位置ではなく。
陽菜はそれに気づいた。
「海斗」
「大丈夫だ」
「大丈夫じゃないとは言ってない」
その時、悠太の二撃目が届いた。
身体へではない。
海斗の前の地面へ。
短い脈動。
下手だったかもしれない。
だが十分だった。
海斗は半歩下がった。
場の境界線が、彼の踵の後ろに来た。
千穂が次の矢を張った。
海斗はそれを見た。
陽菜も。
そして初めて、陽菜は海斗を守ることを選んだ。
彼が脆いからではない。
彼が自分の相棒だからだ。
斧が回り、千穂の射線を切ろうとした。
悠太はすでに動いていた。
陽菜へではない。
海斗へでもない。
陽菜が回るために必要な場所へ。
そこに立った。
千穂の前ではない。
陽菜の決断の前に。
斧は彼に触れる前に止まった。
陽菜が続けられなかったからではない。
続ければ、トーナメントとしては強すぎる打撃になるからだ。
神崎が少し目を上げた。
「いい」
バクが身を乗り出した。
「それ、感情か?」
「評価だ」
「危険に近づいてるぞ」
陽菜は斧を引いた。
海斗は支えを取り戻した。
場は再び開いた。
だが、もう同じではなかった。
悠太は息を荒くしていた。
千穂も。
陽菜は二人を見た。
「今のは良かった」
悠太は手を上げた。
「ありがとう。言われると怖いけど」
「怖がった方がいいよ」
海斗は指を曲げ伸ばしした。
「下がらされた」
「半歩」と陽菜が言った。
「半歩も数に入る」
「うん」
千穂はそれを聞いた。
半歩も数に入る。
単純な言葉だった。
だが三秒で負けたあとでは、法則のように聞こえた。
悠太は彼女の隣に戻った。
「射線を開けると思わせたい」
千穂は彼を見た。
「本物は?」
「見ない」
千穂は一秒遅れた。
それからうなずいた。
「いい」
「本当にいい?」
「聞かないで」
「了解」
陽菜は首を傾けた。
一部は聞こえた。
全部ではない。
それでも何かが変わることはわかった。
海斗は悠太と千穂の間を見た。
「射撃を隠すつもりだ」
「うん」と陽菜が言った。
「誰に?」
陽菜はすぐには答えなかった。
そこが問題だった。
狙いが陽菜なら、海斗が守れる。
狙いが海斗なら、陽菜が切れる。
狙いが二人の間の空間なら、どちらも一人では解決できない。
「リズムに」と陽菜が言った。
海斗は彼女を見た。
「何?」
「あの二人は、私たちのリズムに撃ってくる」
悠太は思わず笑った。
「賢いの、腹立つな」
千穂は笑わなかった。
「なら、わかりやすくしないで」
次の流れは、最初から速くはなかった。
遅かった。
危険に見えないほど遅かった。
悠太は左へ一歩踏み出し、陽菜へまっすぐ射線を開こうとしているように見せた。千穂は弓でその動きに合わせ、矢が陽菜の肩を探しているように見せた。
海斗は前に出なかった。
隣に立ち、矢が放たれた時に閉じられるようにした。
陽菜は斧を下げ、軌道を切る準備をした。
すべてが正しく見えた。
正しすぎた。
悠太は射線を見なかった。
海斗の足を見た。
今ある足ではない。
これから置かれるはずの足を。
千穂が撃った。
矢は陽菜へ向かわなかった。
海斗へも向かわなかった。
二人の間の地面へ向かった。
海斗は踏むべき一歩を踏んだ。
悠太が待っていた、まさにその一歩を。
矢が彼の足の前を打った。
触れてはいない。
だが支えを外側へ変えさせた。
悠太は同じ瞬間に入った。
攻撃するためではない。
海斗が空ける空間を取るために。
陽菜が彼へ振り向いた。
「海斗!」
海斗は戻ろうとした。
千穂はすでに次の矢を持っていた。
今度は海斗へ向かっていた。
身体へではない。
場の境界へ。
海斗は一瞬遅れて理解した。
進めば、矢が足元の前を打つ。
下がれば、場外へ出る。
留まれば、悠太が陽菜を支えから切り離し続ける。
彼は進むことを選んだ。
正しかった。
そして遅かった。
矢は乾いた魔力の衝撃で地面に弾けた。海斗は倒れなかったが、左足が場の線を越えた。
神崎が手を上げた。
「部分場外」
海斗は修正しようとした。
陽菜が彼を覆うために動いた。
悠太が割って入った。
また。
だが今回は、千穂の前に立っていなかった。
千穂が作った空間を支えていた。
陽菜は斧を上げた。
悠太は笑わなかった。
冗談も言わなかった。
ただ身を沈め、脚に魔力を込め、位置を保った。
陽菜は彼を押せた。
力で動かせた。
だが、あと半秒必要だった。
千穂が三本目の矢を放った。
矢は悠太の横を通った。上ではなく、後ろでもなく、彼が占めないと決めたちょうどその空間を。
海斗の背後の地面に当たった。
衝撃は傷つけなかった。
戻る道を奪った。
海斗は片足を場外に置いたまま、もう片方の足を、悠太へ進めるか、矢へ下がるかの間で止められた。
陽菜は状況を見た。
海斗も見た。
神崎は数えなかった。
その必要はなかった。
海斗は両手を上げた。
「出た」
訓練場が静かになった。
香奈が杖を上げる。
「村海斗の場外により、勝者、天音悠太・和田千穂組」
沈黙は、これまでの勝利より短かった。
その後、ざわめきが来た。
騒ぎではない。
認識だった。
悠太はその場に立ち尽くした。
ようやく役に立てた場所を、動いて台無しにしたくないかのように。
千穂はゆっくり弓を下げた。
矢は指の間でほどけた。
「勝った」と悠太が言った。
「うん」
「何かすごいことをしたのかはわからない」
「してない」
「あ」
千穂は彼を見た。
「役に立つことをした」
そしてなぜか、それはもっと良く聞こえた。
ずっと良く聞こえた。
悠太は息を吐いた。
「じゃあ演説はしないようにする」
「ありがとう」
「でも内心ではある」
「知ってる。顔に出てる」
「俺の顔は尊厳への脅威だな」
海斗は真剣な表情で場へ戻った。
怒ってはいない。
真剣だった。
陽菜は斧を下ろした。
「負けたね」
「ああ」と海斗が言った。
「前に立ったからじゃない」
「違う」
「戻らなきゃいけない時、もう“間違えないように”って考えてた」
海斗は場の線を見た。
「考えすぎた」
「うん」
「でも前には立っていない」
陽菜は彼を見た。
「それが全部じゃなかった」
海斗は一秒遅れた。
それからうなずいた。
「そうだな」
陽菜は斧を肩に乗せ、悠太と千穂を見た。
「いい射撃だった」
千穂はその視線を受け止めた。
「役に立つ射撃だった」
陽菜はわずかに笑った。
「うん」
悠太は海斗を見た。
「端で耐えると思ってました」
「耐えた」
「はい。それが問題でした。上手く耐えすぎた」
海斗は瞬きをした。
「それは批判に聞こえない」
「俺も何なのかわかりません」
加藤が端へ近づいた。
「批判だ」
悠太は彼を見た。
「感情の整理、ありがとうございます」
「どういたしまして」
加藤は悠太と千穂を見た。
「良くなった」
悠太は待った。
千穂も待った。
加藤はコーヒーを飲んだ。
それ以上は何も言わなかった。
悠太は両手を開いた。
「それだけですか?」
「ああ」
「負けた後は、もっと分析がありました」
「やった失敗が多かったからだ」
千穂は笑みを隠すために視線を下げた。
悠太は胸に手を当てた。
「構造があるから痛い」
バクが指を一本上げた。
「その言葉は精神的に俺のものだ」
「違う」と神崎が言った。
「まだ法的な主張を聞いてもいないだろ」
「存在しない」
「正解だ。でも情熱で作れる」
優奈は陽菜と海斗へ近づいた。
「何を学んだ?」
陽菜が先に答えた。
「守られたくないと思うことと、連携が必要ないことは違う」
優奈はうなずいた。
「いい」
海斗は少し遅れた。
「隣にいることは、位置だけではない」
優奈は彼を見た。
「続けて」
海斗は息をした。
「共有された判断です。どこに立たないかだけを考えていると、本当に立つべき場所に遅れる」
陽菜は横目で彼を見た。
大きくは笑わなかった。
だが、笑った。
「それは役に立つね」
海斗はうなずいた。
「ああ」
反対側で、颯太はまだ見ていた。
今回は、外にいる痛みが同じ形ではなかった。
まだ痛い。
だが、それだけではない。
悠太は負けた。
その後、勝った。
二つの試合の間に別人になったからではない。
失敗を持ったまま、それを別の形で使ったからだ。
それが訓練だった。
光り輝く場面ではない。
新技でもない。
歩き方を覚えた失敗。
いつものように、バクが彼の隣に現れた。
「俺を待つようになったら、演出が台無しになるぞ」
颯太は場から目を離さなかった。
「来る音が聞こえました」
バクは胸に手を当てた。
「子どもに職業的に傷つけられた」
「子どもじゃありません」
「正しい。君は借り物の制服を着た、形成途中の傷だ」
颯太は彼を見た。
「それ、ひどいです」
「そして正確だ」
颯太は再び悠太を見た。
「さっきより静かに勝ちました」
「ああ」
「でも、やったことが少なかったわけじゃない」
バクは一瞬、黙った。
それからうなずいた。
「そこはよく見ておけ」
タツはボードへ近づき、新しい点数を書いた。
仙台・高島組:三点。
石田・有本組:三点。
天音・和田組:三点。
白銀・原田組:零点。
月野・村組:零点。
悠太は新しい数字を見た。
三。
今度は、それが謝るのを期待していなかった。
千穂が隣に立った。
「拍手してくれるみたいに見ないで」
「数字は拍手しないの?」
「しない」
「冷たい制度だ」
「ボードよ」
「まさに。冷たい」
千穂は鼻から息を漏らした。
完全な笑いではなかった。
だが、近かった。
悠太はそれを指摘して台無しにしないと決めた。
彼の一日で、最も成熟した判断の一つだった。
反対側で、芽衣が不機嫌そうにボードを見た。
「最高ね。今や点がないのは私たちとそっちだけ」
陽菜は彼女を見た。
「怒りに巻き込んでくれてありがとう」
「巻き込みじゃないわ。攻撃的統計よ」
原田が得点表を見た。
「第五試合の結果と第四試合の終了内容次第では、まだ通過可能性はある」
芽衣は彼を見た。
「始めないで」
「情報だ」
「あなたの情報には、濡れた石みたいな感情能力があるわ」
「記録した」
石田は本を閉じた。
健太は両手を開いたり閉じたりした。
花はゆっくり息をした。
結衣はすでに床を見ていた。最初の結界をどこに張るか測っていた。
タツがファイルを開いた。
「得点フェーズ第四試合。仙台花・高島結衣組、対、石田太郎・有本健太組」
訓練場は再び張り詰めた。
最初とは違う。
もう全員が知っていた。
戦いは、簡単に理解できる形をくれるとは限らない。
花と結衣は、射線を閉じ込めて勝った。
石田と健太は、火と鎖を道に変えて勝った。
防御対制御。
感知対境界。
沈黙対火災。
バクは仮面の奥で笑った。
「ああ。構造火災に対する防御だな」
神崎は彼を見た。
「それを公式分類みたいに言うな」
「まだな」
香奈が杖を上げた。
「準備しなさい」




