第67章:制御と雑音
「ああ」とバクが言った。「ここからが、ひどいやつだ」
その言葉は、明るすぎる警告のように場の上へ残った。
原田が石田の左に現れた。
芽衣が右から斬った。
健太が火を上げた。
石田が鎖を上げた。
そして一秒間、二人ともわからなかった。
互いを守っているのか。
それとも、互いにぶつかっているのか。
石田の鎖は、健太が炎の線で芽衣の進行を閉じようとした瞬間、健太の前を横切った。炎が鎖の端に触れた。壊すほどではない。だが、角度を変えるには十分だった。
石田は張力を緩めるしかなかった。
健太は炎の半分を消すしかなかった。
原田はそれを逃さなかった。
音もなく石田の背後に現れ、肩へ手を伸ばした。強い攻撃ではなかった。強い必要もなかった。触れれば、石田は振り向かざるを得ない。石田が振り向けば、芽衣が入る。芽衣が入れば、健太は火で返す。
そのすべてが、その動作の中にあった。
石田はそれを遅れて理解した。
健太は理解しなかった。
健太に見えたのは、原田が仲間の背後に現れたことだけだった。
炎が上がった。
「石田!」
芽衣が笑った。
「遅い」
健太は原田へ火を放とうと腕を回した。だが石田の鎖が急に張り、その角度を切った。
「駄目だ」と石田が言った。
強い命令ではなかった。
叫びでもなかった。
それでも健太は止まった。
原田の二本の指が、石田の肩に触れた。
神崎が手を上げる。
「有効接触。続行」
石田は一歩下がった。
芽衣は待たなかった。
扇が二つの半月のように開く。縁の上で魔力が細く研ぎ澄まされ、低い斬撃が三本、健太へ向かった。
一本は右足へ。
一本は膝へ。
もう一本は、回避しようと跳んだ場合に彼が行くはずの空間へ。
健太には見えた。
見えすぎた。
すべての選択肢が。
すべての逃げ道が。
すべてを燃やし尽くして、一秒で問題を終わらせる方法が。
そこに誤りがあった。
問題を終わらせようとすること。
炎が両手を這い上がった。
石田は彼を見た。
「どこで終わるか選べ」
健太は歯を食いしばった。
「何?」
「火だ。どこで終わるか選べ」
斬撃は迫っていた。
芽衣はその後ろから来ていた。
原田はもう、さっきの場所にはいなかった。
説明を受ける時間はない。
だからこそ、うまくいったのかもしれない。
健太は火を消そうとは考えなかった。
もっと強く使おうとも考えなかった。
終わりを考えた。
右手から炎が出て地面を打った。だが芽衣へは進まなかった。短く、低い線として開き、最初の斬撃に触れる直前で消えた。
熱が空気を歪ませた。
芽衣の斬撃が逸れる。
二本目は炎の端を打ち、勢いを失った。
三本目は進み続けた。
健太は脚を動かすしかなかった。
美しくはなかった。
斬撃がズボンをかすめた。
だが、倒されなかった。
芽衣は目を細めた。
「それ、新しいわね」
健太は鼻から息をした。
「ああ」
「気に入らない」
「俺もだ」
石田は、原田が彼の背後に再び現れた瞬間、その足首の周りへ鎖を動かした。
原田は視線を下げた。
鎖は彼を捕まえていなかった。
まだ。
ただ、そこにあった。
彼を待っていた。
「見えていたのか」と原田が言った。
「いや」と石田は答えた。「彼女を見た」
芽衣が舌打ちした。
「面倒ね」
原田は一歩下がり、鎖が閉じる前に消えた。
バクが指を一本上げた。
「今のは好きだな。相方を無自覚な告げ口役として使う。集団の信頼にはとても健全だ」
香澄は扇の向こうで笑った。
「“健全”という言葉が、あなたに似合うかは疑問ね」
「午後だけ借りた」
神崎は場から目を離さなかった。
「読みは正しい。だが遅い」
加藤はうなずいた。
「まだ踏み合ってる」
「ええ」と優奈が言った。「でも、自分たちが踏み合ってるとはわかってきた」
「それで惨事の半分だ」
バクがため息をついた。
「もう半分は、直ったと思い始めるところだな」
場の中で、石田は低い鎖を健太の方へ動かした。
健太は横目でそれを見た。
「縛るなよ」
「縛っていない」
「これから縛るやつが言いそうなことだな」
「これは道だ」
健太は答えなかった。
その言葉が、あまりにも筋が通っていて腹立たしかった。
自分が鎖を嫌うべきか説明を嫌うべきか決める前に、芽衣が攻めた。
速い一歩で距離を詰め、踵を軸に回転する。扇が逆方向へ斬った。一つは健太の胸へ。もう一つは、彼と石田の間の空間へ。
傷つけるためではない。
二人を分けるためだった。
石田は二本目の斬撃へ鎖を放った。
健太は一本目へ火を上げた。
鎖と炎がまた交差した。
正面からぶつかったわけではない。
だが、邪魔になった。
それで十分だった。
芽衣は隙間へ入った。
「邪魔しないためにそこまで考えなきゃいけないなら」と彼女は言った。「もう遅いのよ」
健太は言い返したくなった。
それも罠だった。
石田が何も言わなかったから、それがわかった。
ただ、低い鎖を引いた。
彼を動かすためではない。
鎖を地面に鳴らすためだった。
乾いた音。
魔力の金属が石を打つ音。
健太は一秒にも満たない間だけ視線を下げた。
鎖は斜めを示していた。
道だった。
命令ではない。
選択肢だった。
健太はその一歩を踏んだ。
もし罵倒に反応していたなら立っていた場所を、芽衣の扇が切った。
扇は空を斬った。
健太は笑った。
「別の場所に遅れて着いた」
芽衣は彼を見た。
「賢いこと言おうとしないで。似合わない」
「もっとひどいこと言われてきた」
「きっと当然ね」
原田が石田のそばに現れた。今度は正面だった。
攻撃しない。
ただ、片手を上げた。
石田は反射で鎖を張った。
原田は消えた。
本当の攻撃は健太の背後から来た。
芽衣が、二人に見るべき場所を間違えさせていた。
健太は気配を感じたが、振り向くには間に合わなかった。
原田が彼の背後に現れ、開いた掌を肩へ向ける。
「健太」と石田が言った。
“後ろ”とは言わなかった。
“気をつけろ”とも言わなかった。
彼の名前だけを言った。
健太は振り向かなかった。
火を下げた。
自分の踵の後ろの地面に置いた。小さく、ほとんど馬鹿げた炎だった。
原田はその真上に現れた。
熱は彼を焼かなかった。
そこまで強くはない。
だが、足を置く確信を奪った。
足が熱の端に触れ、着地する半秒前に浮いた。
半秒で十分だった。
石田の鎖が横から届き、原田の手首をかすめた。
原田は消えた。
だが、今回はきれいではなかった。
鎖は彼を捕らえなかった。だが、彼のリズムを乱した。
原田は三メートル後ろに現れ、手を握っていた。
健太を見る。
「攻撃しなかった」
健太はまだ息が上がっていた。
「必要なかった」
石田が彼を見た。
健太はそれに気づいた。
「何だよ」
「何でもない」
「それ、“よくやった”って顔だろ」
「そんな顔はない」
「全部同じ退屈な顔だけど、分類がわかってきた」
石田は正面へ視線を戻した。
「嘆かわしい」
「ああ。お互いにな」
芽衣はその会話を苛立たしげに見ていた。
喋っているからではない。
もう、気をそらすために話しているのではなかったからだ。
位置を取るために話していた。
それは問題だった。
「原田」
「はい」
「遅れてる」
「正しい」
「自分のせいじゃないみたいに“正しい”って言わないで」
「責任は共有されている」
「寛大ね」
原田は彼女を見た。
「俺の出口を斬ってほしい」
芽衣は瞬きをした。
「何?」
「俺の出口だ。あいつらが俺の再出現を待つなら、俺がいない場所を斬って」
芽衣は理解した。
それがさらに腹立たしかった。いい考えだったからだ。
「役に立つことを言う時は先に言って」
「遅い予告。役に立つ考え」
「これが終わったら、少しだけ嫌いじゃなくなるかも」
「それは戦術的変化だ」
「喜ばないで」
原田が消えた。
芽衣も同時に動いた。
しかし今回は、それぞれが勝手に動いたわけではなかった。
原田が石田との距離を壊す。
芽衣は健太を攻撃しなかった。
石田の右側の空間を斬った。石田が原田を追うために回り込むであろう場所を。
石田はそれを見た。
健太も見た。
だが、見ることがいつも間に合うとは限らない。
原田が石田の左に現れ、二本の指で鎖に触れた。壊すためではない。ほんの少しずらすためだった。
芽衣が右から斬る。
石田は二つの判断の間に置かれた。
健太には火があった。
怒りがあった。
地面に刻まれた鎖の道があった。
そして問題があった。
大きな火を使えば、芽衣は止まるかもしれない。だが、石田の逃げ道も塞ぐ。
「どこで終わるか選べ」と健太は自分に呟いた。
炎は低く出た。
芽衣へではない。
原田へでもない。
二人の間の線へ。
熱の斬れ目。
境界。
芽衣は扇を上げるしかなかった。
原田は一歩を終える前に再出現せざるを得なかった。
石田はその半秒で、原田に触れられた鎖を引き戻し、方向を変えた。
鎖は地面の上で、平たい蛇のように回った。
原田が消えた。
鎖は追わなかった。
そこに残った。
健太は理解した。
「待ってるのか」
「ああ」
「どこで?」
「俺が見ていないと思わせる場所で」
健太は笑った。
「それ、すごく面倒だな」
「お前にも効く」
「それは言わなくていい」
芽衣がまた入った。
今度は石田を狙った。
健太は火を上げた。
石田は鎖を上げた。
そしてまた、二人は邪魔し合いそうになった。
だが、健太は動く前に鎖の端を見た。
越えなかった。
横に火を置いた。
上ではなく。
炎は鎖に触れず、その方向をなぞった。
初めて、鎖と火は互いを邪魔しなかった。
互いの空間を押し広げた。
芽衣は止まった。
ほんの一瞬。
だが、その視線が変わった。
「出たわね」
健太は彼女を見た。
「何が?」
「二人同時に馬鹿をやるのをやめた」
「ひどい褒め言葉だな」
「褒めてない」
石田はその瞬間を使った。
低い鎖が二本に分かれる。
一本は芽衣へ向かった。
もう一本は地面に死んだように残った。
あまりにも死んでいた。
原田はその上に現れた。
健太は見た。
石田も見た。
原田も気づいた。
遅すぎた。
死んだ鎖が上がった。
首を締めるためではない。
殴るためでもない。
ただ、足首を閉じるために。
原田は消えた。
鎖は空気を掴んで閉じた。
芽衣が笑った。
「足りないわ」
石田は答えなかった。
なぜなら、原田が再び現れた場所に、健太がすでに火を置いていたからだ。
また小さな炎。
馬鹿げたほど低い。
正確だった。
原田は足をうまく置けなかった。
足首は捕まらなかった。だが、身体の軸を失った。
石田は最初の鎖を引いた。
原田を捕まえたわけではない。
彼が必要としていた空間を捕まえたのだ。
原田は片膝をついた。
神崎が手を上げた。
「一」
芽衣が動いた。
速い。
健太が思っていたよりも速い。
彼女の扇が、原田を制限している鎖へ向かって斬った。縦の一撃。清潔で、完璧な軌道。二回目のカウントの前に石田の魔力を切り離し、仲間を解放するには十分だった。
健太は火で止めたい衝動を感じた。
大きく。
まっすぐに。
簡単に。
違う。
炎は芽衣と鎖の間に現れた。
攻撃ではない。
警告として。
小さく、横に伸びた火。芽衣に斬撃の角度を変えさせる、ちょうどその高さに。
芽衣は止まらなかった。
だが修正せざるを得なかった。
その修正が力を奪った。
扇が鎖を打つ。
鎖が震えた。
壊れなかった。
「二」と神崎が言った。
原田は地面に手をついた。
消えた。
あるいは、消えようとした。
石田の鎖は、彼そのものに閉じていたわけではなかった。
範囲の周りに閉じていた。
原田は半メートル先に現れた。
まだ内側だった。
健太はもう片方の手を開いた。
二つ目の炎が原田の背後に現れた。
焼かなかった。
触れもしなかった。
ただ、後退を奪った。
原田の顔に、初めて驚きに近いものが浮かんだ。
芽衣は歯を食いしばった。
「原田!」
「わかっている」
「なら出なさい!」
「試みている」
石田が声を低くした。
「健太」
「わかってる」
「火で閉じ込めるな」
「閉じ込めてない」
健太は息をした。
炎は上がらなかった。
「扉を閉じてる」
石田は彼を一瞬見た。
それから鎖を引いた。
芽衣がもう一度斬った。
今度は鎖へではない。
健太へ。
全力ではない。
傷つけるためではない。
彼に防御させ、原田の出口を塞いでいる炎を消させるためだった。
いい判断だった。
健太は危うく落ちた。
身体が先に自分を守ろうとしたから。
火が上がりたがったから。
芽衣が、まるで別の技のように、彼のプライドに触れる方法を知っていたから。
「わかりやすいことをしなさい」と彼女は言った。
健太は笑った。
悪い笑みだった。
炎が上がった。
バクの笑みが消えた。
加藤も何も言わなかった。
その沈黙は、どんな警告よりも重かった。
健太は自分の手の火を見た。
芽衣を見た。
抜け出そうとする原田を見た。
石田の鎖を見た。
わかりやすいことをすれば、一秒は勝てる。
そして残りを失う。
手を閉じた。
炎が消えた。
芽衣の斬撃が肩の近くを通った。
健太は火で防がなかった。
しゃがんだ。
不格好に。
遅く。
それでもしゃがんだ。
そしてもう片方の手で、原田の背後の小さな炎を保った。
芽衣がわずかに目を開いた。
神崎が言った。
「三」
沈黙が戻った。
さっきとは違う沈黙だった。
より熱く。
より難しい。
原田は消えようとするのをやめた。
石田は鎖を解いた。
健太の炎が消えた。
香奈が杖を上げた。
「勝者、石田太郎・有本健太組」
健太は動かなかった。
その言葉が、試合の他の部分より遅れて届いたかのように。
それから自分の手を見た。
火はなかった。
火傷もなかった。
空中で消えていく大きな火柱もなかった。
ただ、自分の手だけがあった。
「勝った」と彼は言った。
石田は鎖を回収した。
「ああ」
「大きな火、使わなかった」
「そうだな」
「それで勝った」
「ああ」
健太は眉をひそめた。
「腹立つな」
「制御とは、たいていそういうものだ」
健太は彼を見た。
「勝った直後に深いこと言うなよ。耐えがたい」
「深くはない」
「それがもっと悪い」
石田はボードの方を見た。
タツがすでに書き込んでいた。
**石田・有本組:三点。**
**白銀・原田組:零点。**
芽衣は扇を音を立てて閉じた。
「負けた」
原田はうなずいた。
「そうだ」
「気に入らない」
「俺もだ」
芽衣は彼を見た。
「苛立ってるように見えない」
「内面的に効率よく苛立っている」
「それ、何の意味もないわ」
「俺たちの意思疎通は遅れて改善した、という意味だ」
芽衣は扇を握りしめた。
「次はもっと早く改善しなさい」
原田は瞬きをした。
「両方とも」
芽衣は閉じた扇で彼を指した。
「私の怒りを正確さで台無しにしないで」
「確認した」
香澄は側面から芽衣を見ていた。
笑っていなかった。
それが芽衣をさらに苛立たせた。
「何?」と芽衣が聞いた。
香澄は首を少し傾げた。
「何も」
「その“何も”は説教の顔をしてる」
「それなら、少しは読めるようになってきたのかもしれないわね」
芽衣は一歩彼女へ向かった。
陽菜がそっと腕を掴んだ。
「だめ」
「まだ何も言ってない」
「肩が言ってた」
芽衣は自分の肩を、裏切り者を見るように見た。
「今日、全員うっとうしい」
横から悠太が少し手を上げた。
「負けると、そうなるよな」
芽衣が彼を見る。
「あんたも負けたでしょ」
「だから、最近の権威として言ってる」
隣の千穂が呟いた。
「私たちの敗北を資格みたいに使わないで」
「それしか持ってなかったんだ」
颯太はまだ最前列にいた。
健太を見ていた。
火ではなく。
健太を。
爆発せずに勝つ姿を見るのは、奇妙だった。強力な技を見るより、ほとんど理解しにくいことだった。颯太はずっと、強くなるとは“もっとできるようになる”ことだと思っていた。
だが健太は、少なくすることで勝った。
バクが彼の背後に現れた。
「それ、ちょっと嫌だっただろ?」
颯太はもう驚かなかった。
少なくとも、そこまでではなかった。
「はい」
「いい」
「あなたは変なことに“いい”って言いますね」
「普通のことは、たいてい嘘をつくからな」
颯太は返さなかった。
バクは健太を見た。
「あの馬鹿は、すべての火事が全国ニュースになる必要はないと学んだ。歴史的な日だ」
反対側から神崎が言った。
「制御は許容範囲だった」
バクは振り向いた。
「正人、お前が感情を込めて“よくやった”って言ったら、次元に亀裂が開くぞ」
「なら崩壊は避ける」
加藤は石田と健太へ近づいた。
「きれいではなかった」
健太は顔を上げた。
「勝ったのに、それが最初の一言ですか」
「ああ」
「やる気が出るなあ」
石田は加藤を見た。
「最初は互いを邪魔しました」
「最後もほとんどな」
「はい」
「だが、力ずくで修正しようとするのをやめた」
健太は石田を見た。
「それは良いことなんですか?」
加藤はコーヒーを飲んだ。
「まだ悪くない」
健太は口を開いた。
閉じた。
「褒め言葉として受け取ります」
「持ってるもので何とかしろ」
石田はうなずいた。
「もっと早く道を示す必要があります」
「ああ」
加藤は健太を見た。
「お前は、火がどこで終わるかをもっと早く決めろ」
健太は自分の手へ視線を落とした。
「はい」
「できることに驚いた声を出すな」
健太はすぐには答えなかった。
それから指に力を込めた。
「うまくいくと思ってなかったので」
「見せつけにしようとしなかったから、うまくいった」
バクが加藤の後ろから身を乗り出した。
「翻訳すると、強そうに見せようとしない時、たまに役に立つ。思春期には最悪の発見だ」
健太は彼を見た。
「それ、助言ですか?」
「教育的志向を持った侮辱だ」
「どっちを嫌えばいいかわからない」
「なら両方生きてる」
香奈が杖で地面を叩いた。
「二分休憩。その後、第三試合」
訓練場は再び動き出した。
だが、最初と同じではなかった。
第一試合は、敗北が三秒で閉じられることを教えた。
第二試合は、勝利もまた快適ではないことを教えた。
生徒たちはボードを見た。
**仙台・高島組:三点。**
**石田・有本組:三点。**
**天音・和田組:零点。**
**白銀・原田組:零点。**
**月野・村組:未戦闘。**
悠太は自分たちのゼロを読んだ。
二度目でも、痛みは軽くならなかった。
ただ、痛み方が違った。
千穂は彼の隣にいた。
「謝ってくれるかもしれないみたいに、その数字を見ないで」
「ずっと見てたら、申し訳なくなるかもしれない」
「ゼロよ」
「ゼロにも感情的責任はある」
「ない」
悠太はため息をついた。
「よし。じゃあ勝たないとな」
「うん」
「月野と村に」
「うん」
「簡単だな」
千穂は彼を見た。
「違う」
「どう響くか試しただけ」
「必死に聞こえた」
「じゃあ正直だった」
訓練場の反対側では、陽菜が斧の握りを調整していた。緊張しているからではない。重さ、距離、反応を思い出すためだった。海斗は彼女の隣で肩を伸ばしていたが、場から視線を外さなかった。
彼女の前には立たなかった。
一度も。
陽菜はそれに気づいた。
「立つ場所のこと、考えすぎてる」
海斗は彼女を見た。
「邪魔しないようにしてる」
「前からいなくなってほしいわけじゃない」
「いなくならない」
「壊れ物みたいに守られたいわけでもない」
海斗は腕を下ろした。
「わかってる」
陽菜は落ち着いて彼を見た。
「わかってるの? それとも、繰り返してるだけ?」
海斗は少し時間を置いた。
「わかろうとしてる」
陽菜は少しだけ笑った。
「その方が役に立つ」
海斗は悠太と千穂の方を見た。
「あいつらは変わる」
「うん」
「負けながら何かを学んだ」
「じゃあ、今はもっと危険だね」
「ああ」
陽菜は斧を肩に乗せた。
「私たちも、そうならなきゃ」
海斗はうなずいた。
「隣に」
陽菜は彼を見た。
「隣に」
タツが再びファイルを開いた。
「得点フェーズ第三試合。月野陽菜・村海斗組、対、天音悠太・和田千穂組」
悠太の名前は、今度は違って聞こえた。
すでに負けたからかもしれない。
全員が、彼が学ぼうとする姿を見たからかもしれない。
ボードのゼロが、一歩ごとの重さを少し増やしていたからかもしれない。
悠太は二度目に場へ入った。
今度は、空間を占有しなければならないものとして見ていなかった。
作らなければならないものとして見ていた。
千穂は彼の隣を歩いた。
後ろではない。
遠くでもない。
彼を見られて、かつ彼に依存しない、ちょうどいい距離で。
「射線を開けたい」と悠太が言った。
千穂は指の間に魔力の弦を張った。
「なら、見すぎないで」
「今度はもっと賢くやるって言おうとしてた」
「それが見すぎるってこと」
「了解」
反対側で、陽菜が斧の柄に手を置いた。
海斗は彼女の隣に立った。
前ではない。
隣に。
加藤は四人を見ていた。
優奈も。
香奈が杖を上げた。
一瞬、訓練場全体が息を止めたように見えた。
驚くべきことに、バクは何も冗談を言わなかった。
その方が、かえって悪かった。
香奈が杖を下ろす。
「第三試合。始め」




