第62章:どこを断つか
白銀香澄は、静かに扇を閉じた。
その音は小さかった。
残した沈黙に対して、小さすぎるほどに。
訓練場の向こう側で、芽衣はまるで個人的な脅しを聞いた直後のように彼女を見ていた。陽菜はその隣にいて、まだ手を斧の柄の近くに置いている。千穂は、まだ完全には呼び出していない魔力の弓を抱えていた。結衣はゆっくりと呼吸していた。これから起こりうるすべての悪いことと自分の間に、すでに見えない結界を張っている者の表情だった。
訓練場の端に颯太と並んで座っていた悠太は、横目で石田を見た。
「これ、もっと悪くなるよな?」
石田はまだ自分の手を見ていた。
「おそらく」
「安心させるために嘘をついてくれる時の方が好きなんだけど」
「そんなことはしていない」
「そこが問題なんだよ」
数メートル先で、健太はまだ火を出していなかった。自分の指を、裏切られた直後のように見ている。海斗はその近くに立っていた。多くは言わないが、離れもしなかった。
訓練場には、これまでの教訓がまだ残っていた。
鏡は、近くで戦うことが一緒に戦うことではないと示した。
バクは、怒りが敵の通り道になり得ると示した。
神崎は、生き残ることは逃げることではないと示した。
そして今、香澄が中央へ歩いていった。
圧力を連れているようには見えなかった。
騒音を連れているようにも見えなかった。
計算を連れているようにも見えなかった。
もっと悪いものを連れているように見えた。
精密さだ。
「白銀芽衣」と香澄が言った。
芽衣は扇を握りしめた。
「ここにいるわ」
「知っているわ。昔から、自分が部屋にいることを周囲に知らせるのは上手だったもの」
陽菜が少しだけ芽衣の方へ顔を向けた。
「今のは悪口? それとも家族の思い出?」
「この人の場合、大体どっちもよ」と芽衣が答えた。
香澄は笑った。
「よかった。まだパターン認識はできるのね」
芽衣は扇を開いた。
「そっちはまだ、十文字以内で不快になれるのね」
「家系の才能よ」
「私を含めるみたいに言わないで」
香澄は笑みを崩さなかった。
「名字があなたを含めているわ。怒るかどうかは自由だけど」
訓練場の端から悠太が手を上げた。
「すみません、トラウマ持ちの観客から質問です。これ、もう始まってます? それともまだ社会的に気まずい時間ですか?」
加藤が彼を見ずに答えた。
「両方だ」
「嫌な答えが完璧だと本当に困る」
香奈が杖で地面を叩いた。
「香澄」
「はいはい」
香澄は班全体へ向き直った。
「来なさい」
最初に進んだのは芽衣だった。
従いたかったからではない。
迷っているように見られたくなかったからだ。
陽菜がその後ろを進む。千穂と結衣は一度だけ顔を見合わせてから続いた。誰も楽そうには見えなかったが、それぞれ違う形でその不快感を抱えていた。
芽衣はそれを刃に変えた。
陽菜は沈黙に。
千穂は距離に。
結衣は防御に。
香澄は訓練場の中央で彼女たちを待っていた。
「生徒は四人」と彼女は言った。「印も四つ」
閉じた扇を上げ、地面を指す。
それぞれの前に、白い魔力の線が現れた。
強くは光らない。
大きくもない。
石の上に落とした筆跡のような、細い印だった。脆く見えた。ほとんど装飾のようだった。
だから陽菜は、余計に警戒してそれを見た。
「一人につき、背後に一つ印がある」と香澄は言った。「私がそれを切れば、その生徒は失格」
千穂が自分の印を見た。
「自分の印だけを守るんですか?」
「いいえ」
結衣がわずかに眉をひそめた。
「では、移動しても?」
「できるわ」
「位置を交換しても?」
「する前に言えばね」
芽衣が舌打ちした。
「都合がいいルールね」
香澄は彼女を見た。
「味方と話すのが嫌なの?」
「あなたの声を聞くのが嫌なの」
「それは今に始まったことじゃないわ。戦略でもない」
芽衣が一歩前に出た。
「目的は?」
香澄は扇を上げた。
「制限時間が終わる前に、四つの印を切られないこと」
「何分?」
「三分」
陽菜が香澄を見た。
「あなたは?」
香澄はわずかに笑った。
「私は切るわ」
暴力的な言い方ではなかった。
だからこそ、余計に悪かった。
側面で鏡が腕を組んだ。
「痛むぞ」
バクが仮面を傾ける。
「感情の刃の女王、怖いな」
神崎が彼を見た。
「お前は、自分が遮れないものの大半を怖がる」
バクは指を一本立てた。
「このクソ馬鹿。正確すぎる」
加藤は香澄から目を離さなかった。
優奈は横目で彼を見た。
「ずいぶん静かね」
「香澄はまだ優しい」
優奈は訓練場の中央を見た。
「あれで?」
「ああ」
「あなたの基準が心配だわ」
「まだ家族の真実を言い始めていない」
中央から、香澄が振り向かずに言った。
「聞こえているわよ、銀次郎」
加藤は目を閉じた。
「そこが問題なんだ」
芽衣にも聞こえていた。
そして表情が変わった。
ほんの少しだけ。
だが香澄はそれに気づいた。
当然のように。
「始める前に」と香澄が言った。「一つだけ確認するわ」
芽衣はため息をついた。
「珍しいわね。誰かの一日を壊すために作られた演説なしで訓練するのかと思った」
「いいえ。それでは素材がもったいないもの」
香澄は扇を開いた。
白い線のような魔力が、骨の間に現れた。
細く。
清潔で。
ほとんど美しい。
そして、その正確さのせいで不快だった。
「今日は、どれだけ力があるかを見るつもりはないわ。それは他の指導員や、他の試験や、退屈な自尊心の膨らませ方に任せる。私が見るのは、誰かが正しい場所に触れた時、あなたたちがどれだけ早く自分を裏切るか」
千穂が唾を飲み込んだ。
結衣は手を握った。
陽菜は動かなかった。
芽衣は笑った。
楽しさのない笑みだった。
「いつも、誰かに覚えられるための台詞みたいに喋るの?」
香澄は彼女を見た。
「痛むとわかっている時だけよ」
芽衣は扇を完全に開いた。
香澄はわずかに首を傾けた。
「四人の中で、一番心配なのはあなた」
訓練場が少し静かになった。
芽衣は瞬きしなかった。
「光栄ね」
「光栄ではないわ」
「じゃあ黙って」
「いいえ」
香澄は扇を柔らかく閉じた。
「あなたは弱いわ、芽衣」
その言葉は、どんな術式よりも鋭く訓練場に落ちた。
悠太は口を開いた。
何も言わなかった。
陽菜は芽衣を見た。
千穂は弓をわずかに下げた。
結衣は一秒だけ呼吸を止めた。
芽衣は動かなかった。
それが一番悪かった。
彼女の顔に痛みは出なかった。
押し込めた怒りが出た。
「もう一回言って」
香澄は声を上げなかった。
「あなたは弱い」
芽衣の扇が震えた。
「何も知らないくせに」
「あなたが望むより多く知っているわ」
「そんなことを言う権利はない」
「あなたが思っているより、私にはある」
芽衣が一歩出た。
陽菜が触れない程度に手を伸ばす。
「芽衣」
芽衣は彼女を見なかった。
香澄はわずかに笑った。
嬉しそうにではない。
測るように。
「あなたの切りは速い。魔力もいい。勘もいい。それが問題だったことは一度もない」
「だったら黙って」
「いいえ」
香澄の指の間の白い線が、少しだけ濃くなった。
「問題は、あなたがどんな戦いでも、自分には誰も必要ないと証明する機会のように攻撃すること」
芽衣は歯を食いしばった。
「分析なんていらない」
「いるわ」
香澄は横へ一歩動いた。
「だから、まだ弱い」
芽衣が動いた。
香奈の合図を待たなかった。
正式な開始も待たなかった。
自分の班も待たなかった。
扇が空気を切り、白い風が美しく、怒りを孕んだ精度で香澄へ向かった。
それは、香澄が望んでいた通りだった。
「始め」と香奈が言った。
遅すぎた。
香澄はすでに動いていた。
鏡のように速いわけではない。
バクのように汚いわけでもない。
神崎のように計算的でもない。
その動きは小さかった。
ただの一歩。
扇の一振り。
空中の白い線。
芽衣の攻撃は中央から開かれた。抵抗もなく割れたように見えた。破壊されたのではない。防がれたのでもない。術式であることをやめ、怒りになり始めた正確な場所で切られたのだ。
香澄は、自分で作った隙間を通り抜けた。
芽衣は修正しようとした。
陽菜が彼女を守ろうと前に出た。
「芽衣、下がって」
芽衣は聞かなかった。
あるいは聞いて、従わないことを選んだ。
千穂は角度を探して弓を上げる。
結衣は自分の印の前に結界を張った。
香澄は芽衣へは向かわなかった。
芽衣の背後の印へ向かった。
芽衣は遅れて理解した。
陽菜も。
白い線が下りる。
芽衣の印が二つに切れた。
「失格」と香澄が言った。
芽衣は動かなかった。
扇の周りの風が消えた。
「私には触れてない」
「触れる必要はなかったわ」
香澄は扇を回した。
「あなたの印は、あなたの責任だった。それを、言葉を罰するために放棄したの」
芽衣は鼻から息をした。
「まだ終わってない」
「終わったわ。だから怒っているのよ」
陽菜は、香澄と自分の印の間に入った。
手に斧が現れる。見た目より重いそれを、両手で握った。完全には振り上げない。
香澄は彼女を見た。
「月野陽菜」
「はい」
「あなたは切る前に迷う」
陽菜は柄を握る指に力を込めた。
「それがいつも悪いとは限らない」
「ええ」
香澄は彼女へ歩いた。
「でも、切れる自分を罰するために迷うのなら、悪いわ」
陽菜は答えなかった。
その言葉は、あまりにも最近の場所に触れた。
久山はまだ遠くなかった。澪の家。森。赤い男。刃ではなく柄で使った斧。守ることもまた痛むのだという感覚。
それが彼女の顔を通り過ぎるのを、香澄は見た。
「そこね」
陽菜は斧を上げた。
「あなたに何が見えてるのかわからないでしょ」
「十分には見えているわ」
香澄が攻撃した。
白い線が陽菜の印へ向かう。
陽菜には、それを切ることができた。
動きはそこにあった。
彼女は知っていた。
身体も知っていた。
だが斧は半秒迷った。
香澄を恐れたからではない。
自分自身を恐れたからだ。
香澄にはそれ以上必要なかった。
白い線は斧の縁を回り、下を抜け、地面の印を切った。
「失格」
陽菜は一瞬、目を閉じた。
芽衣が怒りを含んで彼女へ振り向く。
「私を庇う必要なんてなかったでしょ!」
陽菜は目を開けた。
「自分の印を守ってた」
「遅かった」
「わかってる」
芽衣は扇を握りしめた。
その答えは、彼女から攻撃する場所を一つ奪った。
千穂は三歩下がり、弓を引いた。細く安定した魔力の矢が指の間に現れる。香澄の肩を狙い、足を狙い、扇を狙う。
撃たなかった。
香澄は急がずに進んだ。
千穂は角度を調整する。
香澄が体重を片足からもう片方へ移す。
千穂は修正した。
香澄が笑う。
「完璧な一射というのは、美しい考えね」
千穂はさらに弦を引いた。
「動かないでください」
「敵に向けるお願いとしては、ずいぶん可愛らしいわね」
香澄が一歩出た。
千穂は隙を見た。
だが完全ではなかった。
その矢は扇に触れるかもしれない。白い線を逸らせるかもしれない。止まらせるかもしれない。
かもしれない。
撃たなかった。
香澄が指を上げた。
扇から白い線が走り、千穂の背後の印を切った。
「失格」
千穂はゆっくり弓を下ろした。
香澄は彼女を見た。
「遅い矢は、きれいな矢ではないわ。矢の形をした言い訳よ」
千穂は反論しなかった。
それが、どういうわけか、その言葉をさらに重くした。
残るは結衣だけだった。
結衣はすでに、自分の印の周りに完全な結界を張っていた。
良い結界だった。
とても良い。
透明で、硬く、縁も整っている。すべての角度から印を覆う小さなドーム状の魔力。
香澄はその前で足を止めた。
「良い結界ね」
結衣は警戒を解かなかった。
「ありがとうございます」
「完全な褒め言葉ではないわ」
「そうだと思いました」
香澄は閉じた扇で結界の縁に触れた。
魔力が、圧力を受けた硝子のような微かな音を立てた。
「正面からこれを切るには、必要以上の力を使うことになる」
結衣は表情を保った。
「なら、機能しています」
「いいえ」
香澄は首を傾けた。
「あなたは閉じこもったのよ」
結衣は眉をひそめた。
「印を守っています」
「印だけをね」
白い線が扇の先に現れた。
ドームを攻撃しなかった。
それは地面を這った。ほとんど見えないほど細い。結界が石に触れている最小の隙間の下を通った。破壊するためではない。結衣が土台を考えなかったことで生まれた隙間から、内側へ入るために。
結衣は目を見開いた。
遅すぎた。
印は内側から切られた。
「失格」
結界が消える。
訓練場は静まり返った。
四つの印が切られた。
一分も経っていなかった。
香澄は扇を閉じた。
「第一回、終了」
芽衣が彼女へ一歩近づく。
「今のは挑発でしょ」
「ええ」
「ならズルよ」
「違うわ。何を測るかは先に言った」
芽衣は切られた自分の印を指した。
「私を弱いって言った」
「そしてあなたは、その言葉と戦うために持ち場を捨てた」
芽衣は答えなかった。
答えることは、またその言葉と戦うことだったからだ。
香澄は四人を見た。
「私の方が速かったから失敗したわけではない」
側面からバクが手を上げた。
「まあ、それも役に立ってるけどな」
香澄は彼を見なかった。
「黙って、バク」
「優雅な脅しは好きだ」
神崎が短く言った。
「獅子堂」
「もう黙るよ、緊急出口に憂鬱を足した人」
神崎は答えなかった。
香澄は続けた。
「あなたたちは、それぞれ違う嘘を守ったから失敗したの」
沈黙が変わった。
芽衣が顔を上げる。
「どんな嘘?」
香澄はまず彼女を見た。
「あなたは、自分が何も証明する必要はないという考えを守っている。でも、やることすべてがその逆を叫んでいる」
芽衣は顎を締めた。
香澄は陽菜を見た。
「あなたは、迷うことがいつも自分をより良い人間にするという考えを守っている」
陽菜は斧を少し下げた。
「そんなこと思ってない」
「言葉ではね」
陽菜は答えなかった。
香澄は千穂を見た。
「あなたは、完璧な一射を待てば間違えないという考えを守っている」
千穂は、消えた弓の見えない弦を握りしめた。
香澄は結衣を見る。
「そしてあなたは守りすぎて、時々、扉を残すことを忘れる」
結衣は、自分の結界があった地面を見た。
「扉のない結界も守れます」
「ええ」と香澄は言った。「時には脅威を。時には恐怖を。時には守るべきではない人を」
その言葉は、一箇所以上に触れた。
香奈は動かずに見ていた。
生徒たちだけを見ていたのではない。
香澄を見ていた。
加藤も同じだった。
優奈は腕をさらに強く組んだ。
「厳しすぎる」
加藤は低く言った。
「ああ」
優奈は彼を見る。
「庇わないの?」
「庇わない」
「どうして?」
加藤は答えるまで一秒かかった。
「まだ、どこを切るか選んでいる」
優奈は中央へ視線を戻した。
「切りすぎたら?」
加藤はすぐには答えなかった。
香澄は芽衣を見ていた。
芽衣は、世界を二つに割りたいような目で彼女を見返していた。
「その時は、誰かが止める」と加藤は言った。
優奈は横目で彼を見た。
「あなたが?」
「必要なら」
中央で、香澄は彼らの方を見ずに笑った。
「それも聞こえているわ」
加藤は目を閉じた。
「ああ。知ってる」
香澄は扇を上げた。
「もう一度」
芽衣は短く笑った。
「何のために? 私たちがひどいってもう言ったでしょ」
「いいえ。どこから失敗し始めたかを正確に言っただけ」
「なんて寛大なの」
「あなたが受けるに値するよりはね」
芽衣が一歩出る。
陽菜がまた、その腕の近くに手を置いた。
今度は触れた。
一秒だけ。
芽衣が彼女を見た。
陽菜は何も言わなかった。
必要なかった。
芽衣は息をした。
上手くはない。
だが息をした。
香澄はそれに気づいた。
「改善」
「褒めないで」
「褒めていないわ」
彼女たちの背後に、印が再び現れた。
地面に白い線が四つ。
香澄は班の前をゆっくり歩いた。
「第二回。同じルール。三分。位置を替えたいなら言いなさい。助けたいなら言いなさい。愚かなことをするなら、せめて意図を持ってやりなさい。評価くらいはできるから」
バクがため息をついた。
「なんて美しい教育だ。俺なんて『変な死に方するな』くらいしか言わないのに」
神崎が彼を見た。
「それでも喋りすぎる」
「若者には詩が必要なんだ」
「必要なのは指示だ」
「二つは共存できる」
「お前とは無理だ」
バクは胸に手を当てた。
「このクソ馬鹿。また正確だ」
香奈が杖を上げた。
「始め」
今回は香澄が待たなかった。
最初の白い線は芽衣へ向かった。
印へではない。
彼女自身へ。
芽衣は扇を開いた。
風が現れる。
身体は、さっきと同じように反応したがった。
攻撃する。
切る。
台詞より速い術式で香澄を黙らせる。
それは肩に出ていた。
指に。
目に。
香澄が笑う。
「来るわね」
芽衣は歯を食いしばった。
だが攻撃しなかった。
「結衣、左」
結衣は完全ではない結界を張った。
傾いた一枚の板だけ。上と右側が開いている。
香澄の白い線は縁に当たり、力ではなく角度によって逸れた。
陽菜がその開口部を通って動く。
「千穂、低く」
千穂が撃った。
矢は香澄へ向かっていない。
足のすぐ前の地面へ向かっていた。
傷つけることはできない。
そのつもりもない。
ただ、彼女の足運びを変えさせた。
香澄は足運びを変えた。
だが初めて、それは完全に彼女が望んだ一歩ではなかった。
加藤がわずかに笑った。
「いい」
優奈は彼を見た。
「それは誇り?」
「技術的観察だ」
「それ、前に私が言ったわ」
「なら正しかったんだろう」
優奈はため息をついた。
「不快」
「それも技術的観察だ」
中央で、香澄は左足を軸に回り、二つの切りを放った。
一つは結衣の印へ。
もう一つは千穂の印へ。
結衣が別の結界を張る。
今回はすべてを閉じなかった。
細い隙間を残した。
千穂はその隙間を通って動き、完璧な角度を待たずに撃った。
白い矢は横から香澄の切りに当たった。
破壊はしない。
曲げた。
陽菜が斧の柄で歪んだ線を叩き、地面へ逸らした。
切りは印に触れる前にほどけた。
陽菜は息をした。
香澄が彼女を見た。
「震えなかったわね」
陽菜は目を逸らさずに答えた。
「震えた」
香澄は笑った。
「でも切った」
陽菜は何も言わなかった。
それが本当だったからだ。
芽衣が動いたのはその時だった。
一人ではない。
そこが違った。
「陽菜、交代」
陽菜は芽衣の印へ動いた。
芽衣は中央へ出る。
香澄は片眉を上げた。
「持ち場を放棄する前に許可を取ったの?」
「知らせたのよ」と芽衣が言った。
「大人ね」
「それを続けてほしいなら、挑発しないで」
「続けてほしいとは思っていないわ」
白い線が、今は陽菜が守っている芽衣の印へまっすぐ向かった。
芽衣は戻りかけた。
香澄はそれを見た。
全員が見た。
陽菜も。
「戻らないで」と陽菜が言った。
芽衣は半秒止まった。
「あれ、私の印に向かってる」
「私があなたの印にいる」
その言葉は単純だった。
だが重かった。
芽衣は戻らなかった。
代わりに両方の扇を開き、陽菜の印へ向かっていた線を切った。
香澄の攻撃は届く前に割れた。
完璧ではない。
一部の切りは進み続けた。
千穂が撃つ。
結衣が最小限の結界を張る。
線が消えた。
香澄は足を止めた。
ほんの一瞬だけ。
「それは良くなった」
芽衣は荒く息をしていた。
「どうでもいい」
「どうでもよくないわ」
「黙って」
「いいえ」
香澄が彼女へ一歩近づいた。
空気が狭くなったように感じられた。
「あなたには才能がある、芽衣」
芽衣は答えなかった。
「とてもね」
芽衣の指が扇を強く握った。
「あなたの褒め言葉はいらない」
「褒めていないわ」
香澄は少し声を落とした。
「才能はあなたを強くしない。時には、落ちる姿を少し綺麗にするだけよ」
芽衣は憎しみを込めて彼女を見た。
「それ、みんなに言ってるの? それとも私だけ?」
「あなたにだけ」
「光栄ね」
「あなたを凡庸にはさせない」
その言葉は、違う何かに触れた。
「弱い」ではなかった。
「誇り」でもなかった。
別の何かだった。
芽衣が一歩出る。
「どうしてそんなに気にするの?」
初めて、香澄の笑みから何かが抜け落ちた。
一秒だけ。
ほとんど誰にも見えないほど短く。
だが芽衣には見えた。
加藤にも。
香奈にも。
香澄は扇を閉じた。
「誰かがそうしなければならないからよ」
芽衣は動かなかった。
その答えは、どんな侮辱よりも彼女を怒らせた。
「あなたは私の母親じゃない」
訓練場はさらに静かになった。
香澄は姿勢を変えなかった。
だが、目が変わった。
ほんのわずかに。
「ええ」と彼女は言った。
それだけだった。
その「ええ」の中には、多すぎるものがあった。
芽衣はそれを憎んだ。
すべてを理解できなかったからだ。
香澄は再び扇を開いた。
「そして、その隙が代償になる」
白い切りが芽衣の印へ向かった。
陽菜が防ごうとした。
だが彼女は芽衣を見ていた。
切りを見ていなかった。
千穂の矢は遅れた。
結衣の結界も半秒遅れた。
線が印に触れる。
完全には切らなかった。
中央に亀裂を入れただけだった。
香澄はその傷を見た。
「半分失格」
芽衣は息をした。
「そんなのあるの?」
「今日からあるわ」
「ルールを作ってる」
「大人だからね。数少ない特権よ」
バクが手を上げた。
「確認する。俺は朝食前に三つ作った」
神崎は彼を見ずに言った。
「二つ破った」
「三つ目は感情的なやつだった」
「それもだ」
バクは神崎を指した。
「誕生日会に行かないと言う割に、俺の人生を見すぎだぞ」
香澄は再び動いた。
今度は速かった。
ほんの少しだけ。
第二回が心地よい改善で終わるわけではないと、全員に理解させるには十分だった。
千穂へ二本。
結衣へ一本。
陽菜へ牽制。
芽衣の身体は、自分の印への攻撃にまた反応しようとした。
だが今回は別のものを見た。
香澄は印を攻撃していない。
反応を攻撃している。
芽衣は歯を食いしばった。
「千穂、あの人を狙わないで」
千穂はすでに矢を構えていた。
「じゃあ?」
「扇」
千穂は角度を変えた。
撃つ。
矢は香澄の扇の骨の一本に当たった。
壊しはしなかった。
だが一センチ押した。
一センチで十分だった。
結衣へ向かっていた切りは高く外れた。
結衣はドームを張らなかった。
上に空間を残した低い壁だけを作った。陽菜が通れるように。
陽菜が通った。
今度は斧の刃を使わなかった。
柄で結衣を二本目の切りから押し出し、それから武器を回して、平たい面で白い線を受けた。
衝撃で腕が震えた。
倒れなかった。
香澄が彼女を観察する。
「痛かったわね」
「はい」
「それをしたことで、自分を罰した?」
陽菜は鼻から息をした。
「あとで考える」
香澄は笑った。
「正直な答えね」
芽衣が彼女の左に現れた。
香澄が振り向く。
芽衣の扇が空気を切った。
香澄に向かってではない。
香澄が二本の指でまだ保持していた切りへ向かって。
芽衣の風がそれを割った。
白い線がほどける。
初めて、香澄が一歩まるごと後退した。
訓練場が反応した。
叫びではない。
呼吸の変化だった。
芽衣もそれに気づいた。
目がわずかに開く。
香澄は下がった自分の足を見た。
それから笑った。
「そこよ」
芽衣は扇を上げた。
「何が?」
「証明する必要のなかった部分」
芽衣に答える時間はなかった。
香澄は扇を強く閉じた。
白い魔力が四本の極細の線に凝縮する。
それぞれの印へ一本ずつ。
同時に。
千穂が自分の印へ向かう線へ矢を放つ。
結衣が部分的な結界を張る。
陽菜が斧を回す。
芽衣は両方の扇を開き、前へ切った。
一秒間、機能した。
完璧ではない。
だが機能した。
千穂の矢が一本の線を逸らす。
結衣の結界が陽菜を通し、別の線を止める。
陽菜は衝撃の重さを見つめ続けることなく三本目を切った。
芽衣が四本目を止めた。
その後、香澄は手首を動かした。
それだけだった。
芽衣の線が曲がる。
自分の印へではない。
陽菜の印へ。
芽衣は目を開いた。
陽菜は間に合わない。
千穂には角度がない。
結衣は芽衣を閉じ込めずには防げない。
芽衣には、自分の印を守ることができた。
それが論理的だった。
自分の責任だった。
香澄が最初に言ったことでもあった。
だが陽菜は、芽衣のために守っていた印のところにいた。
芽衣は長く考えなかった。
今回は、それは誇りではなかった。
判断だった。
「結衣、開けて」
結衣は理解した。
結界が扉のように開く。
芽衣はその隙間を抜け、陽菜の印へ向かう線に両方の扇を放った。風は地面に触れる前にその線へ届いた。
白い切りは逸れた。
だが香澄はすでに芽衣の背後にいた。
閉じた扇が、芽衣が守りから離した亀裂入りの印に触れる。
線が切れた。
「失格」
芽衣は動かなかった。
陽菜が振り向く。
「芽衣――」
「言わないで」
芽衣は陽菜を見なかった。
香澄を見ていた。
「何も言わないで」
香澄はその視線を受け止めた。
「あなたは、自分の印を失って他の印を守ることを選んだ」
「そうよ」
「知らせた」
「そうよ」
「遅かった」
芽衣は歯を食いしばった。
「そうよ」
香澄は扇を閉じた。
「改善」
芽衣は口を開いた。
何も言わなかった。
それは彼女にとって、ほとんど一つの戦いに等しかった。
千穂の印はその後に落ちた。
香澄は、千穂が足場を整える前に撃たざるを得ない角度から切った。千穂はそれでも撃った。中心は外したが、結衣の印が落ちない程度には逸らした。
最後は結衣だった。
彼女の結界は、もう完璧ではなかった。
意図的な亀裂があった。
開口部。
扉。
香澄は、切る場所を見つけるのに前より時間がかかった。
それでも見つけた。
白い線は、結衣が陽菜のために残した開口部から入った。香澄のためではなかった。その横から印を切った。
「失格」
時間はまだ終わっていなかった。
だが、ほとんど終わりだった。
香澄は扇を上げた。
「停止」
四人は動きを止めた。
芽衣は荒く息をしていた。
陽菜はさっきの衝撃で腕を張らせていた。
千穂は、最後の射撃をまだ修正できるかのように、弓を半分だけ呼び出したままだった。
結衣は崩れていく自分の結界を見ていた。恥じているのではなく、注意深く。
香澄は切られた印の間を歩いた。
「結果、不十分」
訓練場の端で、悠太が目を閉じた。
「今日、大人たちは“不十分”って言葉を覚えて、それを武器にすることにしたんだな」
石田は彼を見ずに言った。
「正確だ」
「正確に最悪だ」
香澄は続けた。
「でも、改善した」
芽衣は扇を下げた。
「それだけ?」
「今日はね」
「寛大ね」
「安堵を寛大さと勘違いしないこと」
香澄は千穂を指した。
「完璧を待たずに撃った。いいわ。何度も外した。それもいい」
千穂は瞬きをした。
「外すのが、いいんですか?」
「早く外すことで班に情報が残るならね。自尊心を守るために遅く外すなら、違う」
千穂は自分の弓を見た。
「了解しました」
「いいえ。でも、正しい答えを少し嫌い始めた。それで今は十分」
香澄は結衣を見た。
「あなたの結界は悪くなった」
結衣は少し視線を下げた。
「そうですね」
「だから良くなった」
結衣は困惑して彼女を見た。
香澄は、結界に開口部があった場所を扇で触れた。
「誰も通さない完璧な防御は、世界が正しい側に留まってくれる間だけ役に立つ」
結衣は答えなかった。
「今回は扉を残した」
「そして、あなたはそこから入りました」
「ええ」
香澄はわずかに笑った。
「それが、役に立つことをする危険よ」
結衣はゆっくり息をした。
「なら、どこに開けるかをもっと選ばないといけない」
「その通り」
それから陽菜を見た。
「あなたは切った」
陽菜は斧を両手で握っていた。
「はい」
「迷いが減った」
「痛みが消えたわけではありません」
「消えなければならないとは言っていないわ」
香澄は一歩近づいた。
「ただ、その痛みに決めさせてはいけないだけ」
陽菜は斧の刃へ視線を落とした。
満足しているようには見えなかった。
だが迷子にも見えなかった。
「了解しました」
香澄は彼女を観察した。
「あなたの場合は、もしかすると本当にそうね」
陽菜は驚いて顔を上げた。
その時には、香澄はもう芽衣を見ていた。
訓練場が再び張り詰めたように感じられた。
芽衣は、澄んだ憎しみでその視線を受け止めた。
ほとんど心地よいほどの。
「言いなさいよ」と芽衣が言った。
香澄は首を傾けた。
「何を?」
「重要ぶるために取っておいた何かよ」
香澄は黙った。
一秒。
二秒。
それから彼女の前まで歩いた。
「あなたは強い」
芽衣は褒められたようには反応しなかった。
罠を張られたように反応した。
「遊ばないで」
「遊んでいないわ」
「弱いって言ったくせに」
「弱いわ」
芽衣が一歩出る。
陽菜がまた動いたが、芽衣は手を上げた。
今度は攻撃のためではない。
必要ないと伝えるために。
香澄はそれを見た。
「改善」
「それ言うのやめて」
「嫌よ」
芽衣は荒く息をした。
「じゃあ、何? 私は強いの? 弱いの?」
香澄はゆっくり扇を閉じた。
「ええ」
芽衣は純粋な軽蔑で彼女を見た。
「役に立たない答えね」
「正確な答えよ」
香澄は少し声を落とした。
「目の前にあるもののために戦う時、あなたは強い。背後にあるものを触られた時、あなたは弱い」
芽衣は何も言わなかった。
「あなたの誇りは速い。技術も速い。でも、いつもあなたの味方とは限らない」
芽衣の目が硬くなった。
香澄は続けた。
「今日、あなたは陽菜の印を守るために自分の印を失うことを選んだ。それは正しかった」
芽衣は視線を逸らさなかった。
「それでも遅かった」
「ええ」
「それでも正しかった」
芽衣は扇を握りしめた。
その言葉は、批判よりも彼女を苛立たせるようだった。
香澄は、ごくわずかに疲れた笑みを浮かべた。
「正しいことが、いつも自分を良く見せてくれるとは限らないわ」
芽衣は低く言った。
「私をあなたの計画にしないで」
香澄の目に何かがよぎった。
まただ。
あの一瞬の小さな隙間。
説明にはならない亀裂。
「いいえ」と香澄は言った。
その言葉は柔らかかった。
「あなたに必要なのは、もっと悪いものよ」
芽衣は眉をひそめた。
「何?」
香澄は後ろへ下がった。
笑みが戻る。
だが完全には戻らなかった。
「時間」
芽衣はさっきよりも強い怒りで彼女を見た。
「嫌い」
「私の話を聞かないほどではないわ」
芽衣は答えなかった。
そしてそれは、香澄にとってほとんど返事だった。
香奈が杖で地面を叩いた。
「今日はここまで」
四人は武器を下ろした。
千穂は弓を指の間でほどいた。
結衣は息を吐いた。
陽菜はゆっくり斧を消した。
芽衣は扇を強く閉じすぎた。
香澄は側面へ戻る途中で、彼女の横を通った。
その時、低く言った。
全員に聞こえるほどではない。
だが陽菜には聞こえた。
「あなたを凡庸にはさせない」
芽衣は彼女を見なかった。
「頼んでない」
香澄は足を止めた。
「知っているわ」
「だったら放っておいて」
二人の間の沈黙は短かった。
だが軽くはなかった。
香澄は彼女を見ずに答えた。
「そうできたらよかった」
そして歩き続けた。
芽衣はその場に残った。
陽菜が彼女を見る。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
「話したい?」
「もっと嫌」
陽菜はうなずいた。
「わかった」
芽衣は彼女を見た。
「しつこく聞かないの?」
「私はあなたの叔母さんじゃないから」
この実習が始まってから初めて、芽衣はほんの少し笑った。
ほとんど何もないくらい。
だが本物だった。
「ありがと」
「どういたしまして」
側面で、バクは戻ってくる香澄を見て手を上げた。
「感情の刃の女王、素晴らしい仕事だった。たぶん防御を三つ、自尊心を二つ、そして未来の家族ランチを一つ破壊したな」
香澄は彼を見た。
「自尊心は二つだけよ」
「謙虚だ」
神崎は生徒たちを見ていた。
「感情的圧力下で改善した」
バクは彼へ振り向いた。
「お前、天気の話みたいにひどいことを言うの好きだな」
神崎の表情は変わらなかった。
「天気も人を殺す」
バクは指を一本立てた。
「それに反論すると、お前が正しくなりそうで困る」
「なら反論するな」
「その選択肢は個人的に侮辱だ」
香澄が戻ってくると、加藤は彼女を見た。
「近くを切ったな」
香澄は扇を閉じた。
「切ろうと思えば、もっと近くを切れたわ」
「知ってる」
優奈は遠くの芽衣を見ていた。
「彼女は知らない」
香澄はすぐには答えなかった。
話した時、その声から少しだけ光が消えていた。
「いつか、もっと多くを知ったうえで私を嫌うわ」
加藤は彼女を見た。
「それで良くなるとは限らない」
「ええ。でも少なくとも公平にはなる」
香奈は両手で杖を握った。
「公平さが慰めになることは少ないわ」
香澄は笑った。
「慰めに来たわけではありません」
優奈は彼女を見た。
「それはかなり明確だったわ」
香澄はその視線を受け止めた。
一瞬、二人の女は武器を上げずに互いを測っているようだった。
やがて香澄は閉じた扇へ視線を落とした。
「そうね」
それ以上は言わなかった。
訓練場では、生徒たちがゆっくり動き始めていた。まるで午後が筋肉に重さを残したかのように。大きな声で話す者はいない。すぐに笑う者もいない。
健太はまだ自分の手を見ていた。
石田も自分の手を見ていたが、違う見方だった。
芽衣は扇を見ていなかった。
自分の印が切られた地面を見ていた。
悠太は端からすべてを見ていた。
血の出ない傷を誰かが受けるのを見るのは、妙だった。
鏡の場合、身体が理解した。
バクの場合、恐怖が理解した。
神崎の場合、理屈が理解した。
香澄の場合、問題は別の何かが理解してしまうことだった。
人に理解されたくないものまで。
隣で颯太が言った。
「全部、違う訓練でした」
「ああ」
「でも、全部同じことをしていました」
悠太は彼を見た。
「何を?」
颯太は訓練場を見ていた。
「誰かがどこで壊れるかを見せていました」
悠太はすぐには答えなかった。
三郷の少年は、賢そうに聞こえようとしているのではなかった。
何かを見覚えのあるものとして認識しているように聞こえた。
それが余計に悪かった。
悠太は芽衣を見た。
それから陽菜を。
千穂と結衣を。
香澄は四つの印を切った。
だが重要なのはそこではなかった。
重要なのは、四人がそれぞれ一瞬だけでも、自分が本当に何を守ろうとしていたのかを見たことだった。
芽衣は扇を握る指を閉じた。
開かなかった。
攻撃もしなかった。
叫びもしなかった。
ただ呼吸した。
悠太は思った。
もしかすると芽衣にとって、それは完全には負けなかったことに一番近いのかもしれない。
訓練場の反対側で、香奈は四人の指導員を見た。
鏡。
バク。
神崎。
香澄。
それから加藤と優奈を見た。
「明日も続ける」
バクが手を上げた。
「トラウマ少なめで? それとも同じ家族セットで?」
「もっと精密に」と香奈が言った。
バクは手を下ろした。
「それは予定表の服を着た脅しだな」
神崎がうなずいた。
「脅しだ」
鏡は生徒たちを見た。
「まだ準備はできていない」
加藤は腕を組んだ。
「誰もできているとは言ってない」
優奈は訓練場から目を離さずに言った。
「でも今は、自分たちがどう準備できていないのかを、少しだけ前より知っている」
香奈は笑わなかった。
「それが始まりよ」
風が、切られた印の上の埃を動かした。
四本の白い線が、地面の上でゆっくりとほどけていく。
芽衣は、それが消えるまで見ていた。
彼女はずっと、切るということは速く決めることだと思っていた。
先に攻撃すること。
先に届くこと。
先に証明すること。
香澄は今、もっと悪いことを教えた。
切るとは、正確に決めること。
そして正確さは、誇りを許してくれない。




