第61章:避難経路
神崎は沈黙を求めなかった。
声を張り上げなかった。
冗談も言わなかった。
地面を叩く必要もなかった。
全員を脅すように見渡す必要もなかった。
自分の登場を一つの場面に変える必要もなかった。
ただ、訓練場の中央へ歩いていった。
それだけで、なぜか全員が話すのをやめた。
バクはまだ側面へ戻る途中だった。短いピックをまたズボンに引っかけ、開いた上着を風に揺らしている。十代と火と医療保険について何かを言っていたが、誰もすぐには反応できなかった。訓練場はまだ、バクが冗談をやめたあの一秒を意識しすぎていた。
神崎は彼の横を通り過ぎた。
バクが仮面を傾ける。
「幸運を祈るぜ、ミスター墓石」
神崎は彼を見なかった。
「幸運は信じていない」
「だから誕生日会でそんなに面白いんだな」
「誕生日会には行かない」
「すごく説明になるし、同時に何も説明になってないな」
神崎は歩き続けた。
バクは一秒だけ、その背中を見送った。
それから、加藤と香奈にだけ聞こえるくらいの声で言った。
「俺、あいつの番が嫌いなんだよ」
加藤が横目で彼を見る。
「なぜだ」
バクは冗談を言わなかった。
すぐには。
「正人は、死なない方法を教えるんじゃない」
仮面が静止した。
「お前がもう何回死んでいたかを見せるんだ」
加藤は答えなかった。
香奈も答えなかった。
訓練場の中央で、石田が一歩前へ出た。
鎖はまだ現れていなかった。
だが悠太には、それがすでに彼の皮膚の下で待っているような気がした。
神崎は彼の前で足を止めた。
封じ込め・支援ブロックの他の生徒たちも、あまり確信のない足取りでそれに続いた。全部で五人。小規模な防御系の術式を持つ者もいれば、構造物を補強できる者、簡単な結界を広げられる者、短い範囲内の動きを感知できる者もいた。神崎を前にして、誰も居心地が良さそうには見えなかった。
石田だけは落ち着いて見えた。
少なくとも、不快感を見せないと決めているようには見えた。
神崎はしばらく彼を見た。
「石田太郎」
「はい」
「鎖」
「はい」
「封じ込め、消耗、捕獲、拘束」
石田の表情は変わらなかった。
「主に」
「間違いだ」
訓練場の端で、悠太は少し目を開いた。
「いきなり強いな」
隣に座っていた颯太が眉をひそめる。
「間違い? でも石田さんは強いですよ」
「うん」と悠太は言った。「ここでは、そういうことが説明を悪化させることが多い」
石田は怒らなかった。
それはあまりにも簡単すぎる反応だった。
ただ、神崎をより注意深く見た。
「技術として間違いですか。それとも考え方としてですか」
神崎はわずかに首を傾けた。
笑みではなかった。
だが、行政的な承認に近い何かに見えた。
「考え方としてだ」
側面からバクが手を上げた。
「今のは墓地語で言う愛情だな」
神崎は彼を見なかった。
「正しい」
バクは手を下ろした。
「認められた気がするし、脅された気もする」
神崎は二本の指を地面につけた。
その手の下に、円形の印が現れた。
大きくはない。
暗い魔力で描かれた小さな円。その内側には、縮小された地図の道のように三本の線が交差していた。
数メートル先に、もう一つ。
さらに三つ目。
そして四つ目。
印は強く光らなかった。
危険そうにも見えなかった。
だからこそ余計に悪かった。
側面で優奈が腕を組んだ。
「必要以上の魔力を使っていないわね」
加藤がうなずく。
「あいつは昔からそうだ」
香澄は興味深そうに印を見ていた。
「相変わらず、不愉快なほど効率的ね」
「お前が言うと褒め言葉に聞こえるな」と加藤が言った。
「褒めてるわ。だから余計に嫌なのよ」
神崎は立ち上がった。
「実習」
誰も動かなかった。
彼は訓練場の三箇所を指した。
それぞれの場所に、訓練用の人形が現れた。普通の人形ではなかった。人間と同じ重さがあり、関節は補強され、胸には小さな魔力の印が刻まれている。起動すると、それぞれ違う姿勢で地面に倒れた。
一体は仰向け。
一体は横向き。
一体は印の一つの縁近く。
悠太は空気が変わるのを感じた。
これは戦いではない。
正確には。
神崎が言った。
「負傷者三名。可能な経路は二つ。安全区域は一つ」
彼は訓練場の反対側にある、薄い魔力で示された長方形を指した。
「目的は、負傷者の避難」
石田は印を見た。
「あなたは?」
「問題だ」
支援ブロックの生徒の一人が唾を飲み込んだ。
神崎は彼を見た。
「任務中にもう一度やれば、それも問題になる」
その生徒は口を閉じた。
神崎は続けた。
「ルール。私を止めても負傷者を失えば失敗。安全区域に到達しても仲間を置き去りにすれば失敗。私を封じ込めるために魔力を使い切り、その後動けなくなれば失敗。五秒以上動けなくなった者は、戦闘不能扱いとする」
石田は瞬きもせずに聞いていた。
「つまり、戦闘による勝利条件はない」
「正しい」
「抽出のみ」
「ようやく聞いているな」
その言葉は褒め言葉には聞こえなかった。
だが批判にも聞こえなかった。
扉が一つ開いたように聞こえた。
神崎は班の残りの生徒たちを見た。
「英雄行為はいらない。不要な犠牲もいらない。“それが正しいことだから”という理由で誰かが残るのもいらない」
側面でバクが舌打ちした。
「詩情を全部殺してるな」
神崎は彼を見ずに続けた。
「詩は負傷者を避難させない」
「詩人によるだろ」
「違う」
バクは胸に手を当てた。
「なんて残酷な男だ」
神崎が手を上げた。
「始め」
石田の鎖が即座に現れた。
水の中で金属を引きずるような低い音を立てながら、前腕から伸びる。輝いてはいなかった。輝く必要がなかった。黒い線のように、正確に訓練場を横切った。
一本の鎖が神崎へ向かった。
もう一本が二つの印の間の空間を囲む。
三本目は最初の負傷者へ伸びた。
速い。
正しい。
正しすぎる。
神崎は動かなかった。
最初の鎖が彼の左手首を捕らえた。
二本目が足首を囲む。
三本目が彼の前の通路を塞いだ。
一秒だけ、全員が石田が彼を止めたと思った。
悠太もそう思った。
だが、加藤の表情が変わっていないのを見た。
そして、何かがおかしいと理解した。
石田が鎖を引く。
「第一負傷者、今」
二人の生徒が仰向けの人形へ走った。一人が肩を持ち、もう一人が脚を持つ。ぎこちなかったが、持ち上げた。
神崎は自分の手首に巻かれた鎖を見下ろした。
「良い捕獲だ」
石田は答えなかった。
「悪い優先順位だ」
第二負傷者の下の印が光った。
地面は爆発しなかった。
割れもしなかった。
ただ、わずかに傾いた。
人形が指定された経路の外へ滑り始めるには、それで十分だった。
一人の生徒が顔を向けた。
「二人目です!」
石田は別の鎖を放った。
だが、すでに三本が張っている。
神崎は拘束されたまま。
第一負傷者は半分持ち上げられた状態。
第二負傷者は滑っている。
第三負傷者はまだ一人。
石田は封じ込めを選んだ。
神崎を縛る鎖をさらに強く引いた。
神崎が半歩動いた。
抵抗できなかったからではない。
石田にそう思わせることが都合よかったからだ。
別の印が光った。
今度は班の背後だった。
魔力の線が低い壁のように地面から立ち上がり、安全区域へ向かう最短経路を断った。
生徒たちは足を止めた。
「経路が塞がれました」
「左」と石田が命じた。
「左にも印があります」
神崎が鎖の中から言った。
「私を封じた」
石田は歯を食いしばった。
第三の印が第一負傷者の近くで光る。
脚を持っていた生徒がバランスを崩し、膝をついた。
「そして、場を失った」
石田の鎖が張り詰めた。
一瞬、さらに締めるのかと思えた。
だが彼は神崎を放し、倒れた生徒へ鎖を飛ばした。
遅い。
神崎はすでに動き始めていた。
速くはない。
鏡のようでもない。
バクのようでもない。
神崎は彼らを追っているようには見えなかった。
彼らが必要とする場所へ、すでに到達しているように見えた。
彼は自分の印の一つに二本の指をつけた。地面の線が形を変える。左の道が閉じる。右の道が少し開く。だがそれは、魅力的に見える程度にだけ開いていた。
石田はそれを見た。
「そっちは行くな」
第一負傷者を運んでいた生徒が迷った。
その半秒で十分だった。
神崎は距離を詰め、人形の胸の印に二本の指で触れ、それを消した。
「第一負傷者、死亡」
訓練場が静まり返った。
本当の死ではない。
全員がそれを知っていた。
人形はそこにある。偽物の重さと、偽物の関節を持ったまま。
それでも、その言葉は何かが息を止めたかのように落ちた。
石田は人形を見下ろした。
手にしていた鎖がわずかに震えた。
神崎は声を張り上げなかった。
「続行」
一人の生徒が彼を見た。
「でも、もう失敗しました」
「そうだ」
「なら――」
「続行」
その生徒にはわからなかった。
石田にはわかった。
あるいは、わかり始めた。
「最初のミスをしたからといって、任務は止まらない」
神崎は彼を見た。
「正しい」
側面で、悠太は唾を飲み込んだ。
「正しいのが嫌だ」
颯太は妙に真剣な顔で訓練場を見ていた。
「戦うよりきつく感じます」
「ああ」
数歩後ろに座っていた花が、とても低い声で言った。
「はっきりした敵がいないから」
原田が彼女を見た。
花は続けた。
「いるのかもしれないけど、一番大事なのはそこじゃない」
近くにいた鏡はそれを聞いて、何も言わなかった。
だが、その沈黙は承認に似ていた。
訓練場で、石田は立て直そうとした。
「第二負傷者、二人。第三負傷者は俺と。点灯している印は踏むな。道が早すぎるほど空いたら使うな」
神崎は邪魔しなかった。
それが全員をさらに不安にさせた。
生徒たちは動いた。
さっきよりは良い。
だが、すでに損害は出ていた。
第一負傷者は失われた扱い。
第二負傷者は安全区域の近くまで届いたが、端の印が光り、魔力の障壁が立ち上がって班を後退させた。第三負傷者は石田の鎖で引き寄せられたが、角度が悪い。人形が乾いた音を立てて地面にぶつかった。
神崎が手を上げた。
「停止」
全員が止まった。
石田は静かに息をしていた。
静かすぎるほどに。
神崎は中央まで歩いた。
「結果、不十分」
一人の生徒が視線を落とした。
「そもそも不可能だったんじゃ……」
神崎は彼を見た。
「可能だった」
生徒は唇を噛んだ。
「でも、全部塞いでいました」
「違う。君たちが遅れて見たものを塞いだだけだ」
誰も答えなかった。
神崎は石田を見た。
「お前の鎖は優秀だ」
石田は動かなかった。
「だから危険だ」
石田がわずかに視線を上げる。
「誰にとって、ですか」
「それが鎖だけではないことを、お前が覚えているかに頼る全員にとってだ」
沈黙が重くなった。
神崎は手を上げ、まだ石田の前腕から伸びている鎖を指した。
「鎖は縛ることができる」
彼の足元の印が光る。
「だが、導くこともできる」
魔力の線が、一体の人形から安全区域まで薄い道を描いた。
「煙で見えない時、道を示せる」
二本の指を地面につける。
印が低い魔力の手すりを立ち上げた。
「誰かが落ちるのを防げる」
それから一人の生徒を指す。
「聞こえない仲間に、出口がどこかを伝えられる」
石田は自分の鎖を見た。
神崎は続けた。
「お前はそれを、敵を止めるために使っている」
石田は反論しなかった。
「私は、お前がそれを味方を救うために使えるかを知る必要がある」
その言葉は残酷ではなかった。
優しくもなかった。
それより悪い。
正確だった。
加藤は腕を組んで見ていた。
「あの子は考えすぎる」
優奈が彼を見る。
「それは普通、欠点ではないわ」
「誰かが地面で血を流している戦いでは、欠点になる」
香澄は石田を注意深く見た。
「音のしない誇りを持っている子ね」
「一番直しにくいものよ」と香奈が言った。
バクが手を上げた。
「鎖の少年、俺は好きだぞ。俺の遺言書を赤ペンで添削しそうな顔をしている」
神崎が見もせずに言った。
「上手くやるだろう」
バクは彼を指した。
「それは腹が立つし、同時に安心する」
石田は指を閉じた。
鎖がほどけた。
一気に消えたのではない。
自分たちが間違った形で使われたことを受け入れるように、緩んだ。
神崎は印の一つまで歩き、足で触れた。
訓練用の人形たちはすべて初期位置に戻った。
消えていた胸の印も、再び光を取り戻した。
「もう一度」
生徒の一人が深く息をした。
「同じ実習ですか」
「違う」
神崎は印を指した。
「今度は煙がある」
本物の煙はなかった。
だが印が変わった。
低い魔力の霧が地面を這い、膝の高さまで広がった。すべてを隠すわけではない。だが距離を歪めた。人形は実際より遠く見えた。経路は、直接見ていない時だけ少し動いているように見えた。
悠太は花へ身を寄せた。
「これ、合法だよな?」
花は彼を見た。
「わからない」
原田が感情のない声で言った。
「神崎がやったなら、おそらく合法だ」
悠太はため息をついた。
「真面目な人間がズルをすると嫌だな。公式っぽく感じる」
中央で、石田は班を見た。
今度はすぐに話さなかった。
まず負傷者を見た。
次に経路。
次に神崎。
最後に生徒たち。
「彼を捕まえようとはしない」
一人が目を見開いた。
「え?」
「避難に必要な場合を除いて、彼を拘束するために魔力を使わない」
「でも、道を塞がれたら――」
「塞がれる前に経路を変える」
石田は鎖を一本上げた。
だが神崎へは放たなかった。
地面に置いた。
低く伸ばした。
道を示す黒い線のように。
「左手を鎖に添えろ。引くな。ただ張りに従え。張りが変わったら、君たちも変える」
生徒たちは互いを見た。
そして従った。
神崎は観察していた。
彼の表情は変わらなかった。
だが、沈黙が変わった。
石田は二本目の鎖を第一負傷者へ向けた。強引には引かない。人形の胴体に巻きつけ、しっかり、しかし締めすぎないようにした。そしてもう一方を生徒の一人へ固定する。
「力で運ぶな。重さを導け」
生徒がうなずいた。
三本目の鎖が消灯している印の縁へ伸びる。
塞ぐためではない。
示すために。
「そこは踏むな」
神崎が動いた。
石田は彼を捕らえようと思えば捕らえられた。
完璧な距離だった。
神崎の手首が目の前を横切る。
足首が一瞬、無防備になる。
鎖は届いたはずだった。
石田はそれを知っていた。
神崎も知っていた。
だが石田は、鎖を彼へは放たなかった。
背後へ放った。
第二負傷者の腰を囲み、足元で点灯しかけていた印から引き出した。
印は一秒後に発動した。
遅すぎた。
人形はもうそこにいなかった。
神崎は石田を見た。
「改善」
石田は答えなかった。
だが、肩がほんの少し下がった。
側面で、加藤が片側だけ笑った。
「あれだ」
優奈が彼を見る。
「何が?」
「勝つのをやめることだ」
優奈は訓練場へ視線を戻した。
「あなたが言っても妙な響きね」
「でも理解しただろ」
「残念ながら」
バクが指を鳴らした。
「今の、ほとんど賢かったな。吐き気がする」
香澄は笑った。
「私は可愛いと思ったわ」
加藤は眉をひそめた。
「可愛くはない」
「あなたのものは大体、否定しようとすると可愛くなるのよ」
優奈が二人を見ずに言った。
「集中して」
香澄は両眉を上げた。
「あら」
加藤は優奈を見た。
優奈は訓練場を見続けた。
「実習を見ているの」
香澄は柔らかく笑った。
「もちろん」
魔力の霧が動いた。
神崎は踵で印の一つに触れた。
主要な経路が低い障壁で塞がる。
生徒の一人がそのまま進みかけた。
石田の鎖が彼の手の中で張った。
その生徒は引きを感じ、印を踏む前に止まった。
「右」と石田が言った。
「右も空いていません」と別の生徒が返す。
「空いているとは言っていない。右と言った」
理解は遅れた。
だが理解した。
右は出口ではなかった。
遮蔽物だった。
彼らは訓練用の柱の一つの裏を通った。第一負傷者も一緒に進む。二人に支えられ、胴体の鎖に導かれていた。
神崎が柱の向こう側に現れた。
速くはない。
だが正確だった。
彼らがそこへ行くと決める前から、そこに着いていたように。
二本の指を上げる。
第三負傷者の下の印が光った。
石田は振り向いた。
第三負傷者を救うこともできる。
第一負傷者を確実に安全に入れることもできる。
一瞬、彼の鎖は二つの判断の間で宙に止まった。
以前なら、両方をしようとしたはずだ。
もっと締めて。
もっと張って。
もっと強引に。
今回は話した。
「第一負傷者を安全区域へ置け。今すぐ」
「でも三人目が――」
「今だ」
声は大きくなかった。
明確だった。
二人の生徒は従った。
第一負傷者が安全線を越える。
胸の印の色が変わった。
安全。
石田は二本の鎖を第三負傷者へ放った。
一本は地面に固定。
もう一本は人形の胴体へ。
その下の地面が傾く。
鎖は後ろへ引かなかった。
重さを横へ導いた。
人形は印が閉じ切る前に滑り出た。
第二負傷者はまだ道の途中だった。
神崎が別の印に触れた。
安全区域が狭まった。
悠太は口を開いた。
「それはズルだろ」
鏡が視線を逸らさずに言った。
「違う」
「なんでですか」
「安全だった出口が、安全ではなくなることもある」
悠太は口を閉じた。
反論できなかった。
颯太は張り詰めた顔で実習を見ていた。
「じゃあ、着くだけじゃ駄目なんですね」
「違う」と花がとても低く言った。「その場所が役に立たなくなる前に着かないといけない」
その言葉が空気に残った。
香奈はそれを聞いた。
花の方は見なかった。
だが杖を握る指が、わずかに強くなった。
彼女の頭の中で、訓練場は空ではなかった。
煙で満ちていた。
叫び。
閉じる扉。
少し前までは道だった通路が、次の瞬間には罠になる。
子どもたちが知っている声へ走る。
狩人たちが、誰を最初に抱えるかを選ぶ。
戦争は、敵が攻撃した時に始まるわけではない。
もっとずっと前に始まることがある。
誰かが、勝つために訓練しているのか、それとも誰かを生きて外へ出すために訓練しているのかを決める場所で。
石田は汗をかいていた。
大量ではない。
先ほどより消耗しているが、より良く使っているとわかる程度に。
一本の鎖が経路を示す。
一本が第二負傷者を支える。
三本目が左端を守る。
四本目は待っていた。
神崎はそれを見た。
そして石田を見た。
おそらく、その用途を知っているのだろう。
知られていることの方が、石田には不快だった。
神崎が前進する。
今度は第二負傷者へまっすぐに。
好機は明らかだった。
明らかすぎた。
石田が彼を縛れば、三秒を稼げるかもしれない。
三秒は大きい。
そして、すべての魔力を間違ったところに使うには十分でもあった。
石田は手を上げた。
鎖が出た。
神崎へではない。
置いていかれかけた生徒へ。
前腕をやさしく囲み、経路へ引き戻す。
「離れるな」
その生徒は体勢を戻した。
神崎は第二負傷者の横を通った。
二本の指で人形の印に触れる。
石田は歯を食いしばった。
だが、そこにはもう一本の鎖があった。
神崎の手を止めるためではない。
人形を安全区域へ引くために。
神崎の指先は空をかすめた。
指一本分。
第二負傷者が線を越えた。
安全。
訓練場は息を止めた。
残るは第三負傷者。
神崎は苛立ったようには見えなかった。
それが一番悪かった。
彼は二つの印に同時に触れた。
霧が動く。
石田の鎖が示していた道が三箇所で断たれた。
生徒たちが迷う。
石田は、他の者たちの動揺を自分の手の張りとして感じた。
全員が見えているわけではない。
だが鎖は見ていた。
地面の鎖が持ち上がった。
武器としてではない。
手すりとして。
「鎖に手を置け」と彼は言った。「霧を見るな。方向を感じろ」
一人が従った。
次にもう一人。
第三負傷者は遠い。
神崎の方が近い。
石田は走った。
神崎へではない。
負傷者へ。
それは、悠太が思っていた以上に意外だった。
石田は、走ることを選ぶ人間にはあまり見えない。
位置を選ぶ人間に見える。
だが今、彼は走っていた。
足元の印が光る。
石田は跳んだ。
足りなかった。
障壁が足首をかすめ、体勢を崩す。
鎖が一本、柱へ飛んだ。
固定。
引く。
石田は空中で姿勢を修正し、第三負傷者のそばに膝から着地した。
神崎が彼の前に現れた。
二メートル。
石田は反射で鎖を上げた。
神崎は動かなかった。
石田も動かなかった。
鎖が空中で震えた。
やがて下がる。
人形の胴体を囲んだ。
神崎が言った。
「遅い」
石田は引いた。
反対側の生徒たちは鎖の手すりを辿った。
安全区域は狭まりつつある。
第三負傷者が進む。
一メートル。
二メートル。
神崎が一歩出た。
石田は温存していた鎖を放った。
神崎へではない。
安全区域へ。
長方形の縁に突き刺し、線を張る。
生徒たちは理解した。
一緒に引いた。
第三負傷者は鎖に導かれて地面を滑り、石田は背後からその重さを支えた。
神崎の印が彼の下で光る。
石田は捕らえられた。
五秒以上の拘束は戦闘不能扱い。
一。
負傷者はまだ動いている。
二。
石田は顎を締めた。
三。
鎖が震えるほど張り詰める。
四。
第三負傷者が安全区域を越えた。
印の色が変わる。
五。
神崎が言った。
「戦闘不能」
魔力の線が石田の足元で閉じた。
実習が終わった。
しばらく、誰も話さなかった。
三人の負傷者は安全区域にいる。
石田は拘束されている。
一人の生徒が顔を上げた。
「成功……したんじゃ」
神崎は印を見た。
「部分的に」
その生徒の笑みは、生まれる前に消えた。
石田はまだ膝をついていた。
「俺が拘束されたからですね」
「そうだ」
「でも、三人は到達した」
「そうだ」
「なら、実際の任務では……」
神崎は硬さのない声で続けた。
「負傷者は生きる。お前は死ぬ」
訓練場が静まり返った。
その言葉は劇的には響かなかった。
だから余計に悪かった。
石田は地面を見た。
鎖はゆっくりと消え始める。
「結果」と神崎は言った。「不十分」
一人の生徒が口を開いたが、何も言わなかった。
神崎は続けた。
「第一回よりは改善」
石田は顔を上げた。
「それに意味はありますか」
「ある」
神崎は足で印の一つに触れた。石田を捕らえていた線が消える。
「明日、私が必要としているのは、君たちが優秀であることではない。間違いをやめるのが、もっと早くなることだ」
石田はゆっくり立ち上がった。
満足しているようには見えなかった。
だが、敗北しているようにも見えなかった。
それが、おそらく進歩だった。
神崎は彼を見た。
「私を捕らえない判断を三度した」
「はい」
「二つは正しかった」
石田は待った。
「三つ目で、お前は死んだ」
石田は、印が触れた足首へ視線を落とした。
「了解しました」
「違う」
神崎は動かなかった。
「腹が立っただけだ。村と同じだ。理解はその後に来る」
バクが両手を上げた。
「おい! それ、教育感染で俺の台詞みたいになってるぞ!」
神崎は初めて彼を見た。
「違う」
「冷たい。破壊的。短い。尊敬を込めて嫌いだ」
神崎は石田へ視線を戻した。
「鎖は失敗していない」
石田はわずかに眉をひそめた。
「俺が失敗した」
「正しい」
その返答があまりにも直接的で、側面の悠太は顔をしかめた。
「距離があっても痛いな」
神崎は続けた。
「鎖は、切れた時だけ失敗するわけではない。遅れた時にも失敗する。導くべきものを縛った時にも。誰か一人を守り、別の誰かに経路を残さなかった時にも。避難を個人的な戦いに変えた時にも」
石田は一語一語を聞いていた。
言い訳せずに。
早すぎるうなずきもせずに。
もう知っているふりもしなかった。
「明日」と神崎は言った。「もう一度」
石田は背筋を伸ばした。
「はい」
「そして、失敗するなら、もっと早く失敗をやめろ」
石田は答えるまで一秒かかった。
「はい」
バクが一度だけ拍手した。
「なんて恐ろしい激励だ。反発心だけで生きたくなる」
香奈が杖で地面を叩いた。
「今日のこのブロックはここまで」
支援ブロックの生徒たちは、ほとんど同時に息を吐いた。
一人は地面に座り込んだ。
別の一人は一度だけ神経質に笑い、すぐに口を押さえた。
神崎は叱らなかった。
それに何人かが驚いた。
ただ、こう言った。
「今は呼吸しろ。任務では、動きながらやれ」
座り込んでいた生徒は立ち上がった。
悠太は、石田が訓練場の中央から出てくるのを見ていた。
屈辱を受けた者の歩き方ではなかった。
重いものを渡され、それをどこで持てばいいのか、まだ決めている者の歩き方だった。
側面まで来た時、悠太は片手を上げた。
「お疲れ」
石田は彼を見た。
「不十分だった」
「うん、まあ。俺も今日は視線を間違えて死んだし。みんなで死因カタログを作ってる途中だ」
石田は瞬きをした。
「それは励ましになっていない」
「励ましが得意だとは言ってない」
隣に座っていた颯太が、慎重に口を開いた。
「でも、三人とも助けました」
石田は颯太を見た。
一瞬、訂正しようとするように見えた。
それから息をした。
「そうだな」
颯太はうなずいた。
「それは、意味があります」
石田はすぐには答えなかった。
それから、自分の手を見た。
「何を払ったかも、意味がある」
悠太は冗談を言わなかった。
石田が実習だけの話をしているのではないとわかったからだ。
久山で、石田は学んだ。
鎖の向こう側に人間がいることを忘れれば、鎖は危険すぎるものになるのだと。
そして今、神崎はもっと厄介なことを教えた。
鎖は、遅れた時にも失敗する。
切れたからではない。
弱かったからでもない。
導くべき時に、縛ることを選んだからだ。
訓練場の向こう側で、香澄が静かに扇を閉じた。
芽衣、陽菜、千穂、結衣はまだ自分たちの班で待っていた。
芽衣は叔母から目を離していなかった。
恐怖ではない。
正確には。
予期された苛立ちだった。
まるで、傷口がすでに、どこを触れられるのか知っているかのように。
香澄は笑った。
「明日は、家族関係を壊す番かしら」
訓練場の反対側から、芽衣が言った。
「明日まで待たなくていいわ。もう始めてる」
陽菜が彼女を見る。
「今のは脅し? それとも文句?」
「両方」
千穂は、まだ完全には呼び出していない魔力の弓を指先で抱えていた。
結衣は深く息をした。すでに自分と他人の緊張の間に、見えない結界を立てているかのようだった。
悠太はその班を見た。
それから石田を見た。
さらに少し離れたところで、自分の手を見つめ続けている健太を見た。
訓練場はいつもと同じに見えた。
地面。
消えた印。
埃。
指導員たち。
生徒たち。
だが、同じではなかった。
鏡は彼らに見せた。
近くで戦うことは、一緒に戦うことではないのだと。
バクは彼らに見せた。
敵は、怒りを経路として使うことができるのだと。
神崎は今、見せた。
生き残ることは、逃げることではない。
それは技術だ。
判断だ。
責任だ。
そして時に、残酷な計算だ。
石田は指を閉じた。
鎖は現れなかった。
だが悠太には、今回は見えなくても、それが皮膚の下で待っているわけではないように感じられた。
出口を探しているのだ。




