第60章:騒音
健太が笑うのをやめたのは遅かった。
結衣の表情によれば、遅すぎた。
鏡の訓練が終わってから、まだ五分も経っていなかった。訓練場にはまだ埃が漂っていた。悠太は片手を膝についたまま息を整えていた。颯太は地面に座り込み、自分が実際より疲れていないように見せようとしていた。原田は制服についた土を払っていた。花は目を伏せていた。恥じているのではない。頭の中で、自分が見たものを整理しているようだった。
一方、健太はまだ獅子堂バクを見ていた。
仮面の男は訓練場の中央に立ち、寝心地の悪い昼寝から起きたばかりのように首を左右へ回していた。開いた上着が肩から垂れている。傷跡だらけの裸の上半身は、あまりに長い年月、悪い選択を繰り返してきたもののように見えた。短いピックは、金属のフックでまだズボンに固定されていた。
バクは自分の班を見た。
村海斗。
有本健太。
そして、見せようとしているほどの自信を持てないまま一歩前へ出た、身体強化ブロックの二年生三人。
「よし」とバクは言った。「俺の番だ」
健太が腕を伸ばした。
「今度は喋り少なめで、戦い多めだといいな」
バクは仮面を彼へ傾けた。
「おお、火の少年」
その声はまだ楽しそうだった。
楽しすぎるほどに。
「俺とは、めちゃくちゃ喋ることになるぞ」
健太は笑った。
「怖くないですね」
バクはすぐには答えなかった。
一秒間、ただ二本の指で短いピックのフックに触れた。
笑みは仮面の奥に隠れていた。
あるいは、もう消えていた。
「それも測る」
海斗は横目で健太を見た。
「始まる前から挑発するな」
「向こうが始めたんだろ」
「だからって手伝う必要はない」
バクが片手を上げた。
「いやいや。手伝わせてやれ。教材が自発性を持っていると助かる」
健太は眉をひそめた。
「教材?」
「ああ。お前の場合、可燃性だ」
訓練場の端で、悠太が颯太の方へ身を寄せた。
「ほらな。だから返事しちゃ駄目なんだ」
颯太はゆっくりうなずいた。
「はい」
「まあ、俺なら返事してたけど」
「僕もそう思いました」
「いい出だしだ。もう悪い癖を学んでる」
颯太が小さく笑った。
鏡は香奈、加藤、優奈、タツ、香澄、神崎のいる側へ近づいた。ゆっくりと外套を羽織り、訓練場の中央を見た。
「これは悪くなる」と鏡が言った。
加藤はバクから目を離さなかった。
「それが方法だ」
優奈が腕を組んだ。
「その方法、書面で注意書きを添えるべきね」
「バクが来た時点で注意書きよりひどい」と加藤は言った。
香澄が笑った。
「大げさね、銀次郎。昔は楽しんでいたくせに」
「昔は若かった」
「昔は、自分が何を楽しんでいるかにもっと不誠実だったわ」
優奈がわずかに加藤へ顔を向けた。
「それ、何か意味があるの?」
「ない」と加藤は早すぎるほど早く言った。
香澄はさらに笑みを深めた。
「たくさんあるわ」
香奈が杖で地面を叩いた。
「白銀」
香澄はわざとらしく無実を装って両手を上げた。
「観察しているだけよ」
「毒を少なめに観察しなさい」
「奇跡は約束できないわ」
中央で、バクが手を叩いた。
一度だけ。
乾いた音だった。
「ルールだ」と彼は言った。「三分。目的は、範囲内に留まること、倒れないこと、陣形を崩さないこと、そして俺に一度触れること」
健太は笑った。
「それだけ?」
「違う」
バクはズボンから短いピックを外した。だが完全には離さなかった。武器は数センチ落ち、金属のフックにぶら下がった。
「俺は嘘をつく。罵る。気を逸らす。許される範囲内でズルもする」
海斗は眉をひそめた。
「それは許されるんですか?」
バクは彼へ向いた。
「実戦じゃ、このクソ馬鹿、許されないものほど普通に来る」
身体強化ブロックの生徒の一人が唾を飲み込んだ。
バクは彼を指した。
「今の音は生存本能だ。いいぞ。見た目は悪いが、いい」
健太が手のひらに火花を灯した。
「じゃあ、汚い戦いってことですね」
「違う。礼儀のない正直な戦いだ」
海斗が一歩前へ出た。
「制限は?」
「目、喉、そして人生が楽しくなくなる場所は狙うな。俺も同じことをする。俺の方が上手くな」
優奈は目を閉じた。
「それが公式説明だなんて信じられない」
神崎が表情を変えずに言った。
「不十分だが、明確だ」
バクはピックで彼を指した。
「ありがとう、ミスター墓石」
「褒めていない」
「褒め言葉として集めておく」
香奈が杖を上げた。
「始め」
最初に動いたのは海斗だった。
考えなしに飛び出したわけではない。
そこが健太とは違っていた。
魔力で身体を強化し、肩を低く、足元を固め、両手をいつでも防御できる位置に置いて進む。すぐに殴ろうとはしない。距離を詰めようとしていた。
いい。
バクは彼を近づけた。
それが最初におかしかった。
下がらない。
避けない。
ピックを構えない。
ただ、仮面を傾けただけだった。
「いい前進だ」とバクは言った。「実に英雄的。実に高潔。前を向いて死ぬにはとても便利だ」
海斗は餌に食いつかなかった。
そのまま進む。
健太は食いついた。
「喋らずに戦えないんですか?」
「できる」とバクは言った。
声が笑った。
「ただ、普段それをやると、誰かが早く学びすぎるんだ」
健太は最初の炎を放った。
大きくはない。
右手のひらから伸びる短い火線。バクを海斗の方へ動かすための、制御された炎だった。
バクは動いた。
だが、彼らが望んだ方へではなかった。
ピックがズボンのフックから撃ち出された。
剣のようにではない。
槍のようにでもない。
刃のついた悪い思いつきのように。
それは海斗の左足のそばの地面に突き刺さった。
海斗はほんのわずかに視線を落とした。
失敗だった。
バクはフックを引いた。
その身体は、世界そのものが彼に有利な方へ傾いたかのように、固定点へ引かれて前進中に方向を変えた。炎の横をすり抜け、海斗の間合いをかすめ、支援役の生徒の一人の背後に現れた。
その生徒は振り向くのが遅れた。
バクは二本の指で背中に触れた。
「武器を見て、それを使う男を見なかったから死亡」
生徒は身体を強張らせた。
「でも武器はそこに――」
「ああ。そこが罠だった。おめでとう、見事に見つけたな。で、死んだ」
海斗が振り返る。
健太が再び火を灯した。
「まだ終わってません!」
「そう願う」とバクは言った。「これで終わったら、俺の基準でも憂鬱だ。俺の基準は仮面をかぶってるんだぞ」
健太はもう一度炎を撃った。
さっきより広い。
バクは短い一歩で、ほとんど怠そうにそれを避け、またフックを引いた。ピックが地面から抜け、空中で回り、彼の手へ戻る。
その動きは優雅ではなかった。
速い。
汚い。
効率的だった。
その時、海斗が攻撃した。
強化された拳がバクの胴体へ向かう。
バクはピックの柄で受けた。
金属の乾いた音が響いた。
海斗はわずかに目を見開いた。
バクは力で上回ったのではない。
その打撃が方向を失う、正確な角度に柄を置いただけだった。
「村」とバクは言った。「お前の拳は、壁が道にあることを謝ってくれると思ってる奴の拳だな」
海斗は歯を食いしばった。
「壁を殴ってるわけじゃありません」
「まだな。でも精神的にはその方向へ向かってる」
海斗は彼の腕を掴もうとした。
バクは、触れそうになるところまでは許した。
触れそうになるところまでは。
その後、ベルトのフックへごく小さな純粋魔力の衝撃を流した。
攻撃ではなかった。
押し出しだった。
手に持っていたピックが、十倍の重さになったかのように下へ引いた。バクの身体は半秒だけその落下に従い、海斗の手の届く範囲から消えた。
本当に消えたわけではない。
低く沈んだだけだった。
回った。
そして肩で海斗の肋骨に打ち込んだ。
海斗は二歩後退した。
倒れはしなかった。
それを見て、バクは首を傾げた。
「ああ。いい身体してるな」
海斗は睨んだ。
「その言い方やめてください」
「繊細だな。じゃあ言い直す。避けられたはずの痛みを受け止めるのに便利な構造をしている」
側面で、悠太が手を上げた。
「今の、俺に向けられてないのに痛かった」
颯太はじっと見ていた。
「動きが変です」
「ああ」と原田が言った。
花がゆっくりうなずいた。
「一定のリズムがない」
鏡がそれを聞き、彼女を見た。
「いい」
花は反射的に緊張した。
それから息をした。
「ありがとうございます」
「今のは褒めた」
花は瞬きをした。
悠太は目を見開いた。
「存在するんだ」
鏡は無視した。
中央では、生徒たちがバクを囲もうとしていた。
海斗が正面。
健太が右。
残り三人が背後と側面から角度を広げる。
陣形は完璧ではなかった。
だが悪くもなかった。
バクは周囲を見回した。
「ああ、見ろよ。四秒間だけ機能する家族だ。泣ける」
健太が低い炎を放ち、逃げ道を断とうとした。
一人の生徒が背後から入る。
海斗が正面から詰める。
バクは跳んだ。
高くはない。
十分な高さだけだった。
着地と同時にピックを地面に突き刺し、柄から魔力を流した。衝撃が短い埃の波を持ち上げる。派手ではなかった。名前のついた技にも見えなかった。
それでも全員が瞬きをした。
ほんの一瞬だけ。
バクはその一瞬を使った。
海斗の腕の下をくぐり、ある生徒の膝を踵で押し、別の生徒の手首を逸らし、健太の前に現れた。
「ぶー」
健太は避けるより先に一歩下がってしまった。
バクは彼の足元を指した。
「それは恐怖だ。問題ない。恐怖は役に立つ。あとで恥じるかどうかは任意だ」
健太は指先に火を灯した。
「恐怖じゃない」
「もちろん。精神的撤退だな」
健太は攻撃した。
速すぎた。
炎は歪んだ。
バクを狙っていなかった。
半秒前にバクがいた場所を狙っていた。
火は海斗と支援役の生徒の一人の間を横切った。触れはしなかった。だが二人を離れさせた。
バクは炎の線を見た。
そして健太を見た。
「このクソ馬鹿」
その言葉は怒っているようには聞こえなかった。
まだ。
むしろ楽しげだった。
探していたものを見つけたかのように。
健太は身を強張らせた。
「何て言ったんですか?」
「お前には、優位を目撃者つきの事故に変える才能があるって言ったんだ」
海斗が健太の方を向いた。
「角度を制御しろ」
「してた」
「してない」
「そんな言い方――」
バクが二人の間に現れた。
誰も彼が近づいたのを見ていなかった。
「出た出た」と彼は言った。「俺の大好きなところだ。チームが死のど真ん中で議論を始める瞬間」
海斗が彼を殴ろうとした。
バクはかがむ。
健太が炎を上げる。
バクは動かなかった。
ただ、健太の背後にいる生徒をピックで指した。
健太は迷った。
一秒。
バクの声が笑った。
「今、考えたな」
健太はわずかに手を下げた。
バクはピックの柄で彼の胸を軽く突いた。
「自分の決断に遅刻したので死亡」
健太は怒りを浮かべて後退した。
側面で、加藤が腕を組んだ。
「武器より口を使ってるな」
優奈は訓練場を見ていた。
「判断を分離している」
「ああ」
香奈は健太を観察していた。
「有本は怒るのが早い」
「それはもう知っていた」と加藤。
「知っていることと、圧力下で見ることは違う」と香奈は返した。
タツが低く言った。
「村は陣形を保とうとしていますが、有本のミスに反応しているだけで、予測できていません」
神崎がうなずいた。
「正面の力で場を整えられると思っている」
鏡は海斗を見た。
「指揮はできる。だがまだ、指揮することを前に立つことだと思っている」
香澄は腰に片手を当てた。
「みんな、前に立つということに随分ドラマチックな考えを持っているのね」
加藤は彼女を見た。
「それは俺に言ってるのか?」
「世界の全部があなたを中心に回ってるわけじゃないわ、銀次郎」
中央から、バクが仮面を彼らへ向けた。
「嘘だ! 時々は回ってるぞ。川の真ん中にある感情的な石みたいなもんだ」
加藤は目を閉じた。
「訓練を続けろ」
「戦術的比喩を使ってるんだ」
優奈が呟いた。
「違法にできたらいいのに」
香澄が彼女へ笑った。
「試してみてもいいんじゃない? あなた、禁止するのが似合うもの」
「あなたは無視するのが似合うわ」
「ほら。相性がいい」
優奈は答えなかった。
だが加藤は、彼女の視線が少し早すぎるほど訓練場へ戻ったのに気づいた。
バクもそれに気づいただろう。
健太の午後を台無しにするのに忙しくなければ。
炎が再び灯った。
今度は高い。
健太は荒く息をしていた。両手は開かれ、指は硬い。才能がある。それは明らかだった。魔力の反応は速く、炎はきれいに生まれる。
問題は頭だった。
炎は従う。
怒りは従わない。
海斗が手を伸ばした。
「健太、待て」
「わかってる」
「わかってない」
「わかってるって言っただろ!」
言葉が終わる前に、火が放たれた。
広い炎が訓練場を横切った。
仲間へ真っ直ぐ向かっていたわけではない。
だが支援役の生徒の一人のすぐそばを通り、その生徒は避けるために地面へ身を投げ出さなければならなかった。陣形が一気に崩れた。
訓練場全体が、その変化を感じた。
バクは一つも冗談を言わなかった。
それが、誰もが最初に気づいたことだった。
炎ではなく。
煙でもなく。
横へ倒れた生徒でもなく。
沈黙。
それまでほとんど馬鹿げて見えていた革の仮面が、冗談には見えなくなった。
バクはピックを下げた。
先端が地面をかすめた。
健太はまだ手を伸ばしたままだった。
指の間で火が消える。
バクは首を傾げた。
「このクソ野郎」
低い声だった。
喜びもなく。
芝居もなく。
騒音もなく。
その瞬間、訓練場は理解した。
バクが遊ぶのをやめたのだと。
健太は口を開いた。
何かを言う前に、バクが動いた。
さっきより速かったわけではない。
もっと悪かった。
もっと無駄がなかった。
ピックが海斗の前の地面に突き刺さった。
バクはフックを放し、武器と自分をつなぐ魔力の線を引いた。そして見えない角を切り落としたかのように方向を変えた。海斗と健太の間を、二人が防御を上げる前にすり抜ける。
ピックの柄で海斗の膝に触れた。
強くはない。
正確に。
海斗は片膝をついた。
その時、バクはもうそこにいなかった。
二人目の生徒が左を守ろうとした。
バクは肘を押し、身体を回転させ、違う方向を向かせた。
「死亡」と言った。
その言葉は乾いていた。
冗談はなかった。
三人目の生徒が後退する。
バクはその正面に現れた。
足音は聞こえなかった。
ただ、彼の足の横にピックが突き刺さる音だけがした。
「死亡」
その生徒は凍りついた。
健太がまた炎を灯した。
いや、灯そうとした。
その時には、バクはもう彼の前にいた。
ピックの先端が、健太の首から指一本分のところで止まった。
触れてはいない。
だが、先端の周りの魔力は触れた。
冷たい。
細い。
正確な。
二度は繰り返さない警告のように。
健太は息をしなかった。
バクはその姿勢を保った。
一秒。
二秒。
三秒。
それから武器を引いた。
「死亡」
健太は手を下ろした。
沈黙は続いた。
バクが離れたあとも。
海斗がゆっくり立ち上がったあとも。
炎を避けて倒れた生徒が立ち上がり、大丈夫だと言ったあとも。
誰も笑わなかった。
バクはピックを再びズボンに引っかけた。
金属が小さな音を立てた。
あまりにも普通の音だった。
側面で、加藤が低く言った。
「あれだ」
優奈が彼を見る。
「何が?」
加藤はバクから目を離さなかった。
「冗談を言わない部分だ」
香奈は両手で杖を握っていた。
「だから彼を呼んだ」
香澄は、もう面白そうではない笑みでバクを見た。
「そして、多くの人が彼を呼ばなくなった理由でもあるわ」
優奈が彼女を見た。
香澄は何も付け加えなかった。
鏡も何も言わなかった。
口を開いたのは神崎だけだった。
「有本は一分以内に感情の制御を失った」
バクが仮面を彼へ向けた。
「聞こえてるぞ、ミスター墓石」
神崎は表情を変えなかった。
「機密ではない」
この訓練が始まってから初めて、バクはすぐに返さなかった。
やがて鼻から息を吐いた。
「よし。診断だ」
健太はまだ地面を見ていた。
海斗は立っていた。バクに触れられた膝に片手を置いている。
他の生徒たちは硬直したままだった。
バクは彼らの前を歩いた。
動きはもう元に戻りつつあった。
少し歪で。
少し大げさで。
だが笑いは完全には戻っていなかった。
それが、さらに悪かった。
「村」と彼は言った。「お前は、敵に自分の正面を尊重する道徳的義務があると思って戦ってる」
海斗は眉をひそめた。
「正面?」
「お前の線。お前の身体。お前の『一人ずつ来い、俺が耐える』ってやつだ。とても高潔で、とてもきれいで、姿勢のいい墓石を飾るには実に便利だ」
海斗は顎を締めた。
反論はしなかった。
バクは訓練場の中央を指した。
「力はある。存在感もある。お前が前に立つと、他の奴らは前線がどこか理解する。それは役に立つ」
海斗はわずかに顔を上げた。
「だが敵が正面を望んでいなければ、戦闘にはならない。追いかけっこになる。そしてお前が後を追えば、班もお前の後を追う」
海斗は背後の生徒たちを見た。
一人はまだ、地面に身を投げたせいで制服に埃をつけていた。
「了解しました」と海斗は言った。
バクは首を傾げた。
「違う。今はただ気に食わなかっただけだ。理解はその後に来る」
そして健太を見た。
その動きだけで、訓練場が張り詰めたように感じられた。
健太は唾を飲み込んだ。
「それで、お前だ。火の少年」
健太は拳を握った。
バクは声を荒げなかった。
「怒りと火力を混同している」
健太は言い返そうとした。
できなかった。
「それは、誰かがお前の怒りを仲間の方へ向けるまでなら通用する」
その言葉が二人の間に残った。
健太は、さっき炎が届きかけた生徒を横目で見た。
その生徒は彼を責めていなかった。
それが余計に悪かった。
「当てるつもりはなかった」と健太は言った。
その声は普段より低かった。
バクは彼を見た。
「炎は、お前が誰に当てたかったかなんて聞かない」
健太は視線を下げた。
側面で、悠太は笑うのをやめた。
颯太は自分の手を見ていた。
香澄の班にいる陽菜は、唇を固く結んで健太を見ていた。芽衣は何も言わなかった。他の誰かが厳しい教訓を受けていることを楽しんでいるようにも見えなかった。
バクは続けた。
「出力はいい。魔力もいい。反応もいい。もう少し落ち着いていれば、本当に厄介だった」
健太はわずかに顔を上げた。
「じゃあ――」
「でも、お前は簡単に火がつく」
健太は口を閉じた。
「炎の話じゃないぞ」
バクは、炎が仲間のそばを通りすぎた場所へ歩いた。
しゃがむ。
焦げた地面に二本の指で触れた。
「俺は勝とうとしていたわけじゃない。そんなのは早くて、悲しくて、事務的につまらない」
側面でタツが呟いた。
「少なくとも事務的な部分は認識しているようですね」
香奈が短く彼を見た。
タツはまた動かなくなった。
バクは立ち上がった。
「俺は、お前たちがどれくらいで俺に戦いを決めさせるか見ていた」
海斗を見た。
「いつ動くか」
支援役の生徒たちを見た。
「どこを見るか」
最後に健太を見た。
「いつ怒るか」
風が、開いた上着の端をわずかに揺らした。
「早かった。いいデータだ。ひどい結果だ」
誰も答えなかった。
バクはピックをベルトにしっかり引っかけ、金属を二本の指で叩いた。
「もう一回」
健太が顔を上げた。
「何ですか?」
「もう一回」とバクは繰り返した。「今度は、仲間同士のバーベキュー未遂を減らしてな」
海斗が一歩出た。
「同じ目的ですか?」
「違う」
バクは、さっき地面に身を投げた生徒を指した。
「新しい目的。こいつをエリアの反対側まで到達させる。お前たちは到達させる。俺は阻止する」
その生徒は目を見開いた。
「僕ですか?」
「ああ。おめでとう。感情的荷物に昇格だ」
「それは良いことですか?」
「ほとんどの場合、違う」
海斗はエリアを見た。
健太も見た。
訓練が始まってから初めて、彼らはバクに触れることを考えていないように見えた。
誰か別の人間のことを考えているようだった。
側面で、神崎がわずかに顎を引いた。
「改善」
鏡が彼を見る。
「それは承認か?」
「少しだけ無駄が減った可能性だ」
「ほとんど人間だな」
「大げさだ」
バクは彼らの前に立った。
「いつでもどうぞ」
健太は小さな炎を灯した。
それを見た。
そして消した。
バクは何も言わなかった。
海斗はそれを見た。
「健太」
「わかってる」
「まだ何も言ってない」
「でも言おうとしてた」
海斗は深く息をした。
「今回は、あいつの方へ押し込むんじゃない。あいつから離す」
健太は指定された生徒を見た。
それから訓練場を見た。
「俺は右を守る」
バクは仮面を傾けた。
「見ろよ、この美しさ。炎が地理を覚えた」
健太は歯を食いしばった。
だが答えなかった。
それは新しかった。
香奈は気づいた。
加藤も。
優奈が低く言った。
「返さなかった」
加藤がうなずいた。
「きつかっただろうな」
「でも返さなかった」
香澄は注意深く健太を見た。
「小さな改善の方が、大きな改善より正直な時もあるわ」
バクがピックを投げた。
二回目が始まった。
今度、海斗はバクへ向かって走らなかった。
支援役の生徒の前に立った。だが近すぎない。動けるだけの空間を残した。他の二人が側面を守る。健太は炎を低く保ち、短い線にした。攻撃ではなく、警告として。
バクはフックで方向を変えた。
海斗は追わなかった。
「いい」とバクが言った。
その言葉は全員を驚かせた。
おそらく、彼自身さえも。
次に、左から攻めた。
健太が炎を上げる。
大きくはない。
衝動的でもない。
低く短い壁。バクに角度を開かせるためだけのもの。
バクは前腕に純粋な魔力をまとわせ、その端を突き抜けた。
炎が肌をかすめる。
彼は表情ひとつ変えなかった。
支援役の生徒が三歩進む。
海斗は彼と共に下がった。
前に立つのではなく。
共に。
バクが健太の横に現れた。
「今だ」
健太は炎を振り向きざまに放ちかけた。
指に出ていた。
呼吸に。
肩に。
だが、そうしなかった。
代わりに炎を地面へ落とし、バクと支援役の生徒の間に短い線を作った。
止めるには足りなかった。
だが知らせるには足りた。
海斗がその線を見て、支援役の生徒を反対側へ押した。
バクのピックは、彼らがいた場所を通り抜けた。
地面に突き刺さる。
バクは一秒、動きを止めた。
それから健太へ顔を上げた。
「このクソ馬鹿」
健太は緊張した。
だが今回は、バクの声が違っていた。
ほとんど満足しているようだった。
「燃やす前に、もう少しで考えたな。感動と失望が同時に来ている」
健太は息を吐いた。
「それは褒め言葉ですか?」
「調子に乗るな。靴を履いた警報だ」
支援役の生徒はエリアの端まで到達した。
完全には越えられなかった。
最後の一歩を踏み出す前に、バクが正面に現れた。
海斗が進む。
健太が炎を上げる。
残り二人のカバーは遅れた。
遅すぎた。
バクはピックの柄でその生徒の肩に触れた。
「死亡」
少年は視線を落とした。
海斗は歯を食いしばった。
「あと少しだった」
「ああ」とバクは言った。
健太が彼を見る。
バクはピックをまた引っかけた。
「そして『あと少し』は、『目撃者つきの集団火災』よりずっといい」
健太は笑わなかった。
だが、顔も下げなかった。
バクは全員を見た。
「さっきよりはひどくない」
海斗は荒く息をした。
「どれくらい、ひどくないんですか?」
「俺が予防用の墓穴を掘る許可を求めずに、明日も繰り返せるくらいだ」
生徒の一人が口を開いた。
バクは彼を指した。
「予防用の墓穴が何かは聞くな。よく眠れる」
香奈が杖で地面を叩いた。
「この班はここまで」
バクは両手を上げた。
「誰も死んでない。誰も四肢を失ってない。そして俺の若者への信頼が一部だけ破壊された。素晴らしい始まりだ」
今度は、誰もすぐには笑わなかった。
バクはわずかに首を傾げた。
まるで、それもデータであるかのように。
健太は自分の手を見た。
まだ炎を灯せる。
それは変わっていなかった。
変わったのは、もっと悪い何かだった。
久しぶりに、彼は理解した。
自分の炎が、敵が自分に使わせるのを待っている武器そのものになることがあるのだと。
海斗が近づいた。
「そこまで悪くはなかった」
健太は短く笑った。
乾いた笑いだった。
「それって、ひどかったって意味だろ」
「ああ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
バクは側面へ戻る途中、彼らの横を通った。
健太のそばで足を止める。
健太はすぐには顔を上げなかった。
バクは低く話した。
全員に聞こえるほどではない。
だが海斗には聞こえた。
「お前が怒っている時に使いたがることを、炎のせいにするな」
健太は指を握った。
「好きでやってるわけじゃない」
「嘘だ」
健太が顔を上げた。
仮面が彼を待っていた。
「好きなんだよ。すぐ反応するから。燃えた時、何かが自分に従った気がするから。それは危ない」
健太は何も言わなかった。
バクはピックのフックに触れた。
「明日は、何も燃やしたくない時にも、それを従わせる練習をする」
そして、健太が答える前に離れていった。
側面で、加藤は戻ってくる彼を見た。
「優しかったな」
バクは彼へ向いた。
「歳を取ったんだ」
「違う。気にしたことを隠してるだけだ」
バクの仮面が静止した。
ほんの一瞬だけ。
それから指を一本立てた。
「このクソ馬鹿」
加藤は笑わなかった。
だが視線も逸らさなかった。
「ああ」
優奈はそのやり取りを黙って見ていた。
香澄も。
香奈は何も言わなかった。
古い狩人たちの間には、たった一つの言葉の周りで成立する会話がある。
神崎が自分の班へ視線を向けた。
石田はもう待っていた。
静かに。
真剣に。
鎖はまだ現れていなかったが、その姿勢の中に、何らかの形で存在していた。
「次は俺たちだ」と神崎が言った。
石田はうなずいた。
「了解しました」
訓練場の端で、悠太はバクを見ていた。
前の訓練で、鏡は彼らに教えた。
近くで戦うだけでは足りないのだと。
バクは、別のことを教えた。
敵は、集団を壊すために必ずしも強くある必要はない。
時には、怒らせればいい。
走らせればいい。
間違った場所を見させればいい。
そして、そのあと黙ればいい。
バクは側面の影へ歩きながら、また冗談を言った。
十代と火と医療保険についての何かだった。
馬鹿げた言葉だった。
おそらく、ひどい言葉だった。
けれど訓練場が反応するまで、いつもより一秒だけ長くかかった。
なぜなら、もう全員が知っていたからだ。
獅子堂バクの騒音こそが、一番危険なものではない。
本当に危険なのは、その騒音が止んだあとに残るものだった。




