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永遠の残滓  作者: Mateo
58/59

第58章:増援

静岡の監視所が応答を絶ったのは、02時13分だった。

02時17分、二度目の通信にも返答はなかった。

02時22分、緊急封印が消えた。

そして02時30分には、助けを求められる者はもう誰も残っていなかった。

建物は大きくなかった。

地方支部ほどの規模も、東京本部ほどの防御もない。古い倉庫と裏道の間に隠された中継施設で、監視室が四つ、小さな資料室が一つ、そして封印で補強された入口が一つあるだけだった。

小規模な残滓の動きを監視するために造られた場所。

戦争に耐えるための場所ではなかった。

最初の狩人は、扉のそばで死んだ。

内部封鎖を起動しようとしていたが、その指が封印に触れることはなかった。動作を終える前に、何かが胸を貫いた。

二人目は武器を抜くことができた。

構えた。

天井を影が走るのを見た。

次の瞬間、天井が彼の上に落ちた。

物理的にではない。

完全には。

闇そのものが、重さを持つことに決めたかのようだった。

狩人は膝をつき、目を見開いたまま、口の中を血で満たした。

通信室では、一人の女性が緊急ボタンを押した。

一度。

二度。

三度。

赤い光が点滅した。

そして消えた。

「応答しない」

彼女は言った。

誰も答えなかった。

振り返った時、仲間たちは床に倒れていた。

その向こうに、顔の一部を仮面で覆い、両腕に鎖を巻きつけた影が立っていた。

斬傷はわずかに首を傾けた。

「狩人はいつも、もう負けていると理解するのが遅い」

女は歯を食いしばり、両手を上げた。

指先に魔力が灯る。

震えてはいなかった。

弱くもなかった。

訓練された魔力だった。

言葉を話す怪物を前にしても凍りつかないだけの任務を、生き延びてきた者の魔力だった。

斬傷が進んだ。

女は撃った。

三本の魔力の杭が部屋を走った。

一本目は斬傷の肩を打った。

二本目は仮面をかすめた。

三本目は鎖に捕まった。

斬傷が腕を引いた。

鎖は意志を持つもののように動いた。

魔力の杭が砕けた。

女は後ろへ下がろうとした。

間に合わなかった。

床から黒い糸が生えた。

骸の緑の糸ではなかった。

鎖でもなかった。

細く、湿った黒い魔力の線が、斬傷に必要な一秒だけ、彼女の足首を絡め取った。

一撃が彼女を壁へ叩きつけた。

緊急ボタンは、彼女の手から一メートルも離れていなかった。

だが腕はもう言うことを聞かなかった。

廊下から、雫がその光景を静かに見ていた。

笑ってはいなかった。

楽しんでいるようにも見えなかった。

それが、なおさら悪かった。

「全員を殺す必要はなかったわ」

斬傷は彼女へ振り返った。

「狩人だ」

「ええ。だからよ」

雫は死体の間を歩いた。

足音はしなかった。

倒れた女のそばで足を止め、好奇心に似たものを込めて見下ろした。

「彼らも、自分たちが正しいことをしていると思っている」

女は目を開いた。

呼吸は乱れていた。

だが、まだ生きていた。

「なら……どうして……」

雫は彼女の前にしゃがみ込んだ。

「あなたたちの正しさは、いつも私たちが消えることで終わるから」

女は何かを返そうとした。

できなかった。

廊下の奥で、空中に黒い裂け目が開いた。

悪霊がそこから現れた。外套は、風のない場所から来たはずなのに、まるで何かがそこでも呼吸していたかのように揺れていた。

「資料室は空だった」と悪霊は言った。「有用な情報はない」

斬傷は荒い音を漏らした。

「なら時間の無駄だったな」

「いいえ」と雫は立ち上がらずに答えた。「何かを探すためだけに攻撃するとは限らない」

悪霊は破壊された入口へ視線を向けた。

「すぐに増援が来る」

「来ればいい」と斬傷は言った。

「いや」

闇の中から声がした。

全員が黙った。

傷ついた女でさえ、今話したのが誰なのか知らないまま、何かが変わったことだけは理解した。

黒淵が、急ぐことなく監視所へ入ってきた。

その仮面はきれいだった。

血もない。

埃もない。

戦闘の跡もない。

彼は空の部屋を横切るように、死体の間を歩いた。

雫が立ち上がる。

斬傷が鎖をわずかに下げる。

悪霊がほんの少し頭を垂れた。

黒淵は部屋を見渡した。

それから、まだ生きている女を見た。

彼女は動こうとした。

できなかった。

「どうして……こんなことを……」

黒淵は彼女の前で足を止めた。

しばらく答えなかった。

それから、その場に似つかわしくないほど穏やかに言った。

「お前たちは扉を造り、それを檻と呼んだ」

女は咳き込んだ。

「全員が……そうじゃ……」

「そうだな」と黒淵は認めた。「全員ではない」

彼はしゃがみ込んだ。

仮面が彼女の顔に近づく。

「戦争の厄介なところは、最初の一撃を選ばなかっただけで、自分は参加していないと思う者が必ずいることだ」

女は彼を睨んだ。

憎しみを込めて。

恐怖を込めて。

そして、それ以上に耐えがたい何かを込めて。

「必ず……来る……お前たちを……」

黒淵は立ち上がった。

「それを望んでいる」

悪霊が再び空中に黒い裂け目を開いた。

雫は女から離れた。

斬傷が黒淵の横を通り過ぎる。

「監視所はすぐに落ちた」

「小さな駒だ」と黒淵は言った。

「なら、なぜやった」

黒淵は破壊された建物を見た。

壊れた封印。

引き剥がされた扉。

死んだ狩人たち。

「小さな駒でも、盤面を測る役には立つ」

雫が彼を見た。

「何を測ったの?」

黒淵はすぐには答えなかった。

折れた天井を見上げる。まるで、その場所の遥か先まで見えているかのように。

「彼らが恐怖を覚えるまでの時間だ」

黒い裂け目が広がった。

その中へ入る前に、黒淵は最後に一度だけ監視所を見た。

「もうすぐだ」

そして消えた。

建物に沈黙が戻った。

今度は、それを聞く者も残っていなかった。

知らせは夜明け前に東京へ届いた。

香奈は叫ばなかった。

机を叩かなかった。

悪態もつかなかった。

だからこそ、織部タツはいつもより静かに立っていた。

香奈の執務室は、低いランプの明かりと、窓から差し込み始めた灰色の光だけに照らされていた。外では本部がゆっくり目を覚ましている。廊下、扉、今日もいつも通り始まると思っている生徒たちの、抑えられた物音。

この部屋の中に、その錯覚を持つ者はいなかった。

加藤は窓のそばに立っていた。

優奈は腕を組み、背筋を伸ばし、香奈が机に置いたファイルをじっと見ていた。

タツは香奈の背後にいた。

いつものように。

だが今朝の彼は、助手には見えなかった。

閉じた扉に見えた。

香奈は両手を杖に置いていた。

「狩人が六人、死亡した」

優奈は自分の腕を掴む指に力を込めた。

「生存者は?」

「一人です」とタツが答えた。「増援が到着した時、意識不明で発見されました。まだ証言は取れていません」

加藤は動かなかった。

「普通の残滓か」

香奈は彼を見た。

「違う」

短い返答だった。

十分だった。

優奈はファイルへ視線を落とした。

「組織?」

「その可能性が高い」

加藤は目を閉じた。

驚いているようには見えなかった。

それが最悪だった。

優奈は怒っているように見えた。

騒がしい怒りではない。何かを殴りたい人間の怒りでもない。完璧な姿勢の奥にしまわれた、もっと澄んで、もっと危険な怒りだった。

「狙ったのは小規模な監視所」と彼女は言った。「支部ではない」

「今はね」と香奈は答えた。

その一言で、部屋はさらに冷たくなった。

タツは別の報告書を机に置いた。

「封印は内側から無効化されたか、明確な残留痕跡を残さない術式によって突破されています。外部通信は、完全なプロトコルを起動する前に切断されていました」

加藤は目を開けた。

「測っていたんだな」

香奈はうなずいた。

「ええ」

優奈が視線を上げる。

「監視所を? それとも私たちを?」

香奈はすぐに答えなかった。

それが答えだった。

加藤は鼻から息を吐いた。

「俺たちが動くまでの時間を見たいんだ」

「そして、どこまで守ろうとするかもです」とタツが言った。

香奈はファイルを取り、閉じた。

「なら、次の場所を選ばれる前に動く」

優奈は香奈を見た。

「何を命じたんですか」

「小規模監視所の全点検。地方支部の二重通信。巡回の再編。新しい指示が出るまで、単独任務は禁止」

「それでは監視範囲が減る」と加藤。

「わかっている」

「空白地帯が出る」

「それもわかっている」

加藤は彼女を見た。

香奈はその視線を受け止めた。

「穴をすべて埋めるために狩人を一人ずつ送り続ければ、組織は誰を殺すか選び続ける。見えない場所を受け入れてでも、名前を差し出す方は選ばない」

加藤は反論しなかった。

すべてに賛成したからではない。

彼女が下している決断の種類を理解していたからだ。

優奈は深く息を吸った。

「生徒たちは?」

香奈は自分の手元へ視線を落とした。

一瞬だけ、とても年老いて見えた。

弱くではない。

老いていた。

誰も良いと呼ぶべきではない選択肢の間で、選び続けなければならない者の疲れだった。

「嫌よ」と香奈は言った。「まだ避けようとしている戦争のために、十代の子どもたちを準備させるなんて」

加藤は視線を逸らした。

優奈は何も言わなかった。

タツも動かなかった。

香奈は続けた。

「でも、危険から遠ざけられるふりをする方が、現実的というより楽なの。私はもう、楽な判断を選べる年ではない」

杖が彼女の指の下で、わずかに軋んだ。

「訓練を増やす」

優奈が顔を上げた。

「すでに毎日訓練しています」

「今の形では足りない」

加藤は窓の方を見た。

下の中庭では、何人かの生徒が訓練着で歩いていた。一人が何かに文句を言っている。別の一人が笑っていた。

加藤には何を言っているのか聞こえなかった。

聞きたいとも思わなかった。

「兵士じゃない」と彼は言った。

「ええ」と香奈は答えた。「生徒よ」

加藤は彼女を見る。

「なら、別のものに変えるな」

香奈は瞬きもせず、その視線を受け止めた。

「それを避けようとしているの」

その言葉は厳しくなかった。

もっと悪かった。

正直だった。

優奈は腕を解いた。

「何をするつもりですか」

香奈はタツを見た。

彼は何も言われなくても理解し、別の書類を渡した。

「初期の攻撃で負傷し、休職していた狩人たちに一部復帰の許可が出た」と香奈は言った。「四人が今週、任務に戻る」

加藤は眉を寄せた。

「動けるのか」

「万全ではない」

「なら動けない」

「万全な者などいない」と香奈は言った。

加藤は黙った。

優奈は短く息を吐いた。

「穴を埋めるためですね」

「組織化された残滓の攻撃を生き延びた者たちだから呼ぶの」と香奈は答えた。「そして、また起きるのなら、何も知らない生徒だけより、経験のある負傷者の方がいい」

タツがいつもの低い声で続けた。

「ただちに第一線へ配置する予定はありません。支援、内部警備、避難経路、警備強化が中心になります」

加藤はタツを見た。

「それは、本部から避難する事態を想定しているように聞こえる」

タツは目を逸らさなかった。

「そうならないことを望んでいます」

「俺はそう言ったんじゃない」

「承知しています」

優奈は短く息をついた。

「他にもありますね」

香奈はうなずいた。

「ええ」

加藤が再び彼女を見る。

「その言い方の『ええ』は嫌いだ」

「外部の支援を要請した」

加藤は動きを止めた。

優奈もだった。

続く沈黙は別のものだった。

もっと個人的なもの。

香奈は二人を見た。

「文句は聞かないわ」

加藤が片眉を上げた。

「俺がそんなことをするはずがない」

優奈も同時に言った。

「私もしません」

香奈は二人を一秒見た。

「明らかに加藤に言ったのよ」

優奈の肩がほんの少し緩んだ。

加藤は口を開いた。

香奈は見もせずに杖で彼を指した。

「一言も」

加藤は口を閉じた。

タツが扉へ向かった。

「通しますか」

香奈はうなずいた。

「通して」

タツは入口まで歩き、扉を開けた。

「お入りください」

最初に入ってきたのは、白銀香澄だった。

名乗る必要はなかった。

彼女の名前が告げられるより先に、部屋の方が誰なのか理解したようだった。

明るい髪を、雑なのに上品にまとめていた。まるで急ぎでさえ、彼女に触れる前に許可を求めなければならなかったかのように。狩人の制服は派手ではない。それなのに彼女が着ると、美的な選択に見えた。自分が部屋の中でどれだけの場所を占めるか正確に知っている者だけが持つ、危険な穏やかさで笑っていた。

優奈はわずかに目を閉じた。

「白銀」

香澄は笑った。

「霧野」

「相変わらず、建物が自分のものみたいに入ってくるのね」

「全部じゃないわ。面白い場所だけ」

「なら帰っていいわ。ここは仕事の会議よ」

「あなたが冷たさを職業意識と勘違いしているのを見られて嬉しいわ」

優奈は目を開けた。

「あなたも挑発を個性と勘違いしたままね」

香澄は胸に手を当てた。

「寂しかったのね」

「言ってない」

「その緊張が言っているわ」

加藤は眉間を揉んだ。

「もう始まったのか」

香澄は彼へ向き直った。

その笑みが変わった。

大きくなったわけではない。

ただ、より正確になった。

「銀次郎」

加藤は手を下ろした。

「香澄」

「なんて温かい挨拶。感動しそう」

「頭痛を抑えている」

「それも感情よ」

優奈は加藤を見た。

「ずいぶん親しいんですね」

加藤は咳払いをした。

「そんなに親しくない」

香澄は首を傾げた。

「その定義について話し合う時間は、何年もあったわね」

「手助けするな」

「約束した覚えはないわ」

香奈が杖で床を軽く叩いた。

香澄は彼女へ視線を戻した。

その時、笑みから遊びが少し消えた。

完全には消えなかった。

だが、敬意が増した。

「香奈」

「香澄」

「静岡の件、残念だったわ」

「わかっている」

香澄はそれ以上何も言わなかった。

彼女にとっては、それが長い言葉よりも多くを語っていた。

その後ろから、鏡亮が入ってきた。

優雅にではない。

劇的にでもない。

居心地の悪さを取り繕う時間を無駄にしたくない者のように入ってきた。

いつもの暗い外套を着て、肩に鞄をかけ、恒久的なものに見える疲労を顔に浮かべていた。目は部屋を一度だけなぞり、加藤で止まった。

「銀次郎」

「鏡」

「まだその顔か」

「お前もな」

「俺のは理由がある」

「醜い顔はみんなそう言う」

鏡は乾いた笑いを漏らした。

喜びではなかった。

認識だった。

優奈は短く頭を下げた。

「亮」

「霧野」

「来てくれて助かるわ」

「お前のためじゃない」

「知っているわ」

鏡は香奈を見た。

「この人が呼んだから来た」

香奈は答えなかった。

答える必要がなかった。

鏡は鞄を床に置いた。

「それに、俺たちみたいなのまで呼ぶなら、相当まずいことになってるってことだ」

「なりつつある」と香奈。

「もっと悪く、だろ」

「ええ」

鏡は一度だけうなずいた。

そして加藤を見る。

「三郷の少年は生きてるか」

加藤は答えるまで一秒かかった。

「ああ」

「まだ余計な場所に首を突っ込んでいるか」

「だいたいな」

「なら、奇跡で生きてるな」

「かなりな」

鏡は窓の方を見た。そこから中庭が見えるかのように。

「あとで会わせろ」

加藤は彼を見た。

「怖がらせるなよ」

「不可能な約束はしない」

「鏡」

「どれくらい変わったか見たいだけだ」

加藤はすぐには返さなかった。

それからうなずいた。

「それならいい」

三人目は、許可を取らずに入ってきた。

扉という社会的概念の存在に、そもそも気づいていないようだった。

開いた上着の下は裸の上半身で、気温や常識や基本的な服装規範は自分と無関係な問題だと言わんばかりだった。胸には古い傷跡が走っていた。真っ直ぐなもの、歪んだもの、一度の戦いでできたとは思えないほど醜いもの。顔は使い古された革の仮面で覆われていた。数か所が縫われ、目の穴は不規則で、模様なのか打撃の痕なのかわからない傷が残っている。

ズボンには短いピックが下がっていた。小さな戦闘用の鍬にも似た武器で、金属のフックでベルトに固定されていた。

男は部屋を見渡した。

深く息を吸い込んだ。

「ああ。組織的トラウマ、古いコーヒー、誰も署名したくない決定の匂いがする。東京が恋しかった」

加藤は目を閉じた。

「バク」

仮面の男は両腕を広げた。

「銀次郎! まだ生きてるのか。配慮がないなあ」

「お前もな」

「うん。でも俺の場合はその方が面白い」

優奈は彼を上から下まで見た。

「シシドウ」

バクは彼女へ向いた。

「霧野。相変わらず、葬式にも進行表がないと却下しそうな顔してるな」

「あなたも、チェーンソーとの賭けに負けたみたいな格好をしているわね」

バクは裸の胸に手を当てた。

「これは戦術的自由だ」

「感染症の順番待ちよ」

香澄が笑った。

「私は懐かしいわ」

優奈は彼女を見た。

「色々納得したわ」

バクは両手の指で香澄を指した。

「ありがとう! 趣味がよくて情緒が悪い人がいた!」

香澄は首を傾げた。

「褒め言葉の半分だけ受け取るわ」

加藤は目を開けた。

「始めるな」

「銀次郎、入ってまだ一分も経ってない。技術的には準備運動中だ」

鏡が彼を見た。

「相変わらず喋りすぎだ」

バクは彼へ向いた。

「鏡。相変わらず、誰も笑い方を学ばなかった物語の主人公みたいな顔だな」

「お前は、早すぎる冗談で死ぬ脇役の悪役みたいだ」

バクは静止した。

それから胸に手を当てた。

「美しい。ほとんど感情のかめはめ波だ。光はないけど、父親問題は多め」

優奈は目を閉じた。

「耐えがたいわ」

「みんなそう言う。俺のおかげで生き残るまではな」とバク。

香奈は彼を見た。

「シシドウ」

バクはほんの少し背筋を伸ばした。

ほんの少しだけ。

「ボス」

「生徒に対して、やりすぎは禁止」

「やりすぎの定義は?」

「誰もあなたみたいにしないこと」

部屋が黙った。

バクの仮面は変わらない。

変われるはずもない。

だが、彼が話すより先に、声の中の何かが消えた。

一秒間、冗談はなかった。

ピックを揺らす動きもなかった。

芝居がかった呼吸もなかった。

ただ沈黙があった。

加藤は香奈を見た。

香澄は笑みを消した。

鏡は目を逸らした。

優奈はより真剣な表情でバクを見た。

バクは手をズボンのフックへ下ろし、短いピックに二本の指で触れた。

「それは難しいな」と彼はようやく言った。「かなり運が悪くないと」

軽く聞こえようとした言葉だった。

完全には成功しなかった。

香奈は彼の視線を受け止めた。

「だから呼んだのよ」

バクはわずかに頭を傾けた。

「じゃあ、昼飯前に子どもたちを壊さないよう努力する」

「昼飯後もよ」

「要求が多い」

四人目は最後に入ってきた。

音を立てなかった。

笑わなかった。

すぐには挨拶もしなかった。

ただ敷居を越え、部屋を一度だけ見た。

一度だけ。

好奇心の視線ではない。

評価だった。

三秒にも満たない間に、彼の目は窓、扉、机、香奈の位置、タツの角度、加藤と優奈の間隔、バクのピック、鏡の鞄、香澄の手、そして一番近い壁までの正確な距離を確認した。

背の高い男だった。短く切った黒髪に、うっすらとした無精髭。目立つ存在感はなかった。本人も求めていないようだった。制服は首元まできっちり閉じられ、飾りも余計な装備もない。黒い手袋をして、腰には小さな封印札の袋を下げていた。

香奈は両手を杖に置いた。

「神崎正人」

男は頭を下げた。

「水島」

声は乾いていた。

冷たいのではない。

乾いていた。

よく閉まる扉のように。

「防衛、救助、封じ込めの専門家よ」と香奈は続けた。

バクが手を上げた。

「責任ある計画で部屋を台無しにする専門家でもある」

神崎は彼を見もしなかった。

「お前はまだ、騒音を個性と勘違いしている」

バクは胸に手を当てた。

「痛い。正確だったから痛い」

鏡は神崎を見た。

「来るとは思わなかった」

「呼ばれた」

「多くの者は呼ばれる」

神崎は彼を見た。

「俺は応じる」

鏡は小さくうなずき、それを受け入れた。

香澄は穏やかな笑みで挨拶した。

「正人」

「香澄」

「相変わらず、人より出口を先に見るのね」

「出口は人を救う」

「それは否定できないわね」

「するべきではない」

優奈は他の者よりも注意深く神崎を見ていた。

「第三級事案における避難報告書を読みました」

「読みすぎだ」

「良い報告書でした」

「なら必要なだけ読んだんだろう」

優奈はその返答を、腹を立てることなく受け入れた。

それだけですでに何かを語っていた。

加藤は香奈を見た。

「サーカスと嵐と歩く葬式と避難図面を連れてきたのか」

バクが指を上げた。

「サーカスは俺がいい」

香澄が笑う。

「嵐は私でもいいわ」

鏡は加藤を見る。

「歩く葬式?」

「そこまで考えてない」

神崎が表情を変えずに言った。

「避難図面は正しい」

加藤はため息をついた。

「当然そこだけ受け入れるんだな」

香奈は面白がっているようには見えなかった。

だが、後悔しているようにも見えなかった。

「居心地のいい人間を選んでいる時間はないから呼んだの」

鏡は腕を組んだ。

「俺たちは昔から居心地はよくない」

「だからここにいる」

香澄は腰に手を当てた。

「生徒たちは知っているの?」

「まだよ」と優奈が言った。

バクは首を傾けた。

「全員でいっぺんに登場するのか? もしそうなら入場演出がいるな。煙とか。悲鳴とか。『まさか、奴は死んだはず』って誰かが言うとか」

加藤は彼を見た。

「誰も言わない」

「お前が言ってくれてもいい」

「言わない」

「感情を込めて」

「なおさら言わない」

神崎が香奈を見た。

「優先事項は?」

その問いが部屋を切った。

大声ではなかった。

劇的でもなかった。

だが、騒音を整えた。

香奈は短い視線でそれに応じた。

「生存」

バクが少し頭を下げた。

香澄は笑みで遊ぶのをやめた。

鏡は机へ視線を落とした。

加藤はひどく静かになった。

優奈は香奈から目を逸らさなかった。

「すべての戦いに勝つために訓練していると思う生徒は要らない」と香奈は言った。「守る時、退く時、耐える時、助けを求める時を知る生徒が要る。生き残ることは失敗ではないと、理解させたい」

神崎はうなずいた。

「それは教えられる」

「全部は無理だ」と鏡。

神崎は彼を見た。

「何人かが生き残るには十分だ」

鏡は反論しなかった。

バクはフックから外さないまま、短いピックを一度回した。

金属が低く鳴った。

「俺は恥ずかしい死に方をしない方法を教えられる」

優奈が彼を見る。

「なんて安心感」

「見かけより役に立つ。避けられる死の半分は、誰かが英雄的で馬鹿なことを始めた時に起こる」

加藤が呟いた。

「残念ながら、それは本当だ」

バクは彼を指差した。

「ありがとう! 学術的裏付け!」

「そう呼ぶな」

香澄は机に近づいた。

「私は精度、戦闘の読み、制御を見られるわ。一年生たちは才能がある。でも考えるのが遅すぎる時、それが顔に出る」

優奈が彼女を見る。

「芽衣も含めて?」

香澄は笑った。

「特に芽衣」

「家族の問題を解決するために使わないで」

香澄の笑みは変わらなかった。

だが、目が変わった。

「使う必要はないわ。あの子は、受け継いだものをどう扱うか知る前に、もう戦うと決めている」

優奈は彼女の視線を受け止めた。

「なら、壊さずに教えて」

「壊しに来たんじゃない」

「ならいい」

「でも、いくつかの場所で自分から壊れかけているふりを、もうやめさせに来たの」

優奈は答えなかった。

加藤はより真剣な顔で香澄を見た。

「気をつけろ」

香澄は彼を見る。

「いつも」

「それは嘘だ」

「だから慎重に、とは言っていないでしょう。気をつける、よ」

加藤が答える前に、鏡が口を開いた。

「俺は天音を見たい」

加藤は彼へ向いた。

「駄目だ」

鏡は片眉を上げた。

「駄目?」

「彼だけを見るな」

「彼だけとは言っていない」

「思っただろ」

「それは反論にならない」

「お前相手ならなる」

鏡は香奈を見た。

「三郷で会った。すべてが完全に降りかかる前の彼を見ている。コピーする術式を持っているなら、繰り返す前に何をしているのか理解させる相手が必要だ」

優奈は加藤を見た。

「悪くないわ」

加藤も優奈を見る。

「悪いとは言ってない」

「駄目って言ったわ」

「鏡が言ったからだ」

鏡は短く笑った。

「相変わらず理性的で安心した」

香奈が割って入った。

「鏡には現場評価、判断力、圧力下での対応を見てもらう。天音だけではなく、他の生徒にも」

鏡はうなずいた。

「わかった」

「過度に傷を残さないように」と香奈が付け加える。

鏡はバクを見た。

「なぜそういう時、みんな俺を見る?」

「壊れた道徳の鏡だからだ」とバク。

「お前に言われると、ほぼ褒め言葉だな」

「調子に乗るな」

神崎が手袋を外した。

全員が彼を見た。

その動作が派手だったからではない。

彼が無駄な動作をしない人間だったからだ。

神崎はしゃがみ、床に二本の指を置いた。

指先の下に円形の印が現れた。

小さく。

正確で。

ほとんど幾何学的な線だった。

魔力が秩序ある根のように床を這い、机の脚に触れ、木目を少しだけ上り、消えた。

「この本部の内部経路は、怯えた生徒のためには設計されていない」と彼は言った。

タツが彼を見た。

「避難プロトコルはあります」

「地図はある」

タツは気を悪くしなかった。

それもまた、何かを示していた。

神崎は立ち上がった。

「地図は、呼吸を乱さずに読める者には役に立つ。襲撃時、生徒は描かれた矢印ではなく、知っている声の方へ走る。その声が戦っていれば、彼らは動けなくなる。動けなくなれば、死ぬ」

部屋は静まり返った。

神崎は手袋をはめ直した。

「身体がその場に縫いつけられようとする時に、動く方法を教える」

香奈はゆっくりとうなずいた。

「だからあなたを呼んだの」

バクが手を上げた。

「俺もそれ、教えられるぞ。俺の方法には叫び、個別の悪口、そして誰かが泣く中程度の確率が含まれる」

神崎は彼を見る。

「俺の方法は感情崩壊の前に機能する」

「俺のは最中に機能する」

「お前の方法は崩壊の一部を引き起こす」

「相乗効果だ」

優奈は目を閉じた。

「誰かを訓練する前に、あなたたちが喧嘩するわね」

香澄は笑った。

「たぶんね」

加藤は香奈を見た。

「全員を同じ本部に入れて本当にいいのか」

香奈は彼を見返した。

「わからない」

バクが加藤を指差した。

「健全な返答だ。俺なら嘘をついた」

加藤は相手にしなかった。

「香奈」

「私たちだけでは足りないことは確かよ」と彼女は言った。

それだけで、加藤は黙った。

彼女はそれを、上司として言ったのではない。

あまりにも多くの損失を数え、次の名簿に生徒の名前が載るかもしれないと知っている人間として言った。

香奈は立ち上がった。

動作はゆっくりだった。

だが、彼女と共に部屋も姿勢を正した。

「今日から、あなたたち四人には本部の生徒たちを訓練してもらう」

香澄はわずかに頭を下げた。

鏡は腕を組んだ。

バクは二本指で小さく敬礼した。

神崎は動かなかった。

加藤は香奈を見る。

「全生徒か」

「全員よ」

「宮崎も含めて?」

「特に宮崎」

優奈は眉を寄せた。

「怖がらせます」

香奈は両手を杖に置いた。

「なら、ここで怖がらせればいい。まだその恐怖の扱い方を教えられる場所で」

誰も答えなかった。

外では、本部が目を覚まし続けていた。

生徒が廊下を行き交う。

教師が訓練室を開ける。

世界はまだ、それが普通の朝であるふりをしていた。

執務室の中では、誰もそれを信じようとしなかった。

最初に沈黙を破ったのはバクだった。

「さて」と彼は言った。「制服を着た未来のトラウマたちには、いつ会える?」

優奈は即座に疲れた目で彼を見た。

鏡が乾いた笑いを漏らした。

香澄が笑った。

神崎の表情は変わらなかった。

加藤は片手で目元を覆った。

香奈は再び腰を下ろした。

「昼食後よ」

バクは大げさに厳粛な様子でうなずいた。

「完璧だ。最後の幸せな食事になるわけだな」

「シシドウ」と香奈。

「やりすぎない。わかってる」

神崎は窓へ歩き、中庭を見た。

「本部の最新図面、内部経路、学年ごとの人数、既知の能力、直近の負傷者リストが必要だ」

タツはすでにファイルを取り出していた。

「十分で用意します」

神崎は彼を見た。

「五分」

タツはその視線を受け止めた。

「七分」

神崎は一秒考えた。

「許容範囲だ」

バクは鏡の方へ身を傾けた。

「今の、行政言語で口説いてなかったか?」

鏡は彼を見なかった。

「黙れ」

香澄は優奈に近づいた。

「芽衣は大丈夫?」

その問いは低かった。

からかいはなかった。

優奈は答えるまで少し時間を置いた。

「生きているわ」

香澄はその答えを受け取った。

だが、それだけでは足りなかった。

「それを聞いたんじゃない」

優奈は彼女を見た。

今度、その目に刺はなかった。

ただ疲れがあった。

「なら、いいえ。完全には」

香澄は少し視線を落とした。

部屋に入ってきて初めて、彼女は狩人よりも叔母に見えた。

「よかった」と彼女は言った。

優奈はわずかに眉を寄せた。

「よかった?」

香澄は再び彼女を見る。

「あなたが大丈夫だと言っていたら、その方が心配だったわ」

優奈は笑わなかった。

だが、鋭く返すこともしなかった。

加藤はそのやり取りを黙って見ていた。

意外なことに、バクもそうだった。

鏡は窓辺の神崎に近づいた。

「何が見える」

「弱点」と神崎は答えた。

「俺には、自分たちに何が来るか知らない未成年に見える」

「それが弱点だ」

鏡は息を吐いた。

「そうだな」

神崎は中庭を見た。

「同時に、ここに残る理由でもある」

鏡は横目で彼を見る。

「見た目ほど退屈じゃないな」

「見た目通り退屈だ」

「それは最悪だな」

執務室の反対側で、バクはズボンから短いピックを少しだけ外し、金属のフックを確認していた。武器は数センチ落ち、ぶら下がった。

加藤はそれを見た。

「しまえ」

「安全確認だ」

「家具を怯えさせている」

バクは机を見た。

「こいつ、いろいろ見てきた顔をしてる」

「机だ」

「この本部では、それがトラウマを持っていない理由にはならない」

香奈はため息をついた。

「後悔しそうね」

バクは指を上げた。

「それこそ良い決断の基本だ」

「違う」

「多くの決断では」

「それも違う」

加藤は、他の者たちが低い声で話している間に、香奈へ近づいた。

「子どもたちは準備できていない」

香奈は彼を見なかった。

「知っている」

「颯太は特にだ」

「知っている」

「天音はあいつを背負おうとする」

「それも知っている」

加藤は奥歯を噛んだ。

「二人とも壊れるかもしれない」

香奈は一秒、目を閉じた。

「あるいは、支え合うことを覚えるかもしれない」

加藤は答えなかった。

納得したからではない。

またしても、正しい答えは部屋の中になかったからだ。

香奈は目を開けた。

「銀次郎」

「何だ」

「私は、あの子たちを死にに行かせろと言っているんじゃない」

加藤は彼女を見下ろした。

香奈は杖を強く握った。

「もう戦争がいつ始まるかを選べるような訓練を、続けないでほしいと言っているの」

加藤は窓の方を見た。

中庭で、生徒たちが笑っていた。

一人がつまずく。

別の一人が押す。

遠くで誰かが何かを叫ぶ。

本部は生きているように見えた。

近づいているものに対して、あまりにも生きていた。

「お前が正しいのが嫌になる」と加藤は言った。

香奈はうなずいた。

「私もよ」

朝は進んだ。

報告書が配られた。

生徒たちの名前が机の上に並んだ。

天音悠太。

石田太郎。

月野陽菜。

白銀芽衣。

宮崎颯太。

村海斗。

原田迅。

有本健太。

高島結衣。

仙台花。

和田千穂。

そして他にも。

名前のままでいるには、多すぎる名前だった。

神崎正人は、それらを避難経路を記憶するように読んだ。

香澄は芽衣の名前のところで、少し長く止まった。

鏡は悠太の名前を見つめていた。

バクは指を、紙に触れないぎりぎりのところでリストの上に滑らせた。

珍しく、何の冗談も言わなかった。

加藤はそれに気づいた。

だが何も言わなかった。

香奈はファイルを閉じた。

「昼食後に会わせる」

バクは顔を上げた。

その声は、まるで一度も消えていなかったかのように戻っていた。

「素晴らしい。未成年、差し迫る危険、強制訓練。学園トーナメントみたいだな。切断の可能性が少し高いだけで」

優奈はゆっくり目を開けた。

「あなたが彼らと話すのを禁止したい」

「それは俺の教育的価値を上げるだけだ」

神崎は図面を脇に抱えた。

「禁止に賛成する」

「裏切りだ」とバク。

「予防だ」

鏡は扉へ向かった。

「中庭を見てくる」

加藤は彼を目で追った。

「俺抜きで始めるな」

鏡は扉を開けた。

「なら早く歩け」

香澄は加藤の横を通り過ぎる時、肩を軽く叩いた。

「行きましょう、銀次郎。怖がらせる生徒たちがいるわ」

加藤は彼女を見る。

「怖がらせに来たわけじゃない」

香澄は笑った。

「それが悲しいところね。自然にできてしまうのだから」

バクが大笑いした。

神崎は扉を大きく開け、横へ避けた。

タツは香奈のそばに残った。

優奈が最後に動いた。

出る前に、彼女は香奈を見た。

「それでも足りなかったら?」

香奈は机の上のファイルを見た。

死亡報告。

生徒の名前。

地図。

経路。

世界が壊れ始めている場所。

「足りるようにする」と彼女は言った。

優奈は満足したようには見えなかった。

だが、その答えを受け入れた。

時には、それしか持てないこともある。

扉が閉まると、香奈はタツと二人きりになった。

数秒、どちらも話さなかった。

やがてタツが尋ねた。

「中央資料庫周辺の警備を増やしますか」

香奈は窓の方を見た。

「ええ」

「箱の周辺もですか」

香奈はもう少しだけ時間を置いた。

「そちらも」

タツは頭を下げた。

「承知しました」

香奈は杖を机に立てかけた。

木が乾いた音を立てた。

「タツ」

彼は足を止めた。

「はい」

「今後数日、生徒たちには許可のない者を近づけないで」

「一般命令ですか」

香奈は静岡の報告書を見た。

そこにいなかったはずなのに、応答を絶った監視所の沈黙が聞こえる気がした。

「絶対命令よ」

タツは頭を下げた。

「承知しました」

外では、増援たちが中庭へ向かって歩いていた。

それぞれが違う物語を背負っていた。

違う戦い方を持っていた。

違う壊れ方をしていた。

それでも、長い時間の中で初めて、香奈は東京本部がただ次の一撃を待っているだけではないと感じた。

受け止める準備を始めている。

どこか遠くで、黒淵は「もうすぐだ」と言った。

香奈はそれを聞いてはいなかった。

だが、知っていた。

だから、再び杖を手にした時、その指は震えなかった。

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