第5章:知らなかったことを知らなかったこと
福岡から一日が経っていた。
東京の拠点にはいつも動いているが止まるべき時を知っている場所特有の静けさがあった。内部の通路、低い建物、朝の光が窓から差し込む様子——すべてに普通さがあり、悠太の直近四日間とのその対比はまだ完全には処理しきれていなかった。
天音、城根、月野が本棟の廊下の一つで福岡のことを話していた——融合のこと、青い静脈を持つ白い残滓のこと、どう終わったか——そこへ加藤銀二郎がポケットに手を入れ、やることがあってその順番も決まっている人間の表情で現れた。
「よし」
と言った。
「城根と月野に部屋を案内する」
その言葉を言い終える前に、微笑んだ。
スーパーの袋のときでも病院の廊下のときでもない笑顔。何かが起きることを待っていた人間が、それが起きた瞬間の満足感に近い何かだった。
奥の廊下から人影が現れた。
「ちょうど来た」
加藤は言った。
「紹介する。石田太郎。札幌出身。ハンターの家系だ」
石田太郎は四人のところまで歩いてきて、必要なだけの時間をかけて評価する目を向けた。黒髪、真っ直ぐな姿勢、値しないものにエネルギーを使わない人間の表情。
「石田」
と言った。
他の全員が自己紹介した。天音はいつもの笑顔で、城根はいつもの落ち着きで、月野は石田と同じ言葉の少なさで。
石田は加藤を見た。
「頼まれたこと、終わりました」
「よし」
加藤銀二郎は頷いた。
それからグループを見た。
「天音。石田。部屋に戻って準備しろ。明日は重要だ」
女三人を示した。
「俺が部屋に案内する」
グループが分かれた。加藤は城根と月野と左の廊下へ。石田は右の廊下へ。
悠太は微笑んで石田の肩に手を置いた。
「これからよろしく」
石田は手を下ろした。荒々しくなく。こういうことに対する立場を持っていてそれをドラマなしに適用する人間の落ち着きで。
「足を引っ張らないことを祈ってる」
正面から見て言った。
「他の三人はハンターの家系か、物心ついた頃からこれをやってきた。お前は何も知らずに来た」
悠太は視線を受け止めた。
「心配しないでいい」
真剣に言った。
「全力でやる」
石田はもう一秒見た。それから何も足さずに自分の部屋へ向かって歩いていった。
悠太は廊下にひとりになった。
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部屋は小さいが整っていた。ベッド、デスク、拠点の内庭が見える窓。悠太はリュックを床に置いてベッドの端に座った。
父のことを考えた。もう座ることのない304号室の青いプラスチックの椅子のことを。実際には寂しくなるということを伝えるための実際的な質問をしていた関春人のことを。力いっぱい抱きしめてきた森大輝のことを。何かを話す必要が出たときにどこにいるかわかってると言った藤原奈央のことを。
ここにいるために置いてきたものを。
でも昨日のことの後——福岡の家と融合した残滓と、離されたくないものを離さないために使った腕がまだかすかに抗議していること——以前より明確にわかることがあった。
休む番だ。
靴も脱がずに横になり、頭が枕に落ち着く前に眠っていた。
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冷たい水は予告なく来た。
悠太は濡れた髪のまま跳び起きた。目がまだ何が起きたか処理しきれない中で、加藤銀二郎が空のコップといつもの笑顔でベッドの横に立っているのを見た。
「何——」
「おはよう」
加藤は言った。
「今日は練習がある」
悠太はコップを見た。加藤を見た。ドアのところに他の三人が廊下で待っているのを見た。
「着替えて来い」
加藤銀二郎は満面の笑みで言った。
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連れて行かれた部屋には木の椅子が黒板に向かって並んでいた。朝の光が高い窓から入っていた。他の文脈なら完全に普通の教室だ。
四人は座った。
加藤銀二郎は前に立ち、状況が求める以上にその瞬間を楽しんでいる人間特有の厳かさで咳払いをした。
「加藤銀二郎」
と言った。
「四十八歳。一流ハンター。今日から諸君の正式な師匠。知っていることすべてを教える担当」
舞台に登場した人間が拍手を待つときのように、腕を広げ笑顔で待った。
部屋の沈黙は完全だった。
悠太は拍手した。
ひとりだけだった。手を叩く音が部屋の沈黙の中で三秒続いてから、他の三人が見ていることに気づいて止めた。
「ありがとう、ありがとう」
加藤銀二郎は大きな笑顔でお辞儀をした。
「少なくとも一人はわかってる」
石田は正面を見ていた。月野は天井を見ていた。城根は完全に中立とは言えない表情で手元を見ていた。
「今日から」
加藤は続けた。
「私のことは加藤師匠と呼ぶこと」
一拍置いた。
「今日の午後は庭で武器の訓練がある。奥の机に一人ひとり分の訓練着を置いておいた。二年生の生徒が武器を用意して待っている」
四人を見た。
「三人は準備しに行っていい」
三人。
悠太はその数字を、加藤が言い終える前に気づいた。
月野、城根、石田が立ち上がり、奥の机から訓練着を取って出て行き始めた。悠太も立ち上がってドアへ向かった。
加藤銀二郎の手が肩に降りた。
悠太は振り返った。
加藤はスーパーの笑顔でも廊下の笑顔でもない目で見ていた。より静かで、より個人的な何かだった。大事なことを言う方法を正確に知っている人間が、それを言おうとしているときの表情だった。
「お前は残れ」
悠太は閉じたドアを見た。加藤を見た。
「なぜですか」
「お前は他の三人と違うから」
加藤は否定的なトーンではなく、ただ事実として言った。
「あの三人はこの世界で育った。お前は別の道から来た。訓練を始める前に、この世界がどう動いているか教える必要がある。ハンターのこと。残滓のこと。全部」
悠太の目が光った。
悲しみではなかった。安堵だった。何日も自分でわかろうとしてきたことをやっと誰かが説明してくれるという、あの特有の安堵感だった。
椅子に戻って座った。
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「ハンターというのは」
加藤銀二郎は始めた。
「普通の人間より優れた能力を持つ者たちだ。魔力がある。魔法と呼んでもわかりやすければそれでいい、同じことだ」
いつもの気軽さでテーブルの端に腰かけた。
「すべてのハンターが共通して持つ基本的な力がある——その魔力を体に、拳に、蹴りに、腹に、全身の耐久力に乗せて、打撃も耐久も普通の人間をはるかに超えるものにする力だ。それと残滓が見える力。他の人間には見えない」
一拍置いた。
「だがそれに加えて、それぞれのハンターは他の者と異なる独自の能力を持っている。ほぼ必ず違う。例えば月野陽奈は斧のサイズを変えられる力を持ち、城根芽依は風の刃を飛ばせる二本の扇子を持っている」
悠太は加藤の言葉一つひとつを取りこぼさないように目を向けながら頷いた。だがそのとき口を開いた。
「師匠の力は何ですか」
加藤は何かを隠したい人間がするときの笑みを浮かべた。
「そのうちわかる」
悠太は少し困惑した顔をした。加藤は続けた。
「他に質問はあるか」
悠太は手を上げた。
加藤は見た。
「はい、天音」
「ハンターにその魔力があるなら」
悠太は言った。
「なぜ俺はまだ使えないんですか。病院では特別なことは何もしていない。何も乗せていない。棒で殴っただけです」
「ハンターになって三日だからだ」
加藤は言った。
「他の三人は子供の頃から、体がまだ形成されている時期に、少しずつ学んできた。お前は今から、意識的に学ばなければならない」
一拍置いた。
「だから全員の師匠であることに加えて、お前に対しては特別にそのための師匠も務める。一人で二役だな」
悠太は頷いた。それからまた手を上げた。
「天音」
「他の三人はハンターの家系だからその力を持っているのに、俺はどの家系でもないのにハンターなのはなぜですか」
加藤銀二郎はテーブルから立って窓へ歩いた。
「ハンターの家系から生まれる必要は必ずしもない」
庭を見ながら言った。
「目が開くには、死に近い経験があれば足りることもある。あるいは何かが特定の形でバランスを崩すことでも」
悠太に向き直った。
「お前の場合、数週間前に名古屋の近くで俺たちのハンターの一人が残滓と戦っていた。終わってからお前を見かけた。そして気づいた——お前が自分でも知らずに少し魔力を体に持っていることに。だから監視に置いた。お前の父親が亡くなったとき、その魔力が完全に目覚めた。目が開いた」
悠太は動かずに聞いていた。
それを処理した。
それから、これまでの質問より少し緊迫した何かが声にある状態で、抑えきれずに手を上げた。
「加藤師匠」
「天音」
「残滓はどうやって生まれるんですか」
少し緊張した様子で言った。
「それと……全部が悪いんですか」
加藤銀二郎はテーブルの端に戻って座った。
「残滓はかつて人間だった」
と言った。
「何か未解決のものを抱えたまま死んだ人間だ。後悔、借り、やり残したこと——魂が手放せないもの。そうなると魂は彼岸に渡れない。留まる。そしてその重さが時間とともに、病院で見たものに、福岡で見たものに、変えていく」
一拍置いた。
「亡くなった人間すべてが残滓になるわけではない。ごく少数だ。でも存在する。だから俺たちハンターが存在する——彼らに必要な後押しをして、誰も傷つけることなく先へ進めるようにするために」
悠太は頷いた。
「全部が悪いんですか」
加藤銀二郎は指を一本立てた。
間を置いた。
「わからない」
と言った。
悠太は見た。
「わからない、というのは」
「わからない」
加藤は同じ落ち着きで言った。
「確信を持ってそうだと言う人間は、この問いを十分に考えていないか、嘘をついているかのどちらかだ」
続く沈黙は埋める必要を求めないものだった。
加藤銀二郎は立ち上がった。
「話したかったことは話した」
と言った。
「残りは時間とともにわかる。他の三人のところへ行っていい」
悠太は立った。ドアへ歩いた。枠に手をかけたところで止まり、振り返って短くお辞儀をした。
「ありがとうございます、加藤師匠」
加藤銀二郎はしばらく何も言わずに見ていた。
悠太は速い足で廊下に出た。ほとんど走るように。
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東京の朝の光の中、拠点の庭で三人が待っていた。二十歳前後の背の高い黒髪の筋肉質な青年の前に。足元には布の袋があり、そこから様々な形とサイズの武器の柄がのぞいていた。




