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永遠の残滓  作者: Mateo
48/57

第48章:月野家

久山は、誰かが消えるような場所には見えなかった。

それが悠太の最初の感想だった。

町が明るいからではない。特別に安全そうだったからでもない。もっと単純な理由だった。道は狭すぎて、家々は互いに近すぎて、沈黙には独特の質があった。時間外の足音なら、たとえ窓から誰も見ていなくても、どこかの誰かに記録されてしまいそうな場所の静けさ。

それでも、彼らはそこにいた。

月野の家がどこにあるのかもわからず。

何が起きたのかもわからず。

間に合ったのかどうかもわからず。

悠太は左を見た。

それから右を見た。

そして芽衣と石田を振り返った。

「まあ」

悠太は言った。

「小さい町だ。月野の家だ。そんなに難しいわけないだろ」

石田は彼を見た。

「福岡が目的地じゃないと知る前にも、似たようなことを言っていたな」

「今回はもっと近い」

「近いからといって、迷っていないことにはならない」

悠太はすぐには答えなかった。

技術的には正しいことに反論するのは難しかったからだ。

芽衣は手紙を持っていた。

読んではいない。もう暗記していた。それでも手にしていた。まるでその紙が、月野が確かにそこにいた証拠で、自分の心配が旅の途中で勝手に膨らんだものではなく、ちゃんと形のあるものだと示しているかのように。

「聞きましょう」

芽衣が言った。

その声は苛立ってはいなかった。

抑えられていた。

そのほうが悪かった。

悠太はうなずいた。

「ああ。聞こう」

三人は通りを歩いた。そこを大通りと呼べるなら、の話だが。角には小さな店があり、半分ほど上がった布の暖簾と、入口の横に置かれた野菜の箱が見えた。年配の女性が外の棚に瓶を並べていた。

近づいてくる三人に気づくと、彼女は好奇心を含んだ目を向けた。

怖がってはいない。

警戒しているわけでもない。

見知らぬ三人の少年少女がリュックを背負って歩いているなら、まだ何かはわからなくても、必ず何かを意味する。そういう町の人間の目だった。

「すみません」

悠太が言った。

女性は顔を上げた。

「はい?」

「月野家を探してるんです」

女性の手が、瓶の上で止まった。

長くはなかった。

けれど、十分だった。

芽衣は気づいた。

石田も気づいた。

悠太は、二人が気づいたから気づいた。

「月野さんのところ?」

女性が繰り返した。

「はい」

芽衣が言った。

「月野陽菜です」

女性は芽衣を見た。

それから悠太を見た。

石田を見た。

「友達かい?」

悠太が口を開いた。

芽衣が先に答えた。

「はい」

女性はその答えを一秒ほど受け止めた。どう扱うべきか考えているようだった。

それから、上へ続く道を指さした。

「上の道を行きなさい。小さな神社を過ぎて、入口に枯れた木がある家まで。その家だよ」

「ありがとうございます」

芽衣が言った。

女性はうなずいた。

悠太が振り返ろうとした時、女性が付け加えた。

「広場で一人でしゃべっている男を見ても、相手にしないことだね」

三人は足を止めた。

最初に反応したのは石田だった。

「男?」

女性はまた瓶を並べ始めた。

「たまに現れるんだよ。変なことを言う。誰も聞かなきゃ、誰にも迷惑はかけない」

「変なことって、どんなことですか?」

悠太が聞いた。

女性は彼を見た。

「頭のおかしい人が言うようなことだよ」

それで終わりだった。

彼女は、会話は自分が終わらせたのだから終わりだと言わんばかりに、また棚を整え続けた。

悠太は石田を見た。

石田はすでに道を見ていた。

芽衣は手紙を握りしめた。

「行くわよ」

三人は坂を上った。

久山は、通りから離れるほど静かになっていった。家と家の距離が少しずつ広がる。いくつかの柵は石垣に変わる。最初は家の奥にあった木々が、いつのまにか家々のあいだに入り込み始めていた。

小さな神社の横を通った。

悠太が思っていたより古かった。

大きくはない。

威圧的でもない。

ただ暗い木でできた社があり、擦り切れた注連縄と、長い間鳴っていないような鈴があるだけだった。

そして神社の前に、一人の男がいた。

立っていた。服はしわだらけで、髪は乱れていた。老人には見えない。だが若くもない。年齢のわかりにくい男だった。寝不足の夜と、誰にも返事をされないものに話しかける時間を、あまりにも長く過ごしてきた人間のように。

地面を見ていた。

そう見えた。

「閉じた目は、誰も救わない」

男が呟いていた。

悠太は足を止めた。

芽衣も。

石田は何も言わなかったが、その手はわずかに下がっていた。必要になれば普段鎖を形成する、その位置の近くへ。

男は話し続けた。

「あいつらは見る。お前たちが見なくても。そこにいる。ずっといた。なのにお前たちは歩き、食べ、眠り、祈る……目を閉じたまま」

一人の女性が通りの反対側を歩いていったが、彼を見なかった。

若い少年が足を速めた。

男が顔を上げた。

その目が悠太を捉えた。

違う。

悠太だけではない。

三人を。

そして笑った。

大きな笑みではなかった。

そのほうが悪かった。

小さく。

確信に満ちた笑み。

「お前たち、目覚めた者の匂いがするな」

芽衣が眉を寄せた。

「何て言ったの?」

男は首を傾げた。

「見える者が、みな理解するわけじゃない。理解する者が、みな目覚めるわけじゃない。目覚めた者が、みな戻れるわけじゃない」

悠太は一歩近づいた。

「月野家を知ってるんですか?」

男は、まるでその質問がひどく遠くから届いたかのように悠太を見た。

それからまた笑った。

「家はものを隠す。家族もな」

石田が半歩進んだ。

「何を知っている?」

男は答えなかった。

背を向け、脇道へ歩き始めた。

悠太は追いかけようとした。

だが芽衣が袖をつかんだ。

「だめ」

「でも――」

「月野が先」

悠太は、男が消えていく道を見た。

それから上へ続く道を見た。

彼女は正しかった。

それが一番嫌だった。

三人は進んだ。

枯れ木は、女性が言った場所にあった。

古い家の横に立っていた。暗い木造の低い屋根の家で、小さな庭は、かつてはもっと丁寧に手入れされていたのだろうと思わせた。木には葉がない。枝は空へ向かって不自然な硬さで伸びていた。まるで時間が、その入口を示すためだけにそこへ残していったように。

芽衣は玄関の前で足を止めた。

この町に着いてから初めて、迷った。

悠太はそれを見た。

何も言わなかった。

石田は家を見た。

「はっきりしたものは感じない」

「それって、良いこと? 悪いこと?」

悠太が聞いた。

「何を探しているかによる」

芽衣は手を上げた。

叩いた。

一度。

二度。

三度目は来なかった。

扉が開いた。

月野陽菜が向こう側にいた。

一秒のあいだ、何も言わなかった。

悠太は、隠す気もないほどわかりやすく安堵して笑った。

「月野」

芽衣は笑わなかった。

ただ彼女を見た。

手紙はまだ手の中にあった。

その後ろで、石田は廊下、窓、玄関を観察していた。彼女を見て驚いているようには見えなかった。問題がまだ家の中に残っているかどうかを確認しているようだった。

月野は三人を見た。

驚きはすぐに消えた。

そして眉をひそめた。

「何しに来たの?」

「迎えに来た」

悠太が言った。

「来るなって書いた」

「うん」

悠太が言った。

「読んだ」

「じゃあ、なんでここにいるの?」

悠太は、それが当然の答えだと言わんばかりに彼女を見た。

「俺たちは四人だから」

月野は答えなかった。

芽衣はわずかに視線を落とした。

石田は一瞬目を閉じた。今の一言が問題を呼ぶことを、すでに感じ取っているようだった。

「それ、何の答えにもなってない」

月野が言った。

「なってる」

悠太が言った。

「一人が勝手に行って、探すなって手紙を残したら、残りの三人は行く」

「そんな決まりはない」

「今できた」

月野は奥歯を噛んだ。

「これは家族の問題よ」

「なら説明してくれ」

悠太が言った。

「でも、自分だけで背負いたいからって、俺たちに月野がこのグループの一人じゃないふりをさせるな」

その言葉はそこに残った。

強くはなかった。

怒って言ったわけでもなかった。

だからこそ重かった。

芽衣が顔を上げた。

「あなたの部屋に行った」

月野は彼女を見た。

「手紙を見つけた」

「そのために置いたの」

「違う」

芽衣が言った。

「一人で行くために置いたのよ」

月野のほうが先に目をそらした。

彼女が何かを返す前に、家の奥から声が聞こえた。

「陽菜」

年配の女性の声だった。

疲れている。

けれど、しっかりしている。

きつくはない。

ただ、どんな議論が無意味かを長い年月でよく知っている人間の声だった。

月野の後ろから女性が現れた。白髪をまとめ、年齢のわりに姿勢はまっすぐで、知らない子どもたちが玄関にいることに驚いているような目はしていなかった。ただ、すでに抱えている心配に、さらに一つ増えることに疲れている目だった。

「陽菜のためにここまで来たのなら」

女性は言った。

「せめて上がりなさい」

「おばあちゃん」

月野が言った。

女性は彼女を見なかった。

「三人も玄関先に立たせておく気はないよ。半分日本を渡ってきたんだから」

「半分日本は渡ってないです」

悠太が言った。

石田が彼を見た。

「助けるな」

祖母は扉をさらに開けた。

「入りなさい」

月野は納得していないようだった。

だが、反論もしなかった。

家族の家では、それは負けを意味していた。

三人は中に入った。

家には古い木とお茶と、作られたばかりの食事の匂いがした。不快な匂いではない。むしろ逆だった。空気の中にある緊張に対して、あまりにも普通すぎる匂いだった。

だからこそ悪かった。

「月野幸子です」

祖母が言った。

「陽菜の祖母です」

「天音悠太です」

悠太が言った。

「白銀芽衣です」

芽衣はいつもより丁寧に名乗った。

「石田太郎です」

石田が言った。

幸子はそれだけで十分だと言わんばかりにうなずいた。

「来てくれてありがとう」

月野が彼女を見た。

「礼を言う必要はないよ」

「それでも来てくれた」

「そこが問題なの」

「違う」

幸子が言った。

「問題は台所にいる」

その一言で、家の温度が変わったような気がした。

悠太は笑うのをやめた。

芽衣は手紙を握った。

石田は廊下の奥を見た。

月野は一瞬目を閉じた。

それから歩き出した。

彼女に案内され、三人は台所へ向かった。

そこには、一人の少女が食卓についていた。

十五歳くらい。もしかすると、もう少し下かもしれない。黒い髪が顔の横に落ち、箸をあまりにも機械的な正確さで持っていた。目の前には皿がある。食べるべきだと思い出した時だけ、食べているようだった。

葵のように青白くはなかった。

目に見える痕もない。

病気にも見えない。

それが問題だった。

注意せずに見れば、普通に見えた。

けれど、目に何かがあった。

完全な不在ではない。

眠気でもない。

もっと奇妙なもの。

まるで彼女は台所に座っているのに、世界を見るはずの部分だけが、何歩も後ろに残されているようだった。

「澪」

月野が言った。

少女は目を上げた。

姉を見た。

それから、三人の来客を見た。

好奇心ではない。

恐怖でもない。

悠太を、動くものとして認識するように見た。

そして視線を落とし、また食べ始めた。

悠太はそれをどう扱えばいいのかわからなかった。

それでも言った。

「こんにちは。俺、悠太」

澪は答えなかった。

「こっちは石田」

悠太は彼を指さした。

「で、こっちは芽衣。まあ、芽衣には先に挨拶したほうがいい。じゃないと拗ねるから」

芽衣が彼を見た。

「そういう場合じゃない」

「空気を軽くしようと――」

「だめ」

悠太は口を閉じた。

澪は食べ続けた。

米粒が器の外に落ちた。

澪はそれを見た。

何もしなかった。

幸子が近づき、布巾で机を拭いた。ここ数日で、その動作を何度も繰り返したことがわかる手つきだった。

「戻ってきてから、ずっとこうなの」

石田は月野を見た。

「どこから戻ってきた?」

月野はすぐには答えなかった。

妹を見た。

その顔にはいつもの硬さがあった。

だがそれはもう、強さには見えなかった。

何か別のものを隠すために使われているものに見えた。

「それが、よくわからない」

幸子は布巾を流しのそばに置いた。

「三日前、友達の家に泊まると言ったの。変なことではなかった。澪には近くに友達もいる。次の日は早く帰るようにと言ったわ」

悠太は澪を見た。

少女は箸を上げた。

食べた。

噛んだ。

飲み込んだ。

すべて正しい。

すべて空っぽだった。

「朝になって戻ってきた」

幸子は続けた。

「歩いて。怪我もない。熱もない。何かあったとも言わない」

「でも、何かあった」

芽衣が言った。

幸子はうなずいた。

「最初は、怒っているのかと思った。でも、怒っている人間だって、人間の目をしているものよ」

台所が静まり返った。

月野は腕を組んだ。

「昨日、おばあちゃんから連絡が来たの。澪の様子がおかしいって。できるだけ早く来た」

「来てからは?」

石田が聞いた。

「食事を出せば食べる。言えば風呂に入る。トイレにも行く。寝る。起きる」

月野は唾を飲み込んだ。

大きくではない。

ほんの少し。

だが悠太は見た。

「でも、いない」

澪は箸を机に置いた。

小さな音だった。

全員が彼女を見た。

澪は誰も見なかった。

「眠い」

彼女が言った。

低い声だった。

完全に無表情ではない。

けれど、彼女自身のものでもなかった。

幸子が近づいた。

「まだ食べ終わっていないでしょう」

「眠い」

月野が一歩近づいた。

「澪」

少女は答えなかった。

幸子がそっと肩に触れた。

「いいわ。あとで少し食べなさい」

澪は立ち上がった。

誰にも目を向けず、彼らの横を通り過ぎた。

悠太は彼女を通すために身を引いた。

澪が近くを通った瞬間、彼は何かを感じた。

強い気配ではない。

攻撃でもない。

残滓の魔力のようなものでもない。

むしろ、不快感に近かった。

自分が入ってくる前に、誰かがその部屋で重要な言葉を口にした後のような感覚。

澪は廊下へ消えていった。

足音は柔らかかった。

あまりにも規則的だった。

彼女の姿が見えなくなると、月野は机に手を置いた。

「それだけ」

石田は彼女を見た。

「それだけ?」

「それしかない」

「残滓のはっきりした気配はない」

石田が言った。

悠太はすぐに彼を見た。

「それってどういう意味だ?」

「今のところ、これは家族の問題に見えるという意味だ」

「それで?」

石田は彼を見た。

「ただの家族の問題なら戻る、というのが俺の条件だった」

悠太は目を見開いた。

「今帰るなんて無理だろ」

「できる」

「いや、できない」

「今説明した」

「数週間ぶりに、訓練じゃないことで四人がそろってるんだぞ」

「これは任務じゃない」

「月野だ。それで十分だろ」

月野が顔を上げた。

「大げさな話にしないで」

「俺が大げさにしてるんじゃない。探さないでなんて手紙を残した時点で、もう十分大げさだった」

「実用的な手紙だった」

芽衣が乾いた笑いを漏らした。

明るい笑いではなかった。

「最悪の手紙だったわ」

月野は彼女を見た。

芽衣はその視線を受け止めた。

「今すぐ謝れって言ってるわけじゃない。でも、あれが実用的だったなんてふりはしないで」

石田は深く息を吐いた。

「今すぐ帰るとは言っていない。介入が必要な証拠がないなら――」

「澪は普通じゃない」

悠太が言った。

「わかってる」

「なら残れ」

「天音――」

「頼む」

石田は動きを止めた。

それは予想していなかった。

悠太自身も、その言い方に完全に慣れているようではなかった。だが撤回はしなかった。

月野は目をそらした。

「どうでもいい。帰りたいなら帰ればいい」

芽衣が彼女を見た。

「どうでもよくないでしょ」

「私の代わりに言わないで」

「じゃあ、必死じゃないみたいな顔をしないで」

台所はまた静まり返った。

幸子は四人を見ていた。若い者たちがまだ名付けられない何かのために喧嘩していると、大人だけがわかるような目で。

石田は目を閉じた。

「確認する」

そう言った。

わずかに手を上げた。

鎖は作らなかった。

幸子に見えるようなことは何もしなかった。

ただ、ごく少量の魔力を外へ流した。悠太が空気の変化としてかろうじて感じるほどの量だった。

「それ、しないで」

廊下から声がした。

全員が振り向いた。

澪が途中に立っていた。

いつからそこにいたのか、誰にもわからなかった。

目は開いていた。

だが石田を見てはいなかった。

彼の背後を見ていた。

台所の、何もない一点を。

「澪」

月野が言った。

澪は答えなかった。

石田はゆっくりと手を下ろした。

「何をしてはいけない?」

澪は彼の背後の空間を見つめ続けた。

「その言葉を言わないで」

悠太は腕の皮膚が粟立つのを感じた。

「どの言葉?」

澪はわずかに唇を動かした。

「名前を呼ぶと、あいつらが見る」

誰も動かなかった。

悠太でさえ。

最初に口を開いたのは石田だった。

「残滓のはっきりした気配はない」

「それはもう聞いた」

芽衣が澪から目を離さずに言った。

「俺は“はっきりした”とも言った」

石田は澪を見た。

それから月野を見た。

「何をされたのか理解するまでは残る」

月野は奥歯を噛んだ。

「誰も頼んで――」

「頼まれたから残るんじゃない」

石田が言った。

「これはもう、普通には見えなくなったから残る」

澪は瞬きをした。

一度。

二度。

それから幸子を見た。

「眠い」

幸子はすぐには動かなかった。

「ええ」

ようやく言った。

「行きましょう」

彼女は澪を連れて廊下へ向かった。

月野は台所に残り、動かなかった。

悠太は彼女を見た。

「月野」

「何も言わないで」

「何も言うつもりなかった」

「言うつもりだった」

悠太は口を閉じた。

それもまた正しかったからだ。

芽衣は廊下のほうを見た。

「彼女の部屋に何かある?」

月野は迷った。

短い迷いだった。

だが、存在した。

石田はそれに気づいた。

「何を見つけた?」

月野は髪をかき上げた。

「本」

悠太は瞬きをした。

「本?」

「澪の部屋に」

「どんな本?」

月野は廊下を見た。

「わからない」

彼女は三人を澪の部屋へ連れていった。

小さな部屋だった。整っている部分と、そうではない部分が混ざっていた。普通のものもあった。畳まれた服。学生鞄。鉛筆の入ったカップ。棚の上には、もっと幼い頃の澪と月野の写真が飾られていた。写真の中で澪は顔いっぱいに笑っていて、月野は笑わないふりをしながら結局笑っていた。

そして、本があった。

その部屋にあるべきものには見えなかった。

古い本だった。

すべて同じ時代のものではない。表紙が擦り切れたものもあれば、糸で綴じられたものもある。ばらばらの紙、折りたたまれた紙、余白に澪の字で書き込まれたメモ。

芽衣がゆっくり近づいた。

「どこから出てきたの?」

「知らない」

月野が言った。

「おばあちゃんは見たことがないって」

石田は一冊を慎重に手に取った。

開く。

悠太はその肩越しにのぞき込んだ。

全部はわからなかった。

だが、いくつかの言葉はわかった。

残滓。

狩人。

目。

覚醒。

感受性を持つ家系。

悠太は背筋に何かが落ちてくるような感覚を覚えた。

「これ、俺たちのことが書いてある」

「俺たちじゃない」

石田が訂正した。

「俺たちが何者か、だ」

芽衣が一枚の紙を持ち上げた。

一文が下線で引かれていた。

「“閉じた目は、向こう側から見つめるものの存在を否定しない”」

彼女は読んだ。

悠太は動きを止めた。

芽衣が彼を見た。

「何?」

「神社の男だ」

月野が眉をひそめた。

「何の男?」

「一人でしゃべってる男がいた」

悠太が言った。

「似たようなことを言ってた。閉じた目は誰も救わないって」

石田は本を見た。

「一人で話していたわけじゃないのかもしれない」

月野は紙を一枚取った。

素早く読んだ。

すべて理解するには速すぎたが、表情が変わるには十分だった。

「澪はこれを読んでいた」

「そう見える」

石田が言った。

「どうして?」

誰も答えなかった。

良い答えなど、誰も持っていなかったからだ。

悠太は部屋を見た。

本を見た。

姉妹の写真を見た。

「何かを知りたかったのかもしれない」

月野は彼を見た。

「澪は何も知らない」

「それが問題だったのかもしれない」

その言葉はきつくはなかった。

それでも届いた。

月野は本に目を落とした。

その一瞬、彼女は狩人には見えなかった。

真面目にも見えなかった。

距離を置いているようにも見えなかった。

ただ、自分の理解できなくなった部屋に立つ姉のように見えた。

「見つけるべきじゃなかった」

石田は本を閉じた。

「でも見つけた」

芽衣は月野を見た。

「そして、そのあと誰かが彼女を見つけた」

部屋が狭くなったように感じた。

廊下から幸子の声がした。

「陽菜」

月野は一瞬目を閉じた。

それから部屋を出た。

台所へ戻ると、幸子がお茶を淹れていた。

澪の姿はなかった。彼女の部屋の扉は閉じている。

「眠ったわ」

幸子が言った。

月野は納得していないようだった。

誰も納得していなかった。

だが、まだ他にできることがなかった。

一日は、居心地の悪い遅さで家の上に降りていった。

本からは、それ以上の答えは見つからなかった。出てきたのは、古い言葉で書かれたさらなる疑問と、不完全な警告と、読む者によって儀式にも迷信にも見える文章だけだった。

幸子は食事を作った。

悠太は、状況に対して明らかに熱量の高すぎる感謝で皿を受け取った。

「ありがとうございます」

彼は言った。

「本当に。すごくありがとうございます」

月野が彼を見た。

「米でそんなに感動する必要ないでしょ」

「電車とタクシーと駅の食べ物でお金を払ったあとなら、ある」

石田が箸を取った。

「食べる前から口に物を入れて話すな」

「まだ食べ始めてない」

「予防だ」

月野の隣に座った芽衣は、来た時より少しだけ落ち着いて見えた。平気ではない。ただ、何かを壊す寸前ではなくなっていた。

幸子は黙って彼らを見ていた。

おそらく、数日ぶりにその家には普通の音に近いものが戻っていた。

喜びではない。

安心でもない。

だが、声があった。

それだけでも違っていた。

食事が終わると、月野は立ち上がった。

「芽衣は泊まっていい」

悠太が顔を上げた。

「え?」

月野は彼を見た。

「あなたと石田はホテルに行って」

悠太は窓のほうを見た。

外の久山は、すでに暗かった。

「来る途中にホテル見た?」

石田は顔を上げなかった。

「見ていない」

「俺も見てない」

悠太が言った。

「家と山と、たぶん心配したほうがいいおじさんしか見てない」

「福岡に戻ればいい」

月野が言った。

悠太は目を見開いた。

「今から?」

「タクシーはあるでしょ」

「俺のお金は今日一回死んだんだ。二回も埋葬する気はない」

石田は箸を置いた。

「技術的には、福岡へ戻るのが最も整った判断だ」

悠太は彼を見た。

「助けるな」

芽衣は腕を組んだ。

「私も、この二人が帰ったら安心して眠れない」

月野は彼女を見た。

「あなたには帰れなんて言ってない」

「わかってる。だから言ったの」

月野は反論しようとしているようだった。

幸子が机に湯呑みを置いた。

音は小さかった。

十分だった。

「泊まっていきなさい」

「おばあちゃん」

「東京からあなたのために来たんだよ」

幸子が言った。

「せめて床で寝るくらいはさせてあげなさい」

悠太が手を上げた。

「その最低条件、ありがたく受け入れます」

石田は彼を見た。

「俺は受け入れていない」

「顔が受け入れてた」

「俺の顔は悪い判断を評価しているだけだ」

幸子は、それで話が終わったかのようにうなずいた。

「客間の押し入れに布団があるわ」

月野はため息をついた。

勝てなかった。

また。

しばらくして、家は眠る準備を始めた。

芽衣は月野の部屋に泊まることになった。

月野がそう頼んだからではない。

幸子がそう決め、芽衣が反論しなかったからだ。

悠太と石田には客間が与えられた。

小さな部屋だった。床には布団が二組敷かれ、窓からは庭が見えた。夜になると、枯れ木は影のようにしか見えなかった。

悠太は布団に倒れ込んだ。

「これは任務に入る」

石田はもう一つの布団に座った。

「入らない」

「変な本と、トランス状態の女の子と、目について語る男を調べてる。入るだろ」

「まだだ」

「厳しすぎる」

「正確なだけだ」

「厳しすぎるやつが言うセリフだ」

石田は本を取り出した。

悠太は彼を見た。

「嘘だろ」

「何だ」

「まだ本を読むのか」

「考える助けになる」

「読んで?」

「お前を無視して」

悠太は毛布をかぶった。

「それは必要以上に正直だった」

「効率的だった」

隣の部屋では、芽衣が布団の上に座り、背中を壁につけていた。月野は何も片づけるものなどないのに、無言で服をしまっていた。

「寝ていいよ」

月野が言った。

「あなたもね」

「私は自分の家にいる」

「それ、何の答えにもなってない」

月野は引き出しを閉めた。

芽衣は彼女を見た。

「すごく怒ってた」

月野は振り向かなかった。

「わかった」

「今も怒ってる」

「それもわかった」

芽衣は視線を落とした。

「でも、見つかってよかった」

月野は動きを止めた。

一秒。

二秒。

「来るべきじゃなかった」

芽衣は目を閉じた。

「知ってる」

「なら――」

「でも来た」

月野は答えなかった。

芽衣は横になり、背を向けた。

「怒るのは明日にする。もっと怒るから」

少しして、月野は電気を消した。

「わかった」

家は静かになった。

すぐにではない。

最初は小さな音があった。木材のきしみ。どこかの配管を流れる水。枯れ木の枝をこする風。悠太が何度も寝返りを打つ音。石田がページをめくる音。

それから、少しずつ、すべてが沈んでいった。

悠太が最初に眠った。

決して上品な眠り方ではなかった。

石田はもう少し起きていた。本を膝の上に開いたまま。

同じ行を四回読んだ。

それから本を閉じた。

芽衣はもっと遅かった。

月野はさらに遅かった。

けれど最後には、眠りたくない人間でさえ、一日が十分に重ければ目を閉じる。

澪の部屋の中で、闇は静かだった。

澪は横になっていた。

両手を胸の上に置いて。

呼吸は穏やかだった。

目は閉じていた。

長いあいだ、何も起きなかった。

やがて、彼女は目を開けた。

目覚めた者の目ではなかった。

命令を受け取った者の目だった。

身を起こした。

音は立てなかった。

足が床に触れた。起きたばかりの人間には不可能なほど静かに。机まで歩く。引き出しを開ける。

折りたたまれた紙を取り出した。

数秒のあいだ、それを指に挟んで持っていた。

それから扉へ向かった。

開ける。

廊下へ出た。

悠太と石田が眠る部屋の前を通った。

止まらなかった。

月野の部屋の前を通った。

そこでだけ、止まった。

閉じた扉を見る。

憎しみではなく。

愛情でもなく。

その向こうに、知っているはずなのに思い出しきれない何かがあるように。

扉の向こうで、月野は眠っていた。

あるいは、眠ろうとしていた。

澪はまた歩き出した。

玄関へ向かった。

家の扉を開けた。

夜の冷たい空気が、許可もなく入り込んできた。

澪は外へ出た。

扉はゆっくり閉まった。

誰かを起こすほどではなかった。

外では、久山が山の下で眠っていた。

家々は暗かった。

古い道が待っていた。

澪は、折りたたまれた紙を手に、その道へ向かって歩いた。

そして、家に戻ってきてから初めて、彼女の唇が動いた。

彼女自身のものではないような言葉で。

「目を開けなきゃ」

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