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永遠の残滓  作者: Mateo
40/42

第40章:宿泊客は眠らなければならない

鹿児島へ向かう高速道路は、夜に走る道特有の長さを持っていた。車の外に広がる暗闇のせいで、車内だけがいつもより少し狭く、少しだけ親密な場所になったように感じられる。

加藤はいつも通り、落ち着いて運転していた。

助手席の優奈は腕を組み、前方の道を見つめていた。しばらく前から何かを考えていて、それを口に出さなければ、ずっと考え続けることになりそうな顔だった。

「カードで勝ってよかったわね」

優奈が言った。

加藤は横目で彼女を見た。

「負けてたら、私があなたを殺してた」

優奈は続けた。

「あんな老人に、情報の代金として私を差し出そうとするなんて信じられない」

「源蔵があの賞品を受け取るわけないだろ」

加藤は言った。

「たぶんな」

優奈が加藤のほうを向いた。

「たぶん?」

「たぶんだ」

「たぶんって言った?」

「言ったものは言った」

優奈はしばらく加藤を見つめた。いくつものことを同時に処理していて、そのどれにも納得していないような顔だった。

加藤は笑った。

いつもの抑えた笑いではなかった。もっと短く、もっと素直な、思っていたより本当に面白かったときに出る笑いだった。

優奈は前を向いた。もう反応してやらないと決めた顔をしていたが、口元に小さな笑みが浮かびかけているのを、完全には消せなかった。

「残滓を狩る残滓の話、どこで聞いたの?」

優奈は話題を変えた。その話のほうが、今の話題よりはずっとましだと言わんばかりの速さだった。

加藤は視線を道路へ戻した。

「少し前だ」

加藤は言った。

「生徒たちが来る前、一人で任務に出ていた。教師になる数週間前のことだ」

「それで?」

「任務のために情報を集めている途中で、残滓を狩る残滓の噂を聞いた」

加藤は言った。

「それが気になった。任務が終わったら調べるつもりだった」

優奈は加藤を見た。

「どうして調べなかったの?」

「香奈に怒られるからだ」

加藤は答えた。

「先に、始めた任務を終わらせる必要があった」

優奈は、そういう目で加藤を見た。

「何だよ」

加藤が言った。

「別に」

優奈は答えた。その声は、あまりにも当然すぎて説明する必要すらない、と言っているようだった。

「俺にはちゃんとした理由が――」

「加藤」

「香奈って、あの声で――」

「加藤」

「わかった。わかったよ」

「そうでしょうね」

「あとで調べに行くつもりだった」

加藤は話を戻した。

「けど、そのあと生徒たちが来て、教師をやることになった」

優奈は少しだけ加藤を見つめた。

「まあ、待ったおかげで、今は二人で行けるわね」

優奈は言った。

「危険そうな残滓だし」

加藤は笑った。

「そうは思わない」

「どうして?」

「正直に言えば、そいつは自分が何をしているのかもわからず、同じ残滓を殺しているだけの残滓だと思っている」

加藤は言った。

「人間に人間を殺す奴がいるなら、残滓に残滓を殺す奴がいてもおかしくないだろ」

優奈は加藤を見た。

しばらく黙っていた。

「……確かに」

「だろ」

「そういう顔で言わないで」

「どういう顔だ」

「自分が正しいってわかってる顔」

加藤は笑った。

移動は、二人が認めたくないほど長く続いた。サービスエリア、長い沈黙、誰もまともに聴いていない音楽、そして眠気とは少し違う疲労が、薄い膜のように肩へ積もっていった。鹿児島がようやく前方に見え始めた頃には、夜がまた戻ってきていた。

「ようやく着いたな」

加藤が前を見ながら言った。

夜の鹿児島には、南特有の温度があった。東京よりも暖かく、湿度は、車が止まったことを頭が理解するより先に、体のほうが感じ取っていた。

到着してから五分後、車の調子がおかしくなった。

突然ではなかった。長いあいだ耐えてきたものが、ついにもう十分だと決めたような、ゆっくりとした変化だった。ひとつ音が鳴り、また別の音が鳴り、アクセルを踏む足とは関係なく速度が落ちていく。

加藤は車を道路脇に寄せた。

「そろそろ車を買い替えたほうがいいんじゃない?」

優奈が言った。

「この車はまだ完璧だ」

加藤が言った。

ボンネットから煙が上がった。

加藤はそれを見た。

「お前が正しいかもしれない」

二人は車を降りた。加藤は車の周りを回りながら、よく知っているものを見極めるような顔をしていた。驚きではない。以前にもこの車と同じ会話を何度かしていて、それがどう終わるかもわかっている者の顔だった。

「駐車場まで動かすのを手伝ってくれれば」

加藤は、二十メートルほど先にあるホテルを見ながら言った。

「今夜はあそこに泊まれる」

優奈は加藤を見た。

「あなた、一応かなり強い狩人なんでしょ。車を動かすくらい、難しくないんじゃない?」

加藤はそれを処理した。

「確かに」

加藤は言った。

彼は一人で車をホテルの駐車場まで押した。車を押すことが努力ではなく、ただの作業でしかない人間の動きだった。

優奈は腕を組んでそれを見ていた。

「ホテルがあるわ」

車が駐車場に収まったあと、優奈が言った。

「泊まれるんじゃない?」

「ああ」

加藤は建物を見た。

「部屋を取ってくる。車を見ていてくれ。盗まれないようにな」

優奈は空っぽの駐車場を見た。

「誰もいないわよ。仮に誰かいたとしても、壊れた車を盗むのは狂人くらいでしょ」

「世の中には、いつでも狂人がいる」

加藤が言った。

「教師になる狂人もいるしね」

優奈が言った。

加藤は笑い、ホテルの中へ入っていった。

優奈は一人で駐車場に残った。

ホテルを見た。

車を見た。

もう一度、ホテルを見た。

招いてもいないのに、その考えはやってきた。部屋。加藤。空き部屋がちゃんとあるのか。もしなかったら――

自分の頭の中で作りかけていたその文を最後まで考える前に、優奈は顔を赤くした。まだ疑問にすらなっていない考えで赤くなるなんて、完全に馬鹿げていると自分に言い聞かせる。

「嫌よ」

小さな声で、優奈は言った。

それから息を吸った。

「何も起きない。部屋はある。ホテルなんだから。ホテルには部屋がある。それがホテルの仕事でしょ」

髪に手を通す。

「普通。全部、普通」

カウンターの向こうにいた係の老人は、情熱という概念を過去のどこかで一度検討し、理由はもう思い出せないが捨てたような見た目をしていた。

彼は加藤を見た。人を相手にしているのは仕事だからであって、特に興味があるわけではない。そんな表情だった。

「二部屋」

加藤が言った。

老人は加藤を見た。

それから、背後の鍵掛けを見た。

そして二本の鍵を取り、状況を前に進めるために最低限必要な動きで、それをカウンターに置いた。

「どうも」

加藤は金を置いた。

老人は返事をしなかった。

加藤は鍵を取り、外へ出た。

加藤が戻ってきたとき、優奈はまだ駐車場にいた。

空を見上げていた。その顔は、ひとりで内側の会話をしていて、それがあまり穏やかな内容ではなかったことを示していた。

「一人でしゃべるのはやめろ」

加藤が言った。

「やっぱり狂人はいたな」

優奈は真顔で加藤を見た。

加藤は彼女へ鍵を投げた。

優奈はそれを受け取り、手元の鍵を見た。

「どうやって寝るの?」

その声には、質問の内容に対して必要以上の重みがあった。

「一人一部屋取った」

加藤が言った。

優奈はそれを処理した。

「あ」

「何を期待してたんだ?」

「何も」

優奈は早口で言った。

「休むわ」

そう言うと、彼女はホテルの入口へ向かった。行き先ははっきりしていて、その行き先について誰にも質問されたくない人間の歩き方だった。

加藤はその背中を見送った。

「何に刺されたんだ、あいつ」

ひとりごとのように言った。

部屋は、ホテル特有の温度をしていた。

寒くもなく、暖かくもない。誰が泊まるのかわからない場所が、誰のためにも整えられていないときの温度だった。

加藤はベッドに横になった。

しばらく天井を見つめていた。部屋の暗さ。外から聞こえる鹿児島の音。それは東京の音とは違っていた。もっと静かで、もっと間があり、ひとつひとつの音のあいだに沈黙が多い。

加藤は目を閉じた。

眠りは訪れた。

そして、それと一緒に、時々訪れるものも来た。

いつもではない。

毎晩でもない。

だが、来る夜はある。

一人称で見た。

記憶としてではなく、今その瞬間に起きていることとして。

支部の廊下。

広間。

床。

母。

変えるには間に合わなかった瞬間。

そして、間に合わなかったにもかかわらず、今もなお変えられないまま残り続けている瞬間。

母が倒れるのを見た。

何もできずに。

加藤は荒い息で目を覚ました。

ベッドの上で体を起こす。呼吸が、鹿児島のホテルのベッドにいる人間のものへ戻るまで、少し時間がかかった。どこか別の場所にいる誰かの呼吸ではなく。

部屋を見回した。

暗闇。

中立的な温度。

沈黙。

「少し歩くか」

誰に言うでもなく、加藤は言った。

ホテルの屋上には、小さな町の屋上特有の景色があった。近くの建物の屋根、下にある街灯、東京よりもよく見える星空。空の場所を奪い合うものが少ないからだろう。

そして、手すりにもたれる人影があった。

屋上の扉から現れた加藤を見て、優奈は顔を向けた。誰かが来るとは思っていなかったが、拒むつもりもない。そんな表情だった。

「眠れなかったのか?」

加藤が言った。

「寝つけなかった」

優奈は答えた。

「夜中に目が覚めて、少し風に当たりたくなったの」

加藤は彼女の隣で手すりにもたれた。

「ベッドのせいか?」

優奈は少しだけ答えるのに時間を置いた。

「龍一のせい」

加藤はすぐには彼女を見なかった。

「あの話は、そうなることがある」

「話だけじゃないわ」

優奈は街を見ながら言った。

「ずっとひとつの話を信じてきて、今になってその下に別の話があったと知ることよ」

加藤は手すりに前腕を預けた。

「いつだって、下には別の話がある」

「それ、助けになってない」

「助けようとしてない」

優奈は横目で加藤を見た。

「驚くほど正直ね」

「疲れてると出る」

優奈は小さく息を吐いた。笑いと呼ぶには少し足りない呼吸だった。

しばらくのあいだ、二人は黙っていた。下には鹿児島の街。上には夜空。屋上の空気は、部屋の中よりもいくらか優しかった。残滓を狩る残滓を探しに来た街にしては、夜は静かすぎた。

「あなたは?」

やがて優奈が尋ねた。

「俺?」

「どうして眠れなかったの?」

加藤は通りのほうを見た。

「同じだ」

優奈は加藤を見つめた。その視線は、言葉になったものだけでなく、言葉にならなかったものまで拾おうとしていた。

「同じじゃないでしょ」

加藤はかすかに笑った。

「同じだとは言ってない」

優奈はそれ以上、追及しなかった。

屋上の扉が開いた。

二人は振り返った。

入口に、受付の老人が立っていた。

表情はさっきと同じだった。熱意も、特別な活力もない。ただ、やるべきことをやっているからやっている、という顔。

「宿泊客は眠らなければなりません」

老人が言った。

加藤は彼を見た。

「すみません」

加藤は言った。

「少し眠れなくて」

そこで加藤は、誤解されたくないことをどう言えばいいか迷うように間を置いた。

「別に、ベッドが悪いとかそういうことじゃなくて。ただ――」

「加藤」

優奈が言った。

「何だ?」

「見て」

加藤は老人を見た。

受付の老人は、同じことを繰り返していた。

「宿泊客は眠らなければなりません。宿泊客は眠らなければなりません。宿泊客は眠らなければなりません」

同じ声。

同じ調子。

まったく同じリズム。

話しているというより、再生しているようだった。

「大丈夫ですか?」

加藤が言った。

受付の老人は、話すのをやめた。

一秒だけ、動かなかった。

その静止は、普通の静止にしてはあまりにも深すぎた。

そして、始まった。

最初に来たのは痙攣だった。

内側から外へ出てくるような痙攣ではない。外側から内側へ入り込み、体を組み替えているような痙攣だった。その体に、組み替えていいかなど尋ねるものはいなかった。

腕が、ありえない角度に折れ曲がる。

背中が、背中として許されない曲線を描く。

顔には、加藤と優奈がよく知っている変化が始まった。皮膚が変わる。輪郭がずれる。目から、目を目たらしめているものが失われていく。

そこに残ったものは、もうカウンターにいた老人ではなかった。

それでも、同じ言葉を繰り返していた。

「宿泊客は……眠らなければ……なりません……」

それは、もはや老人の声ではなかった。老人の声を枠のように使って、別の何かが外へ出ようとしている声だった。

「宿泊客は……眠らなければ……なりません……」

加藤はそれを見た。

それから、優奈を見た。

そして、また、受付だったものを見る。残滓になったそれは、他の言葉を知らないのか、それともそれ以外を言う気がないのか、同じ言葉を同じように繰り返し続けていた。

加藤は息を吐いた。

「五つ星をつけるつもりだったんだけどな」


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