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永遠の残滓  作者: Mateo
36/39

第36章:何も残らなくなるまで

道子が残滸の腕をつかんだとき、その腕はまだ伸びていた。

両手ではなかった。

片手だった。

その腕がどこにも届かないことを、自分がそこにいる間は明らかにするために必要なだけの固さで。

残滸は引いた。

掴みは緩まなかった。

一つ目が道子に動いた。正確には驚きではなく、計算にいなかった変数の即座の記録として——その女性の力は、そのサイズが示すものに対応していなかった。

銀二郎は見ていた。

見ているものを完全には処理できていなかった。

髪。姿勢。脇腹の傷。本当にそこにいるという事実。

十歳の脳が、期待していたことと恐れていたことが同時に起きたとき脳がすることをしていた。

静止した。

一秒だけ。

「怪我をしているか」

道子は残滸から目を離さずに聞いた。

「大丈夫」

「本当のことを言いなさい」

「打たれた。でも大丈夫」

道子は紗江と則を横目で確認した。

二人は持てるもの以上を出し切った人間の様子をしていた。

それから池田を見た。

警備員はまだ壁に寄りかかっていた。意識を保つことだけに体がほとんどのエネルギーを使っている人間の特有のリズムで呼吸していた。

残滸はまた引いた。

今度道子は離した。

掴みが緩んだからではなかった。

離すことが次に来るものの一部だったから。

残滸は自分の力の勢いで二歩後退した。

道子は目を離さなかった。

「ここにいるとわかっていたのか」

銀二郎は聞いた。

「わからなかった」

道子は言った。

「利用可能なすべてのハンターに、拠点が攻撃されているという知らせが届いた。この区域に着いたとき、入口の近くで複数の戦いを感じた」

一拍置いた。

「助けに来た」

わずかに銀二郎に向いた。

その顔に安堵があった。

そして別の何かも。

「後であなたがここにいる理由を話し合う」

銀二郎は口を開けた。

「俺は……」

残滸が動いた。

________________________________________

速く来た。

百五十センチの体が示す以上に遥かに速く。

道子はちょうど間に合って前腕を上げた。

衝撃音は乾いていた。

足元の床が軋んだ。

残滸は笑った。

人間的な方法ではなかった。

抵抗を記録したことを示すのに十分な程度だった。

「別のハンターか」

道子は半歩下がって体を整えた。

「あなたをここから出す一人だ」

一つ目が彼女を観察した。

「他の奴らも同じことを思っていた」

「他の奴らは私ではない」

残滸は頭を傾けた。

「傲慢だ」

「いいえ」

道子は言った。

「経験がある」

残滸はまた突進した。

________________________________________

速かった。

予期していたのに驚く種類の速さではなかった。

予期していてもやはり来る前に届く種類の速さだった。

一撃は短く、直接的で、重かった。

不必要な動きはなかった。

脅しもなかった。

ポーズもなかった。

当てるために打った。

道子は最初の三回のやり取りでそれを理解した。

最初はブロックした。

二番目は逸らした。

三番目は肩に部分的に受けて、脇腹への一撃で返した。

残滸は後退した。

道子も同様だった。

「よく打つ」

残滸は言った。

「あなたは喋りすぎる」

「喋りすぎてはいない」

残滸は体の向きを整えた。

「計算している」

道子はわずかに笑った。

「では何回で負けるか計算しなさい」

銀二郎は観察していた。

すべての動きを。

すべての体重移動を。

すべての方向の変え方を。

母親がすべてをブロックしようとしていないやり方を。

選んでいた。

ある一撃は吸収した。

別のものは逸らした。

そして機会があれば、打った。

残滸はリズムを変え始めた。

上への一撃。

下への一撃。

胴体に二発続けて。

左への囮。

道子は返し続けた。

残滸が子供たちを見るまで。

一つ目のわずかな動きだった。

でも道子は見た。

動きを完成させる前に入った。

「だめだ」

残滸は止まった。

それから笑った。

「ああ」

道子は答えなかった。

「奴らか」

トーンが変わった。

多くではなかった。

十分に変わった。

「見るな」

「では弱点はそこか」

「試してみなさい」

残滸はそうした。

________________________________________

子供たちに向かって飛び出した。

道子が先に来た。

紗江に届くべきだった一撃が道子の前腕に当たった。

音は前のものより大きかった。

足元の地面が揺れた。

残滸は笑った。

人間的なやり方ではなかった。

抵抗を記録したことを示すのに十分な程度だった。

「別のハンターだ」

道子は半歩下がって体を整えた。

「奴らに向かうたびに」

残滸は言った。

「お前は速くなる」

「もう一度試してみなさい」

残滸は口の端の暗い線を手の甲で拭った。

「そうする」

でも今度はすぐには突進しなかった。

静止した。

道子は観察した。

何かが違った。

残滸は重心を落とした。

体の魔力が脚に集中し始めた。

それから肩に。

それから腕に。

普通の方法ではなかった。

エネルギーの動き方に何かがあった。

集めているようには見えなかった。

別の何かをしまっているように見えた。

道子は目を細めた。

「何をしている?」

残滸は笑った。

「返している」

そして消えた。

________________________________________

道子はかろうじてブロックが間に合った。

衝撃が数メートル後ろに飛ばした。

紗江が叫んだ。

則は目を見開いた。

銀二郎は一歩踏み出した。

道子は一本の足を地面に刺して止まった。

腕が震えた。

多くではなかった。

でも震えた。

残滸はまた笑った。

「受けた一撃はすべて何かを残す」

道子は見た。

「力を」

残滸は手を開いた。

「動きを」

指を閉じた。

「勢いを」

また突進した。

道子はかろうじてかわした。

残滸は地面を打った。

石が割れた。

池田は理解した。

「衝撃を蓄積している」

低い声で言った。

則は見た。

「何ですか」

「受けた打撃の力を」

銀二郎は残滸を見た。

「そして後で返すのか」

池田は答えなかった。

必要がなかった。

道子はすでに理解していた。

自分が与えた一撃がどれも何かを供給していた。

吸収した衝撃をどれも後で返せた。

残滸は道子を見た。

「よく打つのがお前の問題だ」

道子は息をした。

「あなたの問題は、それがあなたを救うと信じ続けていることだ」

________________________________________

戦いが変わった。

道子は強い一撃を探すのをやめた。

短い一撃を使い始めた。

逸らし。

払い。

角度の変換。

ちょうど必要なだけ触れた。

ちょうど必要なだけ動かした。

残滸に蓄積させるものを減らした。

残滸はそれに気づいた。

「覚えるのが速い」

「あなたより速い」

残滸は突進した。

道子は内側に動いた。

肘を打った。

向きを変えた。

膝を打った。

残滸は軸を失った。

彼女は機会を活かした。

掌を胸に。

強くではなかった。

精確に。

残滸は後退した。

道子は前進した。

短い二発。

首への一発。

肩への一発。

残滸は拳で返した。

道子はかわした。

空気が顔の数センチを爆発した。

「それは蓄積した力を持っていた」

道子は言った。

「まだある」

「では使いなさい」

残滸は笑った。

「まだだ」

________________________________________

銀二郎は手に魔力を起動していた。

「だめ」

道子は見ずに言った。

「俺も手伝える」

「できないとは言っていない」

一撃をブロックした。

肘で返した。

「だめと言った」

銀二郎は拳を閉じた。

則が一歩進んだ。

「両脇から入れば」

小声で言った。

「別々の方向から二人が攻めたら……」

「だめだ」

池田は言った。

三人は見た。

「近づくな」

「でも……」

「やらせておきなさい」

紗江は戦いを見た。

「傷を負っている」

誰も答えなかった。

全員が見ていたから。

道子の脇腹はまだ血が出ていた。

動くたびに傷が少しずつ開いた。

それでも道子は彼らと残滸の間に立ち続けた。

________________________________________

残滸は呼吸が変わり始めた。

道子は気づいた。

蓄積しすぎていた。

打撃だけではなかった。

勢い。

速さ。

力。

すべてが集中していた。

すべてが待っていた。

「わかった」

道子は言った。

一つ目が彼女に固定した。

「永遠には蓄積できない」

残滸は答えなかった。

「蓄積すればするほど、より多くを解放しなければならない」

沈黙。

道子は笑った。

「そしてすべてを私に向けて解放したら、あなたは開きになる」

残滸は頭を傾けた。

「正解だ」

子供たちを見た。

道子は笑うのをやめた。

「だめだ」

「もう一度試せと言ったのはお前だ」

残滸の脚の周りの魔力が爆発した。

「やめなさい」

「遅い」

________________________________________

残滸が飛び出した。

速くではなかった。

それ以上だった。

戦い全体で蓄積したものすべての完全な放出だった。

受けたものすべて。

蓄えたものすべて。

一つの方向に返したすべて。

銀二郎に向かって。

紗江は魔力を起動した。

則は動こうとした。

池田は立ち上がるために地面に手を置いた。

腕が折れた。

銀二郎は残滸が来るのを見た。

動けなかった。

恐怖からではなかった。

体にただ時間がなかっただけだった。

道子にはあった。

いつもあった。

一度。

二度。

三度。

四度。

いつも。

今回も。

ただ、来るだけでは十分ではなかった。

残滸は距離を詰めた。

道子は入った。

残滸の腕が脇腹の下に入った。

音は小さかった。

このようなことにしては小さすぎた。

銀二郎は呼吸が止まった。

残滸は腕を引いた。

道子は一秒立っていた。

二秒。

銀二郎を见た。

そして笑った。

わずかに。

ほんのわずかに。

それから膝をついた。

「お母さん……」

言葉は低く出た。

それから銀二郎は血を見た。

そして叫んだ。

「お母さん!」

________________________________________

叫びは空気より先に出た。

考えより先に。

理解しようとするどんな試みより先に。

オレンジの魔力が爆発した。

色は変わらなかった。

変わる必要がなかった。

いつもと同じオレンジだった。

弘のオレンジ。

裏庭のオレンジ。

何週間もの訓練のオレンジ。

銀二郎の手のオレンジ。

でも別のものになった。

より密度が高く。

より激しく。

より純粋に。

魔力は道具のように振る舞うのをやめた。

燃料のように燃え始めた。

銀二郎の心臓が速くなった。

筋肉が張った。

呼吸が一秒消えた。

世界がより遅く感じた。

世界が変わったからではなかった。

彼が変わったから。

「加藤……」

則は言った。

紗江は見た。

「何が起きているの」

池田は目を開けた。

「魔力を燃やしている」

則は見た。

「どういう意味ですか」

「すべてを使っている」

池田は唾を飲み込んだ。

「速すぎる」

銀二郎は聞いていなかった。

残滸だけを見ていた。

残滸も同じく見た。

そして銀二郎を見た最初の時から初めて、一つ目は彼を子供として見るのをやめた。

「今度はお前か?」

と言った。

銀二郎は消えた。

________________________________________

最初の一撃が胴体に届いた。

残滸が飛んだ。

二歩ではなかった。

三歩でもなかった。

数メートル。

地面に激突した。

転がった。

立ち上がった。

銀二郎はすでに前にいた。

二撃目。

残滸はブロックしようとした。

間に合わなかった。

三撃目。

今度は顔に。

四撃目。

脇腹に。

五撃目。

残滸はようやく返した。

銀二郎は両腕を交差させた。

衝撃が後ろに飛ばした。

倒れた。

すぐに立ち上がった。

紗江は目を見開いた。

「あれは普通じゃない」

則は目を離さなかった。

「そうだ」

池田は苦しい息で言った。

「自分を壊している」

銀二郎はまた突進した。

________________________________________

残滸は理解し始めた。

少年はより速かった。

より強かった。

でも一つ一つの動きにコストがあった。

オレンジの魔力は減っていた。

最初はほんの少し。

それからより多く。

一歩ずつ。

一撃ずつ。

一つかわすごと。

すべてが燃えた。

「消耗している」

残滸は言った。

銀二郎は打った。

残滸はブロックした。今回は。

「その体はそれに耐えられない」

また一撃。

残滸は後退した。

「空になる」

銀二郎は見た。

「長く耐える必要はない」

突進した。

残滸は初めてかわした。

則が叫んだ。

「加藤、やめろ!魔力がなくなる!」

銀二郎は続けた。

「銀二郎!」

紗江は叫んだ。

「やめて!」

返答しなかった。

池田は二人を見た。

「聞いていない」

則は歯を食いしばった。

「聞いている」

紗江は見た。

「聞かないことにしただけだ」

________________________________________

残滸は蓄積した力を返し始めた。

一放出。

銀二郎はそれを正面から受けた。

飛んだ。

仰向けに倒れた。

オレンジの魔力が明滅した。

紗江は一歩踏み出した。

「銀二郎!」

彼は立ち上がった。

より遅く。

残滸は笑った。

「終わりかけている」

銀二郎の呼吸は乱れていた。

腕が震え始めていた。

脚が重くなり始めていた。

残滸は見た。

それから他の者たちを見た。

紗江を。

則を。

池田を。

一つ目がわずかに動いた。

十分だった。

銀二郎は顔を上げた。

「もう見るな」

残滸は笑った。

「では?」

銀二郎は最後にもう一度消えた。

________________________________________

最初の一撃は腹に届いた。

残滸は折れた。

二撃目は胸に。

後退した。

三撃目は顔に。

ブロックしようとした。

銀二郎は防御を破った。

体の周りでオレンジの魔力が燃えていた。

どんどん少なくなりながら。

どんどん激しくなりながら。

消える直前の炎がより明るくなるように。

残滸は残っていた蓄積した力すべてを解放しようとした。

銀二郎は与えなかった。

肩を打った。

それから膝を。

それから脇腹を。

残滸は倒れた。

銀二郎はまだ立っていた。

かろうじて。

魔力はほとんどなくなっていた。

則は見た。

「残っていない」

紗江は手を閉じていた。

「銀二郎……」

残滸は立ち上がろうとした。

銀二郎は右拳を充填した。

残っているすべて。

すべてを。

技術なしで。

制御なしで。

何も残さずに。

残滸は见た。

「それをすれば、空になる」

銀二郎は拳を上げた。

「なら何も残らなくていい」

打った。

残滸は溶けた。

銀二郎は倒れた。

________________________________________

目を開けたとき、秒が経ったのか分が経ったのかわからなかった。

空はまだそこにあった。

入口もまだあった。

紗江が近くに膝をついていた。

則は数メートル先に立っていた。

池田はまだ壁に寄りかかっていた。

声がした。

「銀二郎……」

体を起こした。

それから這った。

道子は入口の壁に寄りかかっていた。

紗江は手を口に当てていた。

則は地面を見ていた。

静かに。

静かすぎた。

銀二郎は母親のところに来た。

「お母さん……」

「聞きなさい」

道子は言った。

「华さんが治してくれる」

銀二郎は膝をつきながら言った。

「中にいる。出てきたら……」

「銀二郎」

「それかお父さんも」

銀二郎は続けた。

「お父さんも拠点にいるでしょ?呼んだら……」

「銀二郎」

今度は彼が本当に聞く必要があるときにいつも使うトーンで言った。

銀二郎は口を閉じた。

目は閉じなかった。

「お父さんに会ったら」

道子は言った。

「守ってあげなさい」

銀二郎は首を振った。

「それはお母さんが言う」

道子は笑った。

小さく。

わずかに。

「彼にもあなたのことを守らせなさい」

銀二郎は答えなかった。

「約束して」

沈黙。

「したくない」

道子は见た。

銀二郎は頭を下げた。

「そんな約束はしたくない」

彼女は手を上げた。

それはつらかった。

頬に当てた。

「いつも一番強くなくていい」

「そうじゃないといけない」

子供だったから。

そう信じていたから。

それしか答えがなかったから。

道子は見た。

「私の前ではそうじゃなくていい」

銀二郎は泣き始めた。

最初は多くではなかった。

それからそうなった。

「お母さん……」

「愛してるよ、銀二郎」

「俺も」

道子は目を閉じた。

________________________________________

銀二郎は母親の手を持ち続けた。

誰も離すよう言わなかった。

紗江は何も言わなかった。

則も言わなかった。

池田は別の方向を向いた。

そして長い間、銀二郎は離さなかった。

オレンジの魔力は消えていた。

感じることを覚えてから初めて、戻そうとしなかった。

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