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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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87.クリスマスデートは星空と共に

 



 寒空の下、なんとも言えない空気で二人のクリスマスデートは始まった。太陽は既に落ちかかっており、より一層寒さを感じる時間帯に入っていた。


 そんな中、どこか緊張した面持ちで綾乃の手を握る優心。

 今日の優心はいつもよりもかなり気合いが入っているため、綾乃はそれが空回りしないかを少しばかり心配していた。




「ねえ優心、大丈夫?」


「大丈夫って、何が?」


「はぁ…全く気づいてないみたいね。えい」


「んふ。ふぁふぁふぉ(あやの)わふぃふるんふぁお(なにするんだよ)


「ふふっ、『んふ』ですって……!」




 綾乃は、緊張をほぐそうと優心の頬をつまむ。予想外の行動に優心は思わず変な声を出してしまうが、そのおかげで表情は少し柔らかくなった。


 綾乃に礼を言いつつ、優心は目的地へ到着したことを告げる。




「着いたぞ、綾乃。席は予約してあるから早速入ろうか」


「え、ええ…。でもここ、すっごく高そうに見えるのだけど…」


「そうなんだよ。こう見えて意外にリーズナブルなんだ」




 二人がやってきたのは、どうにも高級そうなイタリアン。扉を開けると、内装も非常に凝った造りであるのだが、価格帯は大衆向けの料理店に多少のオプションが付いた程度の金額と、若干経営が心配になってくるほどであった。


 そんなコスパ最高の店で、優心は受付に予約している旨を伝える。

 そのまま席に案内され、これまた高級店のような接客に優心も驚きを隠せなかった。




「なんか、色々とすごいな……。接客も丁寧で、まだ料理も届いてないのにテーブルの上が豪華だし…」


「優心も初めて来たの?てっきり来たことがあるものとばかり…」


「この外観からじゃとても畏れ多くて入れないって。あ、もちろん良い意味でだけど」


「分かってるわよ。でもなんでここにしたの?」


「大和さんに教えてもらったんだ。クリスマスに高校生でも行けるような丁度いい店は無いかって聞いたら、近場ならここ一択だって」



 そう、ここは叔父であると判明した大和さんの提案で来たんだ。最近は優奈が俺のことをよく話してるみたいだからあまり連絡は取ってなかったけど、たまには声も聞きたいという大和さんの要望があったので、ついでに聞いてみることにした。


 そしたら真っ先に出てきた名前がこの店だったって訳だ。綾乃もイタリアンはあまり作らないから、そういう意味でも非日常感を味わえるのがここに決めた一因だったりする。




 今回はコースで予約しているので、料理が来るまでそれほど時間は無い。その間に出来る事といえば、軽い雑談に興じることくらいだった。



「そういえば去年のクリスマス、あの食パンってどうしたんだ?」


「厚切りにしてフレンチトーストにしたわ。ちょっとしたクリスマスケーキのつもりで甘い物を食べようと思って」


「何それ美味しそう。今度作ってくれないか?」


「お安い御用よ。でも最近卵が高いから、今度の特売の時にね」


「分かった。フレンチトーストに合うコーヒーでも探しておこうかな」



 料理が来る前に食べ物の話をしたせいでさらにお腹が空いたけど、それはそれ。早速コースの一品目が運ばれてくる。


 イタリアンのコースといえば、食前酒から始まるのが定番だそうだけど、俺たちは未成年なので当然飲むことはできない。

 なのでお酒は飛ばして前菜から。



「こちら、オードブルの鯛のカルパッチョでございます」


「おお…いただきます」


「いただきます」



 これぞカルパッチョ、というオリーブオイルの香り。前菜に相応しく俺の食欲を刺激してくる。

 鯛も柔らかい。薄く切られていて、しかししっかりと食感が残っている。何枚もあったはずなのに、気づいたら皿の上は真っさらになっていた。


 次に第一の皿(プリモ・ピアット)のリゾット、そしてメインディッシュである第二の皿(セコンド・ピアット)と続く。



「こちら本日のメインディッシュ、兎肉(ラパン)のグリルでございます」


「ラパン…確かウサギのお肉だったかしら」


「つまりジビエってこと?スーパーとかじゃ買えないし、ちょっと嬉しいかも」


「優心は臭みとか気にしないの?」


「まあ昔は山で熊肉食べてたから。あんまり抵抗は無いかな」



 クマ用の罠を作ってたことを思い出しながら、久しぶりのジビエに齧り付く。…臭みがないな。ワインと胡椒の香りが染み込んで、ジビエ特有の臭いが気にならない。

 加えて若干のハーブの香り、臭み消しに使っただけだと思うけど、そのおかげでより味が昇華されている。


 これが意図的だとすれば、コストに見合わない努力としか思えない。なぜこの値段で出せるのか。本当に不思議でならない。


 主食の後にサラダが出てきて、最後にドルチェと呼ばれるデザートが運ばれてくる。

 さっぱりとしたレモンジェラートで、コースは綺麗に締めくくられた。



「「ごちそうさまでした」」


「美味しかったわ」


「そうだな。何かお祝いの時は、またここに来ようか」


「良いわね。季節によって違う料理も楽しめるでしょうし、また誕生日にでも」




 優心は、安すぎるコース料金を支払って店を後にする。既に街灯が主張を始めた街中では、夜空に粉雪が舞って幻想的な光景を醸し出していた。




「すごい…綺麗ね……」


「ホワイトクリスマスか…。なんか得した気分だな」


「そうね。それで、この後はどこか行くの?」


「ああ。最後に行きたい場所があるんだ」




 二人は歩き出し、とある場所へ向かう。そこは、綾乃にとってよく知る場所だった。




体調が若干優れないため、次回の更新は遅くなるかもしれません。あと数話で完結というところだったのですが、本当に申し訳ありません…。

その分気合いを入れて書かせていただくので、お付き合いの程を宜しくお願いします…!

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