表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/89

80.最高の仲間

 



 迎えた文化祭最終日。優勝に手をかけている優心たち2年3組の面々は、気合いのこもった表情で準備を整えていた。

 文化祭実行委員である、真田 桜その人を除いては。


 理由は2つ。日野に働きすぎを指摘され、どうすべきか悩んでいること。

 そしてもうひとつは、実際に疲労がかなり溜まっており、体調が決して良いとは言えない状況であること。

 しかし休むという選択肢は無かった。この大事な時に自分がいなくなることの影響を鑑みると、多少無理してでも学校に行くべきだと考えたからだ。


 だがそれは、クラスメイト全員に見抜かれていた。




「桜、休んで」


「急にどうしたの可奈ちゃん。あたしはどこも悪くなんか…」


「そんな嘘吐かなくていいよ。いつも一緒にいるんだから、調子が良くないことくらい見れば分かるから」


「いやいや、あたしは全然大丈夫だし。これくらいどうってことないよ!」


「ね、アタシ達ってそんなに頼りない?」




 雛のその言葉に、桜は思わず動揺してしまう。彼女はそんなことは微塵も思っていない。

 クラスメイトのことは頼れる仲間であり、自分がいなくてもなんとかできるとさえ思っている。


 だが答えは喉元で詰まってしまう。もしこの言葉を返してしまったら、優勝を取れないかもしれない。自分1人の不甲斐なさで、クラスに迷惑は掛けられない。

 なら正直な想いは隠しておくべきだ。


 次の言葉を聞かなければ、その気持ちは揺るがなかっただろう。




「ね、桜。あたしたちは今日まで桜がどれだけ頑張ってきたか知ってる。だからさ」


「「「後は任せて!!!」」」


「……みんなぁ……………」


「分かったっしょ?ほーら、保健室行ってゆっくり休んできなさい」




 クラスは一致団結していた。彼女の頑張りを知っていたから。それが無ければ、優勝なんて夢のまた夢であったことに気付いていたから。

 そのことに気付かせたのは、他でもない優心であった。







 話は昨夜に遡る。


 優心は帰宅後、綾乃にとある相談をしていた。




「綾乃、ひとつ聞きたいことがあるんだけどさ。真田さん、ちょっと頑張りすぎじゃないかなって思うんだけど」


「…言われてみれば、彼女の負担は相当なものだったわね。役割分担をしたとはいえ、最終的な部分は彼女に任せっぱなしにしてしまっていたわ」


「やっぱり綾乃もそう思うか。どうにかしてあげられないかなって。一応案はあるんだけど、皆んなに伝える手段がないんだよ」


「そういえば私たち、グループチャットに入ってなかったわね。私の意思でそうしているのだから仕方ないのだけれど」



 俺が考えたのは、クラス全員で休むように言えばさすがに断らないだろう、というものだ。ただ問題は、今からそれを伝える手段が無いことだ。

 俺は嫌われているから、綾乃は連絡先を大人数に知られたくないがために、クラスのグループチャットに参加していない。今回はそれが仇になった。


 でも綾乃に相談して正解だった。すぐに解決策を出してくれたから。



「じゃあ志田君にやってもらえばいいんじゃないかしら。彼なら人望もあるし、彼から私たちに共有したという体にすれば違和感も無いでしょう?」


「確かにそうだな。なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだろう」


「優心は物事を急ぎすぎよ。もっと冷静になって、一度立ち止まって考える癖をつけたら?」


「……綾乃はすごいな。いつも俺に大事なことを気づかせて、教えてくれる」


「それは貴方もよ。貴方がいたから、私は家族の大切さに気付いた。だから困った時はお互い様よ」




 お互い様、か。俺も綾乃の助けになれてるんだな。その事実だけで心が暖まる。

 綾乃を今すぐにでも抱きしめたいところだけど、先に春馬に連絡しなきゃな。


 春馬は二つ返事で協力してくれた。ついでに雛も。真田さんの相方である大山さんも同じことを思っていたらしく、皆んなに強く協力を求めていたそうだ———。









 再び現在に戻り、裏で協力していた日野によって保健室に連れられる桜。日野は昨日からこうなるだろうと分かっていたが、あえて桜には伝えなかった。

 教師として、教育者として、自分で気付かせようと考えていたからだ。




「ま、ちょっと頑張りすぎたな。よかったな、優しいやつらがクラスメイトで」


「頑張りすぎかぁ………自分では気づけないもんですねぇ…」


「人間なんてそんなもんさ。間違って間違って、その間違いから成長する生き物なんだよ。よく分かったろ?」


「みんなに迷惑かけちゃうなぁ…」


「んなこと誰も気にしちゃいねえよ。自分の心配より真田の心配をしてるだろうな」




 実際にその言葉は的を射ており、クラスメイトが口にするのは桜のことばかり。文化祭の開場まであまり時間はないが、それだけ皆が桜の頑張りを見てきたということだろう。


 のちにその事実を知った桜が悶えるのは、また別のお話。




「真田もゆっくり寝てろ。あいつらなら大丈夫だよ」


「知ってます。みんな最高の仲間ですから」




 リーダーを欠いた状態での最終日。優心たちはこのピンチを乗り切り、優勝を掴むことができるのだろうか。




感想と誤字報告どんどん下さい。

高評価も付けてくださると作者のモチベーションが上がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ