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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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79.幸せのおすそ分け

 



 トラブルがありながらも、外部客を入れての文化祭初日をなんとか乗り切った優心たち。

 彼らは今日の嬉しくも不安の残る状況を踏まえ、反省会を開いていた。




「みんな、お疲れさまー。まさかこんなに人気が出るとは思わなかったねー」


「でも改善点は山のようにあるわね。ただでさえ単価が安いのだから、お客さんの回転率をもっと上げなければならないのだし」


「そうなんだよねぇ、ありがたいことに。今から焼き台追加で借りれるかなぁ……」




 今日露呈した問題は主に3つ。


 まずは行列。このクラスでは焼き立てを味わってもらうため、注文を受けてから焼く方式を取っている。いわゆるライブキッチンに近い形だ。

 なのでどうしても行列を解消するのに時間がかかってしまう。というか今日は最後まで列が途切れなかった。


 2つ目は焼くスピード。いくら練習を重ねたと言っても、一度に焼ける数と火の通りを考えると、こちらもある程度は時間がかかってしまう。


 3つ目は、この茹だるような暑さについて。休憩中の生徒を見れば分かるが、冷房の無いグラウンドの熱気は凄まじい。うちわで扇ぐのはNG。焼いているそばでそんなことをすれば、余計に熱気が膨らんでしまう。




 この中ですぐにどうにかできそうなのは3つ目。体育館に運動部用の大きい扇風機があるので、それを借りて来れればひとまずは安心だろう。

 運動部に所属している面々も大丈夫そうだと言っている。これは解決でいいかな。


 逆に2つ目は真田さんの言った通り、焼き台を追加で借りることしかできない。


 1つ目に関しては………。




「並んでもらってる時に注文受けよっか。宣伝とか掃除担当の人をそっちに回すしかないから、一人ひとりの負担は増えちゃうかもだけど………」


「俺たちならダイジョーブ!だろ、皆んな?」


「もっちろん!今日の売り上げもすごかったし、このペースなら絶対優勝狙えるからね!」


「みんな……えへへ、ありがと。よーし、そうと決まればリース会社の人に連絡を入れて…あ、トバちょは売上金をまとめて、この紙に記入よろしくね。他のみんなはかいさーん!」


「俺だけかよ………。任された以上は責任を持ってやるけどさ」




 実はこういう責任感ある仕事を任せてもらうのは初めてだ。やろうとも思わなかったし、俺をそこまで信用している人なんていなかったから。

 だから嫌がっている振りはするけど、内心は結構嬉しかったりする。


 ちなみに綾乃は、夕飯を作ると言って帰宅した。俺は出前でもいいって提案したんだけど、作りたい気分だからと返されてそれ以上は何も言えなかった。

 周りには舌打ちされたけど。




「はい、これでいいかな?」


「おっけー。やっぱトバちょに任せて正解だったよ。あやのんに信頼されてるだけあるねぇ〜」


「茶化さないでくれよ。何か他に手伝えることはある?」


「んーん、だいじょぶ。早くあやのんのとこに帰ってあげなよ」


「だから茶化すなって。大変だったらいつでも手伝うから、俺でも春馬でも、遠慮せずに言ってくれよ」


「ありがと。ほら、帰った帰った」




 真田さんに背中を押されて、教室から追い出される。


 でもやっぱり、少し不安だ。文化祭期間に入ってから、真田さんは少し頑張りすぎてると思う。本人が大丈夫だと言うからこっちとしても強くは出れないんだけど、1人に掛かる負担としては大きすぎる。


 さっき真田さんが似たようなことを話していたけど、本当に一番負担が大きいのは自分自身だって気づいてないのが問題なんだ。


 その時、ちょうど教員室の前を通る。………そうだな、少し寄り道していこうか。




「失礼します。日野先生はいらっしゃいますか?」


「お、戸張。真田の件か?」


「………もう怖いですよ。先生が知ってるってことは、それだけ問題があるということでもありますよね」


「ま、そうだな。後は俺がやっておくから、お前は帰っていいぞ」


「すみません、お手数をおかけします」




 日野先生なら一応カウンセラーの資格も持ってるし、適任だと思ったんだけど想像以上だったな。まさかもう状況を把握してるとは思わなかった。


 心配してたのは俺だけじゃない。綾乃に春馬、それに雛と相川さんは特に心配していた。

『一番大変なのは桜ちゃんなのに、何もしてあげられないのが悔しい』と。


 学校にも毎日遅くまで残っていて、家に帰ってからも調整やらを色々やっていたみたいだし、仲の良い2人が根を詰めすぎだと説得しても聞く耳を持たなかったとか。




 普段はあんなにはっちゃけているのに、責任感があってしっかりしている。だからこそ、他人よりまず自分に目を向けてほしい。


 ………そうか。そうすれば良かったんだ。なら早速行動に移さなければ。




「俺たちの負担は増えるけど、真田さんに比べればどうってことないよな」




 まだまだ暑さは消えないけど、太陽が沈むのは早くなった。帰り道を歩きながらそんなことを思う。

 同時に帰ってやらなければいけないことを考える。食後の片付け、掃除、洗濯もしてから皆んなに連絡をして………………。


 やる事が山積みだ。綾乃と一緒にいる時間も作りたいし、本当に時間がいくらあっても足りないな。




 でも充実してる。無機質に過ごしていた今までとは違う。


 起きたら目の前には可愛い彼女。学校に行けば親友もいるし、悪意の視線に晒されることもない。ずっと会いたかった妹にも、今じゃ毎日会える。




 辛いこともたくさんあったけど、そんなことが気にならないくらい毎日が楽しい。


 この気持ちは、おすそ分けしなきゃな。




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