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六冊目

さて、ここは一旦落ち着いて情報を整理してみよう──。




まずこの一年と数ヶ月の間、私はアリス氏をヒロインだと思って行動してきた訳なんだけれど、ここで突如として現れたアルヴィナ氏という存在によって、この【アリス氏=ヒロイン説】が根底から揺らぎ始めてしまった。というか既に崩壊しつつあるというか…



そもそもなんだけれど、なぜ私は ()()()()()()()()() だと思ったのか。


それは間違いなく、



“ヒロインと似た色彩を持つ少女がオープニングムービーと同じ動きをしていたから”



これに尽きる。

いや、だって、ねえ?

これは誰だって普通に勘違いするでしょ。


だって元々〈キミ学〉のヒロインのビジュアルなんてデフォルメされたキャラだけで詳細は分からなかったし、アリス氏も黙ってれば普通に美少女ですし…。


あとあれですよ、アリス氏が “私” と同室だったこと。


ほらヒロインと違って【サポート役のミア】は普通にゲーム画面に出ていたし、だからこそ私は自分がミアだって気づいた訳で。その【ミア】こと私と同室っていうのがまた“あるある”すぎて、余計にそう思ってしまったというか何と言うか。


そして極めつけはアリス氏が()()()だったってとこですよね!

あっこの展開は何万回も見たやつ~~~!!って正直テンション上がりましたわ。


──あれ?


というか今さらですけど、アリス氏って絶対自分のこと“ヒロイン”だって思ってますよね?


いやアルヴィナ氏を知ってしまった今となっては10:0でアルヴィナ氏の方がヒロインだとは思っているんですが。いや、だ、だって見た目とか完全にアリス氏の上位互換っぽかったですし?それに聞いたところによるとアルヴィナ氏はSクラスに在籍してる上に生徒会メンバーだっていう……


ってちょっと待てよ…?


もしかしなくともこれ、アリス氏ってアルヴィナ氏の存在を知らなかったり・・・します?しますよねえ!?



……め、めんどくせぇ~~~!!!



これ絶対あれでしょ?アリス氏がアルヴィナ氏の存在に気付いたが最期、怒り狂ってカッターキャー的な展開になる奴でしょ!?し、知ってるんだからな!私はそういうのに詳しいんだっ!


う゛ぅっ…イヤだイヤだ!私は面のいい奴らのキャッキャウフフは見たいが、血で血を洗う残虐ファイトは見たくないんだよぉっ!!


ハァ…。 とりあえず落ち着こう。


というか、本当にアルヴィナ氏がヒロインなのであれば、アリス氏の存在って何なの?という疑問が発生するんですけれども。


うーん…、わからん。


いやだって、実際にアリス氏ってキャラの【攻略】は出来てるんだよね。


まあジュリアン殿下のルートは正直微妙な所ではあるけれど、アシェルのルートは何だかんだもう7割くらいは攻略できていると思う。


ゲーム画面的に言えば、ハートがオレンジ色になっててもうすぐ赤くなりそうって感じ。だからデートイベントもちょこちょこ発生してるし、呼び方もお互いに『アリス』と『アシェルくん』って名前で呼び合ってるんですよね。 これは割と好感度が高くならないと発生しないやつなんだよね~。やっぱり名前呼びって特別感があってイイヨネ!


…ってそうじゃなくて。


ゲームの中で発生してたイベントが現実でも起きてるってことは、やっぱりアリス氏がヒロインの可能性も微レ存ってこと?いやでもなぁ…



──待てよ、これもしアリス氏もヒロインってなったら、私は一体どっちのサポートをしたらいいんだ?



ヒロインをサポートしないサポート役のいる意義、とは。



というか、そもそもアルヴィナ氏は誰かを攻略ってしているんだろうか?

生徒会メンバーに選ばれていた所を見ると、ジュリアン殿下かキーラン、もしくはティモシーの可能性が高いとは思うんだけれど…。あ、教師のクライヴという線もあり?何かよく手伝いとかしてるっぽかったし。


でもジュリアンルートでのライバル令嬢であるカトリーナ嬢と仲良さげにしてたことを考えると、やっぱりジュリアンルートか…?

いやでもあの感じだと、寧ろライバル令嬢と和解からの親友ルートで、ジュリアン殿下とは友人ENDな気もそこはかとなく…。


ムムム。情報が足りない。 


というか、もしかしてアリス氏がジュリアンルートを中々進められないのってこのせいだったりします?

アルヴィナ氏の方が先にジュリアンルートに入っちゃってたからアリス氏とのイベントが発生しない、とかさ。



──ふむ。

もしやこれもアリス氏にバレたらブチ切れ案件なのでは???



う~~ん、修羅場の予感!(白目)




◇◇◇◇




──スルリ


「えっ…」

「………」

「ア、アシェルくんどうしたの?」

「あっ…す、すみませんアリス。あなたの柔らかそうな髪を見ていたら、つい…」

「そ、そっか…。もうっ急に触るからびっくりしちゃったよ!」

「フフ、申し訳ありません」




ぐふふ。


……おっと失礼、現在私は中庭でスニーキングミッションの真っ最中であります。


いやねえ。あの後もずっと考えてはいたんですけど、やっぱりヒロインはアルヴィナ氏でほぼ確だとは思うんですよ。でもまだアリス氏がヒロインの可能性もゼロって訳ではないじゃないですか?


ということはですよ、


この【サポート役のミア】たる私は、その可能性がゼロではない限りヒロインをサポートするべきなのでは?と考えた訳です。

まあ実際アリス氏がモブか?って言われたら、いや流石にモブではないでしょと思う訳でして。


だからより一層情報を得るために観察(ストーカー)していた所、アリス氏のプチイベントに出くわしたという次第であります。


まあこれはイベントって言うほどのものでもないんだけれど、所謂日常のワンシーン的なアレである。


中庭で話し込むヒロイン(アリス氏)とアシェル。するとそのときスルリと一筋の髪が彼女の頬に掛かった。それをアシェルがそっと指先で優しく耳に掛ける。それに気づいて彼に目を向けると、そこにはまるで“あなたが愛しい”と言わんばかりの微笑みで見つめるアシェルの姿が───。



っっっ甘ぁーーーーーい!!!!



くうぅ…生きてて良かった!

そりゃあ作り込まれたイベントムービーも勿論大好きだけど、こういう日常のひとこまっていうか、ふとした瞬間の幸せな記憶みたいなやつも大好きなんだよなあ!かぁ~っ甘酸っぺえ~~~!!


惜しむらくはスクショ機能がこの世界には存在しないことだよね。これはもう世界のバグでしょ。


いやぁアリス氏も中身に目を瞑れば、やっぱりヒロインでもおかしくないんだよなあ。だってこのシーンも全然違和感ないし。もしかしてここって(ダブル)ヒロインの世界線だったりします?




「それでさ~!えーと何だっけ…ステラ?だっけ、まあ確かそんな感じの名前なんだけど、何かそいつの様子が最近おかしいらしくて~──、」



あ~…これはあれか。アシェルルートで発生するイベントで、昔お世話になった女の子であるステラ(アシェルルートのライバル令嬢である)の様子が最近おかしい…から始まるアシェルのメインストーリーが進んでいる模様。


あ、ちなみにこれは街に入り込んだ魔物が人を操っていたというのが事件の真相であり、そこからなんやかんやあって教会の後ろ暗い部分を暴いて粛正するというのがアシェルのストーリーである。

ハッ!もしネタバレ絶許勢の人たちがいたら大変申し訳ない。メンゴ☆


ってそんなことはさておき、あのプチイベの後部屋に戻ってきたアリス氏から、惚気なのか自慢なのかよく分からない話を延々と聞かされているなう。


「でね、そのステラって子と話してみたんだけどぉ、あの子ってちょっとアレだったんだよね。ほらステラってアシェルのライバル令嬢…って言ってもミアにはわかんないか。まあそーゆーアレなんだけど、でもその割にはっていうか、意外と地味?陰キャ?ってゆーかこれでライバル令嬢とかマ?みたいな感じでw  いや別に悪口とかじゃないから!いやマジだって! ただほら何ていうの?髪型とかも微妙だったし、顔も正直……ね?みたいなw  いや別にかわいかったよ?かわいいかったんだけど!ほらアレ!えーと、素朴系?みたいなw  まぁぶっちゃけクソダサかったwww」



スゥーーーッ…


あー…今日もチクチクしてんなぁ…。てか喋る言葉が全部悪口なんだよなぁ……あ゛~…誰かコイツに天罰下してくんねぇかなぁ……


ハッ! 危ない…危うく闇堕ちするところだった。


いやそもそもさぁ、確かにステラはパッと見で美人!っていう華やかなタイプではないよ?でもその控え目でふんわりとした柔らかさが最高に癒しを与えてくれる神キャラなんだが??? “地味すぎw”とか“幸薄そうw”とか言ってる奴らはマジで一から人生やり直せ???


ったくこれだから素人はよぉっ!!



というかこのストーリー、対応を一歩間違えるとアシェルとステラの親密度が爆上がりしちゃうから、気が付いたら一気にノーマルエンドもしくはッドエンド直行という結構難易度高めのやつなんですけどね?


私のオススメの進め方としては、途中で魔物との戦闘があるから教会の神官騎士を一人仲間にして、戦闘はアシェルとその騎士に任せてヒロインは回復とかサポートに専念するスタイルで進めていくという方法である。


まあこれはヒロインが〈聖女〉の称号をゲットしてるのが前提にはなるんだけれど。これ実は称号がないと、光魔法の威力が足りなくてヒロインも戦闘に参加せざるを得なくなってしまうのだ。


このイベントの何が難しいかって、ヒロインが戦闘に参加すればするほどアシェルの好感度が下がっていくところなんですよね~。


私も最初その仕様に気が付かなくて、ずっとノーマルエンドとバッドエンドを行き来してて地獄を見ましたわ。


とはいえ、この攻略法さえ分かっていれば何てことないイベントなんですけどね。



流石にこの辺はアリス氏も知っていたらしく、好みの神官騎士を無事ゲットしたと先ほど上機嫌で自慢されましたとも。


いや、「ミアには真面目そうな騎士とか合いそうだよね~。あっでもミアはヒロインじゃないから別に騎士を選ぶ必要とかないかw」っていうセリフは本当に必要ありましたかね???


相変わらずこっちのやる気を削ぐのが上手い女である。チィッ!




◇◇◇◇




「──そうだティモシー、今度の演舞会での予算案はもう出来ているかな?」


「はいっ会長!それならここに!バッチリ出来てます!」

「ふふ、流石だねティモシー。いつも仕事が早くて助かるよ。」

「あ、ありがとうございますっ!えへへ…」



あ゛~~ジュリアン殿下に褒められて照れてるティモシーかわええ~…。イケメン同士の絡みに心が浄化されるんじゃあ~~…


──フゥ。

本日は生徒会の活動日でございます。嗚呼、〈キミ学〉のキャラたちに囲まれて視界が幸せですアリガトウゴザイマス…っ!


隣に立つタナーくんがまるで不審者でも見るような目でこちらを見ているような気も致しますが、全く気になりませんね。はい。


寧ろ何故キミはこの光景に興奮しないのか疑問さえ覚えます。キミ人の心とかあります?大丈夫そ?あ、大丈夫ですか。そうですか…



「よし、区切りもいいし少し休憩しようか。」

「そうですわね。あ、そうですわ、今日はうちで最近輸入し始めた新しい茶葉を持ってきましたの。宜しければそちらをお試しになりませんこと?」

「へえ、いいね。楽しみだ」

「それでは本日はそちらを淹れさせて頂きます。」

「あ、ちょっと待って。折角だしアルヴィナに淹れて貰おうよ。」

「あらいいですわね。」



ジュリアン殿下とカトリーナ嬢のやり取りに周りはハテナを浮かべている。もちろん私もその一人である。


えっお茶淹れるのは我々の仕事なのですが?何故態々書記であるアルヴィナ氏に…?


チラリとアルヴィナ氏に目を向けると、眉間に皺を寄せ露骨に嫌そうな表情。あっ待ってなにその顔しゅき…


しかしこの部屋、ひいてはこの国の中でもトップに近い権力を持つお二人からの笑顔という圧に何人も逆らうことはできない。ハァ、と割とでかめのタメ息を吐いてアルヴィナ氏は立ち上がった。



「……茶葉ってどれ」



つ、強いな…アルヴィナ氏。


「ウフフ、そこの棚の中ですわ。アルヴィナか淹れてくれるのは久しぶりね、嬉しいわ。」

「アルヴィナの淹れるお茶は美味しいんだよ。タナーとミアも一緒に飲もうか。きっと驚くよ」



一応侍女係ではあるので、何もせずにいるのは居たたまれない気持ちになってしまうが、そこはそれ。正直嬉しさが勝ってしまうよね。だって美少女が手ずから淹れてくれるお茶ですよ!寿命が延びます。延びたわ。



そんなことを言っている間に淹れてくれたお茶の味は───、





 バカ旨かったです。はい。



あの、私が淹れるお茶より全然美味しいんですが…?

というかアルヴィナ氏、全部の工程を魔法でやっていたんですが魔法ってそんなこと出来たんです?マ?



「えっメイナード先輩の淹れてくれたお茶美味しすぎません???」

「メイナード嬢は何か特別な訓練でもしたのか?先ほどの魔法の使い方も見事だった。」

「!?!?!?」



ティモシーはその味と香りに驚愕し、キーランは淹れ方について考察を始めタナーくんはあまりの美味しさに混乱している。


そうだね、侍従・侍女係である私たちが淹れるお茶より美味しいもんね。正直面目丸潰れだもんね。色んな意味でヤバい。


其々がその美味しさに戦慄する中、初めから知っていたであろうお二人は当然の如くドヤ顔である。なんだその顔、可愛いなチクショウ。


というかアルヴィナ氏の魔法がマジでヤバかった。え、やり方教えて欲しい…。

しかし残念なことに私の属性は風と火である。水が無い。オワタ。



「いやぁ、アルヴィナの魔力操作は相変わらず見事だね。ミナージュ先生が惚れ込む訳だよ。」

「もうジュリアン、そんな風に言っては誤解を招きますわ。」

「あはは、ごめんごめん。でも君達も見ただろう?これがこの学園で最も魔力操作に長けていると言われる生徒の実力だよ。」


「「「!?!?」」」



はあ~~~!?マジっすか。

っぱアルヴィナさんパネェっすわ。てか殿下よりも上なの?ヤバ。スペック高杉ワロタ。



再びアルヴィナ氏が淹れてくれたお茶を口に含む。



──コクリ。



どこか柔らかさを感じる口当たりに、茶葉本来の旨味を余すところなく感じる。

そして飲み込むと同時に鼻腔から抜けていく豊潤な香り。


勿論この茶葉の持つポテンシャルもあるだろう。


しかしそれを最大限引き出すには技術がいる。そして味や香りだけではなく、その見た目までも美しいときた。


この濁りのない透明感のある美しい赤色は、そう簡単に引き出せるものではない。


私だってこれでも幼い頃からお嬢様付きの専属メイドをやっているのだ。紅茶の淹れ方なんてメイド長から幾度も叩き込まれていますとも。




──それでも『負けた』と思ってしまった。




…いやあ、これ本当にアリス氏に勝ち目ってあります?

どう考えても無理じゃね???


■ミア'Sメモ


▪【ティモシー・ハウエル】

▼ハウエル商会跡取り  ※ハウエル商会…老舗の大商会。貴族の顧客も多い。

▼属性:水、火


・水色の髪にライムグリーンの瞳。

・頭の回転が早く、甘え上手で人懐っこい後輩キャラ



現在のアリス氏への好感度:20%


ミア「はあ?あの笑顔はあざとすぎんだろ。優勝。弟として一生可愛がりたい」

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