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四冊目

待機を命じられた部屋の窓の外から、少し離れた広場に集まる人々のざわめきがここまで聞こえてくる───。





「ふふ、緊張してるかな?」


「は、はい、こんなに沢山の人の前に立つのは初めてで…。ジュリアン殿下はやっぱりこういった事には慣れていらっしゃるんですか?」


「まあそれなりにね。 ではそろそろ行こうか──





  さあ“聖女”殿、お手をどうぞ。」





そうして柔らかな笑顔を浮かべた第二王子ことジュリアンにエスコートされ、アリスは新たな聖女誕生を祝う民たちが集まる広場へと歩みを進めるのだった。




◇◇◇◇




いや~盛り上がってますなあ。


やあやあ皆さまこんにちは。〈キミ学〉のサポートキャラことミアです。

現在私は《聖女誕生の儀》の会場である王都の大聖堂前の広場にて、群衆の一人として紛れ込んでおります。


この度無事に聖女認定されたアリス氏は、頭からベールを被ったどことなく聖母マリアちっくな衣裳に身を包み、メインヒーローであるジュリアン第二王子殿下にエスコートされながら広場へと姿を現した。見目麗しい第二王子殿下と初々しくも可愛らしい聖女様の御姿に民衆は大興奮であります。


確か《聖女》が誕生するのは、アシェルの《聖人》認定以降は初だったはずだからたぶん10年ぶり?くらいになるのかな。


他にも聖女や聖人の方はいらっしゃるから、アリス氏も合わせて確かこれで16人目とかだったはず。

ゲーム的には「いや多いな!」って感じだけれど、現実としてこの世界では聖女や聖人って“めちゃめちゃ腕のいいお医者様”って扱いだから、一国として考えれば全然少ないんですよね。とは言え効果は低いけれど他にも光属性持ちの人はいるので何とかなっている感じである。


まあどちらにせよ居て貰わにゃ困る人たちなので、こうして新たな聖女様誕生にみんな狂喜乱舞してるって訳ですな。



さて、そんな光景を目の前にご満悦そうなアリス氏は、さりげなくジュリアン殿下に身を寄せて仲良しアピールをしている。


その横でジュリアン殿下はにこやかに微笑まれてはいるけれど、そんなアリス氏の背中や肩を支えるでもなく、直立不動で微動だにしない辺りに心の距離を感じますね。まあその事にアリス氏が気づく気配はないんだけれど。




「ねえ~もうジュリアンってばやっぱマジでカッコいいんですけど~~!」



あんたもそう思うでしょ!と肩をガクガク揺さぶられている私に答える余裕などないので、とりあえず一旦離れて欲しい。


「何て言うか隣に立ってるだけで包容力っていうか、安心感っていうの?本当にもうすごくて!それにジュリアンもあたしのことすっごい優しい目で見てくるから…もう恥ずかしいからやめてって言っても全然やめてくれないんだよ!もう本当に困る…///」


などと申しており…

いやまあ本当にジュリアン殿下がアリス氏を優しく見つめていたかどうかはさておき、これで1年目にやっておかなければいけないことは大方こなせたのではなかろうか。


あとはこのままパラメーターを上げつつ進級試験で良い成績をとって、2年目のクラスをできるだけ上げるようにすることかな。


うーん、とりあえず最低でもCクラス…

いやこのままジュリアン殿下狙いでいくなら、3年目にはSクラスを目指さなきゃいけないから……。そう考えるとBクラス、欲を言えばAクラスには上がっておきたいところ。


というかそもそもEクラススタートっていうのがまずおかしいんだよなあ~。

デフォルトのヒロインって確かCクラススタートじゃなかったっけ?



これはあれか……中身入りの弊害だろうか。



なんてことを考えていたら、あっという間に進級試験は終わっておりましたとさ。


さ~て気になるアリス氏のクラス結果はあ~~~?






デデンッ!


☆☆ ()クラスぅ~~ ☆☆!!!







んのっバカがよぉッ!!

テメ本当にやる気あンのかゴルアァッッッ!!!



ハァッハァッ……!

失礼、取り乱しました。いやついね、本音がね。

でもマジでやる気ある???



あー…さてはあれですか、《聖女》の称号はもうゲットしたから「あとはもう余裕っしょw」とか思ってサボってた感じですか。は???


いやさぁ。別にそこまで、というかこれっぽっちもアリス氏とジュリアン殿下にくっついて欲しい思っているわけではないんだけどさ、折角アドバイスをしている身からするともうちょっと真剣にやって欲しいというか何と言うかさあ…。



攻略(これ)は遊びじゃねぇんだぞ真面目にやれや(瞳孔の開いた姿)。



…おっと申し訳ない、〈キミ学〉ガチ勢の血が騒いでしまいましたね。

まあこの2年目で死ぬ気で成績を上げれば、可能性はまだなくはない、かな?

いや大分厳しいとは思いますけどね? あとはイベント(ランダム発生を含む)を全部回収できればワンチャンありってとこかな。


でもアリス氏ってなんだかんだ言って楽観的だからな…。「いやあたしがヒロインなんだからトゥルーエンド行けて当然じゃない?」的な考えが透けて見えるっていうか謎の自信をお持ちですねと言うか…。

そもそもいくら攻略情報を知っていたとしても、それは単にゲームの中だからこそ効率よく進められただけで、現実ではそう簡単に上手くはいかないと思うんですがねえ…。現に勉強だってボタンポチーじゃなくて、実際に知識を身に付けないと意味がないってこうやって結果として現れちゃってる訳ですしおすし。そこんとこ大丈夫そ?


あーでもアリス氏ってジュリアン殿下だけじゃなくて他にも狙ってた人たちがいたんだっけか。

まあアシェルとかなら攻略に必要なパラメーターもジュリアン殿下と被ってるやつが多かったし、殿下がダメだったらそこからアシェルに乗り替えるっていうのもありっちゃありではある。



う~~ん、これゲームの中だったら何も気にならなかったんだけれど、こうやって現実になるとアリス氏のクズ感というか人でなし感がすごいな…。




◇◇◇◇




さて、2年目になって大きく変化するところはいくつかある。



まずは新たな攻略キャラ、商人の息子であり人懐っこい後輩キャラである【ティモシー・ハウエル】の登場。

そして、それぞれのキャラたちの()()()()()()たちの登場である。



ちなみにこのライバル令嬢たちは所謂()()令嬢ではないので、ヒロインに対して嫌がらせやら何やらを仕掛けてくる訳ではない、というのがミソですね。


そう、ヒロインと攻略キャラとの仲を邪魔してくる訳ではないんだけれど、放っておくと勝手に攻略キャラとライバル令嬢の親密度が上がっていくという仕様である。なので複数の攻略キャラに手を出していると、いつの間にかライバル令嬢に出し抜かれていた、なんてこともザラにあるのだ。



ちなみにそんなライバル令嬢たちに対するアリス氏の反応がこちら──、


「はぁ?何あの【カトリーナ】って女!あたしのジュリアンに馴れ馴れしすぎ!マジで邪魔なんだけど さっさと消えろよ」

「つかあの女教師なんなわけ?クライヴだけじゃなくて他の生徒にまで色目使うとかマジでキモすぎでしょ。年増がしゃしゃり出てくんなっつーの」

「【ソフィア】?ああ、あの地味子でしょ。あたし隠キャとかマジ無理なんだけどw キモいからアシェルの周りうろつくのマジでやめて欲しい」


 ──以上。抜粋してお伝えさせて頂きました。



いやアリス氏性格悪すぎません? 心臓がヴッ…てなりました。

心の底からライバル令嬢たちを応援したい今日この頃。なぜ私はアリス氏のサポートキャラなのか…。


とまあそんなライバル令嬢たちなんですけど、大抵の人は最初の内は幼馴染みだったり憧れの女性といったような あくまで知人・友人といった立ち位置なんですよね。でも実はその中で一人だけ別の立ち位置のキャラが存在してるんですよ。それが──、



【カトリーナ・アルドリッジ】



アルドリッジ侯爵家の長女にして、第二王子であるジュリアン殿下の〝()()()〟その人である。


カトリーナ嬢は豪奢なワインレッドの髪に気の強そうなグレーの瞳をした、見た目だけならまさに()()()()といったキャラクターである。そして流石難攻不落のジュリアン殿下のライバル令嬢とでも言うのか、彼女もまた一筋縄ではいかない令嬢なのだ。


まず前提として、彼女は心底ジュリアン殿下に惚れている、というキャラクターではなく、非常に野心溢れる権力欲の強いキャラクターとして描かれていた。


元々は侯爵家唯一の嫡子だった彼女がジュリアン殿下を婿として迎えて侯爵家の女当主となる予定だったんだけれど、そんなときに新たな次期当主となる弟が生まれてしまったのだ。

幼少の頃から当主となるべく厳しい教育にも耐えてきたというのに、突然生まれた赤子が“男だったから”という理由だけで当主に選ばれる。その事実に彼女は荒れに荒れた。


さらには第二王子殿下との婚約は解消されず、女当主となる道は断たれそのまま兄である王太子の臣下へと下る男へと嫁がされるという。


プライドの高い彼女はそれが許せず、己の野望のために画策することになる。

狙うは侯爵家の当主よりもさらに上の立場。そう、王族である。最終目標は国母である王妃の座を。そのためには既に妃のいる第一王子である王太子を廃して、ジュリアンを王位に据える必要がある。そして自分が王妃となって暁には全てを牛耳ってやるのだ!


というのがカトリーナ嬢の背景である。



いや、うん、十分に悪役だね?ライバル令嬢 とは。

まあ全然嫌いじゃないんですけれどね。むしろ好きまである。

え、頭が良くてしごできのつよつよ美人が嫌いな奴なんておりゅ???



とはいえそれを知ったジュリアン殿下が「敬愛する兄ちゃんに何する気や!」とばかりにその計画は阻止するんですけれどね。そしてそれをヒロインがお手伝いしながら仲を深めていくというのがジュリアンルートである。

なのでカトリーナ嬢は、ライバル令嬢というよりは二人の恋の盛り上げ役といった方が正しいのかもしれない。 ちなみに彼女は自分の野望の方に夢中なので、ヒロインのことはほぼ無視である。最後の方でチョロっと対峙する瞬間はあるけれど、カトリーナ嬢からヒロインに近付いてくることはまずないという。 ライバル令嬢とは(2回目)。


というか、そもそもこのルートってめっちゃ難しいんですわ。

もはやこれは乙女ゲーではなく推理ゲーなのでは?と思ったプレイヤーは数知れず。初見で一発攻略はまず不可能だと有名でしたね。まあ後に攻略サイトに答えが載ってからはそんなこともなくなったんですけど。



とにかく、このカトリーナ嬢の陰謀を阻止する過程でジュリアン殿下との仲を深めることプラス、《聖女》の称号を持っていることで初めてトゥルーエンドに辿り着くことが出来るんですよ。


これ最初はずっと《聖女》の称号のことに気がつかなくて、カトリーナ嬢の陰謀は阻止できたのにジュリアンとは結婚できないっていうノーマルエンドにしか行けなくてドツボに嵌まったんですよねえ。



──えっ?《聖女》の称号って関係なくない?



と思うでしょ?これがですねぇ、あるんですよねぇ…。


そう、ジュリアン殿下はいずれ臣下に下るとはいえ、正真正銘の〝王族〟なんですよ。

いくらヒロインが仲を深めたとしても、王族とすんなり結婚なんて出来るはずがないのである。



うん、そうだね。身分差だね。


 

確かに現実でも 王族が結婚するのは高位貴族と呼ばれる人たちであって、たとえ貴族であっても下位貴族にはその資格は無かったんだとか。

だからラノベなんかでよくある、男爵令嬢のヒロインが王子の妻に収まる~っていうのはほぼほぼありえない話だってやつ。まあ裏技としてどっかの高位貴族の養子になるっていうのはあるらしいてすけどね。



閑話休題。



まあそんな感じで2年目は新しいキャラたちの登場もあってイベントも増えるから好感度は確かに上がりやすくはなるんだけれど、それと同時に攻略難易度もどんどん上がっていくっていうね。


そう、だからあっちもこっちも手を出してるとマジで取り返しがつかなくなっちゃうんだけどな~? でもな~私はあくまでただのサポート役であってお助けキャラとかではないからな~。攻略のアドバイスはできても、手遅れになったところを巻き返すようなミラクルなことは一切できないんだけどな~?そこんとこちゃんと分かってるのかなあ~???





「あっ!あれティモシーじゃん!えっめっちゃかわいい~~!あたし年下とか無理なんだけどティモシーならアリかも~。あ、ねえちょっと待って~!」







手出してる場合じゃねえんだけどな~~???


■ミア'Sメモ


▪【カトリーナ・アルドリッジ】

▼ジュリアンの婚約者

▼侯爵家長女

▼属性:火・水・土


・ワインレッドの髪にキュッと目尻の上がったグレーの瞳。

・高慢で野心家なつよつよ美人。



ミア「は?しごできのつよつよ美人なんてすこでしかないが???お姉様と呼ばせて欲しい」

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