三冊目
以前にしたアドバイスが効いたのか、最近のアリス氏は真面目に勉学に励んでいるらしい。
ただそれは部屋で大人しく机に向かうといったものではなく、図書館でこれまた別の攻略キャラである侯爵家四男のキーラン(※頭脳派眼鏡枠)に勉強を教えて貰っている辺り、転んでもただでは起きないというか、効率良くやってんなあといった印象である。
ちなみに今のところアリス氏が狙っているのは、
メインヒーローであり第二王子の【ジュリアン・アルフィ・エントミルズ】。
枢機卿の息子で穏やか綺麗系の【アシェル・ラスレット】。
教師でありながらもお色気お兄さん枠の【クライヴ・ミナージュ】。
常に冷静、紳士な眼鏡枠の【キーラン・レンフィールド】。
の4人らしい。いや多くない?
どうやらアリス氏は騎士や冒険者といった厳つい系のキャラよりも、涼しげな見た目の綺麗系男子の方がお好みな様子。まあ好みは人それぞれだから別にいいんだけれど、どちらにせよ攻略キャラはもれなく全員が信じられないくらいイケメンなので、この学園では全員凄まじい人気を誇っているとだけ。はぁ~~~毎日眼福ですわあ。
あとついでに今回アリス氏が選ばなかった残りの攻略キャラを紹介すると、
ジュリアンの護衛兼学友で快活な兄貴肌の【テオドール・グレイブス】。
ヒロインの幼馴染みで冒険者をしている無口なワイルド系の【ヴァルハルト・ユドゥロ】。
一つ年下の後輩で商人の息子の可愛い系癒し枠の【ティモシー・ハウエル】。
この3人を合わせた計7人が〈キミ学~season5〉 の攻略キャラたちである。
とはいえティモシーは後輩なのでまだ入学してきていないし、ヴァルハルトに至っては冒険者をしているのでそもそも学園には通っていない。なのでヴァルハルトを狙うなら冒険者登録をして学園外での行動を増やす必要があるんだけれど、今の所アリス氏にそういった動きはないので、まあこっちの攻略はしないんじゃないかなと。
え?私は誰を推してたかって?
あ~それなあ。正直全員攻略し尽くした身から言わせてもらうと、誰が推しというよりかは、“みんな違ってみんないい”という箱推しの精神になってるんですよね~。
だから『○○と付き合いたい!』っていう感情よりも、『みんな幸せにおなり…』という謎の後方保護者面で日々彼らを見守らせて頂いております。
まあアリス氏の毒牙からは逃げて欲しいな~という気持ちもない訳ではないんだけれど、でもそもそもここは彼らの物語だからというか何と言うか……
──正直昼ドラを観てる感覚です、はい。
いやいや、ここからドロドロの泥沼展開とかを期待してるだなんてそんなまさか…
誰か今すぐビールとつまみ持ってきてッッ!
◇◇◇◇
そんな感じで入学してから半年程が過ぎ、アリス氏のパラメーターも順調に上がってきた模様。少しずつではあるけれど、攻略キャラたちとの接点も増えてきたっぽい。
この間は教会での奉仕活動にも参加して、信仰と光魔法のパラメーターと枢機卿の息子であるアシェルとのイベントをこなしていましたね。特にこの光魔法を鍛えておくと、第二王子のジュリアンと教会所属のアシェルを攻略するのに必須となるある称号が手に入りやすくなるので、アリス氏も奉仕活動には積極的に参加しているらしい。
まあ帰って来た後の愚痴はすごいんですけどね…ハハッ。
そんなアリス氏は今日は学園内にある森へと来ている。
この森は学園設立当初からあって、さらに今では稀少となってしまった植物も自生しているとかである意味自然保護区のような扱いの森である。とはいえ学園の生徒であれば誰でも自由に出入りすることができる場所なんですけどね。そんな貴重な森ではあるけれど、昼でも薄暗いこの場所は生徒たちにはそこまで人気もなくて、好き好んで近付く生徒はあまりいない。
──という設定の場所なんだけれど、
いや別にこの情報が間違いという訳ではなくて、実はこの森にはもっと重要な秘密が隠されているんですよ。
そう、なんとこの森には………
『 精 霊 』が住んでいるのだ!! ドドン!
……いや、まあ、ファンタジーならよくある話か、うん。
とはいえ精霊ですよ!精霊!ワクワクするね!
精霊の話は私も小さい頃にお伽噺で読んだことはあるんですけど、実際に見たことはないんですよね。そもそも精霊は誰にでも見える訳じゃなくて、普通は魔力の高い人か或いはその精霊と相性のいい人にしか見えないんだとか。あ、でも例外として自己主張強めな精霊だとガンガン姿を見せてくれたりもするらしいですよ。
とは言っても精霊は謂わば魔力の塊のような存在だから、基本的には森の奥深くとか魔力の溢れる自然豊かな場所に居るらしい。
だから一応森の中とはいえ、こんな街中にある学園の中に居るっていうのは相当に珍しいことなんだと思う。だってゲームの中でもヒロインが精霊と契約したってなったときは結構な騒ぎになっていたっぽいし。
うーん、何か秘密がありそうだよねえ…
ってそんなことよりも契約ですよ、契約!
そう、実は精霊に気に入られると、なんとその精霊と『契約』できちゃうんですね~!わーパチパチ!
いいね~ファンタジーだよね~。
ちなみに精霊と契約すると、その属性の魔法の威力が段違いにアップするらしい。だから“精霊の契約者”になったと国に認められると、称号を与えられて人々からの称賛を浴びれるってわけ。
ゲームでもその称号をGETすると対応するキャラの好感度がググッと上がるから、無くても攻略は出来るけれど もはや必須になってたよね。
さあここで勘のいい人はもう気づいたんじゃないかな?
そんな森に一人でやって来たアリス氏は、一体何の精霊との契約を狙っているのか。
──そう、アリス氏が狙っているのは【光精霊】との契約。
ではここで問題です。光精霊と契約して得られる称号といえば~?
チッ、
チッ、
チッ、
…うんうん、そうだね。どう考えても《聖女》の称号だよね。
実はこの世界、まあラノベではありがちなんだけれど、光と闇の属性持ちって珍しいんですよ。
まああくまで珍しいであって稀少ではないのは救いなのかな?それで、何故か光と闇の魔法は他の属性魔法に比べて必要魔力が桁違いに多いんだとか。だからいくらその属性を持っていたとしても、魔力量が少ないと使い物にならない。
ただ、光魔法は信仰力を上げると威力が多少上がったりもするらしいんですけどね。
そこで出てくるのが“精霊契約”ってわけですよ。
特に光魔法は他の属性とは違って珍しく結界とか治癒がメインの魔法だから、国としても囲っておきたいと思うわけですよ。
だから光精霊との契約者には《聖女》又は《聖人》の称号が与えられて、さらには特権階級的なものまで付いてきちゃったりします。
一体どんなものかって?
例え元が平民だったとしても、高位貴族、果ては王族とだって婚姻を結ぶことが出来ちゃう権利ですよ!!
うーーん、ご都合主義☆☆
まあそれだけ光魔法、というか治癒魔法が貴重ってことなんだと思いますけどね。
あとついでに言っておくと、実は称号とは別の《聖女》と《聖人》もあったりする。
それは所謂“特化型”と言われる人たちで、普通は複数属性を持って生まれてくるところをごく稀に一つの属性しか持たずに生まれてくる人たちがいるんですよ。そういった人たちは一つの属性しか使えない代わりに、その威力がめちゃくちゃ高いという特徴がある。正にその魔法に“特化”した存在なんですわ。
その光魔法バージョンの人たちが、称号てはなく地位として《聖女》もしくは《聖人》として認められているってわけ。
ちなみに攻略キャラである【アシェル】がこの《聖人》としての地位を持っていたりします。
アシェルはこの光魔法の特化型であるっていうのと、元々貴族で魔力量が多かったというのが理由で枢機卿の養子になったんですよね。 そう、養子である。
アシェルの元々の家は貴族ではあったけれど貧乏で……という所から始まる彼のストーリーは、彼の穏やかな顔の裏に隠された苦悩や葛藤がまたね…“イイ”んすわ。心臓がキュンキュンどころかギュンギュン絞られるんだけれど、それを乗り越えて迎えるラストのスチルがまた最高でさぁ。あれを見てさらなる深みにはまったよね。
閑話休題。
ちなみに精霊と契約するにはどうするのかというと、まず契約したい属性魔法の親和性を上げる、つまり魔法の熟練度を上げることが重要になる。
そもそもヒロインには元々【精霊に好かれやすい魔力をしている】という設定があるので余程のことがなければ契約することは出来るんだけれど、親和性が低いと『まだ何かが足りないようだ…』といって契約が見送りになっちゃうことがあるんですよ。
でもそれで《聖女》になるのが遅くなると、必要なイベントがこなせなくてトゥルーエンドに行けなくなる、なんてこともあるから油断出来ないんですよね。私もそれで何度かジュリアンの攻略失敗しましたわ。
だから余裕を持って攻略したいなら今がベストタイミング!っていうのは確か。
そんでもってここで出てくるのが救済アイテムですよ!
精霊には各々好みがあるので、その好みに合ったアイテムをあげると成功率が上がるっていうアレです。例えば光精霊ならハチミツ、水精霊なら水晶、風精霊なら鈴、みたいな感じですね。
さて、そんなハチミツを片手に握りしめたアリス氏の結末やいかに……っ!
◇◇◇◇
『ふぅん、まぁそこそこって感じ?まいっか、ハチミツもくれたし契約してあげてもいいよ~』
ボーイソプラノの可愛らしい声を響かせながら、光精霊はクルリとその場で回った。
──アリス氏無事に契約成功である。
【精霊に好かれやすい魔力をしている】という割には随分ドライな反応を返されていたような気もするけれど、とりあえずは成功らしい。
無事に契約の証である紋様が刻まれた左手を見て、満足そうに「えへへ、よろしくね」とまるでヒロインのような返事をしているアリス氏。いや、ヒロインだったわ。たまにはその可愛らしさを私の前でも見せて欲しい所ではある。
『それじゃあまたね~。次も魔力くれるなら力を貸してあげてもいいよ~』
そう言って空気に溶けるように消えていった光精霊に、アリス氏は笑顔で手を振り別れを告げていた。
……………あっれ~???光精霊ってあんな感じだったっけ?
確かに見た目はあんな感じの天使の如きショタっ子の姿 (ぬいぐるみサイズ)だったけれど、ゲームの中ではもっと何かこう、きゅるんきゅるんした感じだったような…?
まさか現実ではやや小悪魔風味が足されてしまったということだろうか。
ふむ、、、
何も問題ありませんね!
小悪魔ショタっ子大好物ですありがとうございますっっ!!
なんて茶番()はさておき、無事に光精霊と契約することに成功したということは、この後は教会で申請して国から《聖女》の称号を貰う流れか~。
これはジュリアン殿下かアシェルのルートで確定かな?…いやでもジュリアン殿下ってメインヒーローの癖に攻略難易度一番高かったし、確実に行くならジュリアン一本に絞るのかもな~。
まあどちらにせよ攻略対象者を減らしてくれるのであれば、こちらとしてもコッソリ観察する手間が減るので大歓迎である。常に行動を先読みして物陰にスタンバっているのも楽ではないのですよ。
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「え~あたし《聖女》とかできるかなぁ?だってあたし聖女とか全然なるつもりなかったしぃ、でも何か偶々森に行ったら精霊さんに好かれちゃったみたいなんだよね。なんかこれって私の天性の素質?みたいなのらしくて、いやでもそんなこと言われてもって感じじゃんw? あっでもジュリアンはあたしのこと支えてくれるって言ってたし、それならちょっとは頑張れるかも…ってちょっと待って、何かめっちゃ照れるんだけどっ!ヤダ~~///」
「あ、あ~…そうなんですね!すごいですう!」(いやお前ガッツリハチミツ持って行っとったやんけ)
「あでも聖女になるなら髪型とかも変えた方がいいかなぁ?やっぱり聖女なら清楚系が正解だと思うしハーフアップとか? でもあたしって童顔だから綺麗系とか大人っぽい髪型とかは似合わないかも…。あ、でもジュリアンとかアシェルとかみんなはいつも可愛いって言ってくれるんだよ? でもでもそうじゃなくて!あたしは可愛い系じゃなくて綺麗系目指してるの!って言っても、みんな頭ポンポンするだけなんだよ?ヒドイくない? もうこの丸顔マジでコンプレックスなのにぃ」
「へ、へぇ~…大変デスネ」
「そうそう大変と言えばこの間なんて───」
そうしてその後も延々と攻略キャラたちとのモテエピソード(※過大解釈を含む)を散々語られ、疲労困憊になりながらも眠りについた。
───そうしてアリス氏が《聖女》に認定されたという噂は、瞬く間に学園中へと広まったのだった。
■ミア'Sメモ
▪【アシェル・ラスレット】
▼枢機卿の息子(養子)であり【聖人】
▼属性:光
・プラチナブロンドの髪、翠の瞳、中性的な容姿。
・いつも微笑みを浮かべた穏やかな性格。
・清廉潔白を絵に描いたような人物。
現在のアリス氏への好感度:35%
ミア「これぞ正に儚げ美人。しかし最後のあの泣き顔スチルで性癖を捻じ曲げられた同志は多い」




