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十二冊目

ねえみんな聞いてっ!


《ダンジョン攻略》のパーティーメンバーにヴィーナタソが私を入れてくれたのっ!もうヴィーナタソってば本当にマジ女神!これはもう誰が見ても私たちズッ友だよね☆彡

 




痛っ!スミマセン調子に乗りました! あっあっ、ぶたないで…っ!

 


───ふぅ。

いやね、実はあのどう頑張っても地雷パーティーにタナーくんが放り込まれて魂を飛ばしている間に話は進みましてね、気が付いたら私は女神のパーティーに入れて貰ってたんですよ。


え?意味が分からないって?


まぁそれはそう。

では改めてあの後何があったかと言うと……



。 . .。・.+ .゜。.゜ °


「やはりダンジョン攻略となれば回復役は必要だろう?本当はアシェルにお願いしようかと思っていたんだけれど、ほら彼今は忙しそうだしね。そうしたら聖女殿がぜひにと言ってきてくれたんだよ。」


「そ、そうでしたか…」



いやだからってマジか、あの女を?とタナーくんの表情が物語っている。まあアリス氏のジュリアン殿下へのアプローチが最近どんどん激化しているのを知っている身からすれば当然の反応である。


休み時間や昼食時に突撃してくるのはもちろん、生徒会室にも何度も侵入を試みている。 まあすぐに追い出されてはいるんですけども。


そしてその際に殿下の近くにいる女生徒──カトリーナ嬢やアルヴィナ氏──に対して、威嚇というか流石に口撃まではしてこないけれど、あからさまな無視や敵意を向けてくる訳なんですよ。


ちなみにここで「はっ!?ついにここに来てWヒロイン対決が!?」なんてちょっと盛り上がりかけたおバカさんがいるらしいんですけれどそれはさておき。

どうやらアリス氏の方はアルヴィナ氏を見て一瞬「ん?」となったみたいなんだけれど、アルヴィナ氏の方は一切相手にしていなかったので二人の邂逅はそれで終わっていましたね。キャットファイトからのアリス氏ざまぁ展開にはなりませんでした。はい。


まあアリス氏の方は部屋に戻ってきてから、「頭ピンクとかマジ頭軽そうでうけるw 何あいつ?あんなのがあたしの代わりに生徒会やってるワケ?てか仕事できんの? あーあ、バグさえなかったらあたしが生徒会メンバーだったのにー!本当クソ」


とか言ってましたネ。

どうやらアルヴィナ氏が本物のヒロインかも!?とかそういう考えには至らないらしい。きっと己がヒロインであるとかなりの自信をお持ちなのでしょうねえ…。ハハッ



とまあ普段の言動を思えば、日帰りならまだしも泊まり掛けのダンジョン攻略なんて面倒事が起きる可能性しか感じないですよね。それに実はアリス氏の回復魔法の腕って光精霊と契約している割にはそこまで良くはないんですよ。精霊のお陰か消費MPは少ないけれど回復量も少ない、みたいな。まあ最近は信仰のパラメーター上げもサボっているみたいですし、然もありなんかと。


カトリーナ嬢も最近は背筋も凍るような冷笑を浮かべていたんですけど、よく同じパーティーになることを了承したな…。


もう見てるコッチとしては、コイツいつ不敬罪でしょっ引かれてもおかしくねぇなっていうか、お前今〈聖女〉っていう肩書きのだけでかろうじて首の皮一枚繋がってるだけなんだぞわかってんのかというか。


なんてことをみんなも考えていたのか、『あーこれ何か裏があるんだろうな』って全員何となく察しちゃったよね。そしてタナーくんはその片棒を担がされてしまうという訳ですね。 うん、頑張れ!



「精一杯やらせて頂きます…」



タナーくんがガックシと項垂れたところで、何故か今度は完全に他人事だった私へと標的が移り変わった。


「ミアはアルヴィナの所へ入れてもらうといいよ。」

「えっ?」

「いいよね、アルヴィナ」

「はぁ」

「いいって。良かったね」


えっ?いや今本当にいいって言った?

今の「はぁ」って本当に了承の意味の「はぁ」でした???


いや、そりゃアルヴィナ氏とヴァルハルトのイチャイチャを間近で堪能できる機会があるのならそれはご褒美でしかないのですが…。 えっでもこれもしかして私、ヴァルハルトに二人きりの邪魔だからって消されたりしません?


「ふふっ 大丈夫だよミア。二人の邪魔さえしなければ流石にヴァルハルトも噛みついてきたりはしないさ。」


…おっと、どうやら口に出ていたらしい。

というか邪魔したらやっぱり噛みつかれるんかーい!え、本当に大丈夫?


「そもそもダンジョン攻略の最低人数は三人だからね。どの道二人だけでは行けないんだよ。」

「アッ そ、そう言えばそうでした…」



とそんな感じでジュリアン殿下がナイスアシスト(?)してくれたお陰で、私は女神と同じパーティーに入れたという訳ですよ。



は~~~っ!こりゃ《ダンジョン攻略》が一気に楽しみになってきましたなぁっ!


これは張り切って色々と準備せねばっ!!




◇◇◇◇




「ステラ…。やっと洗脳も解けて体調も良くなってきていたというのに、どうして…」



眠る少女の頬にそっと触れるも、少女が目覚める兆しはない。





アシェルは焦っていた。

それはアリスや神官騎士と共に事件を追っていたときに気が付いた一つの懸念。



〝もしかしたらこの事件にはまだ黒幕が残っているのではないか?〟 



事件の調査中に現場て拾った一つのアイテム。

それは教会に所属する者なら誰でも持っている神の姿が彫られたメダイであった。しかしこのメダイはあまり知られてはいないが、実は細かい模様や装飾の違いで持ち主の階級を表しているものでもある。


初めは洗脳されていた神官やシスターの誰かが落とした物だと思っていた。しかしそのメダイが示す階級はそんな彼らの階級ではなく、寧ろ上から数えた方が遥かに早い階級のものであり…。


ただの偶然かもしれない。

でももしそうではなかったとしたら…


一つの疑惑が胸の奥でしこりのように重く残る。


もしも事件の裏で手を引いていた者がいたとしたら?

この事について調べるのであれば、信頼できる仲間と行った方がいい。頭では分かっている。

しかしもしこの件に枢機卿である自分の()()が関わっていたとしたら。そしてそんな人間と義理とはいえ親子である自分を、果たして彼女はどう思うのだろうか。


〝もしアリスに嫌われてしまったら…?〟


そんな考えがアシェルの心を暗くする。

彼女はそんな人ではないと頭では理解していても、幼少期の経験から【捨てられる】または【裏切られる】行為に対してひどく過敏になっている自分が顔を出す。もはや恐れていると言ってもいいだろう。


(何を弱気になっているんです。アリスはこんな私の弱く醜い部分すらも認めて癒してくれたではないですか。共に生きると約束してくれたではないですか…っ! はぁ…情けない。しかしもし本当に養父上…枢機卿までもがこの件に関わっているのだとしたら、それを諫めるのは私の役目、なのでしょうね…)


本当はあのままアリスや神官騎士と共に調査するのが正解なのだろう。しかし恋を知り、失う恐怖を思い出してしまった臆病なアシェルは、敢えて一人で調査することを選んだ。



そうしてアシェルが忙しくしていた所へ届いたステラが病に侵されたという報せ。


アシェルはすぐにステラの元へと向かったものの、何度治癒魔法を掛けもステラが目覚めることはなかった。

元よりアシェルが得意とするのは治癒魔法よりも結界魔法や攻撃魔法であった。決して治癒魔法の腕が悪いという訳ではなかったけれど、特別いいという訳でもない。やはりここは光精霊と契約している彼女を頼るべきか…


「アシェル様…、これはもしやただの病ではないのでは…」


その時ステラを看病していた一人の老年のシスターが言葉を掛けた。アシェルも昔ステラと共に世話になったことのある馴染みのシスターである。


彼女が言うには、特に持病や外傷もなく突然目覚めなくなるというのは病以外の可能性もあるのではないかと。実際彼女は昔幼かった頃に似たような症状の〝呪い〟を受けた者の話を聞いたことがあると言う。


「〝呪い〟ですか…」


呪いとは、ひどい戦場跡や廃村など多くの血が流れ、空気の淀んだ場所で多く発生すると言われている。そしてそのような場所に長く放置されたアイテムにも稀に呪いが宿ることがあるという。


実際に呪いについて分かっているのはその程度でしかなく、病と呪いの区別もハッキリついていないのが現状である。

呪いと一言で言っても症状は様々で、一応光魔法に解呪(ディスペル)の魔法はあるものの、原因がよく解っていない為か効果も薄い。光魔法持ちが数人掛かりで数日に渡って掛け続けることでようやく解呪できるような代物なのである。


そもそも呪いを受けること事態滅多にあることではなく、アシェルも解呪(ディスペル)の魔法を使った経験は殆どない。


もし実際にステラが呪われているのだとしたら、ただの平民である彼女に解呪(ディスペル)を掛けてくれる光魔法持ちは自分以外に現れるだろうか。


解呪(ディスペル)は難易度が高い上に魔力も多く使う。それゆえに魔力量の多い人間、つまり貴族の光魔法持ちが必要となるのだ。

しかし貴族というものは平民を軽んじる。つまり、ステラに態々解呪(ディスペル)を掛けてくれる相手は殆どいないということ。



でも……〝()()〟なら、



心優しい彼女なら、精霊とも心を通わすあの子なら、きっと 私と一緒にステラを助けてくれるはず。


だって彼女は私の愛する人であり、また人々の安寧を願う同志でもあるのだから。


ねえ そうてすよね?




  ───アリス。




◇◇◇◇




「シッ」


──ザシュッ




一陣の風と共に振るわれた刃は、あっさりと目の前の魔物の命を刈り取った。


視界に入ると同時に討伐され、その場に報酬のアイテムだけを残して消えていく魔物を横目に、私は今夜の夕飯は何にしようかと考えを巡らせる。



「ヴィー 終わった」

「そう、イイコ」



目の前には魔物を倒す度にイソイソと報告に来るヴァルハルトと、その頭を面倒そうにしながらも撫でて労うアルヴィナ氏の姿。

先程からこの一連の動きがワンセットとなって永遠と繰り返されている。



ッスゥーーーー…


 あざっっっス!!!!(クソでかボイス)



いや~イイネ! ダンジョン攻略最高か~???

いやもうね、ヴァルハルトが完全にでっかいワンちゃんなんですわ。さっきから魔物倒す度にイソイソと戻って来てはアルヴィナ氏に撫でて褒めて貰う、の繰り返しで、それはもうただのご主人様とワンコなのよ。おかしいね、ヴァルハルトは確かワンちゃんではなく狼だったはずなんだけれどね。


さっきから尻尾振ってるワンちゃんとご主人様の図に、本来ならないはずの尻尾と耳がヴァルハルトについているように見えるもの。これをゴツい強面のイケメンと女神の如き麗しの気だるげ美人がやってるんだぜ?最高かよ。ありがとうございますもっとやって下さい。



さて貴重なワンちゃんとご主人様のスチル話はさておき、そろそろここいらで現状の説明でもしておきますか。とは言ってもみんな大体の想像はついているんじゃないですかね?


はい、現在はみなさんお察しの通り《ダンジョン攻略》イベの真っ最中ですよ!


いや~ここ最近は準備だなんだでめちゃめちゃ忙しかったんですよね。気が付いたらイベント始まってましたって感じです。


とはいえ前世では何度もこなしたイベントですからね。余裕余裕~☆なんて思ってた時期が私にもありました…。



──しかし現実はなんとも無情なものでした。



余裕だったのは画面の外からボタンを操作しているだけだったからこそ言えるものであり、現実ではいくら訓練を積んだとはいえ本物の殺気を浴びせられれば体は強張り、膝は震え、冷や汗が止めどなく流れてくるものである。


アッ これ無理っスわ。


ってなるのは仕方なくない!?

だって前世を含めて、自分の手で殺したことがある生き物なんて虫くらいしかいないんだが!?


なるほどこれが《ダンジョン攻略》の必要性ね!?納得ですわ! でも私にはちょっとこれは無理そうカナぁっ!?!?



斯くしてそんなチキン野郎こと私は早々に戦力外通告を出され、パーティーの後方での支援を務めることと相成りました。うぅっ 同じ転生者仲間であるはずのアルヴィナ氏はちゃんと戦っているというのに不甲斐ない…っ!


とはいえ最初こそヴァルハルトと一緒に戦っていたアルヴィナ氏なんだけれど、すぐにヴァルハルトがアルヴィナ氏からのお褒めの言葉というか、なでなでタイムに味を占めてしまった為、上記の状況に落ち着いてしまったんですけれどね。その頃にはようやくというか、戦闘中(ただの見学者)に他のことを考えられるくらいの余裕が出てきたという訳です。


なので我々女性陣二人はヴァルハルトの戦いをのんびりと眺めているだけである。本当にこれでいいんですかね…?まぁヴァルハルトは幸せそうだからこれでいいのか。うん。


そんな感じで時々アルヴィナ氏との距離が近すぎてヴァルハルトから唸られたりはしたものの、とりあえずは順調に攻略は進んでいます。

正直ヴァルハルトはまだちょっと恐いけれど、私としては推しを近くで思う存分観察できるので特に不満は感じていない。むしろ頑張って存在感は消すのでもっとイチャついてくれと声を大にして言いたいくらいである。



そんな道中を過ごしつつ今はようやく一日目の夕方を迎え、先程ダンジョン内の安全地帯へとやって来たので今夜はここで野営をすると決めて現在私は夕飯の準備中である。


残念ながら私は戦闘面はからっきしなのでね。こうして裏方のサポートは張り切らせていただきますよ!

待っててねヴィーナタン!今美味しいご飯作るからね!


とは言ってもここはダンジョンの中。ダンジョン内では魔物も倒すと消えてしまうので、基本の食事は保存食を齧るか干し肉を使った塩スープくらいである。


だがしかし、ここには食にうるさい前世日本人の魂を持つ私がいるっ!


フフフ…私はこの日のために色々と準備してきたのですよ…。

そう、全てはヴィーナタソ(私の最推し)に美味しいご飯を食べてもらうためにっ!


いやまあ流石に醤油や味噌を用意できるほどチートではないんですけどね。でもその代わり、干し魚や干しキノコ、あとは使えるハーブ類なんかもガッツリ持ってきてますよ!


これで塩だけの単純スープから、出汁の効いた複雑な旨味のスープへと大変身ですよ!さらにカチカチのパンだって、ちょっと炙ってカリッとさせた上からトロ~ッと溶けたチーズを載せたらそりゃあもうね!



「ん、おいしい」

「………うまい」



はいっヴィーナタソの微笑み頂きました!!

ハッ…!これはもしや私にもご褒美のなでなでタイムが…?アッごめんなさい嘘ですそんな訳ないですよね、分かってるから唸らないで…


くそぅ。この狼ちょっと狭量すぎやしませんかね…?


はぁ~それにしても生き残るのが前提とはいえ、下手したら本当に死ぬかもしれない学校行事って一体何なんでしょうね?怖すぎるでしょ。

 

まあでも?お陰さまでこうして間近でヴィーナタソのイチャイチャを見れていますし?推しの生スチルのためと思えば私は全然頑張れなくはない、かな。


だから今のところは何だかんだ楽しんでいる部分もあるのだけれど、そう言えばアリス氏を迎えたジュリアン殿下たちは今頃どうしているんだろうか?







「絶対面倒なことになってるんだろうなぁ…」



 ───Exactly.(その通り)



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