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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一三一一話、答えない無人機


 一体何が起きたのか、理解できなかった。


「観測機から報告! 攻撃隊が引き返しました!」


 地球軍機動艦隊の旗艦『出雲』にもたらされたその報告は、小沢 治三郎連合艦隊司令長官をはじめ、司令部を困惑させた。


「どういうことだ?」


 当然の疑問であった。草鹿 龍之介参謀長は首をかしげる。


「確認はできないのか?」


 皇帝旗艦の防空能力の高さから被害が読めない故に、損害に構わず飽和攻撃を仕掛けるため、投入した全機を無人機にした。

 全滅しても構わない。それだけの覚悟で向かわせたら、自動コアは何を考えたか、攻撃を中断し、撤退を始めたという。


「失礼いたします!」


 通信士官が敬礼した。


「観測機より追加の報告です! 編隊に接近した偵察機が、友軍戦闘機に撃墜されました!」

「何だと!?」


 司令部は騒然となる。味方に撃墜されたとは尋常なことではなかった。


「どうなっているんだ?」

「自動コアが敵味方の識別を誤ったというのか……?」

「馬鹿な。これまでそんな誤射などという事故はなかった……」


 そもそもムンドゥス帝国軍機と地球側航空機ではシルエットが違い過ぎる。自動コアが判別できないとはありえないのだ。

 突然の反転に異常を感じて、偵察機の1機が近づいて確認しようとしたところで、自動コア戦闘機によって撃墜。それを他の偵察機が目撃したのが先の通報である。


「まさか……!」


 小沢は駆け抜けた悪い予感に震えた。


「無人機が、操られたのか?」


 異世界人が何らかの細工をして、こちらの航空機を乗っ取った。馬鹿な、という思い。こういうことが起こるなんて想定はこれまで一度もされなかった。だが、状況をみれば、それ以外に考えられない。


「ですが、そんなことがあり得るのですか!?」


 航空参謀が声を上ずらせる。信じられないという顔だ。小沢にもその気持ちはわかった。というより彼も信じたくはなかった。


「だが、それ以外に説明できるか?」


 無人機が偵察機を撃墜し、敵艦を攻撃することなく戻ってくるという、まったく考えられない挙動をしている。

 有人機が含まれる通常の編成であったなら、もう少しはっきりしたことがわかるかもしれない。


 が、犠牲覚悟で送り出した手前、全て無人機だったのだが裏目に出た。引き返した攻撃隊に何らかのイレギュラーが発生しているのはわかるが、ただの事故なのか、はっきりと『敵』になったのかがわからない。


「偵察機は落とされました」


 作戦参謀は言った。


「明確に敵対行動をとっているのではないでしょうか?」

「いや、そう決めつけるのは早いかもしれない」


 草鹿 龍之介連合艦隊参謀長は慎重だった。


「おかしなことが起きているのは確かである。しかし味方を攻撃した戦闘機が、たまたま攻撃までしてしまった異常機ということも考えられる」

「と言いますと……?」

「攻撃隊の他の機は、理由はわからないが帰還命令を受けたと判断して、ただ母艦に引き返しているだけの可能性もある」


 異常事態である。何についても疑わしくあるし、可能性がある。小沢は腕を組む。


「問題なのは、これからどう動くか、だ」


 もし無人攻撃隊が『敵』に寝返ったのであれば、ここで悠長にお話している場合ではない。迎撃、いや退避しなくてはならない。

 だが、ただ母艦に戻ってくるだけであったなら、そこで撃墜してしまっては、同士撃ちとなって戦力を失うことになる。


「外部から命令は? 出しているのだろう?」


 無人機は有人機や艦艇から命令を出している。異常行動で命令というのはこれまでなかったが、戦闘――突撃や迎撃、細かな指示も含め、有人機がある程度制御していた。


「おそらく命令を受け付けていないのでしょう」


 草鹿は言った。


「それをやろうとした偵察機が攻撃されたのではないでしょうか」


 こちらの制御を離れた。無人機が、何かの目的のために戻ってくる。


「敵であると考えてもよいのでは?」


 航空参謀は認めたくないものの、現実を見据える。


「敵であるなら、このままですと取り返しのつかない事態になります」

「そうとも言い切れないと言っている」


 草鹿はやはり慎重であった。


「無人機が全て異常行動をとっているわけではない。いま艦隊の上空を直掩している無人機は命令通り警戒している。無人機が全て敵になっていたなら、すでに我々は機銃掃射なりされて攻撃されていただろう」

「では、この異常行動は、攻撃隊に出した機体だけか?」


 小沢が確認すれば、明確な命令無視で動いているのは、攻撃隊だけらしいということで落ち着いた。


「まさか敵戦艦に、無人機を無力化する装備が搭載されているのでは……」

「だとすれば、皇帝の戦艦への航空攻撃は――」


 不可能になる。その事実に参謀たちは動揺した。艦隊も駄目、雷撃が届かないので潜水艦も駄目。そして無人航空機も駄目。有人機は数が限定され、さらに恐るべき防空能力を持っている相手となると、打つ手は果たしてあるのか。


「それも大事ですが、今は戻ってくる攻撃隊への対処が優先でしょう」


 草鹿は進言する。


「転移退避をできる状態で様子見をしましょう。何事もなく戻ってくるなら収容し、原因を調査します。攻撃の兆候が見られれば、転移退避して攻撃を空振りさせるべきかと」

「……うむ。それでいこう。通信参謀、艦隊全艦に指令!」


 小沢は決断した。地球艦隊空母機動艦隊に、万が一の転移退避準備をさせつつ、攻撃隊の帰投を待つ。

 やがて、皇帝旗艦の撃沈を狙って放たれた数千の攻撃隊が戻ってきた。

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