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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一三〇八話、現状と対策


 日本海軍第五艦隊は、補給と整備を受けて出撃準備を整えつつあった。

 早朝の襲撃で敵空母群を含め、複数の艦隊と交戦し消耗した分を回復させつつあったが、その間に地球艦隊の主力戦艦群二個が壊滅した。


 第五艦隊旗艦『大和』。その作戦室に、マ式通信機を持ち込み、神明 龍造少将は、(うつつ)部隊指揮官の遠木 迅中佐と交信をしていた。

 現部隊は、現在、都市戦艦『ウルブス・ムンドゥス』艦内にいる。


『――まず、悪い話から。こちらで持ち込んだ転移装置ですが、都市戦艦を転移させられませんでした』

「それはこちらでも把握している」


 都市戦艦を、こちら側から転移させられれば時間制限を伸ばせられるのではないか。そこから始まった実験だったのだが、結論を言えば失敗であった。

 稲妻師団所属の偵察巡洋艦『旭』を使い、別の場所へ転移させるはずだったのだが、都市戦艦に仕掛けた転移装置で、目標は移動しなかった。


『転移ガードをかけられているのでしょう。自艦はともかく、敵からの転移は受け付けないようになっているようです』

「これで転移するようなら、いくらでも手が打てたのだがな」


 神明は眉間に皺を寄せた。外部からの東京湾到達阻止、制限時間引き伸ばし策は、現状なくなった。

 帝都での自爆を防ぐには、都市戦艦を破壊するか、制圧、もしくは転移装置の停止しかない。


「それで、いい話というのは?」

『都市戦艦――ウルブス・ムンドゥスの見取り図を確保しました』


 遠木は答えた。

 都市戦艦の工場地区に入り込んだ海軍特殊部隊だったが、そこが部品製造の拠点であり、艦の修理、補修用パーツも作っていた。それらを活用する工作部――メンテナンスグループの拠点が併設されており、その事務所内で複数枚の艦内図、設計図、改修図などが発見されたのである。


『陸軍にも共有したのですが、それによると転移装置は、艦の前部と後部に一つずつ、計二つ存在します』

「二つ?」

『メインとサブというのが正確です。基本は後部にある一基で動かしていますが、トラブルが発生した場合、前部のサブ装置が動く仕組みのようです』

「つまり、メインを止めただけでは、都市戦艦の転移は止められないということか」


 念のいったことだった。12キロメートルもの巨艦だ。重要装置も複数積めるだけの艦内容積があるのだろう。動く帝都だけあって、ダメージコントロール能力は高いようだ。


『それならば電源を落としてやれば、メインからサブに切り替わることなく止められるのではないかと考えたのですが……』


 遠木の声にため息が混じる。


『得意のやつと分析してみたのですが、サブ装置など重要な設備には、それ専用の電源供給装置が備えられています。外部電源を落としても補助電源がバックアップし動かせる仕組みになっています』


 本当に念のいったことである。一つのトラブルで艦が動けなくなるような、柔い設計ではない。念には念を。問題発生が、皇帝の指導、生活などに影響しないよう、帝都としての機能保全に万全を尽くしているようだった。


「陸軍はどうしている? もう動いているのか?」

『味方の無線を拾った限りでは、艦の制御を司る中央ブロックの制圧に主力を振り向けたようです。……まあ、占領してしまえば、それ以上転移させることもありませんからね』


 ただ――と遠木は声を落とす。


『ウルブス・ムンドゥス内の最重要区画ですから、敵守備隊の守りは相当固いでしょうな。艦内にも侵入者用の迎撃設備がありますから、時間制限内に司令室を押さえられるかは、不透明です』


 ふむ――つまりは、外側からどうにかする方法を考えることも、より現実味を増してきたということだ。


「都市戦艦内の、動力設備は?」

『艦中央から後方にかけてにあります。艦艇整備ドックやら工場がある艦なので、それらの電力を賄い、かつ他の装置やらにエネルギーを供給するに充分な大きなやつが」


 海氷島を一撃で破壊した特大熱線砲とか、ワーム砲といった超兵器をフルに活用しても、艦の運用に支障をきたさないレベルで充実している。


「艦の中枢占拠と、動力設備の破壊、どちらが楽だと思う?」


 神明は尋ねた。遠木は悩む。


『どれだけの守備隊がいるかにもよるんじゃないですか? 動力炉周りも奴らにとっては失って困る設備ですから、守りは固いでしょう。でも神明さん、動力設備を破壊しても、大抵の装備にはサブがついているので、ただちに機能停止するわけではありませんよ?」


 さっきいいましたよね、という遠木。しかし神明の考えはそれではない。


「莫大なエネルギーを作り出している動力設備だ。爆破できたら、それでこの艦内を吹き飛ばして、艦体を分断できるのではないかと思ったのだ」


 いかに巨艦であろうとも、海の上に浮いている以上、船体が割れたら沈む。全体が浸水すれば、もはや転移どころではなくなる。


『最後の手段としては使えますね』


 遠木は理解を示した。


『ただ、艦内に乗り組んだ部隊を撤収させないと、全滅しそうですが……』

「陸軍が早々に撤収からの破壊を選択してくれることを祈ろうか。いざとなればポータルで脱出するくらいはできるのではないか?」

『それである程度は。ただどうしても逃げ遅れるやつもいると思います』

「破壊するとなれば、早いうちに動かないとな」


 神明はそこで一区切りにした。


「稲妻師団司令部や陸軍が上手い手を考えることを期待する」


 そもそも、神明には上陸している部隊の指揮権など持っていない。海軍のよしみに、話のわかる者に、ちょっとした実験に付き合ってもらったが、それ以上の介入は要請されない限りはできないのである。


「これは個人的に思ったことだが、転移装置よりも、転移ガード装置の方が守りが手薄ではないだろうか」

『……ありがとうございます。何かあればまた連絡するかもしれません』


 通信終了。神明はマイクを置いて、向き直る。そこには第五艦隊参謀らと、第二戦艦群からの使者がいた。


「さて、待たせた、倉橋参謀長。話を聞こう」


 皇帝旗艦『ヘーゲモニアー』と戦った感触について。

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