表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1307/1319

第一三〇七話、やらねばならぬ


 二つの戦艦群が壊滅した。

 連合艦隊司令長官、小沢 治三郎中将は旗艦『出雲』の艦橋で、苦い表情を浮かべた。


「艦隊でも対抗できないとは……!」


 恐るべき皇帝旗艦『ヘーゲモニアー』。転移砲装備の地球艦隊が、手も足も出ない。


「数で圧倒しながら、手傷すら追わせられないとは」


 第二戦艦群司令長官の新堂儀一中将は、同じく苦い顔をしている。

 実際に戦った彼は、その無双ぶりを目の当たりにしている。大半が無人艦とはいえ、有人艦艇もあり、ただでさえ少ない兵が命を散らした。

 地球艦隊の水上打撃部隊は、ほぼ壊滅したのだ。


「君を責めているわけではないよ、新堂君」


 小沢はそう言ったが、表情は硬かった。


「異世界人の新兵器は、いつも我々を驚かせる。砲雷撃が駄目なら空母航空隊で……といかないのが歯がゆい」


 すでに航空攻撃は、一度撃退されている。

 都市戦艦『ウルブス・ムンドゥス』を制圧する陸軍の航空支援として張りついていた支援爆撃隊が、単独の『ヘーゲモニアー』に挑みかかり、全滅した。


 陸上用爆弾だったとか、対艦誘導弾が少なかった、という打撃力の問題はこの際置いておくとしても、皇帝旗艦の対空能力は、都市戦艦のそれに匹敵する。

 つまり近づく者は、小型ですばしっこい航空機であろうとも例外なく、全て撃墜されてしまうということだ。


 遠巻きに戦闘を観測していた偵察機によれば、長距離から編隊ごと撃墜する新型対空兵器を『ヘーゲモニアー』は装備しているという。


「航空機は駄目。艦隊も駄目。潜水艦は、そもそも敵艦の吃水が海の中では雷撃が通らない。奴が燃料切れになって補給をするところを狙うしかないか?」


 小沢は腕を組む。いかなる艦艇であれ、動かす燃料は必要だ。本来であれば、弾薬だって消費する。地球艦隊の主力を叩き、普通であればその武器も消耗していると見れるのだが、光弾系、熱線系はエネルギーさえあれば実弾系よりも弾数が多く、そう簡単には使えなくなることはない。

 無補給であろうとも、あと二、三艦隊くらい撃滅するのもおそらく容易いだろう。


「防御性能もまた優れているらしいな」

「こちらの転移砲がまるで通用しませんでした」


 新堂は告げた。


「播磨型の51センチ砲、アリゾナ級の18インチ砲の超重量弾。特殊エネルギー弾頭も使いましたが、効果なしでした」

「装甲自体に何かカラクリがあるのだろうな。ただのシールド装甲ではないのかもしれない」


 小沢は視線を転じる。連合艦隊参謀長の草鹿 龍之介中将は口を開いた。


「手が限られる以上、我々にできるのは航空攻撃のみではないでしょうか」

「続けろ」

「はい。敵の対空防御は極めて高いですが、全方位から多数の航空機で攻めかかれば、活路を見いだせるかもしれません」

「飽和攻撃か」


 小沢は眉をひそめ、そして言った。


「敵の迎撃がどれほどのレベルかはわからんが、おそらく大半が撃墜されるのだろうな」

「ですが、大半は無人機ですから。皇帝旗艦さえ沈められるなら、無人機を全滅させてもやるべき……いややるしかないと考えます」

「しかし、草鹿参謀長」


 新堂は言った。


「敵の迎撃が間に合わないほどの猛攻を繰り出したところで、対艦誘導弾は通らないぞ」


 転移で防御シールドをすり抜けても、命中した装甲でダメージにならない。


「対アステール用の艦内爆発式転移弾ならば、装甲をすり抜け、敵艦内を破壊できます」


 超装甲の円盤兵器アステール。その防御を抜くために使われる転移距離を伸ばした誘導弾が日本軍にはある。


「懸念はある」


 どうしても表情が曇る小沢。


「果たして防御が表面だけなのか。最近の敵の新鋭艦には、艦内にも障壁が張られている例が見られる。ムンドゥス帝国の頂点である皇帝の旗艦だ。あらゆる防御が用いられていてもおかしくない」


 もし内張のシールドが存在していれば、飽和攻撃がうまくいったとしても、敵に打撃を与えられないかもしれない。


「通用しなかった場合が怖い。それこそ航空機と爆弾の浪費。何かしら成果がなければ意味がない」

「ですが、それを言い出したら何もできません」


 草鹿は泰然自若であった。


「こちらはやれることをやるしかないのです。それにいくら内張の防御があろうとも無傷ということもありますまい」

「そうだな……」


 小沢は軍帽を被り直した。

 所詮、前線の軍人は与えられた戦力でどうにか対処するしかないのだ。必要な戦力、望み得る状況が都合よく揃うことはそうそうない。不利であろうが、劣勢であろうが、やらねばならないのだ。


「対艦攻撃であるならば、攻撃は無人機に限定する。敵は単艦だ。もしかしたら戦っているうちに燃料なり弾薬なり不足させる事態に追いやれるかもしれない」


 連合艦隊司令長官は、海図台を見下ろす。


「さて、皇帝の旗艦だが……」

「彩雲偵察隊から、敵旗艦は転移で移動したと報告が入っています」


 草鹿は告げた。


「目下、捜索は続けられていますが――」

「失礼します、長官!」


 司令部付き通信士官が現れた。


「転移移動していた敵都市戦艦を発見しました!」

「おう、見つかったか」


 日本を目指して転移を行っている『ウルブス・ムンドゥス』。陸軍が制圧を目指しているが、海軍としても何がしらの手を打たねばならない。


「失礼いたします!」


 さらに別の通信兵が駆け込む。


「偵察隊より追伸です! 都市戦艦近くに、大型戦艦1が出現。艦体色は赤!」

「皇帝旗艦が、都市戦艦と合流したか」


 小沢は引きつった笑みを浮かべた。


「皇帝め。どうしても都市戦艦を東京湾に運びたいらしいな」

「都市戦艦は我が軍の攻撃対象ですから、そこにいれば我々と戦えると考えているのでしょう」


 草鹿がわずかに顔をしかめる。


「では、転移して攻撃隊を」

「いや、攻撃は都市戦艦が次の転移をしてからだ。攻撃隊を出したところで転移で移動されては余計に時間を失う」


 それまでに攻撃準備を進める。『ヘーゲモニアー』対策用に誘導弾を調整しつつ、その時に備えるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ