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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一三〇一話、海軍も対策を


「――ということで、陸軍が都市戦艦制圧に奮闘しているのは理解しているが、それにまかせて海軍が何もしないというのも体面がよくない」


 連合艦隊司令長官、小沢 治三郎中将は、転移室経由で、補給中の第五艦隊旗艦『大和』に足を運んでいた。

 第五艦隊司令長官である神明 龍造少将は、神 重徳参謀長、樋端 久利雄首席参謀と共に小沢を迎えた。


「いや体面という言い方はよくないな。陸軍が都市戦艦を制圧できるか、時間制限がある今とても怪しい。何か手を打たねば、帝都が危ないと考える」


 時間制限さえなければ、ポータルでいくらでも兵力を送れる陸軍が都市戦艦を制圧するのは、まさに時間の問題である。

 だが現実に制限があり、タイムアップの前に占領できねば、帝都東京は壊滅する。


「あのムンドゥス皇帝の声明が全て本当であったら、の話ではありますが」


 神明も、皇帝の通信は傍受し、その内容を確認している。しかしあの人物に直接会ったことはなく、彼が地球人に対して偽りなく話すかについては疑問ではあった。

 もし、佐々山 久雄中将や異世界にいた面々が生きていたなら、その信用性について多少の材料になったかもしれない。いないものは仕方がないが。


「連合艦隊司令部でも、真偽を疑う声はあった」


 小沢は小さく頷いた。


「だが現状、あの都市戦艦『ウルブス・ムンドゥス』は転移でどこぞへ移動し、皇帝が坐乗していると思われる超戦艦が前線で暴れ回っている。これまでのところ、彼奴の言ったことは正確ではないかと思われる」

「まだその超戦艦に、皇帝がいるという証拠はないと思いますが」


 樋端首席参謀が淡々と言った。


「それとも何か確証がありましたか?」

「そう言われると、確かに証拠はない」


 小沢はムッとした顔になる。


「ただ、これまでの捕虜から得たムンドゥス皇帝の人物像からすると、いざという時は前線に立つことも厭わないとされる。正々堂々、公言したことは実行する男だ。まず、間違いないだろう」


 首肯する樋端。神明は口を開いた。


「とりあえず、早急の問題は、都市戦艦の東京湾到着を阻むことですね」


 嘘か本当かはわからないが、本当に都市戦艦が東京を吹き飛ばしてはたまらない。それが戦略的に何を意味するか、追い詰められた帝国の悪足掻きに過ぎないとしても、日本国民の生命にかかわる以上、断固阻止しなくてはならない。皇居が巻き込まれたとなれば、海軍としても腹を切って詫びてもすまない。


「まずは転移で移動した都市戦艦の居場所を確認しなくては」

「彼奴が言うにはシステムの都合で、七回の転移が必要と言っていた」


 ご丁寧に皇帝が通信で説明してくれていた。……だからこそ、本当かどうか疑問を抱く者もいたわけだが。その説明が事実なら、敵に塩を送るようなものではないか、と。

 まるでゲームでも楽しんでいるかのような皇帝の態度である。


「その言葉が真実だと仮定して話を進めますが、最後の七回目は東京湾。そこに到着した時点でお終いでしょう」

「つまりあと六回でアウト。すでに一回目が行われたから、あと五回転移が許される。そしてそれまでに決着をつけないといけない」

「制限時間がおよそ六時間とも言っていました。これは転移1回につき、エネルギーのチャージが必要だからと推測されます」

「つまり転移して次の転移に移るまで一時間、都市戦艦はその場に留まるわけだ」


 小沢は片方の眉を吊り上げる。もしこれがただ転移距離の問題だけだったなら、七回の転移を連続してあっという間に日本本土へ直撃できたであろう。


「都市戦艦がいた位置と東京湾までの距離。これを七で割った距離分が一回の転移で進む距離となります」


 海図台にそれぞれのおおよそ位置をチェックする。樋端は定規で図った。


「捜索はその辺りを中心にすればいいでしょう。都市戦艦には陸軍が乗り込んでいますからポータルで誘導装置を送るなり、通信させて三角測定させれば、正確な位置も割り出せます」

「うむ。位置についてはそれでいいだろう。やはり問題は、陸軍が止められなかった場合に対する、海軍の対策となろう」

「対策ですか」


 神参謀長は考える。


「転移に対するガードがないのであれば、どこぞへ転移で飛ばすという手もありますな。無人であるシベリアに送れば、破壊できるやもしれません」

「陸軍が乗船している。シベリアなど陸地に送ってぶつける手は使えない」


 小沢は、連合艦隊司令部でもその案は出たと説明した。


「皇帝がいないのであれば、都市戦艦を完全破壊しては、というのもな。だがこれも陸軍が制圧のために兵を送り込んでいる以上、おいそれとできるものではない」


 仮に破壊するとなれば、上陸した兵を全て撤退させなければならない。それにも時間がかかるわけで、そのまま制圧させたほうが実はよかったのではないか、と悩ましい判断を迫られる。

 そもそも『ウルブス・ムンドゥス』の内部構造がわかっていないので、転移装置の位置や、制圧にかかる時間などまったく見当がついていないのも問題だった。


「結局、海軍が介入するのは、ほぼ六回目か、七回目の転移の直前ということになりますね」


 神明の発言に、小沢は得たりと頷いた。


「そうなる。陸軍に期待しつつ、駄目そうとなれば、我々が出張る。そのための準備は予めやっておかないといけない」


 いざその時がきて、対策が何一つありませんでは洒落にならない。


「ただ神の案もそう悪いものではありません。転移で破壊は無理でも、帝都東京から遠くの海域に移動させれば、タイムリミットを引き伸ばす手はあります」

「そうか、そうだな。都市戦艦の転移範囲が決まっているのなら、振り出しまで戻してやれば、そこから改めて複数回の転移を強要できる」


 それならば、陸軍の制圧部隊が『ウルブス・ムンドゥス』を占領できる時間をいくらでも稼げる。


「ただ問題は、こちらからの転移をガードする機能を持っていた場合は、この手が通用しません。都市戦艦の転移回数が少ないうちに実際に転移できるか試すべきでしょう」

「早速、手配しよう」


 小沢は腕を組んだ。


「これで時を稼げれば、後は陸軍に丸投げしてもよくなる。駄目だった時の次なる策を考えつつ、暴れ回っている皇帝の超戦艦についても気にしなくてはならないな」

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