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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一三〇〇話、二つの目標


 駆けつけたのは地球艦隊第二戦艦群であった。

 改播磨型、アリゾナ級戦艦などの18インチ以上の砲を搭載する地球側の最大火力を誇る艦隊だ。


「これはまた厄介な敵だ」


 艦隊旗艦である戦艦『相模』の艦橋。新堂 儀一中将は露骨に顔をしかめた。海上を疾走する敵旗艦『ヘーゲモニアー』のあまりの速度に、よくもまあこんなものを隠していたものだと呆れる。


「第一戦艦群が……」


 参謀長の倉橋少将が絞り出すような声を出した。

 敵超高速大型戦艦と交戦したハルゼー大将の戦闘艦隊は、すでに戦艦、巡洋艦戦力を大きく失っていた。


「相手はただ一隻だけだというのに……」

「ハルゼー大将の旗艦は?」


 新堂が確認する。すぐに報告が来る。


「旗艦『ニュージャージー』大破、戦闘不能。現在、大型巡洋艦『劒』に移乗中とのことです」

「『劒』……」


 それはまた、と新堂は苦笑する。アメリカ人提督であるハルゼーが、日本海軍の大型巡洋艦に旗艦を変更する……。他にまともな大型艦がなかったにしても、アメリカ製の軍艦にこだわると思っていた。


「まあ、これもあの御仁に信用されているということなのだろう」


 新堂は、ルベル世界に乗り込んだハルゼーの義勇軍艦隊の支援部隊として共に戦っている。現役軍人として、あの提督と一番顔を合わせた日本人が新堂であろう。


「それはそれとして、我が隊より高速の第一戦艦群が手も足も出ないのではな」


 正直に言って、たかが一隻という空気ではない。倉橋参謀長も口を開く。


「第一戦艦群の駆逐艦が突撃しているようですが……」

「うむ、まるで追いつけない」


 35ノット以上の速度で白波を蹴る米駆逐艦。やや遅れて日、英駆逐艦も続くが、敵戦艦『ヘーゲモニアー』がそれら駆逐艦の倍以上の速さで海上を弾むように進んでいる。


「浮いているのか、あれは?」

「波の上を滑っているようにも見えます」

「ならば、魚雷は通用せんな」


 何せ船体が海に入っていないのだから。倉橋は首を横に振る。


「それ以前に、魚雷でも追いつけないでしょう。あの速度では」

「つまりは砲撃戦だ」


 だがすでに一個艦隊がたった一隻に半壊させられているという事実が、新堂や参謀たちに重くのし掛かる。

 始末が悪いのは、まだ敵艦が手傷を負った様子がないことだ。これですでに『ヘーゲモニアー』も損傷しているのなら、まだ救いはあったが。


「いかに播磨型、アリゾナ級が手元にあっても楽観はできんぞ」


 数で圧倒していた第一戦艦群を相手に、ほぼ無傷で切り抜けた超戦艦である。


「あのスピードに対抗するなら、航空機しかないと思うのだが」

「圧倒的な防空能力を持っているようですからね」


 倉橋も顔をしかめた。都市戦艦の上空で待機していた友軍航空隊が攻撃を仕掛け、返り討ちにあったのは、偵察、観測を行っていた彩雲艦上偵察機、一〇〇式司令部偵察機など複数が確認している。


 その報告を受けた連合艦隊の小沢 治三郎中将も、航空攻撃を取りやめた。

 前日、ウルブス・ムンドゥス攻撃の際、米B-29重爆部隊や日本海軍の空中軍艦が全滅させられたこともあって、引く判断は早かった。敵の防空能力が高いのに、無理に突っ込ませても損害を増やすだけである。


「こちらの一式障壁弾以上の対空装備があるとか……」

「接近する誘導弾を漏れなく撃墜し、接近した航空隊が編隊ごと一瞬で破壊する……。まるで破壊力のある突風を受けたかのように」


 それでは回避しようがない。そもそも抜け道がないのだから、正面から撃たれたら、それこそ被弾前に転移するくらいしか避ける手はないのではないか。

 だが今の海軍の航空機に、母艦や基地への転移離脱装置はあっても、航空戦の最中に敵弾を躱すためだけに転移をできる機能はない。


「相打ち覚悟で挑まねばならんということだ」

「敵艦より発光!」


 見張り員が絶叫した。

 直後、第二戦艦群の戦艦が6隻が被弾。うち3隻が消し飛んだ。


「『アリゾナ』大破! 『メイン』『伊予』『飛騨』が爆沈しました!」

「まさか――」


 まだ転移砲の射程外である。にもかかわらず、一気に6隻の戦艦が先制の打撃を被った。


「射程も向こうが上なのか……!」


 新堂は歯がみした。

 これではまるで、第一次世界大戦の弩級戦艦で、今次大戦の超弩級戦艦に立ち向かうようなものだった。

 つまりは、まともにやっては歯がたたないということだ。



  ・  ・  ・



 実に面倒なことになった。

 連合艦隊司令長官である小沢 治三郎中将は、旗艦『出雲』にいて、海図台を前に参謀たちと顔をつきあわせる。


「都市戦艦が転移したのを、観測機が報告してきた。先のムンドゥス皇帝の通信が本当であるなら、約7時間で、我らの帝都、東京にあれが到着することになる」


 小沢の言葉に参謀たちは表情を強ばらせる。ある者は眉間に(しわ)を寄せ、またある者は時計を確認する。

 草鹿 龍之介連合艦隊参謀長は口を開いた。


「すでに都市戦艦には陸軍が上陸しておりますが、懸念は制限時間内に制圧できるか、ですな」

「ただの大型の戦艦というだけなら6時間もあれば……というところだが、あれの全長が12キロメートルもあるのだろう」


 小沢は憮然とした顔で言った。


「ちょっとした島だ。それも完全要塞化しているのだろう? 6時間で攻略など、できるか怪しい」


 奇襲もできず、正面からのぶつかりあいとなるに違いない。さらに防衛側のほうが有利であることを考えれば、時間内に制圧、もしくは転移装置を止めるなど期待できない。成功の可能性にすがり、祈るというのはあまりに無責任のようにも思える。


「しかし、我々に何ができるのでありましょうか?」


 草鹿の問いは、小沢も含めて皆考えた。そして確実な案はなかった。

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