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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二九六話、ウルブス・ムンドゥス侵入


 日本海軍第五艦隊は、一足早く補給を受けていた。

 主力艦隊が弾薬を補充している間に、第五艦隊は夜明け前から行動し、敵戦力の漸減を行った。


 その攻撃は、本営艦隊の水上打撃部隊と空母機動部隊を分散させ、各個撃破に追いやった。

 特に特別転移砲艦の撃沈は、マリアナへ奇襲をかけてきた艦隊を孤立させ、地球側の圧倒的な航空攻撃で叩き潰す一助となった。


 その結果、戦力差のバランスを大いにひっくり返した。まだ敵が残党レベルで残っているものの、こちらは地球艦隊主力が対応すると、小沢 治三郎連合艦隊司令長官から連絡を受けたので、第五艦隊は後退したのであった。


「――陸軍は、都市戦艦への上陸を開始したそうです」


 第五艦隊旗艦『大和』。樋端 久利雄首席参謀が、司令の神明 龍造少将に報告した。


「今のところ抵抗はなく、順調に部隊は進軍しているとのことです」


 うむ、と神明は僅かに頷いた。神 重徳参謀長が口を開く。


「ムンドゥス皇帝がいる総旗艦でそれとは……」


 帝都に侵攻されるようなものであり、ムンドゥス人も皇帝を守るために必死の防戦を展開するものではないのか。

 彼らには、もう後がないはずだ。


「もしかしたら、沈まなかっただけで実は内部にも深刻なダメージがあって、異世界人は全滅しているかもしれませんな」


 アヴラタワー、それに類する生命維持装置がなくば、この地球世界では生きていけないムンドゥス帝国人である。

 艦砲射撃で都市を薙ぎ払われた時、艦内の生命維持システムも壊れたとあれば、全滅の可能性もなくはない。


「……だと、いいんですが」


 樋端は淡々と言った。


「しかしあれだけの巨艦ですから、生命維持装置も一つや二つではないでしょう。区画ごとに分散していて、どこかの装置が壊れても他がカバーできるようになっているのではないでしょうか」

「皇帝が座乗するフネだからな」


 神明もまた、どこか気が抜けた調子で言った。やはり昨日からの連戦の疲労が出ている。


「考えうる限りの安全対策を二重、三重とやっているはずだ」


 ムンドゥス人も、こんな環境の世界で万が一皇帝を死なすようなことないよう手を尽くしているはずだ。

 神は片方の眉を吊り上げた。


「では、敵はまだあの都市戦艦の中で残っているのが確実と――?」

「普通に考えればそうだ」


 神明は眉間に皺を寄せた。


「あまり考えたくはないが、あるいは彼らはすでに脱出しているかもしれない」

「脱出!?」


 びっくりする神。樋端もわずかに驚いたが、すぐにその答えに行き着いた。


「転移で、都市戦艦の外へ……?」

「古来、東西問わず、王の城には秘密の抜け道があるものだ」


 あの動く帝都にも、万が一の状況で皇帝を脱出させるギミックがあったとしてもおかしくはない。

 特に、彼らは転移技術を持っている。世界間移動は偶然の産物で、現在それは利用できないから、転移で『ウルブス・ムンドゥス』を脱出したとしても、この地球世界のどこかだろうが。


「可能性はそうでしょうが……」


 神は首を捻る。


「仮に転移で脱出したとして、皇帝はどこへ逃げ込みます? もはや異世界人には有力な艦隊はなく、我々に対抗可能な海上戦力はありません」

「欧州、またはアフリカ」


 樋端は例を上げた。


「陸上戦力についても、減少していてかつての規模は残っていませんが、逃げ込むだけなら、まだ帝国の支配地はありますから」


 もっとも、現在の地球軍の規模を考えても、逃げたところでわずかに寿命を伸ばすだけである。ムンドゥス帝国打倒に動く地球各国は、皇帝を追い詰め、年内には決着をつけるだろう。

 神明は従兵が持ってきたお茶をすする。


「自分で言ってなんだが、まだあの都市戦艦に仕掛けがあって、皇帝がもう一合戦を仕掛けてくる可能性もある」

「仕掛け、ですか」

「あれだけ大きいんだ。艦内には製造工場やドックがあると推測されている。まだ何か超兵器を隠し持っているかもしれない」


 超兵器と聞いて、神も樋端も神妙な表情を浮かべた。海氷島を吹き飛ばした破壊兵器、ワーム砲、空中軍艦さえ蹴散らした絶対防空兵器……。それらに日本海軍が用意した強力兵器が破壊された。

 恐るべきは、ムンドゥス帝国驚異のメカニズムである。


「出てきてほしくないですな」


 神が本心からそう言った。これには神明と樋端も同意するのである。



  ・  ・  ・



『――ウルブス・ムンドゥス内、G1より、地球人が侵入』


 司令塔内に響く管制士官の声に、『ウルブス・ムンドゥス』都市戦艦司令、エイピック元帥は、戦術スクリーンへと視線をやった。


「ほう、入られましたな」

「そのようだな」


 ムンドゥス皇帝は、太々しさを隠すことなく言った。老練の将であるエイピックは、表情一つ変えず、皇帝を見た。


「そろそろ、始めますか?」

「始めよう」


 皇帝はしばし目を伏せる。

 カサルティリオ総参謀長と紅蓮艦隊、そして本営艦隊は壊滅した。昨夜には、皇帝親衛軍長官のササが戦死し、勇将ヴォルク・テシスも倒れた。勇猛なる帝国の戦士たちは地球人との戦いで命を散らした。


「敵ながら天晴れ。よくやったと褒めてやろう。だが最後に笑うのは余である!」


 ムンドゥスは玉座から立った。


「我が剣が、地球人どもを絶望の底に突き落としてくれる! 最終作戦を発動させる。エイピック、『ウルブス・ムンドゥス』は任せるぞ」

「はっ。よい狩りを。陛下」

「違うぞ、エイピック」


 ムンドゥス皇帝は歩き出しながら、振り返った。


「よい戦いを、だ。余は戦争に征くのだよ」

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