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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二九五話、都市戦艦、上陸


 ムンドゥス帝国本営艦隊は壊滅した。

 懸念であった彼らの海上戦力が壊滅したことで、廃墟も同然の都市戦艦『ウルブス・ムンドゥス』への上陸が始まる。

 海氷飛行場から飛び立った虚空強襲輸送機群は、烈風艦上戦闘機、サンダーボルト戦闘機の護衛を受けて、都市戦艦に向かった。


 そのカーゴブロックには、稲妻師団の突撃兵がポータル装置と共に乗り、別の隊では、アメリカ陸軍101空挺師団、第505、506歩兵連隊を運んでいた。

 海上には、敵本営艦隊を撃破した地球艦隊が、都市戦艦を目指して航行していた。万が一の敵艦隊の出現への対処、対地砲撃支援などの役割のためだ。


『偵察機より報告!』


 虚空輸送機の機内、操縦席から機長が叫んだ。エンジン音が響く機内にあって、稲妻師団所属、特殊部隊『(うつつ)』の遠木 迅中佐はそちらに視線を向けた。


『目標上空に、敵機の姿なし!』

「了解! 聞いたな?」


 隊員たちに振り返る。いよいよ敵陣の突入に皆、適度に緊張しつつも小さく笑みを浮かべている。最後の戦いかもしれない――その思い故か。すでに艦隊が艦砲射撃を見舞い、目標である都市戦艦に反撃能力がないと思っているのかもしれない。


 ――確かに、出撃前のブリーフィングではそうは言ったが。


 遠木は口元を引きつらせた。

 気の緩みは命取り。敵がいなくても地雷や不発弾で吹っ飛ぶことはある。それが敵地に乗り込むということだ。都市とはいえ戦艦であるから、さすがに地雷はないか……?


「敵はいないらしいが、油断は禁物だ」


 指揮官は告げた。


「俺たちが降り立つ寸前に、偽装網の中から銃撃してくるかもしれないんだからな!」

「はっ!」


 兵たちは同時に答えた。訓練された兵というのは、こういう時に揃っていて気分がよい。


『目標を視認!』


 機長の声。遠木は言った。


「装具の確認! 忘れ物するなよ!」


 虚空輸送機の編隊は、『ウルブス・ムンドゥス』へと接近する。先んじて、サンダーボルト戦闘機が都市戦艦の上空へと侵入する。

 艦砲射撃でなぎ倒すまでは、その名の通り都市があって、圧倒的な防空能力があった。高高度のB-29爆撃機、エーワンゲリウム機関搭載の空中軍艦さえも、防空システムの前に撃墜された。


 その絶対的対空火力がもし健在であったなら、上陸部隊第一陣も輸送機ごと撃ち落とされてしまうだろう。

 輸送機のパイロットたちは、息の詰まりそうな圧迫感を感じながら、高度を落として都市戦艦に接近する。


 焼け野原の如く廃墟だらけの都市戦艦である。全長12キロメートルはある巨大な艦であるが、通常の航空機が降りられる滑走路などは見当たらない。

 故に、垂直離着陸機能のある虚空輸送機が、先鋒隊を運ぶ。


 もちろん、輸送機の数から陸軍投入戦力を全て運ぶことはできない。では、海から近づくか、となるが、仮にも戦艦――軍艦である。上陸用の岸などあるはずもない。おそらく海上艦を収容する出入り口も存在しているのだろうが、現状、目星はついても本当にそうなのか確認されていない。

 侵入口と思って向かったら違いましたでは、今後の上陸、制圧スケジュールが大いに狂うことになる。


 だから空から目標に上陸するのである。先鋒隊の役割は、橋頭堡を確保すること。ポータル装置を設置し、別の場所で待機している制圧部隊を導くのであった。


『降下地点までおよそ1分!』


 いよいよだ。遠木は鉄帽の紐の緩みを確認し、小銃を手に取った。


「起立!」


 座っていた兵たちが席を立ち、天井からぶら下がる吊革を掴む。着陸の減速、制動時が意外に強く揺れるので、バランスを崩すと簡単に転んでしまうのだ。

 隊員たちの表情がこれ以上ないほど引き締まる。さすがに笑みはない。機体が揺れる。


『アプローチ!』


 引っ張られる力が急に逆転するのは、虚空輸送機が目標の上に着陸しようとしているからだ。そして金属をこするような、嫌な軋みが聞こえた。

 点灯していたライトが緑に光り、ランプが開いた。


「進め! 行け! 行け!」


 遠木が声を張り上げ、兵たちは弾かれるように機外へと飛び出した。周りには複数の虚空輸送機が着陸していて、同じように兵が飛び出していた。

 銃声はしない。敵からの攻撃はない。稲妻師団の兵たちは、『ウルブス・ムンドゥス』左舷側中央に展開して、周囲を警戒する。

 ポータル装置を組み立てる工作兵が、テキパキと装置を組み上げる。そして光の円が開いた。


 そこから待機していた日本陸軍の兵隊、そして四式戦車が飛び出してくる。それらは稲妻師団の即席防御陣地の傍らを抜けて前進する。

 その様子を見やり、遠木は改めて都市戦艦の全景を眺める。黒焦げた艦体表面。魔石砲弾の爆発の影響もあるのだろうが、そこに存在したはずの都市は影も形もなかった。


「……何もないな」

「ずいぶんと寂しいお出迎えですな」


 第一中隊の熊田大尉がやってきた。


「敵の姿があるかと思いましたが」

「そうだな……」


 艦隊司令部がどう考えているかは知らないが、海軍特殊部隊、そして陸軍は都市戦艦での戦闘はあるものだと思ってやってきた。

 それは全長が10キロを超える物体は、『島』ではなく『軍艦』であるからだ。それが艦砲射撃を食らっても、その艦体について損傷がほぼなく、表面を焼いただけに終わった。つまり、中にはまだ多数の敵がいると考えるのが自然だ。


「水際戦闘を仕掛けてくると思っていたのですが、まったく敵がいませんな」

「やはり、中で待ち構えているということか」

「島のようにでかいですからな。陸兵も万単位でいるかもしれない……」


 熊田は気に入らないと鼻をならした。


「中がどうなっているのかわからないというのも、あまり気分のいいものではないですな」

「同感だ」


 遠木は頷いた。


「敵が出てこないとなると、まずは内部への侵入口探しから始めないといけないな」


 敵が迎撃に出てきてくれれば、それが手がかりとなって調べられるのだが。

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