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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二九三話、航空打撃の威力


 艦隊戦に応じる形になれば、そこから転移退避はしないだろう。

 それが地球軍空母戦闘群を指揮する小沢 治三郎中将の考えだった。

 そしてその予測通りの展開になろうとしている。


 ハルゼー大将、新堂中将の前衛戦艦艦隊に対抗すべく、ムンドゥス帝国艦隊が動いたところに、小沢の空母戦闘群から五千機に及ぶ艦載攻撃隊が飛来した。

 空母群を別に移動させ、最低限の制空戦闘機が直掩しかないムンドゥス帝国艦隊に、この攻撃隊を防ぎきる手段はなかった。


「全攻撃隊へ」


 流星改二艦上攻撃機に乗る第二次攻撃隊指揮官、内田ハル少佐は指示を出した。


「行動手順に従い、アプローチを開始。順次、攻撃を開始せよ! 攻撃!」


 流星艦攻、シーウルフ雷撃機が部隊ごとに割り振られた順番に従い、対艦誘導弾を発射した。

 五千機の攻撃隊のうち、戦闘機は500機。これでも現状、過剰なのだが、転移で空母が駆けつけ、艦載機を展開する可能性に備えての数である。


 さらに200機が偵察・管制機で、残る4300機が対艦攻撃機である。うち2000機が対艦誘導弾を装備していて、まずこれらが火蓋を切った。


 ムンドゥス帝国艦も対空戦闘を開始する。空に打ち上げられた火線、高角砲弾の爆発の煙は、ひとえに誘導弾を撃ち落とすため。対空砲の射程外から攻撃してくる攻撃機を狙う砲はほとんどなかった。


 撃ち込まれる誘導弾を何とか減らそうと、必死の防空戦闘を行うも、正面からでは的が小さく、当てづらい。高速で突っ込んでくる誘導弾は、護衛の駆逐艦に順番に命中。水柱を上げた。次の瞬間、船体を引き裂かれ、その場に停船する帝国艦。


 誘導弾は次に戦艦列を狙う。本営艦隊の第1、第8戦闘群の戦艦に吸い込まれ、爆発。飛び散った破片が周りで飛沫を上げ、艦体から煙を吹き上げさせた。


 光弾砲の瞬き、曳光弾が宙にばらまかれるが、撃ち落とされる誘導弾より、艦艇に命中するものの方が多かった。

 中には迎撃を諦め、防御シールドを張る艦もあったが、シールドの手前で転移する四式誘導弾の前では無力であり、回避運動も自動コアの誘導装置から逃げられない。


 攻撃隊も、あまりに数が多いため、順番に攻撃を仕掛けたが、それはすなわち、ムンドゥス帝国艦隊に切れ目のない攻撃を繰り出すこととなる。

 空母のない艦隊にとって、あまりに一方的な暴力の時間であった。



  ・  ・  ・



『第1戦闘群、壊滅……!』

『第8戦闘群、全滅です!』


 ムンドゥス帝国紅蓮艦隊の司令部は、時が止まったかのように静かになった。

 さあ、これから艦隊戦だと意気込んだ矢先に、主力となる本営艦隊がやられてしまったのだ。


 これで残るは、合流を命じた第2戦闘群のみ。別の場所では空母部隊があったが、日本海軍第五艦隊の襲撃を受けて退避もままならず追撃されている。もはや戦力としてアテにできなかった。

 そして第2戦闘群にしろ、ゲート艦がやられているため、合流も期待できない。……これでどうしろというのか。


 カサルティリオ総参謀長は、もはや言葉もなかった。唇を噛みしめ、ひたすら状況に耐えているようであった。

 まったく――紅蓮艦隊司令長官、プレボス・メラン中将は肩をすくめた。


「何とも酷い結果だ」


 別にカサルティリオに皮肉を言ったわけではない。というより彼の頭の中で、総参謀長の存在を消したのだ。


「長官?」


 ミィ・ルナサ参謀長が怪訝な声を発した。メランは苦笑を浮かべる。


「我が艦隊を空襲を逃れた。敵さんは本営艦隊を狙ったからだ」


 その本営艦隊は、きれいさっぱり失われた。


「我々は、彼らが正面からぶつかるはずだった二個艦隊と単独で立ち向かわねばならない」


 手元の戦力は、航空戦艦15、戦艦15、重巡洋艦15、軽巡洋艦25、駆逐艦50。空母は、戦闘機隊回収と機動部隊集結の方に回していて、手元にはない。

 そして向かってくる地球艦隊は、戦艦が90隻に、大巡18、重巡77、軽巡105、駆逐艦250前後。


「酷い戦力差ですね」


 ルナサは率直な感想を漏らした。そうとも、とメランは鼻をならす。


「まともにやるのが馬鹿らしくなる。僕らは討ち死に確定だ」


 軍人だからね、しょうがないね、とメランは心の中で呟いた。


「我々は、あれと戦えと命令されている。死ぬのは不本意ではあるが、どの道、この戦争は僕らの負けだろうからね」


 思い起こせば、本営艦隊は失われ、皇帝親衛軍も壊滅。この地球世界に進出し、本国と切り離されたムンドゥス帝国軍に、あとどれほどの戦力が残っているのか。少なくとも、艦隊戦力は、ほぼ壊滅だ。


「つまりだね。僕も君も、この艦隊の乗組員一人一人にとって、死は避けられない。早いか遅いかの違いでしかないわけだ」


 そもそも、この地球環境は、ムンドゥス帝国人にとっては決して優しくない。生命維持装置がないと生きていけない世界である。たとえこの戦場から奇跡的に脱出ができたところで、帝国が滅びていつまで生きられるというのか?


 地球人は最後の一人まで狩り出すのではないか。それだけ恨まれていても不思議はない。

 普段から交渉を重ねていれば、講和もあったかもしれないが、帝国の方針ではないし、これまでも呼びかけたことは、メランの記憶にはなかった。


「というわけで、僕から最後の命令を発する。――紅蓮艦隊、全艦艇に告げる。敵艦隊に向けて、突撃せよ。解釈はそれぞれの艦長に任せる。以上、艦隊司令長官より発信」


 一仕事を終えた、とばかりに、メランは司令長官席に座った。カサルティリオがやってきて勝手に座っていたりしたが、元はメランの席である。構うものかと思った。

 命令は発せられ、『アストラペーⅡ』は、正面の地球艦隊へ向けて増速した。僚艦が単縦陣を形成してそれに続く。巡洋艦、駆逐艦群が突撃隊形に展開し最高速度で疾走を始めた。


「あんな大雑把な命令でいいんですか?」


 ルナサが恐る恐る言えば、メランは軍帽を手に取り、くるくると遠心力に任せて回してみせる。


「真面目に指揮したところで、さして変わらないよ。どうせ水雷戦隊には突撃を命じるだけだし、戦艦戦隊だって敵戦艦と撃ちあう以外にない」


 それに――


「真面目にやると、味方の損失が出た時、舌打ちしそうなんだよね。勝てないのに味方の被害にいちいち顔をしかめてさ。死がわかっている同僚、部下を舌打ちで見送りたくない。だからやられたとしても諦めがつくように、皆に任せた。まあ、そうなるだろう、ってね」


 メランは軍帽の回転を止めた。


「人生の最後と思うと、ひとつやり残しがある」

「それは?」

「君を抱けなかったことかな、ミィ・ルナサ」


 若き貴族提督は真顔で言うのだった。

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