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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二八八話、宿敵との交戦


 ここまで追いかけているのに、連中は気づいていないのか。

 宮内 桜大尉は紫電改三艦上戦闘機を飛ばしていた。視界の端には、点のように小さな敵機、その数おおよそ200機が南に向かっている。

 少数の日本軍機が追尾しているのに、ムンドゥス帝国の戦闘機群は無反応であった。


「気づいているはずなんだがなぁ」


 宮内は独りごちた。

 あれだけの戦闘機が飛んでいて無視しているのは、こちらが少数過ぎてまったく意に介していないのか、あるいはしばらく飛んでいれば諦めて引き返すと考えたか。


「おそらく両方だろうな」


 追尾している紫電改三部隊を叩いたところで、燃料と弾薬の無駄なのだろう。宮内たちを撃墜しないと空母に帰れないわけではなく、下手に空中戦を挑んで、味方とはぐれ、機位を喪失しては笑えない


 こちらが少なすぎて、何ができるのか、と馬鹿にしているだろう。どうせ追ってくるだけで、向かえば逃げるだろうと高をくくっているのだ。

 いつ撤退するかもしれない追っ手など相手にするだけ無駄と考えるのが普通か、と宮内は自嘲した。


「さて、あとどれくらい敵さんは飛べるのか……」


 長距離航法については、そこまで自信があるわけではない。経験で大まかにわかっているものの、普段は艦上偵察機に任せているから、正確かと言われると疑わしい。間違ってもトラックに着くとは思えないが……。

 こちらは燃料が切れる前に、母艦に転移離脱するので、正直迷子だろうと関係ない。


「おっ……?」


 正面海域に光が走った。あの光にはおぼえがある。魔法陣型転移ゲートだ。ここにきて、現れるものなど、一つしかない。


「桜一番より各機へ。敵空母のお出ましだ。忙しくなるぞ、警戒!」


 ムンドゥス帝国戦闘機のお迎えの空母に違いない。ここで巡洋艦とか駆逐艦のみというのは、戦闘機が向かっている以上、あり得ない。必ず空母のいる。

 そして空母がいるということは、約200機の戦闘機としては、追っている紫電改三部隊が邪魔になるわけだ。

 ここまで無視を決め込んでいたが、着艦する空母に仕掛けられる可能性を考えれば、排除に動く。


「さあ、来いよ青い奴。勝負といこうぜ……!」


 来るなら例のスーパーエースを所望する宮内である。注意深く敵戦闘機隊の動きを観察する。

 まだ敵戦闘機隊は、先ほど光が見えた方向への移動を続けている。反転している機は見当たらない。しかしさすがに200機近くもいると、見る範囲が広くなるので、用心深く目を動かす。


『――敵艦隊』


 通信機から井口タキ大尉の声が聞こえた。

 海上に複数の艦影が見えてきた。駆逐艦か巡洋艦と見える護衛部隊と、のっぺりした平らな甲板を持つ艦――空母が複数。


「三……四か?」


 約200機の戦闘機を収容するなら、妥当なところか。と、そこへ彩雲艦上偵察機から呼びかけが来る。


『七九一航空隊第二中隊、桜一番へ。敵戦闘機、一個中隊が貴隊の左舷上方に移動しつつあり』

「こちら桜一番、赤城四番へ。了解!」


 こういう時、航空管制に入ってくれるのはありがたい。宮内は視線を向け、雲を使ってくるクレックス戦闘機の編隊を見つけた。


「桜一番から楓一番。お客さんだ。見えてるな?」

『見えた』


 第三中隊の井口から応答があった。


「あれを迎え撃つ。ほぼ同数だ。やられんなよ!」


 紫電改三は翼を翻して上昇する。こちとら冷却魔金属を用いて作られたスーパー誉だ。魔技研製エンジンによりブースト圧を気にすることなくかっ飛ばせる紫電改三は、最高時速700キロを軽く振り切るのはもちろん、それを長時間維持できるという元の誉エンジンと隔絶した性能を誇る。

 異世界帝国の新型戦闘機が相手でも上昇力でも負けていない。


 その反応を見て、敵編隊は方向を変えた。まっすぐ紫電改三部隊へ切り込むように突撃に移ったのだ。


「ヘッドオンをお望みってか! 上等だ!」


 本当は正面から迎え撃つのは相打ち同然なので避けるべきなのだが、双方の位置関係、姿勢を考慮すると、正面からぶつかる以外の行動は敵機に易々と撃たれるか後方に衝かれるかの二択となってしまう。


 相手が新型を駆る精鋭航空隊である以上、ヘマをして隙を見せるなんてことはないだろう。一番生存確率が高いのが、死ぬ可能性の高いヘッドオンなのは皮肉としかいいようがない。

 猛スピードで飛び込んでくるクレックス戦闘機9機。そして紫電改三12機は正面から挑み、双方、光が瞬いた。


 クレックス5機、紫電改三6機が一瞬でバラバラに吹き飛んだ。

 光弾砲の光は容易く航空機を四散させる。装甲などあってないようなもので、実にあっけない。

 まばたきの間に両者はすれ違った。


「青い奴!」


 刹那、宮内は青いクレックス戦闘機のパイロットと目が合ったような気がした。超高速の早撃ちを宮内は外した。しかし青いクレックスも外した。互いにエース同士は、ヘッドオン状態での射撃を当てられなかった。


 いや、体が無意識に回避を選んでしまったのだ。もしあのまま銃撃を続けていれば、おそらくあの青い奴に当たった。だがこちらも敵弾で粉々に砕け散っていただろう。

 壮絶なる相撃ち。宮内と青いクレックスのパイロット――エレミア・アグノスは、それを長年の経験と勘で察し、力を抜いたのだ。


「いいぜ、あたしとてめえの一騎討ちだ、この野郎!」


 操縦桿を引き、旋回機動。機体が軋む。かかるGを己の能力で低減しつつ、青いクレックス戦闘機を追う。


 敵機は高速で急降下、一撃離脱の動きを見せる。最高速度差で振り切ろうというのだろうが、紫電の降下速度もまあまあの部類だ。いつまでも下降できるほど高高度でもないので、致命的に引き離されるほどではない。後ろ、さらに上に位置取っているので、早かれ遅かれ射撃できる位置につける!

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