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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二八七話、引き寄せられた敵


 ムンドゥス帝国本営艦隊、第2戦闘群を指揮するウワル中将は、救援すべき『ワガブンドゥス』がすでに、地球艦隊によって撃沈されてしまったことに衝撃を受けた。


「ぐぬっ、もはや手遅れというのか……!」


 あの特殊砲撃艦が、同僚たちをマリアナ諸島へ移動させたのは理解している。そして敵中に孤立した彼ら――第5、第6戦闘群を撤収させるための鍵であることも。

 だが、その希望は絶たれた。

『ワガブンドゥス』は沈み、転移弾――ここではゲート艦を目標に転移させるための特殊装置内臓の弾――を送り込む算段が不可能になった。


 同僚、戦友を助けられない! 枯れ木のように細い体躯ながら友情に厚い提督は深く嘆くのである。

 だがそれもわずかの間だ。込み上げて来るのは怒りの感情である。


「特殊艦を破壊した敵を許すな! 攻撃開始! 1隻残らず、撃滅せよーっ!」


 ウワルの怒号が響き、それに押し出されるように第2戦闘群は突撃を開始した。

 空母からは待機していたエントマⅢ戦闘機とランビリス攻撃機が、一斉に飛び立つ。わずか十数隻の地球艦隊など、あっという間に撃沈できるはずであった。

 しかし、対する地球艦隊――第五艦隊、神明 龍造少将の命令はシンプルなものだった。


「空母群のもとへ転移」


 海上の戦艦6、巡洋艦6、駆逐艦12隻は、次の瞬間、その姿を消した。

 戦艦部隊が砲撃を開始しようと前進し、一足早く600を超える攻撃機がロケット爆弾や魚雷を叩き込もうとした矢先であった。


 空振り戦法。

 多数の航空機が向かってきたところを転移で逃げる。シンプルだが、攻撃が一切当たらなくなるという点で非常に有力な回避方法ではあった。


「逃げたかっ!」


 ウワルは、司令官席の手すりを固めた拳で叩きつけた。

 よく考えれば、予想できたことだ。地球艦隊の隻数からしても、第2戦闘群と正面から戦える数ではない。普通の指揮官であれば、とっとと逃げ出すところだ。


 ――やつらはムンドゥスの軍人ではない。


 だからああもあっさり逃げることができるのだ。ウワルは憤りを感じるのである。参謀長が振り返った。


「長官、展開した艦載機を収容致します」


 攻撃目標がいなくなった以上、出した航空機は空母に戻さねばならない。ただ飛び立って戻ってきただけであるが、出撃は出撃である。

 さらに、ムンドゥスの航空機には、転移で母艦に帰る機能はないので、以後も航空機を使うのであれば、時間のかかる収容作業も致し方ない。


「偵察機を展開。敵の所在を探れ。転移で逃げたのは、遥か彼方とは限らんぞ」


 案外近くにいて、こちらへの反撃を企図しているかもしれない。


「忌々しい……。第5、第6戦闘群から、あれから通信は拾えていないのか?」

「ありません」


 参謀長は通信参謀のほうを一瞥する。同参謀は小さく頷いた。通信なし。もしかしたらすでに地球軍の航空隊によってやられているかもしれない。

 マリアナ諸島に向かった部隊は空母をほとんど連れていなかった。空からの猛攻を受ければ、大損害は免れない。


 カサルティリオ総参謀長の強権のもと、前線に連れ出された本営艦隊であったが、送った艦隊がやられては腹も立つというものである。

 艦載機を飛ばしたばかりの空母に、攻撃隊が戻ってくる。機体内に爆弾や魚雷を収容できるランビリスは、どこか円盤に似たシルエットで、ゆっくりとリトス級やアルクトス級といった空母の飛行甲板に降りてくる。

 戦闘機隊は警戒のために飛び、他の艦も空母を守るべく陣形を固める。


 そして攻撃が始まった。

 潜伏していた第五艦隊潜水艦が、機関を始動させ動き出す。魚雷が放たれ、手近な艦艇――対潜兵器を備えた駆逐艦にまず突き刺さった。


『敵襲!』


 第2戦闘群旗艦の司令塔に警報が響く。艦内の緩みかかった空気が再び戦闘態勢へと移行する。


『魚雷らしきもの多数という報告あり!』

「敵の潜水艦か! 対潜戦闘――!」


 轟音が轟く。艦載機収容中の空母がやられたのだ。下から突き上げられた水柱。空母の艦体が上下し、次の瞬間艦内の至る所から煙を吐いて洋上に停止してしまう。

 雷撃は連続し、空母ばかりかゲート巡洋艦まで攻撃を受けてしまう。


「おのれ! 罠だったのか!」


 地球軍は『ワガブンドゥス』を攻撃することで、本営艦隊の増援が来るのを見越して、待ち伏せをしていたのだ。どうりで敵艦の数が少ないと思った!


「敵の攻撃が長い。潜水艦だけか?」


 ウワルは確認する。潜水艦の主力兵器は魚雷だ。多数の潜水艦を潜ませていたにしても、大抵は一撃離脱のはずで、こうも断続的に味方艦に被害が出るものではない。


「水中砲撃型の敵もいるのではないか」


 それは嫌な予感であるが、ウワルのそれは的中するのである。

 戦艦『蝦夷』『榛名』、巡洋戦艦『武尊』『鷲羽』、航空戦艦『浅間』といった戦艦級5隻に巡洋艦、駆逐艦が海中からの転移砲砲撃を仕掛けていた。


 これらはムンドゥス帝国戦艦や巡洋艦にも被害を与え始める。駆逐艦部隊は初手の伊号潜部隊40隻の雷撃で9割を喪失し、対潜攻撃能力を奪われていた。

 ゲート艦もやられ、自力で移動するしかない。こうなってはこれ以上、この海域に留まるのは危険だ。


「全艦、『ウルブス・ムンドゥス』方向へ、全速力で移動せよ! 敵潜水艦を振り切るのだ!」


 ただの潜水艦相手ならば、水上艦艇のスピードで振り切ることもできる。魚雷相手であればそう連続して撃てるものでもない。だが転移砲を水中から撃たれるとなると、その攻撃速度は魚雷とは比べものにならないほど早い。

 悲惨な退却劇が始まる。



  ・  ・  ・



 一方、神明少将の第五艦隊水上部隊は、『翔竜』『鳳翔』ら空母、水上機母艦部隊と合流していた。

 というより、転移離脱のポイントの一つとして互いの部隊の中継装置搭載艦が含まれている。

 そこで旗艦にいる神明のもとに一つの知らせが届く。やってきたのは連合艦隊司令部からの伝令であった。


「マリアナから離脱した敵戦闘機隊」

「はい。置き去りになった直掩戦闘機隊ですが、長官はこれらを収容するため敵空母部隊が動くと考えております」


 そうだろうな、と神明は思う。収容予定があるから敵戦闘機はまとまって離脱したのだ。これで拾えないのであれば、敵戦闘機はマリアナの空で最後の一機まで戦っただろう。


「その空母部隊を叩け、ということだな?」

「はい。可能であれば」

「了解した」


 こちらにも空母部隊はある。その航空隊を投入することは可能であった。

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